プロローグ


 とあるマンションの一室で、テーブルを挟んで男と女が向かい合っていた。女はテーブルに2個のカクテルグラスを置くと、そこに紫色の飲み物を注いだ。

「紫色、これは?」

「今日が七日目、これが最後よ。これを飲み終えたら、その時は……」

 女は微笑みながら目の前の男に告げた。

 男はもうそれを飲んではいけないと思いながらも、体の奥から沸き上がってくる欲望に抗うことができず、震える手でグラスを持つと口に少しずつ近付けていった。

 グラスの中の紫色の液体はプルプルと自己主張するかのように揺れていた。


……Somewhere, over the rainbow, skies are blue. And the dreams that you dare to dream really do come true.……


 部屋の中には、どこかで聞いた唄が流れていた。

「この曲は確か……」

 女が答えた。

「オーバー・ザ・レインボー。ジュディ・ガーランドがオズの魔法使いで唄った〈虹の彼方に〉よ」

「そうか、虹の彼方に・・・か」

 そして男はゆっくりとグラスを傾けて行った……



(続く)


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