『他人の妹を頂く方法』
 作:嵐山GO


第2章 思惑(その4)

「で、どうやって探す?薬の時間を考えると、あてもなく探すのは
困難だぞ」
「いや、さっきの説明が悪かったかな…薬を飲んで移動している
時間は問題ないんだ。時間の制約が始まるのは、
とり憑いてからだから」
「そうなんだ。じゃ薬を持ち歩く必要はないわけだな?」
「うん。ここで飲んで身体から抜け出し外に出て探す。
事が済んだら又ここへ帰ってきて自分の身体に戻る」

「オーケー。じゃあ、始めようか。服は脱ぐのか?」
「いや、脱がなくてもいいよ。薬を飲んだら、どこか身体を
休める場所に横たえておいて。すぐに抜け出せるようになる筈
だから」
 そう言うと一哉は、研究室代わりに使用している自室へ向い、
そこの冷蔵庫から昨夜のフラスコを取り出し、持ってきた。

「これだよ。さ、飲んで。あ、グラスに入れた方がいいかな?」
圭介が慎重にフラスコを受け取ると、グラスに注ぎながら質問
した。
「どれだけ入れるんだ?」
「量はあまり関係ないんだ。飲んだら体内で分裂が始まるから。
あまり少量でも仕方がないけど適当で構わないよ。それに
沢山飲んだからといって時間が延びるという事はないからね」
「分かった」

 二人はほぼ同じ量をグラスに注ぐと、向かい合って言った。
「乾杯!上手くいけばいいな」
「乾杯!大丈夫。きっと上手くいくよ」

 ゴクッ
  ゴクッ

 二人は身体が重ならないように距離を保って畳の上に寝そべった。
「おおー!凄い!本当に身体から抜け出せるぞ。なぁ、一哉、
俺の声は聞こえるのか?」
「ああ、聞こえているよ。オレだけにはね。さ、じゃあ行こうか」
「うおー、すごい、凄い。まるで透明人間だな。これで飛べたら
最高なんだけどな」
「あはは、楽しそうだね。でも今からもっといい事があると
思うよ」
「そうだな、まずどこに行くんだ?」
「ちょっと離れたところに大きな公園があるんだ。週末は子供達が
沢山遊んでいるから、まずはそこに行ってみよう」
「よし、行こう」
 二人は壁もドアもすり抜けて、外に出ると真直ぐに自分達の足で
公園へ向った。

(続く)


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