盗まれた結婚(前編)
 作:toshi9  挿絵:kさん



 それはある暑い夏の夜のこと、神田川由梨子のマンションの新聞受けに入れられていた一枚のチラシから始まった。
 ピンポーン!
「あ、一平君、待ってたよ」
「おう」
 由梨子がドアを開けると、そこには彼女の婚約者・町田一平がにこやかに立っていた。
 一平は由梨子の部屋に上がると、新聞受けから抜き取ってきたチラシを床に無造作に置き、ダイニングの椅子にどっかりと腰を下ろした。
 同じ会社に勤める町田一平と神田川由梨子は、二週間後に結婚を控えた婚約者同士だ。だが高校時代から既に恋人同士だった二人である。一平は新居をろくに探すでもなく、由梨子の親が彼女に買い与えたマンションに入り浸りになっていた。
 そしてこの日も一平は由梨子手作りの夕食にありつくために、彼女のマンションを訪れたのだった。
 ダイニングテーブルの椅子に座った一平の目の前には美味しそうな由梨子の手料理が次々と並べられる。
「おっ、今日も旨そうだな」
「えへへへ」
 一平に褒められてちょっぴりにやける由梨子。
 彼女の手料理に舌鼓を打つ一平。
 その様子を幸せそうに眺めながら自分も箸を取る由梨子。
 二人の間には結婚間近の男女特有の甘い雰囲気が漂っている。
 そう、それはどこにでもある恋人同士の平和な姿なのかもしれない。だが一平の不用意な一言が、その後二人を悲劇に陥れることになるのだった。


 夕食を食べ終え床にごろりと寝転がっていた一平は、思い出したようにキッチンで夕食の後片付けをしていた由梨子に声をかけた。
「おい、由梨子」
「なあに」
「今日こそ、いいだろう」
「だめ」
「何でだよ、俺たち結婚するんじゃないか。もういいだろう、えっちさせろよ」
「だめ、結婚するまでは」
「ちぇっ、全く古風なんだから」
「何言ってるのよ。二週間なんてすぐじゃない」
「俺はそれまで待てないよ。なあ、由梨子」
 パシッ
 伸ばした一平の手を由梨子がはねつける。
「ちぇっ」
 ぷいっとテレビのほうを向く一平。そしてしばらく二人の間に沈黙が続いた。
 やがて再び一平が口を開く。
「なあ」
「なあに?」
「お前最近太ったんじゃないか」
 ぴくっと由梨子の眉が動く。
「ええ? そ、そんなことないよ」
「そうかぁ? ほれほれ」
 寝転がっていた一平はがばっと起き上がると、目の前に立っている由梨子のジーンズとキャミソールの間から覗くお腹に手を伸ばし、その肉をつまんだ。
 ぐにゅ
 一平の手は由梨子のお腹の肉を易々とつまんでしまう。
「なっ、ば、ばかぁ、一平君ったら何するのよ」
 一平の思わぬ行動にしゃがみ込んでしまう由梨子。
「何って、ほら、こんなに余って……」
「こんなにって……」
「なあ由梨子、お前最近少し食べすぎじゃないのか。さっきだって俺よっか食べてたじゃないか。油断してるとぶくぶく太っちゃうぞ」
「うっ、それは……」
「少し運動したらどうなんだよ。俺も付き合うからさあ」
「だって……」
 不満気な表情で一平を上目遣いに睨みつける由梨子。
 そんな由梨子の目を見て気まずそうに視線を外した一平は、ふと床に置かれたチラシに目を止めた。それは彼が一階の新聞受けから抜き取ってきたチラシだ。
「お! これなんか丁度いいんじゃないか」
「え?」
 一平が広げたチラシ、それは最近由梨子のマンションの近くにできたフィットネスクラブの会員募集チラシだった。

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  エアロビクススタイルの見事なプロポーションの女性の写真を眺めながら、そんな文字が躍るチラシの裏にホッチキスで止められた無料お試しチケットを外す一平。
「そのチラシ、ここのところ毎日入っているのよ」
「そうなのか。まあ新しい会員を募集しているんだろう。でもいいじゃないか。ここから近そうだし、こうして無料チケットもあるんだし。ものは試しだぞ。明日一緒に行ってみようぜ」
「ええ? ……そうね……まあ……いいけど」
 ぽっと頬を赤らめてこくりと頷く由梨子。最近太り始めていたことをずばり一平に指摘され、心中穏やかではなかった由梨子だが、結局一平の提案通りそのフィットネスクラブに行ってみることにした。そう、太り始めていたのを誰よりも気にしていたのは彼女自身なのだから。
 そして翌日の日曜日、街のレストランで仲良く昼食を終えた由梨子と一平はチラシを手に、連れ立ってフィットネスクラブに向かうのだった。


「すみませ〜ん」
「はい、いらっしゃいませぇ」
「あの、俺たち体験入会してみたいんですが」
「お二人とも初めてですかぁ? じゃあこちらの用紙に記入して下さいねぇ」
 制服姿の受付嬢が受付用紙を二人に手渡す。一平と由梨子はそれぞれ用紙を受け取ると、必要事項を記入して受付嬢に返した。
「それでは担当のインストラクターに連絡いたしますので、そこでしばらくお待ちくださいねぇ」
 そう促されて二人仲良くエントランスルームの長椅子に座って待つ一平と由梨子。やがてそこにオレンジ色のレオタードの上に同じ色の光沢のあるぴっちりした生地のショートパンツというエアロビクスウェアを着た一人の女性が姿を現した。彼女の付けたネームプレートには、『インストラクター・山村聡子』と書かれてある。
「お待たせしました。町田一平さんと神田川由梨子さんですね」
「「はい」」
 息もぴったりに一緒に返事する二人。
「二人御一緒に体験入会ってことですが、ご関係は?」
「俺たち来週末結婚するんです」
「まあ、それはおめでとうございます。それでは由梨子さんはウェディングダイエットということですね」
「え? ええ、まあ」
 ちょっぴり頬を赤らめて答える由梨子。
「ふふっ、わかりました。うちのエクササイズを続ければどんなウェディングドレスでも似合うようになりますよ。ええっとそれから町田一平さんのご希望は……」
「俺のほうはまあ付き添いみたいなもんです。こいつがサボらないように見張ってようかなと思って一緒に来たんですけど」
「まあ、あたしってそんなに信用ないかな」
「あの余った肉を確かめた後だからな」
「知らない!」
 ぷっと頬を膨らませる由梨子。
「ふふふ、仲のよろしいことで」
「え? あ、すみません。ええっとじゃあ俺は……」
「あ、いいですよ。町田さんは男性用のコースを用意いたしますわ。シェイプアップコースと筋肉アップコース、どちらにします?」
「え? それじゃあ筋肉アップコースで」
「わかりました。じゃあ神田川さんはウェディングダイエットコース、町田さんは筋肉アップコースをそれぞれ今日は体験ということでよろしいですね。それではお二人ともこちらにどうぞ」
 二人を案内しながらエントランスルームを出たインストラクターは、廊下の突き当たりにあるエレベーターの前でぴたりと立ち止まった。
「さて、それでは町田さんは二階の男性用フロア、神田川さんは三階の女性用フロアに上がってください。私は神田川さんと一緒に三階に行きますので、町田さんは二階のフロアにいる案内の者にこれを渡して、その指示に従ってくださいね」
 インストラクターは持っている2部の書類のうちの片方を一平に手渡した。
「ええ? 俺たちってフロアが別々なんですか?」
「ふふふふ、女性が安心してフィットネスできるようにここでは男女のフロアを分けているんですよ」
「なんだ、由梨子のエアロビ姿が見られると思ったのになあ、うーん残念」
「何ですって! 一平君ったらまさかそれが目的であたしを誘ったんじゃあないでしょうね」
「え? ち、違う違う」
 ぎろっと睨む由梨子に、手を振って慌てて否定する一平。
 その時三人の目の前のエレベーターのドアがすっと開くと、中から一人の男性が出てきた。
 あれ?
 その小柄な男は由梨子と一平を一瞥すると、インストラクターに声をかけた。
「山村さん、ちょっと来て頂けませんか」
「まあ、どうしたの郁男くん」
「先生がお呼びなんですが。地下の準備室です」
「何だろう、しょうがないわね。じゃあ二人とも先に上がってくださいな。神田川さんは三階でちょっと待っててくださいな」
「は、はぁ」
「わかりました。じゃあ由梨子先に行ってようか。少しでも早くそのお腹引っ込めなきゃな」
 さして気にも留めずにエレベーターに乗り込む一平。
「もお」
 由梨子はその後からぷっと頬を膨らませながら乗り込んだ。
「……ようやく来たね。しかも、ふふふふ」
「え? 郁男君、何か言った?」
「いいえ? さあ行きましょう」
 男に促されて、山村聡子はその後ろについて地下室に降りていった。
「あの男、どっかで……」
「どうしたの、一平くん」
「いや、あのエレベーターから降りてきた男、どっかで会ったような気がするんだが……うーん、思い出せない」
「うふっ、いいじゃないそんなこと。ほらドアが開いたわよ」
「ああ、それじゃあ後でな。あ、そうだ。先に終わったほうが下で待っていようぜ」
「うん」


 二階でエレベーターから降りた一平と別れ、三階に上がった由梨子が待っていると、しばらくして聡子も上がってきた。
「ごめんなさい、待たせちゃって」
「いいえ、大丈夫です。あれ、その格好は」
「え? ああ、あなたのお手伝いをしないといけませんからね」
「はあ」
 さっきまでショートパンツを穿いていた聡子は、レオタードだけの姿になっていた。心なしか汗ばんでいる。
「さてと、神田川由梨子……さん」
「はい」
「まずロッカールームでエクササイズ専用のウェアに着替えてください。ウェアは十七番ロッカーの中に入っていますから。十七番のロッカーですよ」
「はい」
 言われた通りロッカールームに入り、十七番ロッカーを開ける由梨子。そこに入っていたのは最小限の布地しかない際どいデザインの黄色いビキニだった。ロッカールームから顔を出した由梨子は恥ずかしそうに聡子を呼んだ。
「あの、これってちょっと……」
「緊張しないでも大丈夫、このフロアには女性しかいないんだから恥ずかしくないでしょう。それに着替えたら、まずオイルマッサージを施しますからね」
「オイルマッサージって……あの、ここってエステサロンも兼ねているんですか?」
「まあそんなところね。勿論フィットネス機器も揃っているけれど、うちはエステ用の機材も充実しているのよ。効果的にダイエットできるように、機器を使ったエクササイズを行なう前にまずオイルマッサージを施すの。マッサージに使うハーブオイルは女性専用、体の中の余計なものを汗と一緒に全部体から外に出す効果があるのよ」
「へぇ〜、そうなんですか」
「ほら、早く着替えて。えっと、その前に向こうにシャワールームがありますから先に軽くシャワーを浴びてくるといいわね。着替えたらもう一度ここに来るのよ」
「あ、はい」
 聡子に促されて、首を引っ込める由梨子。その閉じられたドアをじっと見つめる聡子だが、その表情が突如にやっとした笑いに変わる。
「さ〜て、もう少しだ。神田川由梨子にオイルマッサージができるんだ。この手で触り放題に……ふふふふ」


 由梨子は服を脱いでロッカーに放り込むと、裸になってシャワーを浴びた。
 温水のシャワーは何かフレグランスが混ざっているのか、良い香りを発していた。
「いい香り、それに気持ちいい〜。こんなシャワー初めて」
 由梨子はシャワーの心地よさに浸っていた。浴びていると、体の芯からほてってくるような感じがする。
「それにしても此処ってどういうフィットネスクラブなんだろう。何か普通の所とちょっと違うみたいだけれど……」
 少しばかりの疑問を感じながらも、由梨子はシャワールームから出ると黄色のビキニの水着を身に着けた。
「うわぁ〜こんなに布地が少ないのって初めて。このフロアには女性しかいないって言ったって……こんなの恥ずかしいよ」
 顔を赤らめながらロッカールームから恐る恐る出る由梨子。
「あ、あの〜すみません、お待たせしました」
「ああ大丈夫よ。あのシャワーを浴びると、みんな長くなってしまうみたいだから」
「あ、やっぱり」
「うふふ、で、どうだった?」
「すっごく気持ち良かったです」
「そお? 良かったわ。じゃあ早速今からそこの個室でオイルマッサージを始めるから、部屋に入ってベッドで横になって頂戴」
「はい」
 聡子が指差した個室に入った由梨子は、その中にあるマッサージ用のベッドにうつ伏せになった。聡子は手に持ったバッグから小瓶を取り出すと、中に入っているハーブオイルを由梨子の背中に落とす。と同時に、ハーブ特有の心地良い香りが部屋の中に広がる。聡子は由梨子の背中に落としたハーブオイルを両手で由梨子の背中全体に塗り広げていく。
 オイルマッサージを受けていた由梨子は気持ち良さそうに目を瞑っていたが、やがてくーくーと寝入ってしまった。
 構わずにハーブオイルを塗り続ける聡子。彼女の手は由梨子の背中からやがて首に、太股にと伸び、さらに水着のパンツを引き下ろすと、お尻にも、そして彼女の股間にも塗りこんでいく。
「ああん、ん〜」
 由梨子の口から寝言とも吐息ともつかない声が漏れる。しかし由梨子に目覚める様子はない。
 聡子はごろりと由梨子の身体を回した。
 その瞬間黄色い水着のブラに包まれた由梨子の大きな胸がぷるりと揺れる。
 水着のブラを捲り上げて由梨子の胸を顕わにすると、聡子はその両胸にもオイルを塗り広げていった。
 彼女の指の動きに合わせて由梨子の胸が柔らかそうにくにゅくにゅと変型する。
「う、う〜ん……」
 幸せそうな声を漏らす由梨子。聡子はその顔にもオイルを塗っていく。
 念入りにマッサージする聡子の手で、オイルは由梨子の全身にくまなく塗られていった。
「う、ううう……」
 やがてオイルがまんべんなく彼女の全身に塗り広げられたその瞬間、横たわった由梨子に変化が起きた。
 突然苦悶の表情を浮かべたかと思うと、彼女の全身からどっと突然大量の汗が噴き出してくる。そしてそのつややかな顔に徐々にしわが寄りはじめ、それは体全体に広がっていく。そして顔が、いや頭全体が厚みを無くしていった。
 鼻が盛り上がりを無くし、顔が平べったくなっていく。ふっくらした形の良い唇が張りを無くしていく。
 いや、その恐るべき変化は顔だけではない
 由梨子の大きな胸もお尻も、張りのある太股も空気が抜けていくようにどんどんと萎んでいた。
「ふ……ふふ……ふふふふ」
 聡子は変わっていく由梨子の様子を見ながら含み笑いを続けていた。
 やがて由梨子の体は空気の抜けたビニール人形のように、ベッドの上にうつ伏せに横たわったまますっかり薄く平べったいものに変わってしまっていた。
 聡子はぺらぺらになった由梨子の体をバスタオルでも持つかのように両手で摘み上げると、自分の前に広げた。
「これがあの神田川由梨子か。すっかり薄っぺらくなっちゃったね。本当にこれの効果って何度見ても見事なものだよ。さてと」
 由梨子の体を再びベッドに広げ、聡子はハーブオイルの入っていたバッグから今度は一本のペットボトルを取り出すと、それをごくごくと飲み始めた。
 しばらく目を閉じる聡子。やがて彼女はかっと目を見開く。
「ふふふふ、さあ、ショータイムの始まりだ」
 聡子はレオタードの上から左手を左胸に宛がうと、ゆっくりと揉み始めた。
 そのレオタードに覆われた小振りな胸が手の動きに合わせて柔らかそうに変形する。
「う、うはっ、小さいけど、気持ち……いい、あ、あはん」
 喘ぎ声を漏らしながら、聡子はレオタードの股の部分をぐっと左手で広げた。うっすらと翳った彼女の股間が顕わになる。
「うっ、うっ、うっ」
 そして己の股間に右手を宛がう聡子。差し入れた人差し指と中指がその中で蠢く。
「あ、うう、う、うあっ」
 くちゅ、くちゅ、くちゅ
 指が股間に出し入れされる。そして段々とそこはいやらしい音を上げ始めていた。ソコから漏れ出した粘液が少しずつ着ているレオタードの生地を濡らし始める。
「あ、あは、あああ」
 高まる聡子のあえぎ声と共に、彼女の中で何かが蠢き始める。それは少しずつ彼女の中で一つにまとまり、体の中を昇り詰めていく。
 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ
「あう、うん、ああ、だめ、もう、いく、う、うぐっ」
 口を押さえる聡子。
「うぐっ、きたきた、こみ上げてきた。由梨子、悪いけど君の体は今から俺が頂くよ」
 聡子の声はそれまでのソプラノから、太いバリトンへと変わっている。
 聡子はにっと笑うと、ベッドに仰向けに広げられたぺらぺらの薄皮状になった由梨子の体に覆いかぶさった。そしてその唇に己の唇を重ねる。
「は、はぁ〜、あ、あう、あうあうあう」
 唸り声と共に聡子の口から出てきたどろりとしたゼリー状のものが、由梨子の口の中に入っていく。それは後から後から途切れる事無く由梨子の口の中へと注ぎ込まれていた。
 そして、それが由梨子の中に注ぎ込まれると共に、由梨子の体に再び変化が起きる。
 その喉がむくむくと動き膨らみを取り戻していく。そしてその変化は、まるでゼリー状のそれが彼女の体中に染み渡っていくかのように彼女の全身に広がっていく。由梨子のお腹が、腰が、脚が、腕がむくむくと膨らんでいく。その様子はまるで彼女の中に入り込んだ何者かが由梨子という皮を被り込んでいるかのように見えた。そしてその盛り上がりは手の指、足の指と体の隅々まで行き渡っていく。
 やがて彼女の大きな胸が膨らみを取り戻し、最後にその美しい顔も元の張りを取り戻していた。
 一方ゼリー状のものをすっかり吐き出した聡子は、由梨子と入れ替わりに体全体に皺が刻み込まれたかと思うと、空気が抜けたようにぺらぺらになって由梨子の体にもたれ込んでいた。
 突然ぱっちりと目を開ける由梨子。
 上半身を起こした由梨子は、自分の体に覆いかぶさっている薄い皮状になった聡子の体を払い除けて立ち上がった。
「ふふふ、成功だな」
 怪しげな笑いを浮かべた由梨子は、しばらく鏡の前に立ちポーズを取っていたかと思うと、鏡を見ながら捲りあげられたままのブラジャーをそのままに、己の胸を揉み始めた。



「由梨子の胸、やっぱり大きいな。俺の胸がこんなに、へへ、なかなか色っぽいじゃないか、あ、あん、い、いい」
 乳首を指先で転がした由梨子は、そこから湧き上がる快感に思わず吐息を漏らした。
「うっ、うっ、つっ、あ、あん」
 もう一方の手を水着の中に滑り込ませて股間をもぞもぞと撫で始めた由梨子は、さらにその奥に指を潜り込ませていった。
「あ、あん、いい、うっ、うっ、うん、あ、あうっ、ううう、うあ」
 やがて絶頂に達する由梨子。
「はぁはぁはぁ……山村さんの体もよかったけれど胸が小さかったもんなあ。由梨子の体、なかなか感度がいいじゃないか。はぁはぁ、おっと、い、いけねぇ、あまりゆっくりしちゃいられないな。早いとこシャワーを浴びて由梨子の中に俺を定着させるとするか、あ、あん」
 汗とオイルでべたべたになった己の体をぎゅっと抱きしめ再び吐息を上げた由梨子は、水着のブラジャーもパンツも脱ぎ捨ててシャワールームに入った。
 シャワーの音と共に、再び嬌声がシャワールームに響く。
 やがてバスタオルを羽織って出てきた由梨子は再び黄色いビキニ水着を身につけると、未だ平べったくなったままベッドに横たわる聡子の体を見下ろした。
「ありがとよ山村さん。あんたのおかげで計画通りに由梨子の体に入ることができたぜ。さあて、それじゃあそろそろ元に戻してあげなきゃいけないな」
 由梨子は薄っぺらくなった聡子の体からレオタードを脱がせてシャワールームに抱えて行くと、カバンから取り出したボディシャンプーの容器に入った液体を振りかけた。そして彼女の体を泡立てるとシャワーで洗い流した。
 すると聡子の体はむくむくと本来の体の膨らみを取り戻していく。
 程なく聡子は意識を取り戻した。
「あ、あれ? あたしっ……ええっと」
 シャワールームの中で、ぼーっと床に座り込んでいる聡子に、由梨子はぺこりとお辞儀をした。
「どうもありがとうございました」
「え?」
「おかげ様で何だか体の中からいらないものが全部出て行ったみたいです」
「そ、そお」
 黄色いビキニ姿の由梨子はインストラクター・山村聡子にもう一度お辞儀すると、シャワールームを出て行った。
 その後姿を呆然と見詰める聡子。
「あれえ? あたしいつの間に此処に……。きゃ! 何で裸? 先生がお呼びだって郁男くんと一緒に地下室に下りて行って、ええっとそれからどうしたんだっけ」
 それから後の記憶がぷっつりと切れている聡子だった。


「さてと、ようやく由梨子の体を俺のものにすることができたな。毎日由梨子のマンションにチラシを入れ続けた甲斐があったぜ。この俺があのクラスのアイドルだった神田川由梨子か。この由梨子の姿で今度は……ふふふ、あいつに思い知らせてやるさ」
 ロッカールームの鏡の前で黄色いビキニ姿のまま腰に手をあてがい、ポーズを取りながらにやにやと笑う由梨子。その笑い顔はさっきまでの彼女からは想像もできないようないやらしさに満ちていた。由梨子はビキニを脱いで裸になると、にやつきながらロッカーの中にたたまれた由梨子の服の中からパンティを摘み出した。
「へへへ、これが由梨子の生下着か。どれどれ、由梨子のパンティの感じは、うん、何か妙にしっくりくるもんだな。このぴちっと股間に密着する感じ、なんか堪んないな」
 パンティを腰にぐっと引き上げぱっと手を離した由梨子はそれからブラジャーを取り出す。
「由梨子のブラジャーか。へへへへ」
 胸の谷間の下でパチっとホックを止め、くるりと回す由梨子。そしてカップの中に己の胸をかき入れる。
「柔らけ〜、これが俺の胸に付いているなんて、ほんと変な感じだぜ。これをあいつに揉まれたらどんな風に感じるのか、へへへ、楽しみだぜ」
 薄手のキャミソールを被り、生脚の上にそのままジーンズを履く由梨子。ジーンズはするすると何のストレスも無く彼女の太ももに、お腹に、そしてお尻にぴちっと密着して彼女のボディラインを一層浮き立たせる。
「う〜ん、我ながら色っぽいぜ。由梨子のこの胸、このお尻、この太もも、そしてここのアレ、今は全部俺のものか」
 ジーンズ越しに己の股間にそっと手を当て、ふうっと吐息を吐く由梨子。
「ふ〜ん、お腹は少し余っているかな」
 キャミソールをまくって両手で己の少しぷくっと膨らんだお腹の肉をぎゅっと摘まんだ由梨子は、にやっと笑った。
「さてと、それじゃあしばらく神田川由梨子に成りすましてやるか。それから、ふふふふ」


 着替えを終えロッカールームを出た由梨子は一階に下りると、既にエントランスルームで待っていた一平に近寄った。
「お待たせ」
「おう、随分長かったじゃないか」
「うん、まあいろいろとね」
「それでどうだったんだ。由梨子、お前続けてみる気はあるのか?」
「ふふっ、まあね。それよりねえ、一平君の家に連れてってくれない」
「俺んちにか、とっ散らかっているって来たがらないのに珍しいな。でも、まあいいぜ」
 そのまま二人はまっすぐ町田一平のアパートに向かった。
 先に歩く一平、その後ろを由梨子が含み笑いを浮かべながらついていく。
「ふふふふ」
「え? どうした?」
「ううん、何でもない、何でもないよ」


 やがて一平のアパートに着く二人。
「さあ入んな」
「うん」
「相変わらずとっ散らかっているんだが」
「そうだね……まあそんなことより、ねえ」
 一平の後ろから腰に両手を巻きつけて抱きつく由梨子。その胸が一平の背中に密着し、押しつぶされる。
 思わず頬の緩む一平。
「由梨子、どうしたんだ」
「一平くん、抱いて」
「ええ?」
「抱いてほしいの」
「だってお前、結婚までは駄目だって。それにうちじゃあキスしたことだって無い……う、うぷっ」
 突然、由梨子は一平の正面に回り込んで首に抱きついたかと思うと、その唇に己の唇を吸い付けた。一平の口が柔らかい由梨子の唇で塞がれ、甘い感触がそこから彼の全身に広がっていく。
「ん、んん〜」
「ぷはぁ〜。おいしい〜」
 上目使いに一平を見上げる由梨子。
「唇が触れるとぞくぞくして、舌を絡め合うととろんとした気持ちになって……女って気持ちいいね」
「は? お前何変なこと……」
「ねえ、早くしようよ。これをあたしの中に入れたらどんな風に感じるのか楽しみなんだ」
 首に絡めた手を解いて、今度は右手を一平の股間に這わせる由梨子。
「うっ、ちょ、ちょっと待て、お前いったいどうしたんだよ」
「ほらほら」
 チノパンの上から一平の股間のもこっとした膨らみを揉む由梨子。その手の動きに従って、一平のソコは段々と硬さを増し膨らんでいく。
「お前、今日はおかしいぞ。自分からえっちしたいなんて言い出したりそんな……ううう、うあ、由梨子、もうやめろ」
 チノパンのファスナーを下ろそうとする由梨子を一平は慌てて引き離した。 
「ふ、ふふふ、いいんだよ。俺がいいっていうんだから」
「は?」
「く、くっくっくっ」
「おい、由梨子」
「くあっははは、おかしい、くはぁ〜もう駄目だ、あっはははは」
 突然げらげらと笑い出す由梨子。それを一平は呆気に取られて見ていた。
「お、お前どうしたんだ」
「俺は由梨子じゃないよ」
「は? 由梨子、お前いきなり何を言い出すんだ」
「お前には由梨子にしか見えないだろうが、俺は由梨子じゃないんだよ。でもお前がよく知っている男さ」
「お、おとこ? 何を言い出すかと思えば、お前冗談きついぞ」
「ふふふ、信じられないのも無理はないよなぁ、この体は紛れも無く神田川由梨子本人の体なんだから。でも中身は由梨子じゃないんだよ。俺が彼女の体に潜り込んでいるのさ」
「潜り込んでいる?」
「そうだよ。あるものの力で俺の体をすっぽりと由梨子の体の中に入れているのさ。今の俺は俺の体の上に由梨子の皮を被っているようなものなんだ」
「お、お前、本当に由梨子じゃないのか」
「まだ信じられないかい。ふふふ、由梨子がこんなことをするかな?」
 一平のチノパンのボタンに手を掛けた由梨子は、一平があっと思うまもなくそのチノパンをトランクスごと引き下ろしてしまった。
 さっきから刺激を受け続けてすっかり硬くなっていた一平のペニスが、弾き出されるようにピンと天を向く。
 かぷっ
 由梨子はそれを口に含むと、ゆっくりと舌を使い始めた。
「ううう、う、うう、うっ、や、やめ、やめろ〜」
 股間の刺激が一平の中で快感となって広がっていく。
 駄目だ、これ以上は……もう我慢できない。
 一平が堪え切れなくなってそのペニスが一段と硬さを増し始めた時、由梨子は一平のペニスから口を離した。
「ふふふ、これ以上続けると出ちゃいそうだな。お前のを飲ませられるってのは御免だぜ。溜まったモノは俺のココに入れてくれよ。硬くなったソレをココに突っ込んで、そして思いっきり出してくれよ。思いっきりね」
 そう言いながら座り込んだ由梨子は両脚を大きく広げると、スリムジーンズの己の股間を上下にさすりはじめた。その股間にはうっすらとシミが浮かんできている。
「お前本当に由梨子じゃないのか? くっ、由梨子をどうしたんだ、何処にやった!」
「本物の由梨子かい。彼女の意識は俺の中、いや俺が被っている由梨子の肉体の中で大人しく眠っているよ。そして眠ったままの彼女の意識に俺の意識を被せてやってるのさ。だから今の俺にとって彼女の真似をするのは訳ない事なんだ。まあ今こして俺のやっていることは彼女の記憶に悪夢として残るかもしれないがな。自分から求めてお前に抱かれるという悪夢としてね」
「そんな、駄目だ。それじゃあ由梨子を抱くわけには……」
「いいのよ一平くん。あたしは一平君に抱かれたいんだから。ねえ抱いて」
 いきなりいつもの由梨子の口調に戻ったかと思うと、再び一平のペニスにそっと触れる由梨子。
「ほら、こんなに硬くなってる。これを入れたらとっても気持ちいいんでしょう。あたし早く一平君のコレを味わってみたいの」
「ううう、由梨子の真似してそんなこと……止めろ、お前、一体誰なんだ」
 ペニスを撫でられ、ぶるっと震えつつも必死で堪える一平。
「ふふふ、さっき会ったばかりじゃないか」
「さっき会っただと?」
「俺がエレベーターから降りた時、丁度君たち二人は山村さんと一緒にいたなぁ」
「それって……あ、あの時の。確かにエレベーターから降りてきた男と会ったことがあるって思ったけれど、でも誰だったのか思い出せなかった」
「悲しいね。俺のことを覚えていないんだ。同じクラスだったのになあ」
「同じ……クラス……待てよ……あ!」
「思い出したかい」
「中野……中野郁男か」
「ふふっ、そうだよ。君に散々虐げられた」
「俺に虐げられた? そんな、俺はお前を苛めた覚えはないぞ」
「ああそうかい。君はそう思っているのかもしれないけれど、俺は高校時代の恨み、一度だって忘れちゃあいないよ。そして君がクラスのアイドルだった神田川由梨子と結婚するって噂を聞いたとき、俺は決心したんだ。今こそ恨みを晴らしてやるってな」
「そんな、それって何かの誤解だ」
「もうそんなことはどうでもいいさ。俺は面白い物を手に入れたんだ。君への恨みを晴らすのにぴったりの物をね」
「面白い物? 恨みを晴らす? その答えが由梨子の体の中に入ることだって言うのか。由梨子には何の恨みもないんだろう。恨まれる覚えも無いが、俺への恨みを晴らしたいのなら、この俺を何とでもすれば良い。由梨子には手を出すな。すぐに由梨子の中から出て行け」
「おや、そんなことを言える立場じゃないっていうのがまだ分かっていないみたいだね。ふふふ、早くここにソレを入れてくれよ。君も由梨子とやりたいんだろう。彼女のほうはずっとセックスを拒否していたみたいだしなぁ。いいぜ、俺がこの体を君に味あわせてやるぜ」
「お前が中野だと、男とわかっていてオレがそんなことするわけないだろう。早く由梨子の中から出て行け、彼女を元に戻すんだ」
「何言ってるんだ、さっきから言っているだろう。今は紛れも無く俺が神田川由梨子なんだよ。この胸、この唇、そしてお前が入れたくてたまらないココ。そしてこの声も……ねえ一平くん、早くあなたのモノをあたしの中に頂戴」
「や、止めろお、それ以上由梨子の真似をするな」
「やせ我慢するなよ。やってみたいんだろう、入れてみたいんだろう。お前だってさっきからココに入れたくてたまらないんだろう。良いんだぞ、ほら、由梨子のアソコだ、もうさっきからひくひくして……ねえ、あたしが一平君に入れてって言ってるんだから、何の問題もないでしょう」
 スリムジーンズを脱ぎ捨てる由梨子。そして顕わになったシミの出来た己の白いパンティに手を突っ込む。
 もぞもぞとパンティの中で指が動く。
「あ、あはん、いい、あなたの大きくなったソレにさっき触ったら体がぞくってしたの。奥から溢れてきてヌルヌルなの……ねえ一平君、あたしどうにかなりそう、早くぅ。お願い、い・れ・て」
「くっ、ゆ、由梨子」
 パンティをも脱ぎ捨て一平に放り投げた由梨子は、その場に座り込むと大きく股を大きく広げ、己の股間を中指と人差し指で広げて見せた。顕わになった陰唇の内側のサーモンピンクの肉襞がひくひくと蠢いている。
「ねえ、一平君……ほら、あたしいいのよ、きて」
「や、止めろお」
 頭を振って叫ぶ一平。しかしその声はさっきよりも力がない。拒否しようとする彼の意思に反して股間のペニスはさっきからはちきれんばかりに膨らみ、ビンビンと脈打っている。
「ふふふ、そんなにチンポをおっ立てて言っても説得力無いよ。男の体っていうのはほんと正直だね」
 一平の硬くそそり立つペニスを再び握り締めてそっと先端を撫でる由梨子。
「うっ」
「ほらほら、こんなに硬くて大きい」
 妖艶に笑いながら握り締めたそのしなやかな指に力を入れたり緩めたりする由梨子。ひんやりとした手のひらの感触が、一平の理性をどんどんと奪い取っていく。
 い、入れたい……。
 その胸の中を今やすっかり覆い尽くそうとしているどす黒い欲望に、最早一平は抗し切れなくなっていた。ペニスの先端からつつっと先走りがこぼれ落ちる。
「う、うう」
「ほら、いいのよ、あたしの中にあなたのこの硬くて逞しいものを頂戴、ねえ一平君」
「う、うぉ〜〜」
 遂に我慢し切れなくなった一平は、由梨子に抱きかかった。
 そして野獣のように由梨子の体にむしゃぶりつく。その乳首にしゃぶりつき、己のペニスを由梨子の股間にあてがい、そして突き入れた。
 それはにゅるんと何の抵抗もなく、潤ったその中に入り込んでいく。
「あ、あん」
「う、うお、うぉ、うっ、うっ、うっ」
 一心不乱に腰を動かす一平。そして一平に抱きつき両手両脚を絡めながらも、由梨子は蔑みの目でその行為を見ていた。
「あっははは、堕ちたね。君の由梨子への愛情なんてその程度のものなのさ」
 一平はその言葉に答えることなく、ひたすら腰を動かしていた。
「うっ、くっ、くはあっ、あ、ああああ、いく」
「いいよ、いいよ、あ、あああ、あはん、あ、くる、くる、ああああああ」
 その瞬間、一平のペニスから溜まりに溜まった大量の精液が勢い良く吐き出された。由梨子の中に注ぎ込まれたそれは由梨子の膣を刺激し、彼女にも強烈な快感をもたらしていた。


「はぁはぁ、はぁはぁ」
「はぁはぁはぁ、良かったよ。噂には聞いていたけど、ほんと女のセックスって気持ちいいもんだね。君の突き入れたモノか俺の奥深くに触った瞬間、気を失うかと思ったよ」
「はぁはぁはぁ、く、くそう、由梨子じゃないって分かっていながら俺は……もう良いだろう。貴様、早く由梨子の体から出ていけ」
「ふふふ、俺を相手にえっちしておいてなに言ってるんだよ。お前はセックスさえ出来れば誰とでもいいんだろう。例え男の俺とでもな。あっははは」
「違う、俺は……違う」
 力無く答える一平。しかしその一平の声を無視するように、由梨子はこぽこぽと白濁した液が流れ出る股間をティッシュでふき取ると、投げ散らかしている己の服を着込み始めた。
「まだちょっと気持ち悪いけど、今日は失礼するよ。じゃあまたね、一平君」
「あ! お、お前」
「ふふ、しばらく神田川由梨子として楽しませてもらうことにするよ」
「そ、そんな……」
 バタンと閉じられるドア。
 その後姿を、一平はただぼーっと見つめることしか出来なかった。


(後編へ)


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