REPLICA(レプリカ)改 作・JuJu chapter-020 ”マコトのメンテナンス(T)” 「こちらのお部屋です」 鈴香がドアを開ける。 俺は部屋に入った。プロテクトが外れ自分を取り戻してから初めて入る、俺のメンテナンスの部屋。 部屋を見渡す。何個かのダンボール箱とメンテナンスカプセルが置いてあるだけだ。ベッドが置いてあるかもしれないと思った、俺の微かな期待は裏切られた。 「やっぱり、入らなきゃだめか?」 俺はメンテナンスカプセルを見ながら言った。 「はい」 鈴香が言った。 俺のアパートで、メンテナンスをしていた鈴香の姿が頭に浮かんで来る。鈴香はカプセルから伸びる、チ○ポに似たホースを体に刺していた。今度は俺があれをやるのか? 「失礼します」 後ろから鈴香の声がした。鈴香が俺のエプロンの紐をほどく。エプロンが外れると、今度は前に回り、ワンピースの胸ボタンを外して行く。 「マコト様。両腕を上げて、体を前に折ってください」 俺はバンザイをして、そのままお辞儀をするように体を前に倒す。鈴香がワンピースをひっぱって脱がす。 俺は自分の体を見た。ブラジャーに包まれた胸が見えた。この胸は俺の胸なんだ。 そう思うと恥ずかしくなり、俺は胸から目をそらした。 エロビデオで見たように、背中に手を回して手探りでブラジャーのホックを外そうとした。だが、なかなか外れない。見かねたのか、鈴香は微笑みながら手を伸ばして来た。 「こうしてはずすのです」 ブラジャーが外れたとたん、胸の重みを増した。俺は胸の重みに驚いて、体を見た。 女の胸があった。大きくて、形の良い胸。 鈴香はしゃがむと、ペチコートを脱がした。 鈴香に服を脱がさせるのがなんか恥ずかしくて堪えられなくなってくる。 「後は自分で脱ぐから」 俺はストッキングを脱ぐために片足を上げた。胸ごしに、ストッキングに包まれた形のいい足が目には入る。ストッキングは太ももで終わっており、ガーターベルトが続いていた。白いパンツ。パンツの上には、くびれた、細い腰と、形の良いヘソがある。 この体が俺なんだ。もし俺が女だったらこんなにスタイルが、よかったのだろうか? いや、きっとレプリカは商品なので、最高の美しさをする様に形を整えてあるのかもしれない。 いずれにせよ、いまの俺の体は見事なプロポーションを持っていた。 俺はガーターベルトを外し、ストッキングを脱いだ。ストッキングが下がる度に現れる白い肌は、自分でも恥ずかしくなるほど色っぽい。 鈴香の手が、俺のパンツに伸びて来た。 「パ、パンツも自分で脱ぐから」 「そうですか?」 俺は目をつむってパンツを脱いだ。ゆっくりと目を開く。そこには裸の女の体があった。 やはり俺は女なのだ。レプリカになってしまったのだ。 俺が自分の体を見ていると、鈴香も俺の体を見ている事に気が付いた。 真剣な表情で俺の体を見ている。 俺はなんだか恥ずかしくなって来て、ごまかす様に少し笑った。 「はは。自分がレプリカだなんて認めたくないと思っていたけど、この裸を見たら、認めないわけにはいかないよな……」 「マコト様。後ろを向いて頂けませんか?」 「後ろ?」 真剣と言うか、せっぱ詰まった様な声で言う鈴香。 振り向きながら、首を回して鈴香を見る。鈴香は俺の首の辺りを、熱心に見ていた。 首を前に戻す。メンテナンス・カプセルが目に入った。メンテナンスをしていた鈴香の姿が、また浮かんで来る。今度はアレを俺がするんだ。 ――やっぱり、あんな事は出来ない。鈴香ならば、俺が嫌だといえば許してくれるかも知れない。 「なあ……鈴香……。メンテナンスの事だが……気が進まないと言うか……」 そこまで言った時、鈴香が背中から抱き付いて来た。 「す! 鈴香!?」 「研究所に向かう日が、明日になってしまいました」 俺のうなじに、鈴香が口をつけた。 「け、研究所に行くのが嫌なのか?」 わずかな間を置いてから、ゆっくりと鈴香は答えた。 「私は出来るだけ高志様のお役に立ちたい。そう思っています。 でも、研究所には本物の私がいます。本物の私が助かれば、代用である私は見捨てられるでしょう。 そう思うと、怖いのです。 レプリカは……私は本来ならば存在しなかった生き物。いいえ、生き物でさえないかもしれません。私は代用品として生まれて来たのです。 それなのに、わかっているのに、高志様への思いが止まらないのです」 鈴香が泣いているのが声でわかった。 (本物の自分、か……) 研究所には、本物の俺がいる。 本物の俺が助かれば、茜の心は本物の俺に向くに違いない。 当たり前だ。 茜の心は最初から本物の俺に向いているんだ。俺なんか、鈴香の言う代用品に過ぎない。 鈴香も俺も、そう言う運命の元に生まれたんだ。 そう思うと鈴香がいとおしくなってきて、俺は振りかえった。 鈴香は泣いていなかった。涙をこらえていた。 俺は鈴香を抱きしめた。 「このまま、俺達の本体が見つからなければいいのにな……」 俺は言った。 「そんな……。そんなことは……私は……」 鈴香はうつむいていた顔を上げた。 鈴香の口は、必死に否定の言葉を言おうとしているようだった。だが、言葉は途中で切れてしまう。 そんな自分に気が付いたのか、鈴香は目を伏せた。 「私は、卑怯者です」 鈴香は目を伏せる。涙があふれ出た。 「俺だってそうだ。 俺もこのまま、本物の俺なんて見つからなければいいと思っている」 鈴香の真っ赤な目が、俺に向いた。 「そうすれば、俺はずっと茜のそばにいられるからな。 でもさ、もしも本当に、このまま本物の俺が助からなかったら、茜は悲しみ続けると思う。 時間がたって茜が立ち直っても、心の中では一生悲しみ続けると思う。 そんな茜を見るのは嫌だ。 だから俺は、本体の俺を助け出そうと思う。 茜の笑顔の為に」 鈴香の目が、俺を見詰めている。 俺は頷いた。 「辛かったんだな。俺で良かったら気の済むまで泣けよ。 明日はがんばろうな。 好きな人の為に」 鈴香は、静かに俺から離れた。 「ありがとうございました。もう大丈夫です」 鈴香はエプロンからハンカチを取り出すと、涙を拭きながら言った。 俺はメンテナンス・カプセルを見た。 明日、途中で体力が切れて迷惑をかける訳にはいかない。その為には、メンテナンスが必要なんだ。 俺は茜の為に、本体の俺を救出しなければならない。悩んでいる時間なんてなかったんだ。 俺は自分でメンテナンスカプセルに歩くと、ボタンを押した。カプセルの扉がゆっくりと開いて行く。 「鈴香、メンテナンスってどうやるんだ?」 つづきを読む |