『セーラー服と水鉄砲』
 作:嵐山GO


第3章 部屋と制服と私?

「美月、あんた…包丁なんか持って、何やってんのよ!」
 男はさっそく姉の脳内を探り妹の名前を探り当てると、とっさに言い
放った。
「お姉ちゃん。おかえりー。あー、これ?私の部屋にあったんだけど
危ないから今、台所に戻すところだったの」
 流暢に女言葉で話すが、その内容から察するに間違いなく妹では
ないと確信した。

「安っ!安なんだな?上手くいったのか。なんだ、バカヤロー。
脅かしやがって。それにしても随分と早かったじゃねーか」
「いやー、それがですね。この女、あっさりとこの身体、明渡し
やがりましたよ。よっぽど今の自分から逃れたかったんでしょうね」
「おお、そいつはラッキーだったな。オレの方は激しく抵抗されて
参ったぜ」
 素に戻った二人は再会を喜び合いながら抱き合った。

「で、兄貴、どうします?とりあえず俺の部屋にでも行って、今後の
事でも話し合いますか?」
「おっと、そうだな。そうしよう。オレは、いや…姉の方は暫く妹の部屋に
行ってないみたいだから心の奥底で行きたがってるのが分かるんだ」
「じゃ、そうしますか。こっちです」
 姉は靴を脱ぎ、鞄を手に階段を上がっていく。

「ここがオレの部屋…あっちの奥の部屋がお前の部屋だな。鞄を置いて
からスグに行くから先に自分の部屋に行って待ってろ」
「へい。あっ、それじゃ下から何か冷たい飲み物でも持って来ますよ」
「そいつは有難いな。どうも先程の熱い感覚が、まだ残っていて
喉が渇いてたんだ。冷蔵庫に何が入っているか知ってるか?」
「ええ。さっき、こいつがキッチンに包丁を取りに行った時、興奮して
いたのか冷蔵庫を開けてジュースを飲んだらしいんすよ。まだボトルに
沢山残ってますから持ってきます」
「ジュースか…ま、仕方ないな。まさか、この身体で真っ昼間から
ビールというわけにもいくまい」
「へへへ。酒での祝杯はまた後日という事で」
「うむ。じゃ後でな」
 
 小柄で華奢な妹の身体を乗っ取った安は、再び階下へと向かう。
 一方、均整の取れた姉の身体を得た40過ぎの中年男は、
自分の部屋へと入っていった。

続く



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