『その後の英雄と悪漢』(その10)
 作:嵐山GO


「ねぇ…お兄ちゃん。桜…もう子供じゃ嫌なの。今日、
大人にして欲しいな」
 再び少女は両掌を胸元で組み、下から見上げるように
哀願する。
「うん、いいけど…でも最初は痛いかもしれないよ」
 桜が処女という設定である以上、当然破瓜の痛みは
覚悟せねばならないだろう。
「我慢する…それにいつかは通る道だもの。最初は
お兄ちゃんて決めてるの。だからお願い…」
「分かった…優しくする。でも痛かったら無理しないで」
 そこまで言いかけたところで少女の人差し指が俺の唇に
当てられた。
「痛くても我慢する。思い出だもの。だから途中で止めたり
しないでね」
「ん…うん」
 口を閉じられてるので、短い返事だけした。

「じゃ、ベッド行こう。服は脱いだ方がいい?」
 キュートな笑顔を浮かべてセーラーのリボンを解く仕草を
した。
「あ、いや…できれば、そのままがいいな」
 初めて桜に恋した時のセーラー服姿。
 一度足りて忘れたことは無かったが、今再びその眩い姿と
笑顔がオレを誘惑している。
 こんな素敵なシチュエーションを壊す理由など見当たら
ない。
 いや、壊すのかもしれないが、とにかくセーラー服姿の
ままの桜を汚(けが)したかったのだ。

「うわー、お兄ちゃんて変態だー。でも…うん、いいよ。
着たまましよ」
 桜がセーラー服姿でベッドに横になっている。オレは
この時を、どれほど夢に見たことか…もう2度と会う事
すら無いだろうと思っていたのに。
「桜…」
「お兄ちゃん」
 抱き合ってキスした。何年ぶりのキスだろう…だが、
それは間違いなく桜の唇だった。
 お互い貪るように舌を差し入れ、口内を蹂躙し合った。
 唇を離すと唾液が蜘蛛の糸のように2人の唇を繋いでいる。
「ああ、桜。桜」
 愛しさも懐かしさも欲望も色々なものが交じり合って
オレは少女の胸に顔を埋めた。
「お兄ちゃん!」
 桜も、それに答えるように手を伸ばし抱きしめてくれた。


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