SKIN TRADE2
作:嵐山GO

(その6)

「ふあー、今日から僕は女子校生なのかぁ。嘘みたいだな」
 大きなあくびを家を出、学校へと向かう。先日、行っているので
場所は覚えている。
 制服に入っている生徒手帳には学年やクラス、他にも細々とした事が
書かれてあったので、特に問題は無いように思える。

「おはよっ! おとといは鞄、見つかってよかったね」
 前回同様、後ろから声を掛け肩を叩いてきたのは早坂だ。名前は
裕美というらしい。生徒手帳の仲良し友達というページにペンで
書かれていた。
「あ、早坂さん、おはよう。おとといは有難う…」
 さらに言葉を繋げようとしたら唇に指を当てられ遮られた。
「早坂さんじゃないでしょっ。あんたマジで大丈夫? まだ頭打った
後遺症が残ってんじゃない? 裕美でいいよ」
「あ、ごめん…裕美」
(そうか、こういうミスは今後も起きうるだろうな。気をつけなきゃ)

 軽いおしゃべりをしながら校門を抜け、靴を脱いで下駄箱を開けると、
ピンクの封筒が出てきて足元に落ちた。
「?」
「なーに? またラブレター? あいかわらずモテるねぇー。といっても
女子高だから私たち、彼氏は出来辛いけどねー」
 ケラケラと笑う彼女も靴を脱ぎ、上履きに履き替える。
(白石真由…? 生徒手帳には無かった名だ。前の『皮』の持ち主とは
面識は無いのだろうか?)
 手紙は読まずに、制服のポケットに入れ早坂裕美と同じ教室へと
向かう。
(昼休みにでも一人になれたら読むか…)


「そういえば、今日の体育ってバレーの試合なんだって。知ってた?」
 昼も早坂と共に学食で食べた。
「そうなんだ」
(スポーツなんか、暫くやってないなー。大丈夫かな? ま、試合と
いっても女子が相手だからな。いくらなんでも女子に負けるほど体力は
落ちてないだろ)
「しかもさ、私たちのクラスの相手は一年だよ。これってラッキーだよね」
「一年…」
(そういえば朝のラブレターも一年のD組って書いてあったっけ…)
「ウチの学校ってスポーツ全体的に弱いじゃん…だからさ…」
「…うん、うん」
 早坂の話しに適当に相打ちを入れていると、チャイムが鳴った。
「あ、ヤバっ! 早く戻って着替えなきゃ。ほら、行こっ」
「うん!」
 僕は早坂という友人の存在に感謝したい気持ちでいっぱいだ。だって
更衣室の場所すら知らないんだから。

  一旦、教室に戻り体操着の入った袋を手に更衣室へと向かう。
(おおー、ここが男の憧れの場所、禁断の聖地「女子更衣室」だぁ)
 僕らは二年と印刷されたプレートの貼られた室内へ入った。
「あわわっー」
 思わず恥ずかしい声が漏れる。
「どうしたの?」
 着替え中の数人が振り返った。
「な、なんでもない。なんでもないの」
 左手をブンブンと振って自分の発した言葉を掻き消す。
(いやー、これは堪らんなぁ。女子更衣室最高っ!)
 ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながら、それでも悟られないように
自分のロッカーに進む。

(こんな光景が毎日見れるなんて僕は幸せものだぁ。世の中には、
お金を払ってでも見たい奴がいるってのにラッキーだよなぁ。『皮』よ、
有難う!)
 チラチラと脇で着替える女子を見ながら自分の服を脱ぐ。
(もう自分の裸は何度も見てるし、それに帰ったらまたシャワーを
浴びながら弄れるんだ。今は、この状況を楽しむべし)

「遅れちゃうよ。行こっ! 体育の先生、怖いからね」
「うんっ! わかった」
 すっかり溶け込んだ僕は着替え終わると抱きつきたい気分を抑えて、
早坂さんの後を追った。


(続く)


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