SKIN TRADE2
作:嵐山GO

(その18)

「ちぇ、逃がしたか。えーと、怪我はない?」
「大丈夫です」
「服にゴミも付いてるし、ちょっとそこのベンチに座る?」
「あ、そうですね。ごめんなさい」
 背の高い、その青年は制服から察するに高校生だろう。女の姿の僕と
同い年か、あるいは一つ上かもしれない。
 心配そうに見下ろし、ベンチまでエスコートしてくれた。

「ありがとう…助けてくれて」
(結局イケなかったけど、ま、それはいいか)
「いや、それはいいんだけど本当に怪我はない? 突き飛ばされたみたい
だったけど」
「ええ、ちょっと膝をぶつけただけだから」
「捕まえて駅員に突き出せばよかったね」
「いいんです」
 言いながら僕は濡れた下着も気にかかっていた。
(染みてて気持ち悪いけど…座ってれば乾くかな。あー、でも興奮したな)

「その制服…神郷(かみさと)学園だよね?」
「え? あ、はい。そうです」
「たしか女子高だったよね? 何年? 僕は桜樹高校の三年、君島って
いうんだ」
「私…2年です。胡桃谷美穂っていいます」
「胡桃谷? へぇー、珍しい名前だね。降りる駅はまだ先?」
 次々と質問が飛んでくる。おそらく僕に好意を持っているのだろう。
助けて貰った手前もあるし、僕は正直に答えていった。
 その後も僕らはベンチで会話を続け、電車が数本通過する頃には、
すっかり仲良くなっていた。

「じゃ僕の携帯の番号とアドレスを送るよ。君のもくれる?」
「うん!」
 お互いの携帯を合わせ、赤外線でデータを送り合う。
「サンキュ。じゃ、そろそろ電車に乗る? 僕はこの先だけど一緒に
帰ろうか。また痴漢が出るかもしれないし」
「うん…また守ってくれる?」
「もちろん」
 彼がまた手を差し出したので、僕も手を出すと二人仲良く手を繋いで
電車を待った。


「もうすぐ夏休みだけど…」
電車が来るまでの僅かな待ち時間に彼が重い口を開いた。
「うん」
「よかったら一緒に海、行かない?」
「海? ずいぶん行ってないけど…私、泳げるかなぁ」
(本当に、もう何年も海なんか言ってないぞ)
「別に泳がなくてもいいじゃん。波と遊ぶだけでも楽しいと思うよ」
「うふ、そうだね。考えておく」
(っつーか、水着もないな。まさかスク水で行くわけにもいかなし。
買うかな…金はあるんだ)

 電車が来て乗り込んでも僕らは他愛のない会話を続けていた。僕は彼の
話しかけに適当に相槌を打っていたけれど、頭の中は別のことを考えて
いた。
(とりあえずお金の心配は無くなった。あの理事長とかいう老人と
身体の関係を続けていればいいだけのことだ。大した問題じゃない。
むしろ今の自分を、保障してくれるありがたい存在だ。次は保険医の先生…
僕の秘密を知っている。というか、これも考え方次第ではプラスだろう。
時々、僕の男の部分の性処理を、してくれるんだから。秘密といっても、
向こうから漏らす事はありえない。なんてったって教え子に手を
出しているんだから。発覚したら停職ものじゃないか?)

(あとは…後輩の女の子。何て言ったっけ? あ、真由…まゆゆか。
近い内に、あの子に入れてみたいな。さぞ小さくて窮屈なオマ○コ
なんだろうな。そうそう、仲のいい早坂裕美もなかなかの美人だ。
何といっても足がそそるよ。あの両足に挟まれてズコズコ入れたら
最高だな。ちょっと落とすのには時間かかるかもしれないけど)

(そして今、隣に座っている青年。とりあえず一歳年上という事に
なってるけど…しばらく付き合ってみるのも悪くないか。顔も性格も
悪くないし、自分で言うのもなんだけど一緒に歩くにはお似合いかもな。
とはいえ、いずれ肉体関係に発展するのだろう…それまでは、せいぜい、
お嬢様ぶって清純路線で決めよう)

(痴漢かぁ、あれも興奮したなぁ。でも、自分から痴漢を
呼び込むわけにも、いかないし。なんにしても女の子ってイイ事づくめ
だな。男で生きるのが馬鹿らしく思えるよ)

「あ、着いた。じゃ、僕はここで降りるよ。今度メールするから」
「うん、ばいばーい」
「そうそう、海に行く約束、忘れないでね」
「あ? うん。大丈夫」
(いつの間にか約束してたのか。ま、いいや。思いっ切り布地の少ない
ビキニで挑発してやろう。うへへ、驚くだろうな)
 プシュー、ガタン
 ドアが閉じられ電車が動き始めた。


(続く)


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