転身 (その21) 作:ecvt 「ここが梓紗さん・・・いえ、[私]のマンションかぁ・・・辿り着くまでに三回もイッちまったぜ、股間がイテェなぁ・・・しっかし、バイクに跨った俺に見惚れて事故っちまった奴には悪ぃことしたなぁ・・・俺がちょっと腰を動かしながら胸のジッパーを下げてウインクしてやっただけなのにな!それに、俺に見とれて助手席の彼女みたいな奴とけんかになってた奴もいたなぁ・・・俺って魅力的ぃ!おぉ痛ぇ・・・」 中身が俺になってしまった梓紗は、双頭バイブを自らの股間から引き抜いてバッグに入れると、股間を摩りながらがに股でマンションのエントランスに入っていった。 「さて、記憶を・・・ん、待てよ、何もかも知ってるマンションの部屋に入るのも新鮮味がないし・・・よし、ワザと梓紗さんの記憶を読まないことにしよう」 そう言いながら梓紗はその場にがに股でしゃがみ込み、自分のバッグを乱暴に漁りだした。 「あったあった、コレが免許証で・・・ふむふむ、702号室ね・・・おっ、私ってもう29歳だったのねぇん!さっきまで16歳だったのにね!今やもうすっかり大人の女よぉん!でへへ・・・」 そう言いながら梓紗は、しゃがんだまま片手でコンパクトと免許証を持ち、鏡に映る自分の顔と免許証の写真を見比べながら、もう片方の手で自分の胸を揉みだした。 「あふぅん・・・こ・・・これが俺・・・写真も鏡に映る顔も・・・どっちも美人よねぇん・・あぁん!」 いつもと違う梓紗の様子が気になったのか、管理人室の窓越しに気の弱そうな管理人が顔を出してきた。梓紗のありえない格好に鼻の下が伸びきってるようだ。 「あらら、見てたのね・・・ここは自重して、と・・・」 片手を胸から外した梓紗は、名残り惜しそうな表情でジッパーを上げ、再びバッグを漁って鍵を取り出すと、入り口の機械の前に立った。 「ふぅ、緊張するなぁ、まったく知らないマンションに入るの・・・まずは入り口のオートロックを・・・えっと・・・鍵穴は・・・あった、あった・・・ん?鍵回したのに開かないぞ?・・・ん?」 管理人はまだニヤけた表情で梓紗の様子をじっと見ている。 「横に機械が・・・おぉ、この人のマンション、指紋認識なんだぁ、すっげぁなぁ・・・どれどれ」 今や俺の物となった梓紗さんの指を機械に入れると、スゥっと自動ドアが開いた。 「おぉ、開いた開いた!俺の指で開いちゃったよ!ま、当たり前かぁ、俺って伊東梓紗なんだからな!チュッ!」 嬉しそうにガラスに映る自らの姿にウインクを投げかける梓紗の姿に、まるで奇異なものを見るような管理人の視線が突き刺さった。 (あらら・・・管理人さん、まぁだ見てたのね) 管理人は、梓紗の格好をもっと見ていたいという欲望と、姿は間違いなく[住人の伊東梓紗]なのだが、その様子は明らかに[このマンションに初めて入るかのような不審者]である梓紗に管理人として声を掛けなければ、という使命感との板ばさみにあいながらも、梓紗に声を掛けたのだった。 「ちょっ、ちょっと・・・」 (お仕事ご苦労なこった・・・このまま無視して行ってもいいけど、梓紗さんの印象が悪くならないためにも、ちゃんと管理人さんに対応してやらないとね!俺のやったことは梓紗さんがやったこととして世の中に出ちゃうんだから!) 「何か御用かしら?私、ここの住人の伊東梓紗なのよ。ご存知よね?じゃ、私の指で開けたドアから私のマンションに入るわよぉん!何か問題あるかしら?」 「い、いえ・・・何も・・・でもその・・・いつもと様子が・・・」 「え?様子が何?何も問題ないわよ。ねぇ、指紋認証で開いたのだから私は伊東梓紗本人に間違いないわよね?その本人が問題ないって言ってるならいいんじゃなくて?ガラスに映る自分の姿に見とれちゃいけないとでも?それとも様子が違うと入れないというの?」 「そ、そんなことは・・・でもいつもと格好が・・・」 管理人は少しニヤけた表情で顔を赤らめながらそう続けた。 「格好?コレは私の趣味よ!さっき急にこういう格好が好きになったからしてみただけよ」 「そ、そうですか・・・」 指紋認証でドアが開けられるのは登録した本人だけなわけだし、様子も本人が問題ないと言っているし、服も本人の趣味と本人からキッパリと言われてしまえはもう指摘するところも無いわけだが、管理人は首かしげながらもうニヤけた表情でチラチラと俺の胸元の方を見ている。 (チッ、しつけぇなぁ・・・俺の梓紗さんの胸をチラチラ見やがって・・・さては話を引き伸ばしてコレを見たいってことかぁ?とっとと下がりやがれ!優しく対応するのはもうやめて引きずり出して水下にパンチを・・・いや、ここは梓紗さんのためにも[優しく]対応して奥に下がってもらいましょう・・・ニシシ・・・) 「じゃ、問題ないみたいだけらもう行くわね。コレはいつもしっかり管理して下さってるお礼よ!うふっ!」 そう言って管理人に向かってジッパーを下げてから左右に広げて胸元を強調しながらウインクしてやると、管理人は顔を真っ赤にして管理人室の奥へと下がっていった。 「うんうん、ちゃんと管理人さんにも愛想よくサービスしておかないとね!これで梓紗さんのイメージアップになったかな!さぁて、[私]の部屋に入らせてもらうとしますか!いいよね、梓紗さん?」 「えぇ、もちろんよ!今やあそこはあなたの部屋なんだから、好きなように使って、好きなように物色してちょうだい!それに管理人さんにもあんなサービスしてくれて、本当に嬉しいわ!私のことも考えてくれてありがとう。チュッ!」 「いやぁ、梓紗さんがそう言ってくれるなら嬉しいなぁ、なぁんちゃって!ニシシシ・・・」 「うっふん、私は伊東梓紗なのよぉん!」 梓紗はニヤけた表情でガラスに映る自分の姿に向かって一人芝居をすると、クネクネと大きくお尻を振りながらながらエレベーターに乗り込んで部屋に向かったのだった。 (続く) |