「女装だけじゃ満足できない!(前編)」
 作:嵐山GO


最近、どうやら巷では女装が流行っているらしい。
 テレビや雑誌などのメディアが有名人を飾り立てて、
ブレイクしたのか。それともゲームなどで主人公が
女の子にモテ囃されたからか。
 そんなところだと思う。僕らみたいな若者がいきなり
夢中になるといったら出所は大抵知れているんだ。
 でも僕の女装は昨日、今日始めた奴らとは違う。
流行っているとか、モテたい為とは違う。僕の女装は
不変の趣味であり、生きがいであり、僕の生活の全てだ。
 
 物心ついた時から女の子の可愛い服装に憧れてた。
 でも男の子の僕に親が、そんな服を買ってくれる
わけも無く、ただひたすら我慢。
 どうしても我慢できない時は二つ下の妹の下着や
洋服を借りて発散することもあった。

 そんな僕が、やっと満足のいく生活を手に入れたのは
高校に入ってからだ。
 わざと家から遠い高校を選んだ。僕にとっては、
かなりハードルの高い、狭き門だったが、野望を
成就させるためには止むを得ない。
 僕は猛勉強し、そして努力の甲斐あって見事合格。
念願の一人暮らしを手に入れた。

 僕の女装生活は、こうやって始まった…。
 仕送りを切り詰めながら大切に使い、血の滲む
バイトをし金を溜める。
 もちろん女の子の服を買う為だ。服だけじゃない、
靴もバッグも、アクセサリーの類いも全て注(つ)ぎ
込んだ。
 
 学校は私服オーケーなので女装通学も不可能では
無いけど、さすがにそれはやめといた。
 家に帰れば、すぐに着替えて女の子としての生活を
送ることも出来る。
 ただ、その影響からか僕の身体からは女性オーラが
出てるらしく、周りから「キモい」と敬遠される事も
しばしば。
「別に、どう思われようと構わないけどな」とは思うが
女装がバレるのも問題ありなのだ。
 
 普段から髪は伸ばしているし、携帯など持ち物なども
派手な色使いが多かったりする。
 「キモい」と言われても仕方ない。
 男子に嫌われるのは別にいい。ここでは中学生の
ように苛めがあるわけでもないし、部活動をやって
いないので、後は適当に勉強して成績を落とさない
ようにすれば親も心配して尋ねて来たりはしない。
「でも、彼女くらいは欲しいんだよな…」
 思春期の男子なら当然持つ悩みのひとつだ。

 女装に趣味を持つ人間の性癖は色々。
 女の格好をしていても、それはうわべだけで中身は
男のまま。つまり性の対象は女という者。
 もう一方は身も心も女に『なりたい』タイプ。
こちらは女装すると心も女となり男性の愛情を求める。
 ネットで調べた程度だから詳しいことは知らない
けれど、ゲイとかホモとかバイとか色んな呼称が
あっても、僕はそれらには属さない。

 間違いなく前者の方なのだ。
 女装なんて趣味を持ちながら言うのも変かも
しれないけど、僕は自分をノーマルだと思っている。
 だからこそ彼女が欲しい。欲しくて堪らない。
出来れば、この趣味を理解してくれる彼女が。

「まぁ、無理だよなー。こんな姿じゃ…」
 短いスカートの裾を摘んで持ち上げてみた。
 今日も帰ってはすぐに可愛い服に着替え、買い物も
済ませた。
 女装生活が始まって早いもので、もう1年と数ヵ月。
 今では、どこに行くのも、この姿だ。
「友人がいないのが幸いしてかバレずには済んでる
けどね」
 学校では男の子、帰ってくれば女の子、この生活にも
慣れたし、満足もしていた。
 永遠にこの生活が続けばいいとすら思っていた。
 でも、やっぱり僕は健康な男の子。
 女の子とデートもしたいし、セックスもしたい。

「クラスで処女、いや童貞なのは僕ぐらいかも
しれないぞ」
 性欲が溜まりに溜まった頃、僕はある一つの計画を
思いついた。
 それは催眠術を使って思い通りに言う事を聞かせると
いうものだ。
「女の子を催眠術で僕の言いなりにしてみせるぞ」
 それからというもの、僕は買いたい女装グッズを
押さえ、高価な催眠術の本を購入した。
 かなり専門書の類いで覚えるのには大変な労力
だったが、ついにマスターする事が出来た。
 そして、その効果がこれから現れる。

 そう、僕は今日、廊下で擦れ違った女の子に術を
かけたんだ。
 彼女はクラスは違うけれど、とても美人で性格もいい
お嬢さんタイプの女の子。
 わざと彼女の肩にぶつかって謝りながら、目を見て術を
かけた。
(今日、家に帰ったら一番可愛い服を着て僕の家に
来るんだ)とね。
 彼女、名前を神坂美穂というんだけど家は、ここから
それほど離れてはいない。
(そろそろの筈だけどな)

 コン、コンッ
 思った矢先、アパートのドアがノックされた。
「美穂ちゃんだね。いらっしゃい」
 僕はドアのレンズ越しに彼女を確認すると、すぐに
部屋に通した。
 目は虚ろで、気も抜けたような感じだ。
 僕が「いい」と言うまで術は解けないようになって
いるんだ。

「そこに座んなよ」美穂ちゃんをベッドの端に座らせ、
僕はパソコンチェアに腰を下ろした。
「ちゃんと言う事を聞いて一番可愛い服を着て
きたんだね」
「…はい」
 無表情で答える。
「美穂ちゃんて、彼氏いるの?」
 これは学年では誰もが疑問に思っている事だ。
 真面目で男と付き合っているなんて想像もつかない。
 誰も美穂ちゃんが男と歩いている所なんか見た事が
ないんだ。

「…はい」
「そっか、やっぱり彼氏くらいいるよね。そんなに
可愛いんだもの。もしかしてセックスとかも、
しちゃってる?」
「…はい」
「うわっ、そうなんだ。ちょっとショックかな。でも、
別にいいんだよ。もうすぐ僕のモノになるんだしさ。
それに経験がある方が何かと楽しいかもね。何で
かって?それは、もうすぐ分かるよ」
 美穂ちゃんが彼氏がいる事やセックスの経験が
ある事も想定内なのさ。
 今日の計画を変更する事は一つもない。

「さてと、それじゃまず、その可愛い服を脱いじゃってよ。
それ僕が着るから。脱ぎ終わったら、あそこに掛けてある
僕の制服を着てよ。いい?」
 指差して言った。
「はい…」
 相変わらず返答は同じだけど、今はそれで構わない。
もう少しして僕も美穂ちゃんもリラックスしてきたら
彼女には、うんと喋って貰うから。
 
 美穂ちゃんはチェックの短いフレアースカートを
ストンと床に落とすと、次にはフリルで飾られた
ブラウスのボタンを外す。
 僕も自分で着ていた服を脱ぐ。全て脱ぎ終わる頃には
彼女も裸になっていた。
「うわー、綺麗な肌なんだね…おっと、見とれてる場合
じゃなかった!一応、そこにトランクスもあるから
穿いてみてよ。そしたら制服を着てもいいよ」
「…はい」
 
 彼女の脱いだパンティとブラジャーを拾って僕が
自分に着ける。
「へへ、まだ暖かいや…サイズも大丈夫だ」
 パンティーはよく伸びるし、ブラは背中のホックで
ある程度調節がきく。
 下着の次はブラウスとスカート。こちらも問題無し。
 普段から7号から9号サイズを着れるように心がけて
いるので大抵の服は着ることが出来る。

「美穂ちゃんも着終わったみたいだね。じゃ、これから
言う事をよく聞いて。たった今から君は僕で、僕は君だ。
分かる?君が矢木浩一で僕、いや私が神坂美穂なの。
いい?」
「私が…矢木…君?」
「うん、そう。いや、そうじゃなくって君はもう男
なんだから、僕って言わなきゃ駄目じゃないか」
「僕は矢木浩一…」
「ええ、そうよ。あなたは今日、大好きな神坂美穂
ちゃんの家、つまりこの部屋の事だけど、ここで私を
抱きに来たの。分かるよね?」
「僕は大好きな美穂ちゃんを抱くために、ここに来た」

「うん、分かったみたいね。でも私、初めてだから…
優しくして欲しいな。それと私、本当の事言うと、
あなたのこと好きじゃないの。それは知ってるでしょ?」
「美穂ちゃんは僕の事、嫌ってる。でも、すごく
抱きたいんだ…」
「いい?無理矢理は駄目よ。犯罪なんだからね。優しく
ムードたっぷりに口説いて欲しいの?出来る?
出来るわよね?」
「僕が大好きな美穂ちゃんを優しく口説く」
「お願いね。何だか言ってて、こっちが恥ずかしく
なってきちゃった」
 右手でうちわのように火照った頬をパタパタと
扇いだ。

「じゃ、私がベッドに座るから矢木くんは、そこに
立って」
 男子の制服を着込んだ彼女が立ち上がったので、
僕はそこへ座り、いつもの神坂美穂らしく、
おしとやかに座ってみた。
「あら、矢木くん…どうしたの?急に私の家に遊びに
来たいだなんて」
 打ち合わせた通りのドラマが唐突に始まった。
「ぼ、僕…美穂ちゃんの事が好きなんだ」
「ええっ!?そ、そんなこと…急に言われても困る…
私、今付き合ってる人もいるし…それに矢木君のこと
…あまり知らないし…困るわ」
「正直に言っていいよ…僕の事、嫌いなんでしょ?」
「う…うん、ごめんなさい…」
 しおらしく俯いてみせる。

「でも、僕…美穂ちゃんのこと、どうしても諦らめ切れ
ないんだ」
 そう言うと僕の細い肩を掴んだまま、ベッドへと
押し倒した。
「きゃっ!酷いことしないで…う、ううん!」
 途中まで言いかけたところで唇を奪われた。
「美穂ちゃんが悪いんだよ。可愛いから。僕、ずっと
我慢してたんだ」
「あ、あん…そんなこと言われても…やん、あ…胸、
触っちゃ駄目っ」
 ブラウスの上からフリルごと胸を揉んできた。
「あんっ、駄目だってば。あ、そこ駄目ぇ!」
 片方の手が難なくスカートを潜り、パンティを
捉える。

「お願い、もうやめて…でないと浩一くんのこと、
もっと嫌いになっちゃう」
「そんなこと言って…ほら、パンティの下の
クリちゃんが大っきくなっているのが分かるよ。
本当は僕に、こうされたいんじゃないのかい?」
 彼女がパンティ越しに掴んでいるのは僕のペニスだ。
 それにしてもキスの仕方、胸への愛撫、下着への
手の滑らせ方など、さすがは男性経験があるだけに
上手い。
「そ、そんなの…違うわ。大きくなってなんか…
ないもん」

「そう?なら見せて貰うよ」
「きゃんっ!」 
 言うが早いか、さっとスカートを捲り上げた。
「うわー、可愛いパンティ穿いてるんだね。ますます
興奮しちゃうよ、僕」
「見ちゃ駄目。見ないで…恥ずかしいよ。もうやめて」
「やめないよ。今からもっと恥ずかしい所を見せて
貰うんだから」
 
 言い終わると手を臀部へと回し、スルスルと
パンティを引き下ろす。
「やーーーん」
 懸命にパンティを掴んで戻そうとするが、それを
許そうとしない。もっとも行為を中断させるつもりも
無いので、口では拒否しながらもしっかりと手伝って
いる部分もあった。

「ほら、勃起したクリちゃんが出てきたよ。大きいなー。
こんなに大きいときっと感度も凄いんだろうね」
 彼女が僕の勃起したペニスを、まじまじと見ている。
「もう、いいでしょ?これ以上はやめて。ね?」
「まだ始まったばかりじゃないか。もう諦めなよ。
そうだ、こうしようか?もし僕が色々しても声を
出さずに我慢できたらやめてあげる。どう?」
「本当に声を出さなかったら、もうこれ以上何も
しない?」
「うん、約束するよ」
「…わかったわ」
(ふっ、だったら、せいぜい大きな声を出して喘いで
やるよ)


(その2)へ



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