SKIN TRADE2
作:嵐山GO

(その3)

「ちぇっ、今日は恥のかきっぱなしだ」
 女の服装で決め、今日何度目かの外出を試みる。一度目は半そでの
トップスと短いスカートを買いに。その時は「何号ですか?」
あるいは「ウエストは何センチですか」と聞かれ、知らない僕は
かなり焦った。
 二度目は下着を買いに。今度はバストのサイズを聞かれ、この時も
答えられずに結局、女店員に任せっぱなしになった。
 今は下着も含め、完璧に女の姿で町に出る。
「いやー、スカートって涼しくていいなぁ。太ももに纏わりつく裾も
心地いいし。へへ、これって女装とは言わないよね」
 周りに聞いている者がいないのをいいことに、店のウインドウに
写った自分を見ながら漏らす。
「これから、もっと暑くなるし服ももっと露出の高いのを着てみたいな。
でも、この若さだし、あまり過激なのはまずいか…」
 とりあえず下はスニーカーにハイソックスで決めてみたが、実際
合っているのか自信は無い。
 バッグや財布もまだ男物で、よくよく見ればこの上なくバランスが
悪い。
「ま、いいや。段々、慣れるさ。当面のお金は大丈夫だけど、それでも
仕事は、しなきゃなぁ…」


 ファッションを気にしているのか、あるいは自分の姿に惚れ込み、
見入っているのか時が止まったようにガラスを見続ける。
「…」
「ねえ、美穂じゃない? あんた、こんなとこで何やってんの?」
「っ!?」
 心臓が止まるかと思った。いきなり、背後から声を掛けられ、まさか
自分ではあるまいと思ったら肩まで叩かれたのだから。
「え…えと…私? でしょうか?」
 なんとも惚けた返答をしてしまう。まさか、この子の知り合いに会う
などとは思いもしなかったからだ。
(失敗した! 確かにそうだよな…考えてみれば、ありうる事じゃないか! 
どうするよ?)

 僕は凍りついたまま、ゆっくりと振り返った。  
「あんた、どうしたの? 大丈夫?」
 同い年くらいの女の子だ。同じ学校の同級生なのかもしれない。
「あ…と、え…と。大丈夫…です」
「そう? なんか大丈夫じゃなさそうだけど…あ、。そうそう。先生、
探してたよ」
「探してた? 私を?」
「うん。全員の携帯に送られてきたから重要な事だと思うよ。あんた、
何かしたの?」
「え、別に…何にも」
(参ったぞ。これは大変な事になりそうだ。外出なんぞ、するべきじゃ
無かったな)

 僕は、この場からどうやって逃げ出そうか考えていると、いきなり
腕を掴まれた。
「これから私と一緒に学校行こうよ」
「えっ? 一緒に? 今から?」
「うん、いいでしょ? だって何があったのか気になるんだもん」
「え? でも今日、土曜日だよ」
「部活動もやってるし誰かいるって。それに見つけたら、スグに
連絡するか連れてくるようにって書いてあったもん」
「え…で、でも…」
「ほらぁ、早く。早く」
「う…うん」

 結局、逃げ出すことは出来ず学校へ同行させられるはめになった。
(別に女の姿はやめようと思えば、いつでもやめられる…呼び出しは
気になるが、とりあえず話しだけは聞いてみようか)
 僕は、まるで女になるためのテストでも受けさせられるような
気持ちで、その友人の後ろを付いていった。


(続く)


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