『BAD MEDICINE(良薬は口に苦し)』 【その7】
 作:嵐山GO


 ズ、ズズ、ズーー
 翌日、俺は化学部の友人の家を訪ね、玄関のドアホンを押した。
『はい? 三郎か? 入れよ。鍵は掛けてないが入ったら掛けておいてくれ。
部屋は二階だから、すぐに分かるよ』
「分かった。二階だな」
 俺は周りを気にしながら、ミニスカートの裾を翻し家の中へと入った。
 コンコンッ
 明らかに、あいつの部屋であろうと思われる部屋を見つけノックした。
「入って来いよ」
「お邪魔…します。あ、何だ…、みんな来てたんだ」
 部屋の中には昨日の3人が揃っていた。
(こいつは好都合だな。別々に口封じする手間が省けた。しかし、初体験が
輪姦、じゃなくて乱交かよ…ま、それもいいか)  

「この2人も薬のことは知っているし、今後の事もあるから口面を合わせて
おいた方がいいだろうと思ってさ。それにしても見事に化けたな。本当に
三郎なのかよ?」
 部屋の主が口火を切って話し出す。他の2人も信じられないといった顔を
して見る。
「ああ、間違いない。俺本人だ。ここ座っていいか?」
「そうだな。狭いが適当なところに吸われよ。飲み物はお茶か?
ジュースか? ジュースでいいよな?」
 俺はパンツが見えそうになるのも気にせず、床に座り込むと女の姿で
外出し緊張したせいか、すぐに出された飲み物を口に運んだ。


「さてと、これが睡眠薬だ。別名、睡眠導入薬とも言うが、やはり家庭用の
薬なんで作ったんじゃ効果は薄いだろうな」
「サンキュー。1、2時間も眠れば大丈夫だと思う」
 貰った小瓶を部屋から拝借してきた美遊のバッグに入れる。
「気をつけて使えよ。分かってると思うが、お前がやろうとしている事は
犯罪だぞ。俺たちも加担しているんだから、そこんとこ慎重に頼むぞ」
 あえて俺ではなく俺たちと言ったところにこいつの、ずるさ
見え隠れする。
「分かってるよ。薬については一切、何も喋らない。俺にとっても不利だし」
「しかし、すげーな。本当に身体中、全て女…なのか?」
 黙っていた2人も会話に入る。
「可愛いよなー。すげーよ。マジですげー」
 なんだか同じことばかり言われているが、3人の視線は身体中を
舐めるように這う。

「だがな、目が覚めた時はマジでビックリしたぜ」
 女の身体で女物の服を着ていても、まだ男口調で喋る。
「そうだろうな。でも、とりあえず夕べは両親と過ごしたんだろ?」
「ま、まあな。かなり緊張したけどさ」
「もちろん、妹に成りきって喋ったんだろう?」
「そりゃあね。さすがに乱暴な言葉遣いは出来ないよ。反抗期でも
来たのかと思われるからな」
 3人の熱い視線を浴びているせいか、それとも今後を期待している
からか身体がポカポカと熱を帯びてきた。

「それから今後について、いい案があるって電話で言っていたけど、
そろそろ教えてくれよ」
「ああ、それな。単刀直入に言うなら妹を懐柔させる作戦だ」
「何? 妹を怪獣にする作戦?」
「おい、おい。テキスト読んでる奴にしか分からないようなギャグは
やめろよ」
「悪い。で、その方法は?」
(身体が熱い。特に下半身辺りがムズムズする。そんなに俺、ヤリたい
のかな?)

「この瓶も渡しておく。無くすなよ」
「うん。これは?」
「催淫剤だよ。これをさっきの睡眠薬と一緒に飲ませろ。つまり変身薬を
入れると3種を混ぜ合わせることになるな」
「それって大丈夫なのか?」
「副作用とか、化学反応するような危ないものは入ってない。しいて
言うなら変身が早くなるとか、眠りが深くなるとか…あるいは」
「あるいは…?」
「すげー淫乱になるとか、その程度は考えられる。どうする?」
「わ、分かった。それで俺はどうすればいいんだ?」
「お、いい反応だ。いいか? 方法はこれしか無い。今から言う事を、
しっかりと聞いて実行してくれ」


(続く)


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