『BAD MEDICINE(良薬は口に苦し)』 【その11】
 作:嵐山GO


 「じゃあ。どうすんのよっ こんな格好じゃ、学校にも行けないし、
友達にも会えないわ。あーーーん」
 今度は泣き出してしまった。
「どうするか考えるんだよ。もし、この事を誰かに話したりしたら…
ま、信じて貰えないだろうが、多分…大変な事になる」
「う、ううっ…大変な事って?」
「だから大学病院とかに無期限で押し込まれて、身体中切り刻まれて
調べられるぞ。それでも、いいのかよ? 学校どころか友達にも
会えないし、友達だって興味本位な目で見るぞ。第一、お前の友人が
会いに来るのは俺の方かもしれないんだぜ」
「だから、だったらどうすんの? 夕方にはママが帰ってくるのに」
「明日、目が覚めたら元に戻っているかもしれないし、
明日じゃなくても2人で頑張って原因を調べていけば、早く元に
戻る方法が見つかるかも
しれないだろ?」

「答えになってない! だから今、この状況をどうすんのって
聞いてんの!」
 さすがスグにでも大学に飛び級出来るほど頭にいい妹だ。こんな
状況下でも冷静に現在と未来を危惧している。
「分かるよ。ちょっと待て。そうだな…とりあえず、お前は俺の
フリをして学校へ行け。美遊なら大丈夫だ」
「お兄ちゃんは私の学校へ行くの?」
「仕方が無いが、そうするしか今は方法が浮かばない」
 腕を組んで懸命に考えるふりだけはする。

「授業は大丈夫だとしても、お兄ちゃんのお友達とかに話し
かけられたら困る」
「大丈夫だ。俺は、その…あまり友人はいないし、普段から
寡黙だから」
(なんか言ってて情けなくなるが事実だ)
「でも私の方は大丈夫なの? お友達、多いんだけど…あ、でも
もうすぐ期末試験だし、夏休みに入っちゃえば会わなくて
済むかも…」
「それに、すぐに受験だろ? 今までみたいに遊んでも
いられないさ」
「私も大学受験に備えればいいのね? でも、そんなに長く
入れ替わったままだなんて嫌だもん」
 女の子っぽい言葉遣いでも、声は男だし俺の身体から
発せられるので気持ち悪い。

「だから、暫く2人で考えよう。元に戻る方法をさ」
「私たち、今日から仲良くするの?」
「そうだ…な。出来るか?」
「う、うん…どっちかっていうとお兄ちゃんの真似をする方が
難しそうだけど」
「それも合わせて俺たちが協力し合えば、どうにかなるさ」
「でも、嫌だなぁ…」
 鋭い目つきで俺を見る。
「何だ? 何が?」
「だって私の裸を見ることになるじゃない! それに部屋の中だって
見るでしょ?」
「そういう事になるな」
(もう部屋も何度も見たし、裸だって。それに初体験だって済んで
るんだぜ)

「ふぅ…他に方法が無いよね。でも、こんな身体…本当
嫌なんだけど」
「悪いなぁ。そんな醜い身体で」
「全くだよ。もう!」
「たまにはデートしてやるからさ」
「やめてよぉ。誰かに見られちゃう!」
「いいじゃんか。仲のいい兄妹を見せ付けてやろうぜ」
(一緒に歩いた事なんか一度もないもんな。これは俺の願望かも)

「お兄ちゃんはいいよねー。私の裸だって見放題だし、体育の
時間には友達の着替えも見れるもんね。ふんっ!」
「ごめん」
「もういいよ。分かった。とりあえず出来ることからやってみる。
仲良くもするよ」
「サンキュ。早く元に戻るといいよな」
(俺は一生、戻りたくは無いけどな)

「…あれ? なんか気持ちを落ち着けたら身体が熱くなってきた」
「元に戻り始めたのかもよ」
(ふふふ、催淫剤の効果が今頃、出てきたんだな)
「何だろう? アソコが痛い」
「アソコって?」
「女の子に言わせるの? アソコって言ったらココなの!」
 真っ赤な顔して、股間を指差す。

「今は男だろ? いや、そうだな…それは男の生理みたいな
もんだ」
「男の子にも生理があるの?」
「女とは厳密には違うが、溜まったものを吐き出さないと
ならないんだ」
「吐き出すって何を? どうやって?」
「精液だよ。知らないのか? 溜まったら出すんだ。大抵は自分で
擦るんだけどな」
「擦る? 私、分かんないよ」
「そうだな。最初だから俺が手伝ってやろうか?」
「やだよ、そんなの。じゃ、放っておくとどうなるの?」
「前立腺の癌になる」
(うん、まあ間違ってはいないよな)

「癌!? そ、それ困る」
「だから、お兄ちゃんが手伝ってやるって。もともと俺のだし、
恥ずかしがっても仕方ないだろ」
「えーん、分かったよぅ」
 俺は着せていたスゥェットのズボンとパンツを今度は脱がす。
「おお、かなり大きくなってるな。これは大変だぞ」
(こんなにデカかったっけ? これが薬の副作用か?)
「なんで、そんなに溜めちゃったのよ」
「今更、言っても仕方ない。いいか、やってやるけど見たく
ないなら目を瞑っても構わない。だけど次からは自分で
やるんだから見ておいた方がいいぞ」
「あーーん、やだよう」
「だから、その喋り方やめろって」
「お兄ちゃんだって、乱暴な口調じゃん」
「ごめんね。じゃ、美遊がやってあげる」
「おえっ、キモっ!」
「やってやんないぞ。自分でやるか?」
「ごめんなさい。やって下さい。お願いします」


(続く)


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