REPLICA(レプリカ)改 作・JuJu chapter-045 ”女の体、男の心(Y)” マコトは立ち上がるとベッドまで歩いた。シーツを引っぱると、だまって茜に差し出した。茜はシーツを受け取ると、その端で顔をぬぐった。 「どうやって逃げ出したんだ?」 「國谷さんが来て、助けてくれたの」 「また國谷が?」 マコトは茜から受け取ったシーツで体を拭きながら言った。 「あいつ、いったいどういうつもりなんだ?」 体を拭き終わったマコトは、汚れたシーツをベッドの上に捨てた。 「服はどこだ?」 マコトは辺りを見回した。茜は床に脱ぎ散らかしてあった服を拾うと、マコトに着せはじめた。 マコトの氷村に蹴飛ばされた痛みはほとんど癒えていたが、下半身はいまだに快感を欲しがっていた。アソコが疼いてまだホースが入っているような感じがする。 マコトはその事を茜に知られたくないと思った。だからマコトは人形のように立ったままで動かず、茜に服を着せてもらっていた。動くとその仕草から茜にその事がばれてしまいそうな気がしたのだ。 マコトは目を閉じ、股間の疼きが収まるのを待った。 下着が終わり、茜は黒のワンピースを着せ始めた。あれほど嫌だったメイドの服だが、着せていく毎に心が安らいでいくことが分かる。 鈴香と同じ服を着せられているせいだろうか。鈴香の事を思い出した。 (鈴香もこんな風に疲れたように体がだるいのだろうか? 俺の場合はしばらくすれば元に戻るだろう。だが鈴香の場合は二度と回復しない。 俺も鈴香と同じ人工の肉体だ。俺も近い内に鈴香みたいに、こうして身体がだるくなったままで回復しない時が来るのだろう。鈴香の様に体が動かなくなり、そして死ぬことになるのだろう) 茜の声がした。 「ほら、終わったわよ! いつまでボウとしているのよ? 男の子でしょ! しっかりして!」 「まだ俺のことを男だと認めてくれるのか? ――俺は、その……茜も見ていただろう? 俺は、女の快感に溺れて……」 「でも、最後までプロテクトの秘密は話さなかったでしょ?」 「それは、途中で茜が止めてくれたから」 「マコトは秘密を守った。氷村の造った女の身体に屈しなかった。 それだけで充分よ。たしかに身体は女の子だけど、心は男の子の誠なのよ。 しっかりして、本当の戦いはこれからなんだから。こんな所でいじけている余裕なんてない。そうでしょ?」 「そうだな」 (茜の言うとおり、ぐずぐずしている時間はない) マコトは思った。 (ここまで来たんだ。 久保田の説明だと、本物の誠と鈴香の体がある部屋は目の前だ。國谷が漏らした研究所の資料が本当ならばの話しだが。 俺の寿命は短い。だが、本当の誠と鈴香を救い出すには十分すぎるだけの時間がある) マコトは考えることをやめた。今はこんなことを考えているときではない。 早く久保田たちと合流して、氷村から本物の俺と本物の鈴香の身体を奪い返さなければならない。 * マコトは廊下に出ようとして力を込めてドアを引いていたが、ドアは堅く閉ざされ微動だにしなかった。 茜はドアのスイッチを捜していた。ドアの横の壁にスイッチを見つけた。だが、押しても何の反応もなかった。茜は何度もスイッチを押した。 「氷村が鍵をかけていったんだろう。考えてみれば、氷村が俺達を逃がすはずがない」 マコトと茜は恨めしそうにドアを見ていた。 その時、部屋の照明が点いた。ドアが勝手に動き始めた。空調機の微かな音もするようになった。マコトを苦しめた、ホースも息を吹き返し音を立て始めた。 開き始めたドアの隙間から人影が見えた。 (氷村が帰ってきたのか!?) マコトたちは身構えた。 ドアが開く。ドアの向こうの影は、久保田だった。 「なんだ久保田か。おどかすな!」 「二人とも無事だったか」 「みんな助かったみたいね。 あれ、鈴香さんは?」 「鈴香は俺達が拷問を受けた部屋に置いてきている。 それよりマコトと川本さんは献体保管室に急ぐんだ。そこに俺達の目標である、上原と鈴香の身体がある。 場所は憶えているな? この廊下をまっすぐ進めばいい」 「お前はどうするんだ?」 「鈴香と合流して、後から追う。先に行け」 「だったら俺達も鈴香を迎えに行く。な、茜?」 「鈴香を迎えに行くだけだ。俺一人いれば十分だ」 「だが、電気が復旧したって事は、氷村が戻ってくるって事だろう?」 「……。 だから、お前たちは先に行けと言っているんだ」 「とにかく鈴香を置いていけるか!」 マコトは茜の腕を引っぱった。 「え? マコト? 歩けるようになったの?」 「こんな時に、休んでなんていられないからな」 結局、全員で久保田が拷問を受けていた部屋に戻ることになった。 だがマコトは、まだ股間が疼いて早く歩けなかった。 「大丈夫?」 心配した茜が、マコトのそばによってきた。 「大丈夫だって。氷村が帰ってこない内に急ぐぞ!」 * マコト達は鈴香の待っている部屋に戻った。 だが、そこに鈴香の姿は見えなかった。 つづきを読む |