転身 (その5) 作:ecvt 「あら、藤村さん、で、中の様子はどうだったの?被疑者は?持っているのは証拠品なの?」 デパートの外に出た俺は見知らぬ婦人警官に声をかけられた。髪をアップにした知的な感じのする女性だ。 (おっ、大人の雰囲気!いい女じゃん!えーっとこの人は・・・雨宮晶子。この奈々子って人の上官で指導係か、へぇ、結構偉いんだ。この人の方が権限あるみたいだし、何かと便利かな!それにあのむっちりした大人の太もも・・・アレに網タイツにガーターベルトなんてはかせたら・・・にしし・・) 「藤村奈々子さん!どうしたの?急にニヤニヤして!報告なさい!それに一体どうしたの?その格好は・・・?」 「はい、これはミニスカポリスです」 「ミ、ミニスカ・・ってちょっと藤村さん!」 「まぁまぁ、外で話すのもなんなんで、詳しくはでは車の中で、さあさあ・・・」 そう言うと俺はいつもの藤村さんと同様に運転席に、上官の雨宮晶子は助手席に座った。 「で、藤村さん一体どういうことなの?上官に向かってその口の聞き方はなんなの?その格好は?それにその袋に入った大量の下着は一体何なの?」 「だからぁ、ミニスカポリスですって!で、これは押収品です!で、一つ気に入ったのがあったんで着てみました!見てください!色っぽいでしょ?」 俺はふざけた表情でそう言うと、シャツのボタンを外し、スカートを捲り上げると、ピンクの下着を雨宮晶子に見せたのだった。 「あ、あなた、頭がどうかしてしまったの?あんなに真面目だったのに・・・それで被疑者は?」 「ひぎしゃぁ?あぁ、犯人ね・・・逃がしちゃいましたぁ!そんなことより、この網タイツとガーターベルト、先輩に似合うと思うんですけど、着てみませんかぁ?」 「じょ、冗談じゃないわ、何で私がこんな娼婦のようなもの・・・絶対に着るもんですか!あなたも早くこれを脱ぎなさい!上官の命令ですよ!?」 「しっ!、先輩、さっきの犯人なんですけど、今車の後ろに・・・!」 「え?どこに・・・?」 「振り返ってはいけません!犯人に気付かれます!そぉーっとバックミラーで確認してください。そぉーっとですよ・・・」 「え、えぇ・・・」 そういって雨宮晶子がミラーを除いた瞬間、俺は彼女と鏡の中で目を合わせた・・・! 「ひっ・・・」 「・・・・・・ふぅ、成功!これで今度は俺が上官だね!上官の命令は絶対なのよね、うふふ・・・俺は雨宮晶子・・・雨宮晶子なのよ・・・」 まんまと雨宮晶子になった俺は、雨宮晶子の顔を使って鏡に向かってバチッとウインクした。 「はっ、あ、あれ?先輩、私一体・・・?」 「気が付いた?あなた、トイレで気絶していたから私がここまで連れてきたのよ?」 そう言いながら俺は、怪しまれないように奈々子の身なりを整えていった。 「そうだったんですか・・・わたし、また失敗してしまいましたね」 「そんなに悔やむことないわ、私にはとっても役に立つことをしてくれたんですから、えへへ・・・」 「え?でも先輩、何でそんな嬉しそうな表情で御自分の身体を眺めてるんですか?なんか先輩、いつもと雰囲気が違うような・・・」 俺は嬉しさのあまり、思わずニヤけた表情で雨宮晶子の身体を嘗め回すように眺めてしまっていたのだった。 「い、いえ、な、なんでんでもないのよ」 (うるさいなぁ、コイツはもう邪魔だな、それにコイツは俺をさっきビンタしたんだっけ・・・ようし・・・) 「で、あなたが気絶している間に私に特別任務が出たから、あなたは駆け足で署に帰って私の連絡を待ちなさい!これは極秘任務だから誰にも言ってはダメよ。わかった?」 「え?で、でもいきなり駆け足でって・・・電車は・・・?」 「ダメよ!あなた、私が誰だと思ってるの?」 「誰って・・・雨宮晶子先輩、私の上官です」 「そうよね!では上官である私の命令は絶対よ!私が駆け足でと言ったら駆け足で!わかった?では、復唱して!」 「はっ、私、藤村菜々子はこれから駆け足で署に戻り、連絡を待ちます!」 そう言って敬礼した奈々子は、俺が雨宮晶子の姿と声を使って出した命令を復唱すると、その通りに署に向かって走っていった。 「あははは!ここから署って結構遠いぞ!頑張れよー!あぁ、いい気味だ!さぁて、邪魔者もいなくなったことだし、この身体に網タイツとガーターベルトを着けてみますか!お、これにはこの黒のレースの下着が似合うな!にしししし・・・」 俺は車の中でバックミラーに自分の姿を映しながら、今や自分の身体となった雨宮晶子の制服を脱がすと、それらを身に着けていった。 「ふふふ・・・さっきまで「こんなのもは絶対着ない」と断言していたのはどこの誰だったかなぁ?あぁ、わたしだっけぇ!あはははははは・・・!こりゃ面白い!」 道ゆく人は、車の中で自分の姿をバックミラーに映しながらニヤニヤした表情で着替えをする婦人警官の姿を、驚いた表情や好奇な表情で見ていったが、「雨宮晶子」がやっていることなので俺は全く恥ずかしくもなく、気にもしなかった。 「スカートも短くして・・・と、完成―っ!うっふぅーん!色っぽーい!これで俺が大人の女性かぁ・・・!にししししし!」 俺は鏡に向かって何度も脚を組み替えてみた。 「こ、このムチムチ感・・・うーん、最高!」 鏡には、だらしなく緩んだ本当に嬉しそうな表情をしている雨宮晶子の姿が映っていた。 「さぁて、これで立場も車も手に入ったし、俺の身体を捜しに行くとしますか!」 そう言った俺は車の助手席から降りて運転手席に移ると、エンジンをかけて車を発車させるのだった。 (続く) |