第五夜


 俺はあの飲み物の変な働きに不安を感じ始めていた。飲んだ後で必ず眠ってしまう。そして内容は思い出せないものの何か嫌な夢を見ている。それに彼女の「7日後に良いことがある」という言葉も気になる。初めはただのロマンチックな文句に過ぎないと思っていたが、どうも自分自身の中で何かが変わり始めているような気がして仕方がなかった。

 だがそれが何なのかがよくわからない。結局この日の夜も俺はまた彼女のマンションの前に来ていた。

「今日で5日目ね。よく来てくれたわ」

「まあ、あと3日だからね。それにしても、どうも最近おかしいんだ」

「え、どうしたの」

「最近何だか昔の記憶が妙にあやふやなんだよ」

「そう、順調ね」

「え、何か言った」

「ううん、じゃあ今日も一緒に飲みましょう」

 彼女がペットボトルからグラスに注いだものは、青色の飲み物だった。

「あれ、これって青色? また変わったのかい?」

「ううん、同じものよ」

「そうなのかい、うーん」

「じゃあ、乾杯」

「え? ああ、乾杯」

 俺はゆっくりグラスに口を付けた。ゼリーがゆるゆると喉を通っていく。体にひんやりしたゼリーの感触が染み渡っていく。そして段々体が熱くなってくる。

 今日はどんな夢を見るのだろうか……さっきまで不安だったはずなのに、気が付くと俺は妙に夢の中身を期待し始めていた。

 そして、再び意識が遠くなっていった。






 気が付くと、俺はベッドに腰かけて座っていた。どうもどこかのホテルの一室のようだ。俺が着ているのは白いブラウスに濃い目の青色のブレザーとタイトのミニスカート。どうもいわゆる女性のリクルートスーツのようだ。

 頭がはっきりしてくると、シャワールームの方からザーザーというシャワーの音が聞こえてきた。

 うーんこれって一体どういう状況なんだ。

 やがてシャワーの音が止むと、シャワールームの中からパイル地のガウンを着た中年の男が出てきた。

「君もシャワーを浴びたらどうだい」

「は、はぁ、でも」

「まだ夜は長いんだ。さあ早く」

 俺は仕方なくシャワールームに入った。シャワールームの鏡に映っているのは、やはり小夜子だった。リクルートスーツが初々しいが、よく似合っている。

 俺はシャワーを浴びるためにブレザーのボタンに手をかけた。

 そう言えば今まで自分で服を脱いだことなかったんだよな。

 自分は今女物のスーツを着ている。そしてそれを脱いでいくという行為は俺をどきどきさせた。鏡に映るブレザーに手をかけた小夜子を見ていると心臓が高鳴っていく。

 この服を脱ごうとしている小夜子が今の俺……

 しかし女の服は面倒だ。ブレザーはまだ問題なかったが、ブラウスはボタンが逆になっていて外し難いし、スカートはホックが後ろにあってこれまた外し難いことこの上ない。鏡を見ながらようやく外すと、ファスナーを引きおろしてやる。するとミニのタイトスカートがファサっと床に落ちた。

 鏡には淡いピンクのミニスリップを着た小夜子が立っていた。俺は腰に手を当ててポーズを取って見た。そして、今の自分の腰の細さを妙に実感してしまった。

 うーん本物の小夜子が脱いでいるのを見ているみたいでそそられるなぁ。

 胸の高まりがどんどん激しくなっていく。

 肩紐に手を掛けるとゆっくり肩から外し、腕を抜いていく。両腕を抜くと脱いだスカートの上にファサっとスリップが落ちる。俺はスリップと同じ淡いピンクのブラジャーとベージュのパンティストッキングに包まれたショーツを身に付けているだけになっていた。

 腰のゴムの部分に両手の親指を差込みスルスルとパンティストッキングを引き下げていく。ベッドにもう一度腰掛け、右脚、左脚とストッキングを脱いでいく。鏡を見ているとまるでストリップショーでも見ているようだ。スタイルの良い小夜子がブラジャーとショーツだけの格好になっているのを見ていると、今の自分には立つべきモノが無いのに妙に興奮してしまう。鏡の中の美女はそんな俺を目元を桃色に染め、色っぽい表情でじっと見返していた。

 さあ、あと2枚

 俺はさらに悪戦苦闘しながらブラジャーを外した。たわわな大きな胸が乳首が顕わになる。ブラジャーはどうやらサイズが小さかったようで、外したとたん急に息苦しさから開放されて楽になった。

 今、俺はショーツ一枚を穿いただけの格好になっていた。いわゆるトップレスってやつだな。両手で胸を持ち上げると、ずしりとその重さが手に伝わってくる。
 鏡を見ると、小夜子がにやにやと笑いながら自分の胸を持ち上げている光景が映し出されていた。

 さあ、最後の一枚。

 俺はショーツに親指をかけ、ゆっくりと降ろしていった。股間のうっすらとした翳りの部分が顕わになり、そこをじっと見ているとドキドキしてくる。これが今の俺の姿なんだと思うとたまらない気持ちだった。

 ショーツから両足を抜くと、ポイっと放り投げた。

 俺はついに何も身に付けていない、裸・・ヌードになった。鏡をじっと見ていると、すっかり興奮している自分に気が付いた。両胸をそっと撫でてみるとじわりとした快感が伝わってくる。

 この感じ、前にどこかで・・・

 股間に手をやってみる。そこはすでに湿っていて、指先でスッと割れ目に沿って撫でてみただけでビクッビクッと快感が突き上げてくる。指をゆっくりと中に差し入れて少しずつ出し入れすると、中からどくどくと熱いものが出てくる。

「う、うーん、いい気持ちぃ」

 指を抜き出して見ると、きらきらと濡れているのがわかった。

 俺、女として感じているのか。

「おーい、何やっているんだぁ」

 いけない、早くシャワー浴びなきゃ。

 だがシャワーを浴びると、その気持ち良さに思わす座り込みそうになってしまった。肌が敏感になっているのか、元々小夜子のこの体が敏感なのか、お湯が肌に当たるとスッゴク気持ちいい。俺は体の隅々までボディシャンプーで泡立てると、撫でるように洗っていった。

 気持ちいいよぉー

 もう我慢できない。俺は再び指をアソコに入れると、出し入れを繰り返す。アソコがグチュグチュといやらしい音を立てる。

「う、うんー、あ、いいー、いいよいいよー、いく、くぅ、いく、いくぅー」

 アソコがヒクヒクと収縮し、体全体がブルブルと痙攣する。

「はぁはぁ・・・俺、い、いってしまったのか。小夜子の体で……小夜子として?」

 虚脱感を振り払い、急いで体をシャワーで洗い流してシャワールームから出ようとすると、男が入ってきた。

「遅いじゃないか、もう待ちくたびれたぞ」

 男は俺が着替えるのも待ち切れないといった面持ちで俺の腕を掴んで引き寄せると俺をギュっと抱き締めた。

「あ・・・」

 俺の胸が男の胸の中で潰れる。さっきまでの余韻がまだ体の中に残っているおれの体は敏感になっているようだった。

「全く君はかわいいなぁ。でもこんなに待たせちゃいけないなぁ。私に気に入られなければ採用は難しいんだぞ。何と言っても今は女性の採用は厳しいからねぇ。さぁ、楽しませてくれよ」

 男がキスをする。

「ん、んんー」

 男が手の平で俺の胸をこねくり回す。

 き、気持ちいい。

 また俺の中から熱いものものが湧き上がってくる。

「は、はぁーん」

 俺は体に力が入らなくなってその場に座り込んでしまう。

「おいおいどうしたんだ。そんなに気持ちいいのかい。敏感な子だなぁ」

 俺はそのまま四つんばいにさせられると、男は後ろから俺のアソコにペニスの先端をあてがった。

「ここかな、こっちかな、ははは、さあ、いくぞ」

 後ろ向きの姿勢でペニスの先端をアソコに触れられた時、体がビクビクと震えてしまった。

 ゾクゾクするような不安と期待、何だこの感じ。俺は男のモノを入れられたがっているのか。

 ズブッ

「ひゃん」

 そして遂に男のモノが挿入された。すでに露がツーっと滴ってくる程濡れていたおれのアソコは難なくそれを受け入れ、ペニスはズズっと苦も無く入り込んでいった。

 ズズー、ズズー、ズズー

 男が後ろから腰を動かし、俺のアソコにペニスを突き入れ、引き戻す。それを繰り返される度に、おれの体の奥からどうしようもない心地よさが吹き上がっていった。後ろから両胸もグニュグニュとまさぐられる。俺の胸が男の手の動きに合わせて潰れる。アソコと胸の両方からの快感、相手の顔が見えないバックから攻め続けられ、俺は言いようの無い快感を感じて思わず声にならない声を上げていた。

「あーん、あー、あんあん、いいー、も、もう、あん〜」

 そして男のペニスが一段と硬く膨れ上がってくる。

 パン、パン、パン

 もう俺は何も考えられなくなっていた。体の芯に渦巻く快感の嵐に翻弄され、息も絶え絶えになっていた。

「よし、いくぞ」

 男の動きがさらに激しくなる。

「い、いい、いく、いく、いくぅ〜」

 ズピュ、ズピュ

 男のペニスから俺の中に大量の白濁したものが吐き出された。その瞬間俺の頭の中も心地良さで真っ白になり、意識が無くなった。

「いやぁ良かったねぁ、でもこんなに簡単に体を許すような子を採用するわけにはいかないなぁ、あっははは」

 そんな声が遠くで聞こえていた。

「モウイヤ・・・」






 次の日の朝、俺が目覚めるとどうも体の感覚がおかしかった。

「あ、あれ俺なんか・・」

「うん? どうしたの」

「何だか、体の中に何が入っているような、変な感じなんだ。昨日見た夢……なんだっけ……夢のせいかな。何だか妙に疲れているような心地良いようなそんな感じなんだ」

「ねぇ、ちょっと聞いていい?」

「ん?何だい」

「あなたこの会社にはすんなり就職できたの?」

「ああ、そうだよ。他は受けなかった・・・あれ、受けたっけ、どっかでいやな目にあったような」

「就職試験ってどうだった?」

「うん簡単・・・ってあれ、何だか・・試験以外で何かあったっけな」

「あ、いいのよ無理に思い出さなくっても」

「うーん、何か変だなぁ」

 体の芯に残る心地よさを感じながら、しかしその心地よさがどこから来ているのかわからない俺はただ呟くしかなかった。


(続く)
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