転身 (その15) 作:ecvt 「ん?このドアは・・・コーチ室、天本美岬・・・で・・・コッチのドアは・・・お、裏口かぁ。駐車場辺りに繋がってるのかな?どれどれ・・・」 俺は途中で裏口へのドアを見つけたので、ロックを外して開けてみた。 「お、あの黒塗りの車が南さん・・・じゃなかった、私の車ね!お、じいやが後席で寝てるわ。俺のじいやがね」 じいやは南が生まれたときからずっと南の身の回りを任されている忠実な執事だ。男性不振になった南も、このじいやにだけは何でも話せていたようだ。 「恩あるじいやをこの色っぽい身体で喜ばせてやるか?いや、それよりもまずプールプール!」 俺は裏口のドアを閉めると、プールへと向かった。 「もうすぐコーチがいらっしゃるわ!失礼のないようにね!」 「ハイ!」 南となった俺がプールサイドに向かう途中、緊張感に満ちた声がプールの方から聞こえてきた。 「ん?なんだ?何が始まるんだ?」 俺が不思議に思ってプールへと走り出そうとすると、後ろから歩いてきた水着姿のコーチらしき女性に呼び止められた。 「あなた、これから私の[聖白バラ女子高校水泳部]の特別レッスンよ、一般の方は遠慮して下さらない?確か入り口に張り紙をしてあるハズですけど?」 「はぁ・・・そうだったんですか」 (なんだ、そういうことか、だから誰も来なかったんだな・・・) 「そういうことなので、直ちに退去して下さい」 そう言うと女コーチはプイッと向きを変え、コーチ室へと入っていってしまった。 (なんだよ、あの態度!でも、引き締まってていい身体してんなぁ・・・それにあの美人ぞろいで有名な聖白バラ女子高の水着姿、間近で見てみたいしな・・・えへへ、そうだ!) 俺は急いで裏口を開けると、水着姿のままじいやの寝ている車へと向かって走り出した。 「うおう!胸が揺れんなぁ、この身体!両手で押さえるか!」 南は揺れる胸を両手で押さえながら、人々の好奇の目を気にすることなく全力疾走でじいやのいる車へと向かって走った。 [コンコン] 「じいや、起きなさい!」 「はっ、お嬢様!失礼いたしました。そんな格好で一体・・・!?」 じいやは顔を赤くして飛び起き、車から降りてきた。 「どう?色っぽいでしょ?」 そう言ってポーズを決めると、ウインクしてみせた。もうじいやの顔は真っ赤だ。 「触ってもいいのよ!」 そう言って俺は南の胸をウリウリと前に差し出した。 (このじいや、小さい頃から愛情込めてお世話したお嬢様が見ず知らずの男に乗っ取られてるなんて知ったら卒倒するだろうね・・・) 「い、イケません、お嬢様そのような破廉恥な・・・」 「あら?いけない?私には触らせるほどの魅力が無いっていうことなの?じいや、ひどいわ!」 「そ、そのようなことは決して・・・ではちょっとだけ・・・」 顔を赤らめたじいやが、少しだけニヤけながら、ゆっくと手を出した瞬間、 「ま、冗談はこのくらいにして、じいやに頼みがあるのよ」 と、切り出した。じいやは小さくため息をついて残念そうに手を止めた。 (ばぁか!この身体は今は俺だけのものだよ!誰がタダで男に触らせて喜ばせてやるかっての!) 「は、は、はい!なんでございましょうか?何なりとお申し付けくださいませ」 「今すぐアダルトショップに向かって[双頭バイブ]って言うのを買ってきて、裏口の前で待っていてちょうだい。そのうち天本美岬っていう女コーチがそれを受け取りに来るから渡してちょうだい。彼女に失礼のないようにね!わかった?」 「は、承知いたしましたが、そのようなものを一体・・・?」 「私、男性不振になってしまったから、男より女に興味持つようになっちゃったのよね。まずはレズってHな事への恐怖心を取り除こうと思うのよ。こんな事頼めるのじいやしかいないの。おねがい、ね?それでHなことへの恐怖心が無くなったら、今度は一番信頼のおけるじいやと・・・ね?その為にも、お・ね・が・い」 そう言って俺はじいやの両手をとって南の胸元に持っていくと、じいやの目をジッと見つめ、目を潤ませてじいやに向かってウインクしたのだった。乳首がじいやの指に当たっている。 (これはサービスだぜ、じいや・・・) 「はい、直ちに買ってまいります!」 じいやは急いで車のエンジンをかけると、飛び出していった。 (あはは・・・バカな奴!このお嬢様がそんなこと頼むわけねぇだろう!小さい頃から世話しててそんなことともわからなぇとは・・・Hに目が眩んだか?) 「いやぁん!双頭バイブだなんていやらしいぃん!さぁて、お次は・・・」 そう言ってクネクネとポーズをとった南は、裏口から建物内へと戻ると、先程の女コーチ、天本美岬の警告を無視して、こっそりとプールサイド横にあるシャワーや手洗い水道があるゾーンの仕切り壁の影から覗き込んでみた。 丁度レッスンが始まるところのようだ。 「よろしくおねがいします!」 コーチがプールサイドに立つと、生徒達がビシッと整列し大きな声で一斉に挨拶をして一礼した。 「はい、よろしくお願いします。では点呼!」 「ハイ!番号、いち、に、さん、し、ご・・・・・・!」 (おぉ、美人ばっかり!それにしてもすげぇなぁ!あの統率力、カリスマ性、あんな美人達がコーチの言うがままだよ。俺もコーチやってみたいなぁ・・・えへへ・・・それにやっぱりあの女コーチが一番いい身体してんなぁ・・・) 「あんっ、コ、コーチィー・・・あぁん!いけないわ、わたくしとしたことが、またこんなところでコーチにお発情してしまうなんて・・・で、でも、止まらなぁーい・・・私ったら小さいころからお父さま、お母さま、お婆さまに着付けや茶道、躾、厳しく教え込まれたのに、こんなところで女コーチに欲情してオナニー・・・なんてお下品な女に成り下がってしまったんでしょう・・・・あんっ!で、でも、もう止まらなぁい!」 興奮した俺は、ワザと記憶にある南の喋り方を誇張して喋りながら、水着の胸をはだけてオナニーを始めた。 「あのコーチの胸とこの私の胸、どっちが大きいのかしら・・・触ってみたいわぁ!あぁあぁん!」 「よし、全員いるな、ではまず柔軟体操・・・・ん?ちょっと待つように、すぐに戻ります」 「ハイ!」 点呼の確認を終え、柔軟に入ろうとしたコーチだったが、壁の影から覗いてオナニーをしていた俺に気付いて、ツカツカとこちらへ向かってきた。 (あちゃー、来ちゃったよ・・・もうちょっとでイケそうだったのに・・・とりあえず胸は水着の中にしまうか!) 「ちょっとあなた、どちら様?一体どういうつもりなの?先程ここを退去するように申し渡したハズよね?」 「え、えぇっと・・・わ、わたくし、あの大金持ち、日本一のグループである奥山グループ会長の一人娘、奥山南と申しまぁーす!」 (うん、これは嘘じゃないよな) 俺は、慌てて水着に中に押し込んだ南の胸の形を整えながらそう答えた。 「あぁ、奥山っていえば確かここのクラブにも出資なさっているようね。で、そのお嬢様が何の御用なのかしら?ずいぶんと自己紹介の仕方も先程おやりになっていた行動も下品なんですね」 女コーチは相当腹が立っているようだった。 (あらら、オナニーしてたのもわかってたのね・・・ま、やったのは奥山南だから俺には関係ないけどね) 「・・・えへへ、こ、これはコーチの色っぽいお姿に興奮してしまってつい・・・」 南は鼻息を荒げてコーチの胸を凝視し、自分の胸を両手で揉みながらそう答えた。 「はぁ・・・・で?」 「あぁ、それで、私、[コーチ]になりたいと思いまして・・・私にちょっと[コーチ]をやらせてもらえませんか?あんっ!」 南は、片手で胸を揉み、そう片方でお尻に食い込ませた水着を引っ張りながらそう答えた。 「は?何をおっしゃってるの?」 「あんっ!だ、だ・か・ら、[コーチ]になりたいんです・・・はぁっ、はあっ・・・いいでしょ?」 「はぁ?コーチって・・・あの娘たちが私以外の・・・ましてやあなたなんかの言うことを聞くとでも思って?」 「ぜ、絶対、き、聞きますよ、だって私はこれから・・・[コーチ]に・・・な、なるんですから・・・ひゃうっ!」 「・・・?ばかばかしい・・・あなたはコーチになる前に、まずは水泳を習い始めることからでもお始めになったら?」 「い、いえ・・・そ、そんな必要・・・はありません・・・よ、す、すぐに・・・[コーチ]になれるんですから・・・あっはぁぁぁぁぁぁぁ・・・」 絶頂に達した南は床に崩れ落ちた。 「はぁ・・・まったく・・・今すぐになれるものならなってみなさい!出資者の娘だかなんだかわかないけど、いい加減にしてちょうだい!わかったら早く退去なさい、これ以上お嬢様の戯言につきあってられないわ!出ないと人を呼ぶわ・・・ひっ、ひとを・・・ひと・・・」 俺の物言いに呆れと怒りに満ちた顔をして振り返ったコーチは、振り返った目線の先にあった、水道の鏡の前で突然足を止めた。 「ひと・・・、と、ひとを・・・」 そして硬直した表情で一点を見つめながら苦しそうに口をパクパクとさせたのだ。 「ひと・・・・を・・・・呼ぉばないっと!ふっ、ふふっ、やったぁ!残念だったな!これで俺がコーチだぁ!嬉しいなったら嬉しいな!」 そして先程までとは一転した嬉しそうな顔でガッツポーズをとった女コーチは、そう言いながら踊りだしたかと思うと、ニヤニヤとした表情で自分の顔を撫で始めた。 そう、彼女は不幸にも振り向いた瞬間、その先にあった水道の鏡に映る俺と目を合わせてしまったのだ。 「おぉ、今度はこれが俺かよぉ・・・いいねぇ・・・この身体・・・」 つまり、俺はこの女コーチに転身したのだ。 鏡には、先程までの表情とは打って変わって、だらしない表情で自分の身体を撫で回す女コーチ、天本美岬の姿があった。 「えへへ、美人だなぁ・・・」 俺がこの新しい自分の顔、天本美岬の顔に見とれていると、 「コーチ、どうなさったんですか?何かありましたか?」 と、俺に生徒が呼びかけてくる声がプールサイドから聞こえてきた。 「コーチ?そ、そうか、コーチって今はもう俺のことか・・・ウ、ウホン。だ。大丈夫よぉん!なんでもないの!今行くわぁ!整列してなさいねぇん!」 「は、はぁ・・・コーチ・・・?」 俺は美岬の声でそう答えたが、生徒たちは先程までと全く違う口調のコ−チの呼びかけに、拍子抜けして首を傾げているようだった。 (あらら・・・もっと彼女になりきらないとな・・・俺は今や彼女たちのカリスマコーチなんだから!) 俺は彼女の脳から彼女に関する情報を引き出し、自分のものとすると改めて美岬の口調を使って答えなおした。 「すぐに戻ります。直ちに全員整列!」 「ハイ、コーチ!」 (おぉ、いいじゃん、いいじゃん!) 「返事が小さい!わかったの!?」 「ハイ!すいません、コーチ!」 急にいつもの厳しい口調に戻ったコーチの言葉に、皆一同緊張して一瞬にして整然と整列をした。 「気持ちいい!ほらほらぁ!俺の事、コーチだってよ!それに俺の言うことも何でも聞くじゃん!」 美岬は鏡に映る自分の姿に向かって、嬉しそうに意気揚々とまくし立てていた。 「ごめんなさぁーい!私の負けね!お詫びに私の身体を好きに使ってコーチしていいわよぉーん!」 「はーい!じゃ、お言葉に甘えて、えへへ・・・」 中身が俺になってしまった天本美岬は、床に倒れた奥山南を気にする様子もなく、鏡に向かってニヤニヤとした表情でそう一人芝居した。 「あー、[コーチ]はこんな表情じゃだめよね」 そう言いながら自分の顔を鏡で確認した美岬は、先程までの表情とは打って変わってキリッとした表情をつくった。 「うん、やっぱり美岬さんの表情はこうじゃないとな!じゃ、天本美岬様がみんなのもとに戻りますからねぇん!」 姿、表情、立ち振る舞いは以前と変わらないが、生徒達を待たせて行く前とは中身がすっかり俺に変わってしまった天本美岬は、そんなことも気付かれることなく、颯爽と生徒のもとへと戻っていった。 (続く) |