『セーラー服と水鉄砲』
 作:嵐山GO


第1章 始めの始まり(その2)

「テスト…オレ達の行い次第で死後の行き先が変わると
いうわけか…」
[貴方たちは成仏できないのです。家族とも縁を切り、
殺害され死体も見つかる事はなく、お葬式をあげて
貰う事すら出来ない。誰にも弔ってもらえない]
「だから、こんな所に寝かされているのか…」
「他にも似たような境遇の者がいるんじゃ?」
[いますが貴方たちには見えません。見えるのは自分
自身と相方のみです]

「ここから出て成仏するには…」
[皆を救い、妹も改心させ、家族を平和に導くのです。
出来ますね?]
「もし断ったらどうなるんですかい?」
 安が口を開いた。
[ずっとココにいる事になります。行く当ても目的も見るもの
すら無く成仏出来ない魂として、ここで永遠に
さ迷い続けるのです]
「うーむ…ではさっき、妹が改心するまで、といったような
言い方をしてましたが、それはいつまでなんでしょう?」
 今度は兄貴分の方が聞く。
[そうですね…中学を卒業して高校に入るまででしょうか]
「妹はまだ中学生!?そうか…反抗期って言ったもんな。
兄貴、どうします?」
「だがオレ達が姉妹として仲良く振舞ったとしても、
数年後に抜け出たんじゃあ又、喧嘩するんじゃ
ないんですか?」
[それは大丈夫でしょう。貴方達の行動は毎日、
脳内に刻まれていきますから抜けた後も、さぞ自分達が
今まで生活していたかのように普段の平穏な生活に
戻れるはずです]

「うーーーん…しかしまだ問題があります。オレ達は
男だから今から女になれと言われても難しい
…つまり親や友人には、すぐにバレるでしょう」
[それも先程の質問と同様です。貴方達が姉妹に
入り込めば脳の記憶を手繰れます。喋り方、好きなもの、
嫌いなもの、それに癖や能力など全て本人と寸分
変わらず行動できます。もちろん嫌いだったものを
貴方自身が好きなら、そのように行動する事も可能です]
「つまり何でも思いのままってことか…それならやれるか…」
「やりますか?兄貴」
「そうだな。こんな虚無な世界に幽閉されているよりは、
よっぽどましだ」

[どうやら決心がついたようですね。では、さっそく向かい
ましょうか?]
「え?もう…ですか?」
[妹の方はすでに帰宅し、台所の包丁を握って自室で
姉の帰るのを待っています。その姉ですが下校の
バスから降りて、自宅に向かって歩いています。
もう時間が無いのです]
「分かりました。安、聞いたな?これも人助けだ。町の
平和を守るために向かうぞ」
「オッケーです。でも随分と小さな人助けに、なっちまい
ましたね」
「何事も最初は小さな事からコツコツだ。それに
生き返れるなんて嬉しいじゃねぇか」
「それもそうですね。兄貴、またこれからよろしく、
お願いします」
「おうよ。こっちこそ、また頼むぜ」
[では行きますよ。こちらです]

 2人の元新米ヤクザは声に導かれるまま、目的の
地へと向かった。
 それは2人にとって、新たなる生活の始まりでもあった。

続く



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