『女装した僕・エンドレスサマー』(その1)
 作:嵐山GO


 僕の女装生活に楽しさいっぱいのセックスライフまで加わり、
高2の夏休みを満喫しようと思った矢先、廊下で担任に
呼び止められた。
「矢木っ!お前、夏休みは泊り込みの夏期講習だからな。準備、
しとけよ」
「ええっ!?先生、泊まり込みって冗談でしょ?」
「馬鹿たれ。冗談なもんか。お前を入れて学年で成績を極端に
落とした10人、地獄の補修行きだ。テスト前に言っといただろ?」
「そ、そうですけど…」
「うだうだ言ってないで、ほら。ここに集合場所やスケジュール、必要な
物などが書いてある。渡しておくからな」
「ホントにやるんですかー?」
「先生だって、やりたかないけどな。お前らみたいに急激に成績を
落とした奴を連れて行くのは、当学校の規則なんだよ。冬休みも
台無しにしたくないなら二学期は真面目に勉強しろよ」
「はあ…」

(たしかに僕は例の催眠術を覚えてからセックスしまくりの毎日だった。
勉強などまるで手につかない。考えている事といったら、次は誰と
セックスするかだけだった)
(先生を始め、選び抜いた7人の女達。それは僕の思い通りに身体を
開く人形達と言ってもいい。女装した僕と目も眩むような官能レズプレイを
繰り広げるのだ)
 

「じゃーな、時間に遅れるんじゃないぞ」
「…はーい」
 こうして僕は一ヶ月以上の長い貴重な夏休みを補修に明け暮れたの
だった。

「ふうー、しかし長かった…」
 大きなボストンバッグを両手にバスを降りると、ほぼ一ヶ月ぶりに
我がアパートへと向かった。
「一ヶ月間、オナニーはおろか女装すらしてないよ。まーったく溜まり
まくりだっつーの。こんな高校2年生、他にいるかっ!?」
 一緒に肩を並べて補修した仲間達の事はすっかり忘れ、怒りを
撒き散らしている。
「さっさと着替えて女の子モードで買い物に行こう。まだ7時過ぎた
ばかりだから急げば近くのスーパーの閉店前に入れるだろう…」
 陽が沈み、辺りもポツリポツリと街灯が点き始める。

「んんっ!?僕の部屋の電気が点いてるぞ。おかしいな?
点けっ放しで部屋を出たっけ?」
 慌ててバッグから鍵を取り出し、ドアへと急ぐ。
 ガチャリ!
 ドアを開け、足下を見下ろすと女物の可愛いサンダルがある。
「ん?僕のじゃないな。誰かいるのか?そんな筈無いけど…」
 独り言を漏らしながら後ろ手でドアを閉めると聞き覚えのある声が
聞こえた。

「お兄ちゃん、おかえりー」
「リカ!?リカ、お前なのか?」
 声が聞こえたのはリビングではなく寝室からだった。
「なんだよ、リカ。よく中に入れたな」
 ベッドに寝転がってマンガ本を読む妹を見つけ開口一番聞いた。
「うん。いつ来ても、いないから管理人さんに頼んで開けて
貰っちゃった」
「困るよ。勝手に来て入っちゃ」
「ごめんね。でも会いたかったんだもん。たまには一緒に遊んで
貰おうかと思って。でも、もう夏休み終わっちゃうね」

 リカは妹だ。正確には再婚した父側の連れ子だから血は
繋がっていない。
でも、もう幼い頃からずっと一緒にいるから兄妹と何ら変わらない。
「お前…いつ来てもって、今日初めて入ったんじゃないのか」
「うん。ほとんど夏中、来てた。時々、泊まったりもしたし。でも、
ちゃんとお母さんには電話したよ」
「そういう問題じゃない。男には色々と見られたら困るモンが
あるんだよ」
「知ってるよ。女の子の洋服とか、でしょ?」
「やっぱり見たのか」
「うん。ていうか、お兄ちゃんの女装趣味、リカ、前から知ってたもん」
「嘘っ!?」
 想定外の返答に僕は腰を抜かしそうになった。辛うじて持ち応え、
パソコンチェアに腰を下ろす。

「だって、お兄ちゃん、リカの服とか着てたでしょ?」
「それも…知ってたのか」
「あったり前じゃん。洋服が少しでもシワになってたりすれば女の子は
スグに気付くよ」
「ゴメン…でも、母さんには黙っててくれたんだ」
「まあね。いつか貸しを返して貰おうと思って」
「貸し?」
「うん。何か欲しいものがあったら買って貰おうかとか。で、遊びに
来たんだけどいないしさ…」
「悪い」
「いいよ。泊まったときパジャマ借りたし、お風呂入ったとき下着も
借りたしね。
サイズはいいんだけど、デザインがちょっと。やっぱそれも趣味?」
「ま、まあね…」
 すっかり妹に会話の主導権を握られ、僕は何も言い返せなかった。
 誰にも言えない秘密を握られるというのは、こういう事なのだと
実感させられた。


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