REPLICA(レプリカ)改 作・JuJu chapter-027 ”侵入(V)” 保安室のドアが開いた。 同時に、俺は廊下に向かって走った。敵はドアの影に俺が隠れている事に気が付いていなかったらしく、先を制するには充分だった。 だが、せっかく先制を取ったのに俺の体は固まってしまった。 「女!?」 目の前に三人の女がいた。 驚いたのは相手が女と言う事だけでは無い。三人共ものすごい美人ぞろいなのだ。スーツ押し上げるたわわな胸、スカートの生地がはちきれんばかりのお尻。細く形のよい腰など、見事なプロポーションを持っている。 彼女達は飾り気の無い清楚な制服を着ていたが、いやらしく豊満な体を清楚なスーツで包みこませる事になってしまい、その差が逆に男心を高ぶらせる。 俺はてっきり、警備のために雇われた屈強な男が出てくると思っていた。だが出てきたのは彼女達だった。侵入者を排除出来る程の力はなさそうだ。そのため俺はすっかり油断をしてしまった。 俺が彼女達に見とれて油断している間に、二人の女達が俺の両脇に回った。左右から俺の両腕を掴んでくる。掴むと言うより抱きついて来たと方が正しい。俺は左右から大きな胸を押し付けられる格好となった。 とにかくドアの前からこいつらを連れて離れなければばならない。ドアのそばから人がいなくなれば、ドアが閉まって再び鍵を開けるのに時間がかかる。 それはわかっていた。だが四つの胸は俺の理性を溶かすのには充分だった。さらに正面から女が近づいて来る。この上さらに美女に抱かれるのか? こんな美人達ならば捕まってもいい。 そう考えた時だった。 「マコト! 大丈夫!?」 背後から茜の声がした。俺は首を後ろに回した。保安室のドアの窓から、茜が不安そうな顔で俺を見ている。 (茜……俺を心配してくれるているのか……?) 茜は、俺を助けるために今にも廊下に出て来そうだ。それでは何のために茜を保安室に残したのかわからない。 「くそっ!」 俺の心に理性が戻ってくるのがわかる。危ない所だった。こんな色仕掛けにひっかかるとは! 「大丈夫だ! 俺一人でなんとかする!」 俺は体をねじって女を払おうとしたが、両側から抱きつかれていて身動きが取れない。電撃棒も美女に見とれて電源のスイッチを入れていない。 俺は彼女達の術中にはまっていた。さらに残りの一人の女が両腕を伸ばして俺に向かってくる。 だが、その動きは遅く緩慢だ。 (美人だと思って油断したが、もう手加減はしない! こいつらは敵なんだ) 俺は両脇にいる女を支えにして床を蹴ると、正面から迫ってくる女めがけて蹴った。 足が高く上がる。しなやかでバネのある足に自分でも驚いた。 俺の両足は女の腹に喰いこんだ。 目の前にスカートが舞う。俺の着ているメイドの服だ。自分がスカートを穿いている事を思い出し嫌な気分になったが今はそれ所ではない。 目の前からスカートが消えると、床には女が倒れていた。 よし。女になって力が無い分をしなやかさで補えるかもしれない。 体重をかけたため両腕にいる彼女達の掴む腕が僅かに緩んでいた。 チャンスだ! 俺は右足で、右脇にいた女の足元を蹴り払った。床に転がる右の女。さらに左側にいる女の腕を掴み、立ち上がろうとしていた右の女に投げつけた。 「ふー」 俺は女達を見下した。 ぐったりとして床につっぷしている三人の女。 とどめをさしたかったが、それより今は息を整えたかった。警報は鳴りつづけている。次の相手はすぐ来るだろう。少しでも息を整え体力を回復させたかった。 俺は手足を動かして自分の体の感触を確かめる。派手に動いてみて、この体があまりにも自在に動く事に驚いた。女の体だと言う事を忘れてしまいそうだ。その違和感も男だった誠の記憶がそう訴えるだけである。戦っている時に胸に物が当たったり、時々目に入るスカートが邪魔なだけで、体の感覚としての違和感はなくなっていた。 (やっぱり俺は誠じゃない。誠から作られたレプリカなんだな) 俺は床に倒れている女達を見た。ぐったりと倒れている。だがその顔は無表情で感情はなかった。 「マコト!」 女達が動かない事に気が付いたのか、茜が保安室から出てきた。 「これがドールなのね……。初めて見た」 茜が言った。 ドール。俺は大熊猫の店長に貰った雑誌を思い出した。美人でスタイルも良いが、無表情でマスターの命令通りに動くクローン人間。 こいつらが、そのドールなのか? 俺達が床に倒れたドールを見ていると、廊下の奥から足音が聞こえて来た。乾いた皮靴の音が何重にも聞こえる。 廊下の奥から新たなドールがあらわれた。十数人はいるだろうか? ゆっくりと、こちらに向かって歩いて来る。床に倒れている奴らと同じ制服を着ていた。美人でグラマーだが無表情。 「まるで人形が歩いている様ね」 茜が言った。 「ドールとはよく名付けた物だな」 俺は言った。 有機的な肉体の動きと無機質な表情に恐怖感さえ感じる。そして、俺もこいつらと同じクローンだと思うと悔しささえ感じる。 (こいつらに記憶と感情を与えた物が俺なのか?) だが、そんなことを考えている余裕はなくなった。床に倒れていた三人が立ち上がったのだ。 俺は茜を保安室に押しこむと、敵に向かって振り向いた。無表情でゆっくりと俺に迫ってくるドール達。ホラー映画で見たゾンビを思わせる。 敵が弱い事はさっき戦ってわかった。だが、今度は数が多い。油断は出来ない。 電撃棒を胸に引き寄せて構えた。電撃棒が胸に当たる。くそう、胸が邪魔だ。 俺は目の前のドールに叫んだ。 「来い! 一人たりとも、ここを通しはしない!!」 つづきを読む |