『女装した僕・エンドレスサマー』(その4)
 作:嵐山GO


「あのさ…」
「何?リカ、まだあるの?」
「私ね…洋服以外に、もう一つ見つけた物があるんだけど、
それが何か知りたくない?」
「もう一つ?何かしら?成績表とか?」
 母親にチクるものといったら、それくらいしか思い
つかない。
「ブーッ、外れ。正解は催眠術の本でしたー」
「あっ!!」
 忘れていた。隠す理由もないので、本棚に差し込んだ
ままだった。術も取得したし読むことも無いので隠して
おけばよかったのに。

「もしかして…読んだの?あのブ厚い本を」
「うん、読んだよ」
「ぼ、僕に…私にかけるつもり?」
「えへへー、どうしようかなー?お姉ちゃんはドコまで
読んだの?」
「ドコまでって、相手に催眠術をかけられるように
なるまで、だけど」
「じゃあ、1章までだね。私は第3章まで全部読んだよ」
「3章って…他はあまり意味無いんじゃ…?」
 僕は術をかけて相手が自分の言いなりになれば、それで
良かった。2章以降の概要も目を通したが不要だと
思ったのだ。

「2章はね、主に自分に術をかけられないようにする
防御の方法。3章は相手の自己意識を残したまま
催眠効果を高める方法などが書いてあったの」
「それは、つまり…」
「それはつまり、自分が術をかけられてるって知りながら、
相手の思い通りに動かされちゃう術だよ」
「そ、そんな事…」
 そういえば、そうだったかもしれない。だが相手に
記憶が残るのではマズイと思い、読まなかったのだ。

「お姉ちゃん。私今日、何回『うん』て返事したか
知ってる?」
「え?」
 いきなりの変な質問に僕はリカの目を見、そして
第3章の術をまんまと受け入れてしまった。


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