転身  (その25)
作:ecvt



(うっひょー!みんなだらしない顔かいやらしい目でオレのこと見てくなぁ!気持ちいい!)
道行く人はみどりの「いやらしいスッチースタイル」に釘付けのようだった。
純情そうな奴にウインクしてやると、そいつは顔を真っ赤にしていた。
ふと俺は、ビルの大きなガラスの前で立ち止まり、そのガラスに全身を映しながら前屈みになり両手で胸を掬い上げてブルブルとしてみた。
「あっあぁぁん!・・・いいねぇ、みどりさん」
俺が今の自分の姿をガラスに映しながら色々なポーズをとって見惚れていると、ビルの中から歓声が聞こえた。
「いっけね、ついついガラスに映る自分に見惚れてたけど、ガラスの中はバーだったんだ!でもいっか、俺が恥ずかしいんじゃないから、別に減るもんじゃないし、この色っぽさを皆さん隠すほうが犯罪だよな、そうだよね?みどりさん?」
「その通りよ!もっと店の皆さんに楽しんでもらいましょう!アテンションプリーズ!これから、わたくし、有坂みどりが踊りまぁーす!」
そう言いながらみどりはガラス内の店の客に向かって、胸をはだけたり、スカートを捲り上げたりしながら、腰をくねらせ色っぽいダンスを踊った。
店は大盛り上がりだった。みどりが踊った歩道側にも人だかりが出来、いつの間にかCDラジカセが置かれ、音楽が流れていた。そして中にはお金を渡してきたり、一緒に写真を撮りたいという奴もいたので記念撮影までしてやった。
「お姉さまはどこかのイメクラのお店の方ですか?指名しちゃおっかなぁ!」
「ごめんなさぁい!わたし、お店じゃなくて本物のスッチーなの!ホラ、コレが私の写真入り名刺よぉん!今、航空会社も不況で大変で・・・だから私が会社の命令でこうやって宣伝活動してるのよぉん!出張のときは是非ウチを使ってねぇん!ウフッ!」
などと言い、踊りながら名詞を配りまくった。


「あぁー、面白かった!ね、みどりさん?」
「本当に面白かったわ!それに会社の宣伝までしてくれて、本当にありがとう!チュ!」
踊りを終えたみどりは、乱れた髪をなおすでもなく、繁華街を歩きながら自らのコンパクトに向かってそう独り芝居をすると、コンパクトにキスをした。
「さぁて、これからどうすっかな・・・ん?俺・・・いえ、[私]はスッチーの卵の教育係でもあってその寮はすぐそば・・・結構恐れられていて逆らう生徒はいない・・・ふふふ・・・そうなのぉ・・・!」
みどりは思い出したように嬉しそうに手を叩くと、今歩いていた方向とは逆に振り向いてニヤニヤとした表情でスッチーの卵たちが暮らす寮へと向かったのだった。


(続く)


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