REPLICA(レプリカ)改
 作・JuJu


chapter-005 "決意"

 俺達は久保田の部屋に戻って来た。
 久保田は部屋に戻るとすぐにパソコンに向かった。
 久保田の肩越しにパソコンのモニターを見たが、意味不明のアルファベットや数字が並んでいるだけだ。何が奴をここまで夢中にさせるのか、さっぱりわからない。
「ドール・カプセルって場所を取るし、値段も高そうだな」
 久保田はモニターから目を離さずに答えた。
「俺のは最高級タイプだからな。
 安価なのもあるが、鈴香には最高の物を使ってやりたい。それに安物はシャワーがついていない」
「風呂に入れちゃだめなのか? 俺達が普段はいっている様な風呂」
「手間がかかるが、それでもいい」
「なんだ。だったら俺は安いタイプにするぜ!
 毎日一緒に風呂に入れるしな!」
 そうか、俺が鈴香を買ったら、鈴香と毎日一緒に風呂に入れるんだ。
 鈴香の胸とかお尻とかを、洗ってやったりして。
 当然、アソコは重点的に洗わないとな。
『鈴香、アソコも洗ってやるから、脚を広げて』『はい、マスター。よろしくお願いします』
 俺の目の前で、泡だらけの鈴香が脚を広げる。
 ――まてよ? 相手はレプリカなんだ。
 触るのなんて、いつでも出来るじゃないか。
 せっかくの風呂だ。鈴香の巨乳を有意義に使わない手はない。
 鈴香の胸に石鹸をつけさせて、胸で俺の体を洗わせるというのはどうだ?
 俺の背中に鈴香の胸が当たる。腕を後ろから俺の胸に回して抱きしめて、柔らかい胸をグイグイと俺の背中に押しつけて上下に擦る。
 うん。これだ!
「最悪のケースだが、ドール・カプセルは使わないという方法もある。
 ただし前にも言ったが、ドールは内臓の機能が弱い。だから自分で排泄するだけの力が無い。マスターが排便を促してやらないとならない。
 仔犬はうまくウンチが出来ないので、母犬が肛門を舐めて刺激して便意を促してやるだろう? それと同じ事だ」
「え? 尻をなめるのか?」
「犬の例えだ。ドールの場合は浣腸だよ。浣腸」
「ああ、浣腸ね。
 ……浣腸〜っ!!?」
 大声を出した、自分が恥ずかしくなった。
 このアパートは俺と久保田しか住んでいないので、俺達の会話が誰かに聞かれる心配はないのだが。
「浣腸って、俺がレプリカにしてやらなければならないのか?」
「レプリカ一人でも出来るが、マスターがしてやれば一番いいだろうな」
 かっ、浣腸って、たとえば俺が鈴香に浣腸をしてやるって事か?
 鈴香がひざまずいて、パンツを太ももまで下ろす。
 四つんばいになって、お尻を俺に向ける。
 俺が鈴香のスカートを巻くると、鈴香のお尻が目の前にあらわになる。
『マスター。今日もお願いします』
 うわー! そんな事できねぇよ!!
『いいえ、これは大切なメンテナンスです』
 そ、そうだよな。いやらしい事じゃないんだ。マスターとしては、ちゃんとやってやらない事なんだ。
「だが俺の意見としては、絶対にレプリカ・カプセルは使用して欲しい」
 久保田は言った。
「内臓の洗浄は、体内に溜まった排泄物や埃、アレルゲン等の異物を体外に出すだけじゃない。
 一番大切な、体内の滅菌になるんだ。
 無菌室で成長した姿で産まれるドールは、ウィルスに弱い。
 つまり俺達の風邪が命取りになる」
「え? 風邪で死ぬのか?
 レプリカと暮らすのって大変なんだな。金がかかるし」
「お前が考えている以上に、ドールは儚(はかな)い生き物なんだ」
 久保田はそう言ったが、俺の頭の中は儚いどころか、いやらしい鈴香でいっぱいだった。
 いや、別に鈴香でなくてもいいのだ。
 さっきホームページで見た美女達。
 どれでも選べるのだ。
 彼女達が、俺の思うがままに動いてくれる。
「俺が何を言っても無駄なようだな。
 体は正直なものだ」
 久保田は俺の股間を見ながら言った。
 俺は思わず、ズボンの下で大きくなっていたチ○ポを両手で隠した。
 久保田はため息をつくと話を続けた。
「――金が欲しいんだろ? それも早く。
 一生金を貯めてレプリカを手に入れても、ジジイになってアソコが立たないんじゃ仕方ないからな。
 実は大金が入る話がある。プロテウス社が、レプリカの新しい献体……つまり、研究用の体を捜しているんだ。献体になる事で、多額の報酬が約束されている。
 だが、プロテウス社は黒い噂が絶えない。
 去年突然現れた企業なんだが、一年でここまで成長した。たった一年でだ。
 どう考えても異常な速さだろう。
 お前の人生を決めるのはお前だが、良く考えてから結論をだせ」
 久保田の顔がこわばった。プロテウスの裏の顔を少しは知っているのだろう。
 俺はプロテウス社のホームページを思い出していた。
 この仕事を終えたら、あの女達から選び放題だ。どの女でも鈴香の様に扱える。
 あの口も胸もアソコも、俺の物だ。俺のしたいように扱える。
「ん? ちょっとまて、レプリカって女だろ?
 なんで男の献体を捜しているんだ?」
「そこまでは知らない。男のレプリカでも造る気なんじゃないか?」
「つまり、俺そっくりのレプリカが、女に奉仕するというわけか」
「多額の報酬から推測して、それしか考えられない」
「まあ、レプリカならば人に見られないところでこっそり生活させるだろうし。
 俺のレプリカ……つまり俺の分身達が、女とやりまくるだけだろ?
 別に良いんじゃないか。
 女とヤルために作られるなら、分身達も喜ぶだろう」
「ならば、プロテウス社に行ってみるか?
 表向きはどこにでもある普通の会社だ。風評もあるし、会社に入るなり銃を突き付けられたりはしない。
 俺もついて行ってやる。
 レプリカが欲しいんだろ?」
「そうだな。
 レプリカのためだものな。
 多少の危険は覚悟しないとな」
 久保田はうなづくと、携帯電話を手に取った。
「今タクシーを呼んだ。
 プロテウスに行くぞ」
「今からか!?」
「タクシー代は俺が出すから安心しろ」
 俺は久保田に言われるままに、自分の部屋に戻って出かける支度をした。
 支度と言っても、ジャンパーをはおっただけだが。
 部屋を出ると、久保田が待っていた。
 俺達はタクシーに乗った。
 久保田は、タクシーの中で思い詰めた様に黙りこんでいた。
 時間が過ぎる。
 突然、久保田は口を開いた。
「上原、実は後悔している。
 お前にレプリカを見せたのは失敗だった。
 このままでは、お前は……。
 いや、とにかくレプリカの事はあきらめろ。
 その方がいい。
 レプリカの事も、俺と鈴香の事も忘れてくれ」
 想像はしていたが、プロテウスはそうとうヤバい会社らしい。
 久保田の表情と声が、そう語っている。
 だが、このチャンスを逃したら、俺は二度とレプリカを手に入れられないだろう。
「ここまで見せつけておいて、今さら忘れてくれはないだろう?
 俺だって覚悟して来たんだ」
「本当にいいんだな?」
 俺は黙って頷いた。

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