女装遊戯(第1章)
作:嵐山GO


私、立木里奈。17歳、高校2年生です。
女子高生といってもウチは商業高校なんで、生徒の9割以上は女子なの。
もう分かると思うけど男子からすれば、そりゃあ花園よね。
ハーレムっていうの?選び放題なわけじゃない。
それに比べて女子の方は血みどろの争奪合戦よ。
私は平和主義だから、そんな戦いには参戦したくないし、かといって
誰も手を付けないような残り物には興味なし。

つい先日も文化祭があったんだけど、最近やたらテレビなんかで盛り上がってる『女装コンテスト』って知ってる?
あれと似たような事をウチの学校も催したの。
そしたら、益々美形な男の子の株が上がっちゃって大変だったわよ。
もう勝手にして頂戴って感じ。
いい気になっちゃってさ。ふん。
女子も女子よね。あんなに狂ったみたいに応援しなくてもいいのに。

「あーあ、でも来年は就職活動もあるし遊べるのは今だけなんだよね。やっぱ彼氏、欲しいなー」
こう見えても中学の頃は、そこそこモテてたし一緒にデートしてくれるボーイフレンドも何人かいたの。
でも今の高校に進学してからはさっぱり。
「やっぱ、みんなみたいに普通科に進学すれば良かったかなー」
どうも私の中にサービス業の血が混じってるみたいで、大学にすすんで進路を捜すより、商業課程の勉強をしてそっちの方面に進みたかったのよね。
「お父さんもデパートで働いてるし、お母さんもパーマ屋を経営してるんだもん」

幸生(ゆきお)っていう四つ下の弟がいるけど、こっちはまだ子供で将来のことなんか何も考えちゃいないわね。
学校から帰っても、すぐにテレビにかじり付いてアニメばかり見てるし。
「あの調子だと彼女なんているわけないわね」
そんな弟だけど最近は一緒に出かけることも無くなった。
以前は買い物や映画も、来るなと言っても付いてきていたのに。
「ユキも少しは大人になってきたって事かしら・・・?」
私は弟のことを子供の頃からずっと「ユキ」と呼び、弟は私のことを「里奈姉ちゃん」と呼ぶ。

「はぁー、今日は学校早く終わったけど帰っても何もやる事ないしなー」
ボーっとしたまま玄関を開けたので「ただいま」と声を掛ける事も忘れ、キッチンに向った。
「ユキはまだ帰ってないのかしら・・・?」
冷蔵庫を開けて、牛乳を取り出しコップに移して飲みながらポツリ言う。

カタンッ
「あれ?今、二階で音がしたような・・・あ、なーんだ。ユキの靴、玄関にあるじゃない」
さっきは気づかなかったけれど、改めて見に行くと弟の靴が揃えて置いてあった。
「いるんだ・・・何、やってるのかしら?脅かしちゃおっか」
私は流しにコップを置くと、忍び足で二階へと向った。

どうも気配は弟の部屋ではなく私の部屋から感じとれた。
(ユキじゃなかったら、ちょっと怖いわね・・・)
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
(誰?制服の女の子がいる・・・いや、そうじゃない。あれ、ユキだわ)
小さく開いた隙間から、私は夏物のセーラー服を着た弟を発見した。

(何、やってんのかしら・・・あれ、私の中学の時のセーラーじゃない!どこから見つけたのよ)
弟は制服を着て、鏡の前で女の子らしいポーズをとっている。
(もしかしてユキも文化祭で女装するのかな・・・確かにユキなら似合うかもね)
ソックスも履いておらず、生足だがスネ毛などは全く生えておらず、身長もまだ自分よりも
低いので見ようによっては女の子そのものだ。
髪は男にしては長いほうだが、それも活発な少女という印象すら受ける。

(もし文化祭出るんなら、私がレクチャーしてあげようかしら・・・)
そんな事を考えていると、急に女装少年が前屈みの姿勢になってスカートの前を押さえ始めた。
(何してんの・・・?)

「あン・・・私、女の子・・・いやん・・・」
女装少年が鏡を見ながら2,3呟くとスカートの中に手を入れ激しく動かし始めた。
(や、やだ!ちょ、ちょっと・・・オナニーしてんの?)
鏡に映った女装子。それは男であって男ではない。女に見えて女ではない。
「可愛い・・・もう、駄目・・・あぁ」
制服女装子が苦しそうに嗚咽を漏らす。

(ど、どうしよう・・・私、どうしたら・・・)
後ずさるつもりが、何かの拍子で音を立ててドアを開いてしまった。
ガタンッ!
「え!?里奈姉ちゃん?あっ!駄目。出る、イク」
弟は振り返って姉を確認すると同時に果て、スカートの中に大量の精液を放出した。

「ユキ・・・あんた、大丈夫?」
何て声を掛けていいのか分からず、座り込んでじっとしている弟の元へ寄っていった。
「里奈姉ちゃん、ゴメンなさい・・・僕、制服黙って着て、汚しちゃった。ゴメンなさい」
弟は目に一杯の涙を溜めて詫びている。
その姿、その憂いを帯びた顔が私の胸を締め付ける。
「ううん、いいのよ。私こそ、覗いちゃってゴメン」
(何だろう?この気持ち・・・弟なのに抱きしめたくなっちゃう)
私は弟の隣りに座って、じっと見下ろしていた。

「お母さんに言っちゃう?」
「大丈夫よ。言わないわ」
「でも汚しちゃったよ・・・」
「後で洗うから平気。でも、いつの間にかユキも大人になったんだね」
「ごめんなさい」
弟は私の胸に顔を押し付け、涙を拭っている。
(可愛い・・・でも何かが私の中で膨らんでいく。これは何?)

「ねえ、ユキ。あんた女の子になりたいの?それとも女装するのが好きなの?」
「分かんない・・・でも昨日テレビを見ていたら、同い年くらいの男の子が女装してて」
「・・・うん」
「それで僕も女装したらどうなるかなって思って・・・」
「で、私のセーラーを着てみたわけね。良く似合ってるわよ。じゃあ、今日が初めてなのね?」
「・・・うん」
「そう・・・なんだ」
「僕、着替えてくるよ」
弟が床に手を付いて立ち上がろうとした。
「うん・・・あ、待って。今日のこと、内緒にしてあげるから、お姉ちゃんのお願いを聞いて」
「お願い・・・うん、いいけど。何?」
「ふふっ。お願いっていうか、これは命令よ。今度の日曜日、私と買い物に出かけましょう」
「買い物・・・うん、いいよ。それで?」
私が命令って言ったから弟は、その後があると感じたらしく警戒している。
「今は言えない。日曜日の朝を楽しみにしていて」
「うん、分かった。酷いことしないよね?」
「大丈夫よ。さ、着替えてらっしゃい。制服は洗濯機の脇に置いといて。後は私がやるから」
「うん」
弟はまたスカートの前を押さえながら部屋を出て行った。
床の上には水を零したような染みが残されている。
「これが男の子の・・・」
私は、その染みに鼻を近づけ何度も何度も匂いを嗅いでいた。


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