『セーラー服と水鉄砲』
 作:嵐山GO


第4章 やっぱここは「か・い・か・ん(快感)」でしょ

 姉の美鈴は両手を合わせると、妹にこう言った。
「喋り方もそうだが…この格好といい…どうにも
慣れないのだ」
「大丈夫よ。お姉ちゃん、似合ってるし可愛いよ」
「お前はいいよな。若いからか順応が早くて」
「ママたちが帰ってくるまでには慣れそう?」
「いや、それは問題ないんだ。一番の問題はお前という
オレの存在を知っている人間の前で振舞う事にまだ慣れないのだ」
「うん、それ分かるよ。男なのに女の振りして変態とか思われるのが
嫌なんでしょ?」
「それを、お前が言ってんじゃねーよ。立場は同じだろうが」
「えへへ。それで、お姉ちゃんの頼み事ってなーに?」
 少しだけ勝ち誇ったように笑みを浮かべ聞いた。

「やはりな…あれだ。酒が飲みたい。ビールでいいから…
飲まずにはいられないんだ」
「ええーっ、ビール?私たち、未成年者だよー」
「別にお前は飲まなくてもいい。オレは少しだけアルコールの
力を借りないと、到底無理だ」
「やだもん。お姉ちゃんが飲むなら私も飲む。でも、この身体…
お酒に対して免疫あるのかなー?」
「無くても構わないさ。早く酔えるなら、それに越したことは無い」
「そっか。お姉ちゃん、あったまイイー。じゃ、私持ってくる!」
 おもむろに立ち上がるとスカートの上に、こぼしていた菓子の
粉を払う。
「ある場所、知ってるのか?」
「うん!冷蔵庫に入ってた。パパが毎晩飲むみたい。待っててね」
 美月は軽やかにスカートを翻し部屋を出た。

「ふぅー…安のヤツ、すっかり女に成りきりやがって。あいつには
羞恥心というものは無いのか?」
 相方がいなくなり1人になったところで、立ち上がり鏡に自分の
姿を映す。
「オレは今、女なんだよなー…しかし本当にこれで良かったのか?」
 独り言を漏らしながら、ふと横を見ると大きめの熊の縫いぐるみが
目に入った。
 特に何か目的があった訳でもなく、ごく自然にぬいぐるみを
手に取ると再び鏡の前に立つ。
「これがオレか…確かに可愛いな…」
 そこには熊のぬいぐるみを、大切そうに抱えた美少女が
憂いをもって佇んでいる。

ガタンッ!
 突然、ドアが開き美月が入ってきた。
「うわっ!びっくりしたー!お前、ノックぐらいしろって」
「だってココは私の部屋だもーん。それよりお姉ちゃん、何してんの?
あ…その、ぬいぐるみ…」
「あ、いや…これは別に…あは、あはは」
 恥ずかしそうに慌てて後ろへと隠した。
「その熊さん、覚えてる?お姉ちゃんが私の誕生日にくれたんだよ。
もう随分前だけど」
「あ、え?そうだっけ?あ…思い出した。美月が10歳になった時だ。
今だに大切に持ってたんだ。前に部屋に入れてくれた時には
無かったと思ったけど」
「しばらく押入れに仕舞ってあったみたい。また最近出したんだね。
ほら、それよりビール持ってきたよ。冷たい内に飲んじゃおうよ。
つまみのスルメも持ってきたし」

続く



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