『肉体交姦』
 作:嵐山GO


第8章 魔女の食材

 ミーン、ミーン、ミーン…
 朝からセミの声が、寝ている俺の鼓膜に容赦なく突き刺さる。
「まったく、うるせーなー、寝られやしない」
 やれやれと上体を起こし、机の上の時計を見た。
(なんだよ、まだこんな時間か…)
 短針は8を指していたが、外ではすでにうだるような熱と光が
充満している。
「喉が渇いたな…冷たいものでも飲むか」
 オレはTシャツにトランクスという格好でリビングに向った。

「あ、お兄ちゃんだ! おはよう」
「なんだ理沙、今日は学校なのか?」
 妹は制服姿でトーストを頬張っていた。母親は冷蔵庫を飲み物を
用意している。
「うん。今日は登校日なんだ。遊んであげれらなくてゴメンネ」
「ばーか。お前なんかいなくても全然平気だよ。あ、母さん、
オレにも冷たいものくんない?」
 イスを引いて妹の前に座った。
(とは言うもののさて、今日はどうするか?お金もこの前の旅行で
底をついてるしなー)

「はい。アイスコーヒーよ。お兄ちゃんは今日はバイトはないの?」
 母親がオレに聞いてきた。当然の事ながらバイトのことは詳しく
話していない。
「え? あ、うん。前に話さなかったっけ?今、やってるのは
レポートの仕事だからさ。家にいても出来るものばかりなんだよ」
「あら、そうなの? 母さんは今日、お休みだけど昨夜遅くまで
起きていたから、この後、また寝るんだけどいいかしら? 
お腹が空いたら冷蔵庫に入っている物を暖めて食べて頂戴」
「うん、分かったよ」

「お母さん、言ってきまーす。じゃあねー、お兄ちゃん」
「ああ、美保子ちゃんにヨロシクな」
 妹は鞄を手にスカートを翻して、リビングを出て行った。
「じゃあ、私ももう寝るけど、出掛けるんだったら玄関の鍵は
掛けてね」
 ソファに座ってテレビを見ていた母親も、手櫛で髪をとかしながら
リビングを出た。
「分かってるって。おやすみー」
 オレは母親の後ろ姿を見送ると、足下に長い黒髪を数本発見した。
(これって、母さんの髪の毛…か?)
 オレは辺りをゆっくりと見回して、似たようなウェーブのかかった
長い髪をさらに数本かき集めた。
(この髪の毛を使えば母さんに化けることが出来る…どうしよう? 
だが果たして何が出来る? でも…やるんだったら、
今日しかない…か)
(レポートに追記出来れば所長も喜ぶよなぁ…)


 『人体記憶交換機』を所長に返す約束の日まで、あと10日を
切った。
「とりあえず部屋に戻ってゆっくり考えるとするか。なんつっても
母親だからなー)
 オレはグラスに残ったアイスコーヒーを一気に飲み干し、
リビングを出た。



「さてと」
 『交換機』を手にベッドに座ってはみたものの、いまだ実行に
踏み切れないでいた。
「たぶん失敗はないと思うけど…問題は、母親の身体を使って何を
するかだよ…」
 呟きながらも、先ほど入手した髪の毛はすべて装置のポケットに
入れ終えた。
「下手をして近所の知り合いにでも見つかって、話しかれたりでも
したら大変な事だぞ」
 
 言いながらも電源のスイッチを入れ、メモリーの内容を変更する
作業に入った。
 マニュアルは熟知したつもりだが初めての作業には緊張が走る。
 妹の記憶データを「メモリー1」に残して、新たに「NEW」を
セッティング。
 数分後、2人分のDNAデータを保存し終わり、一旦メイン
スイッチを切った。
「ふぅー、そろそろ母さんも寝入った頃か…どうしよう…危険は
伴うが、所長もデータは多いほどいいと言っていたし…オレだって
他人の美保子ちゃんが不可能なら、理沙以外で試してみたいのは
本音だけど」
 
 時計に目を移した。母親がリビングを出てから30分以上経過
している。
「やるか。じゃあ、やるとして何をする? どこかへ行くのか?」
(母さんの身体で自慰でもするか? それが最も無難なところだが、
今更そんなんじゃ面白みもないし触手も動かないなー。外に
出るか…でも、やっぱヤバイよなー)

 結局オレは遠くまで足を延ばすことで決着し、母親の寝室へと
向った。
(ま、何事もチャレンジだな。誰かに声を掛けられても聞こえない
フリでもして逃げるか)
 コン、コン
 一応、寝室のドアをノックして耳を当ててみた。返答はない。
 理沙もそうだが、ウチの家族は一旦寝入ると少々の事では、
まず起きない。
(地震や家事が起きたらそうするんだろう?)
 まるで他人事のようにいってみたが、間違いなく自分も
同レベルである。
「母さん、ちょっとだけ身体を借りるよ」
 部屋に入ると、わざと声を出しながら妹の時と同様の手順で
機械を作動させた。
 予想通り何も問題なく身体の交換を終えると、さっさと部屋に
掛けてあった外出用のワンピースを着て部屋を出た。
 
 何だかとてつもなく悪いことをしたような気分で家を出ると、
さっさとバスに飛び乗った。
 母親がいつも使っているトートバッグに自分の財布を投げ入れた
ものの、すっぴんで出て来てしまったことに気付き躊躇した。
(だが引き返したところでオレには化粧なんか出来ないし…
ま、いっか。普段から母さんは薄化粧だし、逆をいえばこの方が
バレにくいかもな)
(さて、主婦に一番無縁な場所といったらウチの『大学前』かも。
乗り継ぎが面倒だけど、その分、安全だろう)
 
 結論を出すとオレは座席に座り直り、努めて女性らしく振舞った。

 大学に着いたのは正午近かった。
「腹が減ったな。飯でも食うか」男言葉を発してから、しまったと
思い慌てて口を押さえた。
(お、行きつけのレストランがやってるな。あそこでいいや)
 オレは学食の日替わりメニューが気に入らない日は、いつも
その店を使っていた。
 この日は当然のことながら、大学が夏休み中なので、さほど混雑
していない。
 適当な場所を見つけてテーブルにつき、無難なものを注文して
辺りを見回しながら時間を潰した。

(こんな所じゃ何のドラマも生まれないだろうな…ましてや休み…
ん、あれは?)
 テーブルを幾つか挟んだ先に、見覚えのある女性の横顔が
見えた。
(大内…じゃないか? 何をやってるんだ?休みに大学まで来て)
 自分の事はさて置いて、その視線の先で食事をしていたのは
誰あろう、この春「面白みがない」と言って自分の事を振った
大内みずえだった。
(男と待ち合わせかな? こりゃ、期待出来そうだな。後でも
尾けてみるか)
 そんなことを考えていると注文した品が運ばれてきた。大人の
女らしくおしとやかに食事をしてみるつもりだったが、向こうが
食べ終えそうだったので、結果的にはいつも以上の速さで
食べることとなった。

 大内が立ち上がったのを確認すると、自分も立ち財布を握って
レジへと向う。
(当然だが、後ろにぴったりと付いてもバレないよな)
 彼女に続いてオレも支払いを済まし、店を出ると慣れない尾行を
始めた。
(まてよ…大内の待ち合わせの相手なんか見たって面白くも何とも
ないぞ。せっかくバレない姿なんだから何か悪戯してやろう)
 大学から離れた彼女は急に立ち止まって、ハンドバッグから
携帯を取り出し何やら確認している。
(ん? こんな場所で待ち合わせなんて妙だな?)
 自分も立ち止まり、物陰から暫らく様子を窺っていたが、オレは
急に思い立ち声を掛けた。

「ねえ、そこの貴方」
「えっ、はい?私…ですか? 」彼女は驚きを隠せない様子で
振り返った。
「ええ、そう貴方。私は駅前で占いをやってるんだけど、貴方に
すごい不吉な影が見えたので声をかけたのよ。ああ別に変な
宗教とか商品の勧誘じゃないから安心して」
「あ…はい…」口からでまかせを吐いたが、やはり大内は
不審の目でオレを見ている。
「貴方、学生よね。198X年生まれ、山羊座、血液型はO型、
兄弟は3つ下の弟が一人、どう?」
「どうしてそれを?」大内の表情は疑いから、再び驚きへと
変わったようだった。
「私は大体の人の過去や未来、身の回りのことを見通すことが
できるのよ。貴方、ずばり言うけど、近いうちに大変な事故に
遭うわね」
 
 オレは彼女のプロフィールを列挙しつつ、危険な予言で
反応をみた。
「私、そういうのあんまり信じないんですけど…でも、事故って
何ですか?」
「別に信じなくてもいいのよ。ただ私は貴方の危険な未来が
見えたんで、ちょっと声を掛けたくなっただけ。せいぜい身の
回りには気をつける事ね」
「あ、はい。ありがとうございます」
 大内は不安を隠せないながらも今のところ、関わりたくは無いと
いうのが本音のようだ。

「じゃあね、さようなら。あ、そうそう、お尻の痣(あざ)だけど
残しておいた方がいいわよ。下手に美容外科なんかで取り除いたり
したら、貴方の未来、取り返しのつかない事になっちゃうから」
 オレは彼女に背を向けつつ、付き合っていた時に聞いていた
悩み事をさらりと加えた。
「あ、ちょ、ちょっと待ってください! どうしてその事を? 
痣の事は私以外は両親くらいしか知らないはずなのに…」
 大内はすがりつくように、オレの腕を掴んで問うた。
(いいぞ。こいつ、オレに話したことを忘れているようだ)
「何でも見えるのよ。貴方のこと、何でもね」
「そ、そんな。あ…あの、さっき言ってた大変な事故って
何ですか? 私、どうすれば助かるんでしょうか? 
お願いします! 助けてください。お金だったら払いますから!」

 人に暗示を掛けるには、その人間の隠し持った事実を突きつけて
脅してやればいい。やがて驚きが恐怖へと変わる。そのタイミングを
見計らって救いの手を差し出せばよいのだ。
「お店の外では、お金なんかいらないわよ。それより貴方、私を
信じられるわね?」
「信じます、信じます。もちろんです。何でも言う事を
聞きますから、これから起きる事故について教えてください」
 大内はさらに哀願するようにすがりつく。ここまでくれば、
もう大丈夫だ。
「私は貴方の生まれ育った過去から、これから先に送る未来の
事まで何でも見ることが可能よ。貴方が何歳で誰と結婚するか、
それとも何歳まで生きられるのか知りたい?」

「そんなことまで分かるんですか?」
「分かるわよ。何でも」
 もちろんでまかせである。オレは彼女の頭に手を置き、答えた。
「では…私は、どうすればいいんですか?」
「そうね。悪災となるものを祓(はら)ってあげたいけど、
ここじゃ無理ね。貴方の部屋でもいいけど二人っきりになれる
場所なんてあるかしら?」
 オレは頭の中でイメージを働かせながら、どうすればこの女を
陵辱できるか考えつつ、話しを切り出した。

「私の家は無理です。今日は親戚が来ていて、今もそれで時間を
潰していたところなんです。ああ、どうしよう」
 大内はかなり動揺している。そりゃあそうだろう、刻一刻と自分に
危険が迫っているというのに、それを祓ってもらう場所が
無いのだから。
「ホテルに行きましょうか?」
「え? ホテル…ですか?」
「そう。たまにだけどお客さんとホテルで待ち合わせすることも
あるのよ。プライベートなことだし、お祓いするのも
見てあげるのもホテルなら完全に仕切られていて安心でしょ?」

「あ…そうですね、言われてみれば」
(よし、よし。このままホテルに連れ込んで思いのまま苛め抜いて
やるか)
「そうと決まったら急ぎましょう。私もこの後には別の約束が
入っているの」
「はい。本当にすみません、私のために。どうかよろしくお願い
致します」
 オレ達は大通りに出てタクシーを止め、乗り込むとホテルへと
向った。

 10数分後、目的のホテルに着いた。
「あの…ここって、ラブホテルじゃないんですか?」
 彼女は料金を払い終わると、建物を見上げながら言った。
「そうよ。こういう所が一番人目につきにくいし、このホテルは
色々と道具が揃っていて、特に貴方のような厄介なモノを
祓うにはうってつけなのよ。それに何と言っても、ここは
同姓同士で入店できるのがいいわね」
 
 ここは結構、マニアックなホテルとしてあの辺りでは有名で
SMグッズを初めとする何やら怪しげな変態用品がたっぷりと
揃っているらしい。
(前から一度入ってみたかったんだよな。まさか、こんな形で
希望が叶うとはな)
 大内はここでもホテル代金を払った。だが部屋を決めたのは
オレだ。
(一番、陵辱色の強そうな部屋を選んでやったぞ。さぁー、
楽しみだな)

  エレベーターを降り、部屋のキーロックを外して中に入った。
 室内は思ったより暗かった。最初、部屋の照明が消されて
いるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
 履物を脱いで、数歩進むうちに目も慣れてきた。
 幾つかに分けられた部屋にはそれぞれの楽しみ方があるようで、
拷問部屋とも監禁部屋とも受け取れる。

「なんだか不気味な部屋ですね」
「そうね、世の中には色んな趣味の方が沢山いらっしゃるから。
さ、こっちに来て」
 不安に駆られた彼女をオレはベッドに誘導した。
「服を脱いで。裸になるのよ」
「え? 裸に、ですか? 下着は着けてちゃ駄目なんでしょうか?」
「そうよ。あまり時間がないから早くしてね」
 オレは急き立てる事によって、彼女に拒絶する発言を
許さなかった。

 生まれたままの姿になった大内をベッドにうつ伏せに寝かせると、
オレは背中に手を当てながら言った。
「あー、やっぱりね。これはかなり酷いわ」
「ええっ! あの、何が原因なんでしょうか? 私、さっきから、
そればかり気になって」
「貴方、春先に同い年のボーイフレンドがいたわね。その子と
別れて今は別の子とお付き合いしているんでしょう?」
「あ…はい。前の彼とは、ちょっと話が合わなくて。まさか、
それが原因なんですか?」
「そうじゃないけど、でも以前の彼は、結構いい運気を持っていた
みたいね。でも問題は今、付き合ってる子だわね。名前は何て
言うの?」

「谷本純です。でも彼が何か…?」
「谷本純…そう…」
(なんだ、こいつオレを振ってあんな奴と付き合っているのか。
よし次のターゲットは谷本だな)
「…その子、直接会ってみないと何とも言えないけど、ひどい
悪災を抱えてるわね。貴方はきっとその子とお付き合いするうちに、
貰っちゃったのね」
「そ、そうなんですか!? それじゃあ、別れればいいんで
しょうか?」

(こいつ又、別れることに直結しやがった。ま、それでもいいが、
ここはもう少し苛めてやるか)
「別れるのはいいけど、貴方に憑りついた悪災はそのままよ」
「では、お祓い…出来ますか?」
「もちろん。それにしても最初の子は勿体ないことをしたわね。
貴方にとっては、最高の運気を運んでくる要素をたっぷりと
持った子だったのに。でも、もう駄目ね。運気が変わったから
今更、よりを戻しても手遅れだわね」
「そう…なんですか…」
(フフフ、後悔の念に押し潰されるがいいさ。オレ様を振った罰だ)

「さあ、じゃあ時間も無いことだしお祓いを済ませちゃいましょう。
浴室で水を浴びて身体を清めてきてちょうだい」
「あ、はい。わかりました」
 大内は裸のまま歩き出し、浴槽を探し当てると暫らくして
シャワーの音を響かせた。
 その間、オレは各部屋がどうなっているのか見学し、置いてある
道具類などを物色した。
「ククク…これは使えそうだな」
 直径7、8センチはあろうかという真紅のロウソクを手に取った。
 他にも、幾つもの長いヒダに分かれた皮製の鞭、極太バイブに
双頭ディルドー、さらに手枷、足枷、大小の浣腸器具類など普段は、
お目にかかることなど無いものがズラリと並んでいる。

「身体を清めてきました」
 大内は洗ってきたとは言わず、清めてきたと言った。すっかり
オレを信じているようだ。
「いいわ。じゃあ又、そこに横になって。今度は仰向けでね」
「はい」
 薄明かりの中、彼女は言われた通りベッドに仰向けになって寝た。
「じゃ、これを付けるわね。じっとしててね」
「なんですか? それ」
「これ? これは枷といって両手両足をベッドに固定するものなの。
別に痛くないから平気よ」
 
 オレは手足に順に一本づつ枷をはめ、大の字になるよう彼女を
ベッドに張り付けた。
「ああ…なんだか恐い」
「別にメスを使って手術するわけじゃないんだから、それくらいは
我慢して。大きな事故に遭って病院送りになれば、それこそ
大手術よ。それで一生を終わりたくはないでしょう?」
 オレはそう言いながら傍らに隠してあった、先程のロウソクを
取り出し火をつけた。
「え? あ、あの…それはもしかして」
「そうよ。まずはロウソクの熱を使って悪霊を炙(あぶ)り出して
あげる。ちょっと熱いかもしれないけどすぐに終わるから。
なんだったら目を閉じていてもいいわよ」
 オレは勢い余って『悪霊』という単語を使ってしまった。
ヤバイかなとも思ったが、ここまで来たら今更、何を言っても
同じだろうと開き直った。


ジジジジ…
 太い芯はしだいに蝋を吸い上げ、炎の勢いを増していく。
 たっぷりと時間をかけて蝋はついに溢れ出し、彼女の乳房の
上へと垂れた。
 ボトッ、ボトッ…
「ああっ! 熱い!」
 彼女はベッドの上で、そのしなやかな身体を捻じ曲げながら、
白肌を焼く熱に堪えていた。
「我慢しなさい! こんなことで根をあげてどうするの」
「あー、あうぅ、わかりました。何でも言う事を聞きます…
だから、お願いします。あー、ううっ」
 両目に涙を溜めて訴え続けている。
(凄い! 凄すぎる。これは何て楽しいんだ。興奮するぞ)
 蝋は胸から、やがて腹そして陰部へと移り、流れ、固まって
いく。
 それはまさに芸術的な美しさをも含んだ淫靡な彫像のよう
だった。

 相当量の蝋が費やされた。オレは時間を忘れ、その新しい遊びに
夢中になっていた。
 ふと我に返り、固まった蝋を剥ぎ落とすと素肌に赤い斑(まだら)
模様が残っている。
(いいぞ、いいぞ。興奮するなー。無性にセックスしたくなって
きた。
だがこの身体では無理か…さて、どうする?)
 自分の股間がぐっしょりと濡れているのが分かる。太股を糸を
引くように愛液が流れて止まらない。
(ヤバイ、身体が火照ってきた。何か入れるものが欲しい…
あれは? バイブ? だが、あれを自分だけに入れたんでは大内を
苛める事にはならない。おお、そうだ! あれを使うか)

オレは目当てのモノを棚から取り出して、大内に見せた。
「これが何かわかるかしら?」
「それって、バイブ…ですよね?はっ!もしかして…無理です! 
絶対無理! そんな大きいの入りません!」
 大内は早くも察したようで、拒絶の様相を隠せないでいた。
(おお、いいぞ。いいぞ。その顔だよ。その顔が見たかったんだ)
 手に持ってきたのは双頭型のバイブで長さも、太さも通常の
一回り以上はある。
 U字型になっており中心に芯が一本通っているが、シリコン製で
出来ていて軟体動物のような感触を持つ。

「大丈夫よ。これさえ塗っておけばね。すんなり入るわ」
 オレはバイブと一緒に大きめの瓶を一つ持ってきた。それには
『局方白色ワセリン』と印刷されたラベルが貼ってある。
(こんなもの使うのは初めてだけど、別に害のあるものじゃ
ないだろう。ワセリンというくらいだから、たぶんこんな時に
使うんじゃないか?)
 オレは服を脱ぎ、瓶の蓋を開けて3本の指にたっぷりと掬い、
バイブの胴体部に塗りたくった。
 そのまるで強度を持ったナメクジのようにぬたぬたしたものを、
まず自分の陰部に当てがった。
 すでに愛液でぐちょぐちょに濡れているのに加えて、ワセリンの
滑りも手伝って極太ディルドの一方が侵入してきた。

「あふう、いい…わ。あぁ、すごい…入ってきたー。あー、気持ち
イイ」
 乳白色のバイブの胴体部には蛇腹上の段差がついており、それが
侵入する度に得もいえぬ快感が脳天を突き上げる。
「ふあー、もう…最高よ。これだけでイッちゃいそう」
 大内のことなど放っておいて、このまま自慰に浸りたかったが、
そうもいかない。
「んんーん、イイわ。どうやら全部入ったみたい。さて貴方にも
あげるわね」
 オレは今までにも何度も妹の身体を借りていたので、女言葉を
使うことに全く抵抗はなかった。
 だが股間にペニスを生やし、まさに今から女を犯そうかという
場面…この不条理な世界…男であり女でもある…興奮度はさらに
高まっていった。


「え、あ…でも、そんな大きいの。私…壊れちゃう。お願いです、
他の小さいのはありませんか? 私…恐いんです」
 涙を流し哀願する女の姿というのは本当に良いものだ。
 だが例え泣き叫ぼうとも、この状態で引き返すことは例え、神で
あろうと出来はしないだろう。
「大丈夫よ。ほらこれを貴方にも塗ってあげるわ」
 逆V字に開かれた彼女の両足の付け根にワセリンを運んだ。
「ああー…いや、そんな、あ、あああ、あん」
 大の字に縛られて、蝋を垂らされ、ワセリンを塗られ、いよいよ
極太のバイブを挿入されようとしている。

(おお、縛られて身動き出来ない女とヤルってのはえらく
興奮するな)
「ほら、入れてあげるからねー。あらー、何、この子? もう、
おま○こグチョグチョじゃない。本当はさっきから、これが
欲しくてしょうがなかったんでしょう?」
「嘘です、嘘です! そんなことありません! お願いだから、
入れないで…」
「オッケー、オッケー。みなまで言わなくてもいいわよ。
ほらっ!」
 ズブッ、ズブブ…
「あ、そんな…あ、ううあー! いやー! 大っきい! 太いーぃ、
太すぎるー。お願い、ダメーっ!」
 ネチネチと淫靡な音を立て、シリコン製の作り物が肉壷へと
沈んでゆく。

「あーー、入ってくるーー。凄いのぉ」
「気持ちいいんでしょ? ほら! どう? 気持ちイイって
言いなさい!」
(おぅ、いいぞー。素晴らしいの一言に尽きる。まるで今までの
セックスが子供だましだったかのようだ)
 オレは2人の身体に挟まれたディルドーがすっかり飲み
込まれたのを確認すると、ゆっくりと動かし始めた。

「あーー、いいわーー。すごいわ…こんなの。ああー、気が変に
なりそう」
「あ、ああんっ、やっ、あっ、あん。いや、中が捲れちゃう」
 大内もだんだんと極太に馴染んできたようで、声に艶を増して
いった。
「どう? もっとガンガンに突いてあげるわね。もう、この味を
知ってしまったら大変よ。普通の男では満足しないかもね。
ふふふ」
 オレと大内の肉体関係は一度きりだった。お互いの身体の
ことなど、良く知りもしない内に別れたのだ。
 少なくとも彼女が、オレにセックスに対して不満を持ち別れを
切り出したとは思えなかった。

「どう? このバイブの味は。大きくて最高でしょ? 今の彼氏と
比べてどうなの?」
 オレは股間に力を入れ、バイブを強く挟み込むようにして腰の
動きをさらに早めた。
(あー、バイブの段々状のエラが内臓を掻き出す様で、凄く
感じる)
 絶頂に近いものが怒涛のように込み上げてきた。しかも
今までに妹の身体で得た、どの快感よりうんと深い。
(少女の覚えたての蒼いセックスもいいが、円熟味の増した大人の
セックスも捨て難いな)
 
 下腹部にぐっと力を入れ堪(こら)えてオレだが、若く経験の
浅い大内の身体には早くも限界の兆しが見えてきた。
「だめ! こんなの…ホントに、駄目です。あー、初めて、
こんなの。ああ、すごい…でも、もうやめて…ください…
はあ、あん。嫌ぁー、イキそう。駄目ー、イクーーー」

「女は子宮で考えるの。ことセックスについては頭で考えても
駄目。ほら、奥まで突いているのが分かるでしょ? 子宮腔を
突き上げられるのが女として最高の喜びなのよ。乳首や
クリトリスなんかの何倍も快感が増すでしょう?」
 オレが口にしていることは、すでにお祓いでもなんでもなく、
ただのセックスへの洗脳に過ぎなかった。
 それは大内へのささやかな復習なのか、それは自分でもよく
分からない。

「ほら、イッちゃえー! 私のこの極太ちん○で、思いっきり
イッちゃいなさい!」
「はうぁーーっ! イク! イク! ホントにイッちゃうーーん! 
ンンッ! イクーーー!」
 その姿を見届け、オレもついに女の身体で最高の絶頂を迎える
ことが出来た。
「うわーーーっ、ああ、イク! 私もイクわ! あー、これは
凄いっ!凄すぎ! イク、イク! はうー!」

「あ…あん、ああ」
「どう? 気持ちよかったでしょ?」
 オレは座った姿勢で、彼女の拘束を解きながら聞いた。
「すごかった…です。あんなの、初めて。何だか病みつきに
なっちゃいそう」
「そうみたいね。ほら、シーツをこんなにびしょびしょに
濡らして」
「あっ、それ私ですか? あー、ごめんなさい。ああ…
どうしよう。恥ずかしい」
「別にいいんじゃない。それよりも貴方、お祓いについては気に
ならないの?」
「あっ、そうでした! 私…本当に…凄くて、頭の中真っ白で、
分かんなくなっちゃって。あの、それでそうなんでしょうか? 
お祓い、出来たんですか?」
 
 彼女は何故、ここにいるのかやっと理解したようで、ベッドに
横になったまま両胸を隠しながら聞いた。
「安心して。今日のところは成功よ。でも、やっぱりお付き合い
する人は選んだ方がいいかもねー。どうする?」
「ホントですか?あー、良かったー。…そうですね、彼とは
別れます。相性も良くはないみたいだし…」
 大内はおそらくセックスのことを言っているのだろう。
結果としてオレの気分も晴れたところで、いそいそと服を
着始めた。
(オレって性格悪いのかなー。ま、いいや大内も大人の変態的な
性に目覚めたようだし…後は、そうだな。谷本の方にもいい思いを
させてやるかな)

「じゃあ、私はこの後、別の予定が入ってるからもう行くわね。
貴方はゆっくりしてもいいわよ」
「はい、そうします。まだちょっと身体が自分のものじゃない
みたいで。あ、それから今日は本当にありがとうございました」
「いいのよ。じゃあねー」
 オレは鏡を見て、身だしなみを整えホテルを出た。
(しっかし、凄かったなー。あれ、SMプレイっていうのかな?
 あれも良かったし、大人の身体のレズプレイも最高だった。)
(せっかく豪勢な部屋を選んだのに、ほとんど使わずじまい
だったのが残念だったけど…やばい! オレ自身が、普通の
セックスじゃ満足しない身体になってしまいそうだ。いや、
もうすでになってるか…)
(この遊びが出来なくなったら、美保子ちゃんとどんなセックス
したらいいんだ?)

 家路を急ぎながらも、残された僅かな日数をどうやって
楽しむか考える。
(今日のところは新しいレポートの追加が出来るな。ノルマは達成
したと考えてもいいか)

『人体記憶交換機』を使用出来るのもあと残り僅か…。
 オレは最後を締めくくる、記念すべき体験に向って夢想していた。 


(続く)



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