叶えられた願いⅡ(その3) 作:toshi9 挿絵:ふゆんさん 30分後、報告書を書き上げた美保子は人形を机の引き出しの中にしまうと、カツカツと ヒールを鳴らして一人署内を歩いていた。 (さて、終業時間までもう少し時間があるけど、何をしてみようか) その時タイトスカートに包まれた彼女のお尻がぶるんと震えた。 (うっ、何か急にもよおしてきたぞ) 慌てて手洗いに入る美保子。勿論入り口を確認して女子トイレに入る。 (ふふふ、ここが女の園。男の俺が堂々と中に入れるとはな) 洗面所では、数人の婦警が化粧を直している。 美保子は彼女たちに軽く会釈をすると、空いている鏡の前に立った。 その鏡に映っているのは制服姿の矢田美保子。 (これが俺、この美人の婦人警官が俺なんてな。ほんと不思議な感じだぜ) 明雄がにやっと笑うと、鏡のゆかりも唇を歪ませて笑っていた。 やがて洗面所内が美保子一人だけになると、美保子はシャツの上から己の盛り上がった胸をそっと撫で始めた。明雄にとって初めての不思議な快感がじわりと湧き上がってくる。 「あ……う、な、何か、気持ちいいぞ」 夢中になってシャツ越しに揉みながら美保子の胸の感触を味わう明雄。だが胸を揉み続ける明雄のお尻が再び震えた。 「おっといかん、しょんべんが先だ。しかし女としてしょんべんすることになるなんてなぁ。全くどんな感じなんだか) 胸から両手を離して個室に入ると、美保子はスカートを捲り上げてパンティストッキングと黒のショーツを一緒にずり下ろした。 「う~、黒いパンツか。俺がスカートを穿いて、こんなもの穿いてるなんて、なんかどきどきするなぁ」 便座に腰を下ろしてすっと両脚を広げると、その股間には勿論明雄の男性自身は無く、うっすらと茂った翳りしかない。 「こんな角度で女の股間が見られるなんて……って言うか、これって俺のものなんだよなぁ」 指先をそこに当てると、ふにっとした感覚が指先に触れる。 「はうっ、な、何か……変な感じだ」 指先でぐりぐりとその周辺をまさぐる。 「あ、あうん……あ、い、いい。気持ちいい」 さらに指先を使う美保子。その動きが少しずつ速くなっていく。 「あうっ、はぁはぁ、いい、いいよ」 まさぐる股の奥のほうから尿意とは別の我慢できないものが押し寄せてくる。 「はぁはぁ、はぁはぁ、なんかいい、いいよ……はぁはぁ。も、もっと、もっと」 指の動きが激しさを増すと共に、何かがこみ上げてくる。 美保子は、いつしか無意識に彼女の最も敏感な部分を集中して刺激していた。 「あうっ!」 その瞬間、びりっとした快感に包まれる明雄。 「あ、あひっ、いい、いく」 指の動きが激しさを増していく。 「い、いい、あ…で、出る」 こみ上げてきた快感が頂点に登り詰める。 それと共に抑えられない何かが股間の奥からあふれ出てようとしていた。 美保子がそこから指先を離すと同時に、口の開いたそこからはシャーっと勢いよく小水がほとばしり出ていた。 シャーーーー 「はぁはぁはぁ、はぁはぁはぁ、こんなところでオナニーしちまったよ。それにしても、はぁ~気持ちよかった。ふぅ、これが女の快感なんだな。全く女とセックスするといくいくってよがるのがわかる気がするぜ。おっと、俺も「いく」って言っちゃってたな」 絶頂に高まる時、自分も無意識に「いく」って言っていたのを思い出し、苦笑する美保子だった。 「それに絶頂感と一緒に溜まっていたしょんべんも一緒に出して……。ふふふ、しょんべんを出す開放感は女も同じだな」 オナニーの余韻に浸りながらトイレットペーパーをカラカラと引き出すと、美保子はそれを股間に当てふき取った。 「あれ、こんなことも自然に。いやほんと変な感じだぜ」 自分が人形の力で美保子に成りきっていることを改めて実感する明雄だった。 立ち上がってショーツとパンティストッキングをするすると腰に引き上げスカートをまくり上がったスカートを下ろすと、スカートの上から股間にもう一度手を当ててにやっと笑う美保子だった。 しかし個室から出てきた美保子はもう普段通りの美保子だ。まさか彼女が警察のトイレの中でオナニーしていたなどと思う者は誰もいない。 (ふふふ、それにしても女っていいもんだぜ。矢田美保子ちゃん、美人だし、もう少し君を楽しませてもらうとするよ) 美保子は鏡の前に立ちもう一度己の制服姿を見詰めると、軽く唇を歪ませていた。 やがて壁時計が17時を指し、勤務時間の終わりを告げる。 「お先に失礼します」 美保子は課長に挨拶すると、机の中から人形を取り出して胸ポケットに入れ、足早にロッカーに向かった。 「先輩、そんなに急いで、今夜って何かあるんですか」 後から追いかけてきたゆかりは、そう言って美保子を呼び止めた。女子寮でも美保子と同部屋のゆかりは、いつも彼女にべったりらしい。 「うん。ちょっと約束があるの。あなたは先に帰って頂戴」 「約束って」 「うん……大学時代の友人と会うことにしているの」 「そうなんですか……わかりました。それじゃあたし、先に帰ってますね」 ゆかりは少しだけ不満気な表情見せながらも、ぺこりとお辞儀して駆け去っていった。 (あのゆかりって子、ほんとかわいいな。うちの会社にはいないタイプだよ。初々しくって、 素直で、そして) 美保子は、いや彼女を乗っ取っている明雄は歩き出しながらにやりと笑った。 (このあたしにべったりで。ふふふ、大人しく待っているんだよ。ね、子猫ちゃん) ロッカーで婦人警官の制服を脱いで美保子の私服に着替えた明雄は、署を出ると街中をぶらぶらと歩き回った。 約束があると言ったのは勿論嘘だ。 明雄は矢田美保子として、一人の女として街中を歩いてみたくなったのだ。 (折角こんな美人になったんだ。街中を一人で歩いたら、どんな風に感じるだろう) そう思い立って繁華街をうろついてみた明雄だが、案の定、一人で歩いていると美人でスタイルの良い美保子はよく目立つのか、すぐに男に声をかけられる。 だが明雄はナンパしてくる彼らを片っ端から振っていった。 なかなか諦めないしつこい男には警察手帳をちらりと見せる。すると誰もがその前からすごすごと退散するのだった。 (へへへ、ざまあないぜ。全く男って馬鹿だな。それにしてもなんていい気持ちなんだ) 美人になって男を振る。これだけでも普段絶対に味わえない心地良さがあるのに、さらに警察権力をもちょっとだけ振るってみるのだ。それは明雄にとってえも言われぬ快感だった。 しばらく歩いていると、ブティックのショーウィンドウが目に入る。 (せっかくこんな美人になったんだ。もう少し垢抜けた服を着てみようかな) 私服とは言え、今着ている美保子の服は白いカーディガンと膝下丈の紺色のスカートという極めて地味な格好だ。 好奇心に捉われた明雄は、ふらりと中に入ってみた。 「いらっしゃいませ、何かお探しですか」 にこにこと女子店員が歩み寄って来る。 「あ……え、ええ」 「お気に召したものがありましたら、どうぞお気軽にご試着なさってくださいね。ほら、こちらなんか如何でしょうか」 そう言いながら店員が明雄に、いや美保子に自分で選び出した服を宛がう。そして半ば強引に店員に促されながら、明雄はそのミニドレスを手にフィッティングルームに入った。 フィッティングルームの中には全身の映る大きな鏡が据えつけられている。 そこに映っているのは小坂明雄ではなく、矢田美保子。 明雄はどきどきしながら、慣れた美保子の手つきでカーディガン、ブラウスと着ている服を脱いでいった。 き、きれいだ。 スカートのホックを外し、ファスナーを下ろすと、スカートがファサリと床に落ちる。 明雄が目線を上げると、鏡にはブラジャーとショーツそしてパンティストッキングを穿いているだけの姿になった美保子の見事なプロポーションが晒された。 「これが俺、いいえ、あ‥た‥し」 持って入ったブランドもののミニドレスを試着すると、美保子の長い脚が一層映える。光沢のある生地の胸元は窮屈そうに盛り上がっていた。 くるり鏡の前で回る。 ひらりとスカートの裾が舞い、穿いているショーツがちらりと顔を覗かせる。 (うふふ、下着だけの時よりえっちだ) 「如何ですか」 店員が声をかけながら、フィッティングルームの扉を開けた。 「まあ、とってもよくお似合いですよ」 「うん、素敵ね。ねえ、このまま着ていっても良いかしら」 「はい、勿論大丈夫ですよ。お買い上げありがとうございます。お値段は56000円になります」 値段の高さにどきっとしたものの、「どうせ自分の金じゃないんだし」と悪びれることなく財布から美保子のカードを取り出して店員に渡す明雄だった。 店を出ると、フレアのスカートの裾をひらひらと翻して街を歩く美保子に一段と男の視線が絡みつく。 そう、明雄は脚に、胸に熱い視線を感じていた。 (ふふふ、この見られてるって感じ、何か病み付きになりそうだぜ。そうだ、もっといろんな女の子になってみるのも面白そうだな。待てよ、矢田美保子のまま他の子に人形を触らせたらどうなるんだ?) ハンドバッグに入れた人形を取り出すと、明雄はじっと見詰めた。 (そうだ、寮に帰ったら試してみるとするか) ゆかりのあどけない顔を思い出し、美保子の顔でくしししと笑う明雄だった。 (続く) |