『BAD MEDICINE(良薬は口に苦し)』 【その10】
 作:嵐山GO


 俺の部屋で妹が、美遊が寝ている。すでに着替えも済ませてある。
 冷蔵庫に仕込んでおいた3種の薬とジュースを勝手に飲み干して
くれたので、俺の考えが正しければ、まもなく変身が始まるだろう。
「見ていても仕方ない。美遊の…いや俺の部屋に戻るか」
 カチャリ
 部屋に入って時計を見る。
「1時間程したら、起こしに行こう。今のうちに話す事を考えておかないとな」
 ベッドの上に仰向けになり目を閉じて考えてみる。
 こう言われたら、こう言う、ああ言われたら、ああ言う。何度も、何度も
頭の中でシミュレーションを繰り返す。

「おっと、いけね。俺の方も着替えとかないとな」
 妹から剥ぎ取った下着を含む衣類を拾いあげ、着替えを始めた。
「なんだよ、可愛い格好していきやがって。まさか彼氏んチに、お泊まり
じゃねーだろうな」
 レースで飾られた小さなブラとショーツ、それに合わせるかのように
フェミニンなミニのワンピース。
「へぇー、やっぱ可愛いや。この身体ってホント何着ても似合うのな」
 ドレッサーの前でクルリと回ってポーズを取る。
「あれだな…まだ時間もあるし、軽くオナニーしとくか。それに自分と
セックスするのは抵抗あるけど、それでも濡らしておいた方がいいしな」
 勝手に理由をつけて俺はベッドに横になり、スカートの裾を捲り上げて
指を這わせる。
「ああ…気持ちいイイ…やっぱ女、最高…あうん!」
 堪らずショーツに手を差し入れ、早くも祕裂をまさぐった。
「くうん! やだ…もう、おまん○グチョグチョ」
 俺は時間を気にしながら、ギリギリまで一人エッチに耽った。


「さてと、そろそろか…行くか…」
 部屋を出て、昨日まで自分の部屋だったドアを開ける。
 ガチャ!
「おい、起きろ! 美遊、起きろって」
「う、うーーーん…」
 俺の姿をした妹が、うっすらと瞼を開いてゆく。
「だ、誰? …あれ? 私だ。私がいる。夢…?」
「美遊、目を覚ませ。大変なことになった。よく聞けよ、俺たち身体が
入れ替わったみたいなんだ。俺は三郎だ」
「何…? 何を言ってるの…入れ替わってるって…え? …あれ? 
私、なんで?」
 やっと事態を把握したようだ。半身を上げ、己の姿を見下ろしている。
「ぎゃ、ぎゃーーーーーーっ!!!」
「お、おい。大きな声を出すなよ。落ち着けって。近所に聞こえるだろう」
(「きゃー」じゃなくて「ぎゃー」なのかよ。よっぽど俺の身体が
嫌いなんだな)

「これが、どうして落ち着いていられるのよ! こんな身体、
嫌ぁーーーっ!」
「こら、静かにしろって!」
 俺は手で口を塞いで黙らせる。
「む? ぐ、ぐぐー」
「俺だって、びっくりしてるんだ。自分の部屋で寝ていたら、目が
覚めて見るとお前の部屋だし、姿まで変わっている。もしやと思って
自分の部屋に戻ったら、俺がいるじゃないか。正直、参ってるんだよ」
「む、むむっー、むぐぅ」
「大声を出すと大騒ぎになるだろ? な? まずは2人で何故、
こうなったのか落ち着いて考えてみよう。な? 手を離すぞ。いいか?」
 美遊がこくりと頷いたので俺は手を離した。


(続く)


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