SKIN TRADE2
作:嵐山GO

(その2)

「ふぅー、気持ちよかった。今日は昼間から社長の話しを聞いたり、
嫌な汗を流したからなぁ」
 僕は風呂上がりは、いつも裸だ。さすがに冬場はパンツくらいは
履くが今は初夏。裸で歩き回ると気分がいい。
「明日と明後日はゆっくり休むか。どうせジタバタしたって
始まらないしな」
 乾いたタオルで濡れた髪を拭きながら、リビングに向かう。リビングと
いっても一人暮らしのマンションなので、けして広いとは言えない。
「おっと!?」
 ソファの横に置いてあった紙袋に気づかず、蹴倒してしまった。
壊れ物は入っていないが最初に袋から飛び出したのは例のゴム状の『皮』
だった。

「忘れてた…これなんだろうな?」
 不思議なことに電車の床に落ち、僕に踏まれていたのに全く汚れて
いない。
 表面に何かゴミなどを寄せ付けない処理が施してあるようにも感じる。
「まったく妙なものだよな。広げてみるか…」
 フローリングの床にソレを置き、丁寧に伸ばしてゆく。
「思ったとおり人型だ…ということは、やっぱりあの男はコレを被って
いたのか?」
(しかし50歳を過ぎたような男が、これを被る…いや着るかな? 
それくらいで10代の少女に化けられるものだろうか? でも顔を
見たわけじゃないし。もしかしたら、そのまんまのオヤジ顔だったとか? 
いや、それじゃコレを着る意味がないか…)
 
 次にゆっくりと裏返してみた。
「ほおー、背中の部分に切れ込みがある。ここから着込むのかな。
頭の後ろにも切れ込みがあるから、ここから被るんだろうな。
試してみようか。ん? でも口の穴も鼻の穴も無い。それどころか、
目も空いてないじゃん。こんなの長時間、被ってたら死んじゃうよ」
 それでも開いた背中と後頭部を見ていると装着してみたい衝動が
大きくなる。
「僕って、よっぽど救われない性格してるよ」
 割れた背中から足を片方ずつ差し入れる。
「へぇー、けっこう伸びるもんだね」
 つきたての餅のように伸びる『皮』に頭部以外の身体の全てを
押し込んだ。
「どうしようか? 後は頭だけだけど。苦しくなったら、すぐに
脱げばいいか。まさか呪われた仮面じゃあるまいし、脱げないなんて
事はないだろう」

 真っ黒な穴の中に顔を埋める。
「よし、入ったぞ。あれっ!? うおっ、何だ!? キツいっ! 
し、締まる」
 頭部を入れた途端、身体を被っていた『皮』が急に収縮を始めた。
「うわぁ、ちょ、ちょっと待ってくれ。死んじまう」
 あまりの急展開に気が動転し、フローリングの床でのたうった。
「ふぅ、ふう…止まった…のか? ん?」
 収縮が止まると、不思議なことに目の前の視界が開けた。
(目が空いた? あ、口も)
 すぅー
(おおっ、鼻もだ)
 久しぶりの空気の有難さを感じ、大きく息を吸い込む。

「ってことは今、僕の身体はどうなってるんだ。おおっ! む、胸…
おっぱいがある! そ、それにこの声? 若い女の子の声だ。鏡、
鏡は? …そうだ、洗面所」
 ある程度の変身を確信したものの、全身像が気になり洗面所に
飛び込んだ。  
「すっげーな…これ女だよ。完璧に女だ。マジかよ?」
 いつの間にか、あの流れるような長い髪が自分にも生えていた。
もちろん、それだけではない。
 くびれたウエスト、形のいいバストとヒップ。大きな瞳には長い睫、
小さな唇は桜貝のようだ。
「いやー、マジですげー」
 鏡の前で何度も回って見てみる。
「え…と、待てよ。それじゃ、元に戻るときはアレ…か」
 もう一度、鏡に背を向けて、うなじ辺りを探すように見つめる。
「あ、これだ」
 僕は電車の中で見た小さなスイッチのようなものを探り当てると、
すぐさま押してみた。
「んん? 何も起こらないのか? いや…戻ってる。男に戻ってるよ」
 一瞬の出来事だった。本当にコンマ何秒の出来事。装着した時のような
辛さや、衣類を脱ぐ時のような感触など全く無かった。
 ただ足元、数十センチ先に先ほどの『皮』が落ちている。

「あんなにキツク着たのに脱ぐときは、あっと言う間だ。しかも足や手を
通したのに、足首に引っかかるどころか別の場所に落ちているのは
何故だ?」
 それは、まるで膨らませた風船の口を開けた時みたいに急激に
萎んだのだ。
 しかも目にも留まらぬスピードで身体から離れた。それは、この『皮』の
長所でもあり、おそらく短所なのだろう。
「だから、電車の男は自分が元の姿に戻ったのが気づかなかったのか…
でも、どうやって身体から離れるんだろう? もう一度、試して
みようか」
 僕は、その後も着ては脱ぐということを繰り返してみたが結局、その
仕組みは分からなかった。
「別にいいか…使っていた本人さえ気づかなかったんだ。今はコレは
僕のものだ。せいぜい使用には気をつけるとしよう」


「しかし、あれだな。これだけ完璧に化けられるのなら、確かに町へ
出ても何の問題もないか…うへへ」
 鏡の中で年頃の少女が不敵な笑みを浮かべている。
「可愛いし、胸もお尻もとってもキュートだ」
 何度も鏡の前で回ったりポーズを作っては悦に入る。
「しかし、これは凄い発明だぞ。胸も感触があるし、伸びた髪も
引っ張れば痛い。どうなってるんだ?」
 春の草原のような柔らかな髪の匂いを嗅ぎながら、胸を揉んでみる。
「はあぁ、感じる…乳首は? うわ!? す、凄いな」
 いきなり乳首を摘みあげると電気が走ったような感度に驚いた。
「と、当然…こっちも」
 左手で乳房を持ち上げ、右手は恥丘を這わせた。
 薄い若草を見ていると背徳感さえ湧き上がる。

「これだけ可愛いんだ。彼氏とかいるのかな? いや、待て、待て。
中身はただのオッサンだったぞ。何、考えてるんだ」
 とはいえ、悩ましい仕草をとる鏡の中の少女を見ていると不思議に
憧れや嫉妬に似たものさえ芽生えてくる。
「どうでもいいや。今は僕の身体なんだ。好きなようにさせて貰うよ」
 意を決して、右手の中指を秘裂にあてがう。
「はうっ! 感じる? まだ触り始めたばかりなのに?」
 さらに中指を内部に潜り込ませる。
「濡れてる…感度いいんだ。可愛い顔して、エッチな事いっぱい
知ってるのかな?」
 中指の第二間接辺りの腹部をクリトリスに当て、指先を膣内に
入れた。
「ぐぅううっ! す、すごいよ。中が熱くて、それにグチョグチョに
濡れてる。クリトリスもイイっ! これは堪らない」

 右足の膝をを洗面台に乗せた。
「これだと良く見えるし、出し入れもしやすいぞ。そ、それにしても、
こんなに純情可憐そうな女の子が信じられない格好でオナニーしている。
こ、これは興奮する…はくっう!」
 膣内からマグマのように愛液が溢れ出す。指を激しくピストンのように
動かすと洗面所の床にポタポタと愛液を垂らす。
「こんなの我慢できる訳ないだろ…くぅっ」
 長い髪を振り乱し始めた。まるで自分の意思から離れたように少女は
行為に没頭し、溺れ乱れる。
「イク…イキそうだ。こんなに早くか? まだ初めて10分も
経ってないのに?」
 左手で乳首を摘む。先ほどは痛いほどだったが、そうせずには
いられないといった行動に走った。
「気持ちイイっ! これが女の性感かよ? すげーよ。もう我慢できない。
イクぞ」
 薬指も協力し、二本で膣内をまさぐるとアッと言う間に絶頂は訪れた。
「駄目だぁ、イク。もうイクっ!!!」

 目の前が弾けた? 真っ白になったかと思うと、そのままバランスを崩し、
危うく倒れそうになる。
「や、ヤバかった…気絶するかと思った…何だよ? これが女の快感
なのか?」
 クラクラする頭を抑えながら、リビングに向かい何とかソファに座れた。
「ふぅー、参ったな。まったく凄いものを手に入れちゃったよ。
男とはまるで違うんだ…これでオナニーするには困らないな」
 思考が正常に戻ると、早くも頭の中は次の自慰行為を考えていた。

「他に使い道はないかな…女の姿で仕事探すか? 女の方が楽で
金になる仕事が多そうな気がするけど。いや、無理か…身分証明
出来ないし」
 両手も両足も組んで、男のような姿勢で考えてみる。
「クシュンッ! 熱が冷めた後だから寒くなってきた。服でも着るか。
え…と、この格好で男物の服を着るのか? そうだよな。それしか
無いしな」
 
 僕は引き出しからシャツと短パンを取り出したが案の定、着てみると
長さもウェストもブカブカだった。
「明日、この子の服でも買いに行こうかな。プレゼントか言って適当に
私服だけ買って、その後、それを着て下着なんか買ってみるか」
 明日の予定を立て、ふと外を見ると暗くなっている。
「飯でも食うか。それにしてもコレ、本当に凄いよ。ずっと着てても
問題無いみたいだ。皮膚呼吸とかも出来るようになっているのかな…?」
 普段の自分の部屋着で夕食の準備をする。夕食といっても、
買い込んであるインスタントかレトルト食品だ。
 それでも女の姿で準備をしていると、いつもとは違う自分に気づく。

「なんだろう? 面倒臭いと思っていた食事の準備もなんだか楽しいな。
この調子で洗い物も掃除もするか。新鮮で楽しいぞ。面白くなってきた」
 食事を終えると鼻歌を歌いながら、普段はやらない掃除や片づけを
始めた。
「ふふん♪ 女っていいな。特別なとき意外は、ずっとこの姿でいよう。
明日の買い物が楽しみだぞ」
 早い明日の準備さえ終えると、僕は深夜ベッドに入った。
(可愛いパジャマとかも買っちゃおうか…後はバッグとか…リボンや
カチューシャも似合いそうだし)
 可愛くなる自分の姿を想像していると、またムラムラしてくる。
(女ってきりが無いんだな。ま、いいや。やっちゃおうっと)
 結局三度、絶頂を迎えるとそのまま深い眠りに落ちた。


(続く)


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