「異心伝心(ことなるこころ つたわるこころ)」〜その2
作:嵐山GO



「え?あ・・・私・・・ですか・・・?私は・・・」
一瞬の笑顔の裏に隠された、陰影を再び呼び起こしてしまった。
「あ、いや。別に言いたくなければいいんだ。ごめんよ」
「いえ、いいんです・・・私・・・実は自殺しようかとか考えていたんです」
「な!何を言ってるんだ。冗談だろう。老人を驚かせないでおくれ」
思いもよらぬ少女の発言に驚きを隠せなかった。


「ごめんなさい。でも・・・私、なんていうか・・・生きていく自信がないんですよね」
「悩んでいるんだね。私で良かったら話してご覧。力になれるかもしれないよ」
老人は結わいた紐を解いて、少女のいたベンチに移動すると再び紐を結びつけた。

「有難うございます・・・でも多分、無理だと思います。
だって私、いま抱えきれないほど悩みが多すぎて、何も希望が持てないんです・・・」
少女は犬から離れ老人の隣りに座ると、再びうな垂れるようにして両手で顔を隠した。

「分かるよ。お譲ちゃんくらいの年頃には色々と悩みがあるもんだ。でも、みんなそれを乗り越えて成長していくんだよ」
「私には・・・とても出来ない・・・ううっ、ぐすん」
途切れ途切れの言葉の後に、すすり泣く声がそれに続いた。

「勉強かい?それともお友達?家庭かな?」
「うう・・・もう、全部です。何もかも全部です」
老人は、ふうっと溜息を漏らし言った。
「本当に死ぬ以外、方法が無いと思うかい?」
言いながらポケットからハンカチを出し少女に渡した。
「うん・・・」
涙を拭っても、少女のスカートの上には後から後から、
ぽたぽたと涙が落ちていった。

「そうか・・・分かった。これ以上は聞かないよ。では、そうだな・・・良かったら、この後、私の家に来ないかい?
美味しいものでも食べれば元気が出ると思うし」
「おじいさんの家?」
「ああ、この公園のすぐ裏にある家だ。メイドがいるから何でも好きなものを作って貰いなさい。家の人が心配するなら電話しておけばいい」

「いいんです。私の家なんか別にどうでも・・・それに心配なんかされた事ないし」
「そうはいかない。お母さんは心配するよ。携帯電話は持ってないの?」
「持ってません・・・ウチ、貧乏だから・・・」
「そうか・・・私もこの年で必要ないから持っていないんだ・・・では私の家から電話すればいいかな?来るかい?」

「そうですね・・・帰っても何も楽しくないし。お邪魔でなければ」
老人に続いて少女も、ゆっくりと立ち上がり後に続いた。


(その3へ)



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