『化けの皮』
 作:嵐山GO


(その2)

「成る程ね。でも、その格好じゃ、まともに外も歩けないぞ。
それに本人と鉢合わせになるかもな」
「それは無いだろ。谷口の家は隣町らしいし」
「じゃ、外に出るつもりなのかよ?」
「いや、外には出ない。ただ服装だけは変えたいんだ」
「どういう意味?」
「お前、妹いるだろ?一こ下の」
「ああ、いるよ。昨日から友達と海に行ってるから今日も帰って
こないけど。あー!そういう事か!」
「それは好都合だ!妹の服を借りたいんだけど、どうかな?駄目かな?」
「うーん…服はマズイんじゃないか。部屋に入ったらバレるぜ。
それに外に出ないんなら、その格好でいいんじゃないの?」
「それじゃ、つまらんだろ。谷口にこんな格好は…、な、頼むよ!」
 どうやら森田は妹の服を着て、完全に谷口由真に成り切りたいらしい。

「そうだなー…洗濯籠に入ってるヤツか、それとも洗って干してあるヤツなら、
大丈夫かなー」
「干してあるヤツって?」
 森田が立ち上げって庭の物干しを見る。
「おっ!ウチの学校の制服あるじゃん。ブルマもスク水も!
全部、揃ってる!」
「二学期が始まるからな。で、何が言いたいんだ?そんなフェチな
服ばかり選んで」
「その質問は、そっくりお前に返すよ。俺に…いや、谷口にどんな格好
させたい?」
「させたいって、彼女のいつもの姿じゃないか」
「何を言ってるんだ。仮にも同級生が目の前にいるんだぞ。いつも
遠くから見るだけの制服姿とは訳が違うだろ!」
「成る程、そういう事ね。お前が制服を着てみたいだけのような気もするが、
まあいい。好きなヤツを持って来ればいいだろ。後でまた洗濯しておくよ」
「サンキュー。じゃ、ちょっと行ってくるぜ」
 そう言うと口の回りに付いたホイップクリームをTシャツで拭き取ると、
部屋を出て行った。


「あいつの家系って昔、特殊能力でもある種族だったのかな?
変身かー…面白いな。オレだったら誰に化けるかなー?」
 人間の欲する能力の一つに変身がある。自分なら誰に、あるいは
何になりたいか考えてみた。
「ん?それにしても、森田のヤツ遅いじゃないか」
 机の上の時計を見てみる。はっきり部屋を出た時間は覚えてないが、
かれこれ10分以上は経っているだろう…。
 カチャリ
「お待たせー」
 ドアが開いたので見ると制服姿の由真が立っていた。
「ああ、着替えてきたから時間掛かったのか?サイズはどう?」
「何とピッタリだよ。どうかな?」
 一歩前に出てスカートを翻しながらクルリと回って見せる。

「うん、いいんじゃない。似合ってるっていうのも変だけど」
「あ、それと悪いとは思ったが下着も拝借したぜ。ほらっ」
 由真の姿をした森田がスカートを捲って見せた。
「お、おい!やめろよ!」
「何でだよ。妹の下着を穿いてるとはいえ、こいつは谷口だぞ。
谷口由真なんだぞ。なんとも思わないのかよ」
「中身は森田功治だけどな」
 スカートの裾を戻す気配はない。中にはピンクのギンガムチェックの
小さな布切れが陰部を覆っていた。


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