GGG―鏡麻希子編(中)―

作:村崎色





―鏡麻希子編Y―


 話し合いがついたか心配していた一真に朗報が飛び込んでくる。

「カズマ」

 扉の奥から佳代の声が聞こえた。どうやら決着したらしい。安堵した一真の前に佳代が姿を現す。

「佳代か。佳奈はどう――」

 一真は言葉を失った。廊下から現れた佳代は服をなにも身につけておらず、裸だったのだ。

「か、佳代?どうして、おま――」

 動揺する一真を見て佳代が微笑む。

「一真に紹介したい人物がいるの」

 紹介したい人物に不思議を隠せなかった一真だが、佳代が紹介する様に現れた、佳代と同じ背丈の、同じく裸の女性を見て顔を真っ赤にした。
 
      

「お兄ちゃん」

 彼女が一真のことをそう言った。

「!か、佳奈!!?………………かな?」
「くすくす。そうだよ、お兄ちゃん」

 11歳だった佳奈の急成長に一真は唖然としていた。佳代が佳奈に寄り添って目を細めた。

「佳奈ね、一真に処女を捧げたいんだって」

 ドキッとする。一真と同じように佳奈も顔を赤らめるが、既に決心はついているようだった。

「佳奈の処女、奪って下さい」

 二人で一真の隣に座る。宮村姉妹が同じ表情で一真を見つめていた。

「マジかよ、なんだよ、この状況……俺、さいっこうに幸せもんだ!」

 右と左を交互に見比べて、遂に一真は後ろに倒れこんだ。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「ふふ。じゃあ一真。服脱がすわね。佳奈も手伝って」
「う、うん。お姉ちゃん」

 佳代の指令通りに佳奈は反対側から服を脱がす。佳代が上着を脱がしているので、必然的に佳奈がズボンを脱がす。短パンを下ろし、トランクス越しに膨らんでいるのが分かる。佳代はトランクスに手をかけ、下におろした瞬間、解放された逸物が元気よく佳奈の前にそそり立っていた。

「わっ!」

 その大きさと長さに佳奈は目を丸くした。佳代が優しく逸物っを握り、上下に擦り始める。

「凄いでしょ?一真のおち○ちん、私たちに見られただけで脈打ってる。佳奈に挿れられるかな?」

 熱く、ビクンビクンと震える一真の逸物。佳代は手本を示す。

「佳奈。おちん○んを舐めるの。そうすると、おま○こに挿れやすくなるの」
「こ、これを舐めるの?」
「おいしいのよ。じゃあお姉ちゃんからやってみるわね」

 顔を近づき、佳代の小さい舌が口から出ると、一真の剥き出しになった亀頭を舐め始めた。

「くあ!」

 突如声をあげた一真に佳奈が気遣う。

「お兄ちゃん?」
「ふふふ。気持ち良いのよ。口をすぼめて、優しく包み込むようにいたわるの。先を舐めると、とっても喜ぶのよ」

 大きく咥えこんだり、小さく口をすぼめたり、逸物を沿う様に舐め下りて玉袋を咥えこむ。その度に一真は声を震わして歓喜していた。

「はい。交代」

 席を譲る佳代。佳奈が同じように逸物を見下ろすと、うっとりした眼で大きく口を開けた。

「お兄ちゃん…………ちゅ」

 最初に佳奈は甘える様に逸物にキスをした。そこから教えて貰った様に逸物を咥えこんだ。先程の佳代と違い、口の中で戸惑いがあったり、扱いに困ったりして口の中で暴れさせている。
 それが初心者と言う感じで初々しかった。
 長い髪が邪魔をする度にかきあげる。そんな姿がまた可愛かった。
 姉妹に愛される逸物に一真は限界を迎えようとしていた。。

「か……よ…。まず、い。で……る……」
「出しちゃえば?」
「ちょ、おまっ!!?」
「冗談よ」

 佳代が舌を出して笑うが、次の行動に向け佳奈を引き剥がす。

「あっ」

 後ろで佳奈を抱える佳代。足をМ字に開脚させると、既にぐしょぐしょに濡れている佳奈のお○んこがお目見えになった。

「だって、こっちに出したいんだもんね」

 妹ながら、一真を欲しがるようにひくつくヒダ。佳奈も同じ気持ちというように目を潤ませていた。一真はもうひと踏ん張りとばかりに佳奈のおまんこに逸物を宛がった。

「佳奈ちゃん……」
「お兄ちゃん……」

 二人の意思は繋がった。一真は腰を前に動かし、逸物を内部に侵入させた。

「あぐう!」

 佳奈の表情が歪む。決して緩くない。でも、佳代とは全く違う感覚に一真は最高潮に興奮した。

「すご!!佳奈ちゃんの膣、気持ち良い」
「う、うぅぅ」

 泣き声なのか、喘ぎ声なのか、苦痛に耐える声なのかわからない。

「佳奈。声に出して。気持ち良かったらお姉ちゃんたちに伝えて」

 佳代が耳元でささやく。と、同時に指をおまんこにもっていき、クリトリスを弾いた。目を閉じていた佳奈が一瞬で目を見開いた。

「あああああ!!」
「なんて、佳奈の口で言わなくても、佳奈の身体が気持ち良いって教えてくれてるよ」
「くああ。締まる!!」

 佳代の与えた影響は佳奈だけでなく一真にも影響を与える。それが楽しかった。三人が繋がっている感覚に佳奈は遂に本音をあげた。

「お兄ちゃん!気持ち良い!!わたし、気持ち良いの!!」

 歓喜に震える言葉を聞いた一真はさらに奥に進み、佳代にはなかった膜を突破してしまった。

「ああああ!!」

 再び佳奈が声を張り上げた。一真と繋がった場所から赤い血が流れたのを見て、佳代は喜びの声をあげた。

「おめでとう、佳奈。佳奈の処女膜破られたわ。よかったわね……ちゅ」

 ほっぺにキスをして安心感を分け与える。
 処女膜の奥は今までの狭さが嘘のようになく、まさに森の奥地にある秘境に辿り着いたかのように熱く湿って潤んでいた。

「う、動くよ。佳奈ちゃん」

 一真も声で、行動で佳奈を安心させる。

「うう、ううう!!」

 ぐちゅぐちゅと一真が動く度に気持ち良い音が伝えてくれる。だが、音ではなく、声で佳奈も表現したかった。涙を流した佳奈が笑顔で伝える。

「うれしい。お姉ちゃんとお兄ちゃんにいじられてる。わたし、涙がとまらない」
「ああ……良かったわね、かな……」

 佳奈の上に跨り、二人の間を割った佳代が佳奈の唇を奪う。

「んん、ん、んん……」
「くち、ちゅぷ……お、ねえちゃ……くちゅ」

 二人は一心不乱にキスを続ける。一真の前には佳代のお尻が突きだされていた。一度唇を放した佳代が一真に振り向いた。

「一真も私をいじって。私も気持ち良くさせて!!」

 佳代のお願いだ。一真は腰を振りながら佳代のおま○こを舌を突き刺した。佳代のしょっぱい愛液が口いっぱいに広がる。

「ああああ!!かずま!舌がいいよ!!」
「ああん、お姉ちゃん。ちくびいじって!!」

 二人の悦びの喘ぎが一真の最高のご褒美だった。
 今回のメインディッシュの終焉が迫っていた。 

「おねえちゃん、わたし……」
「かずま、わたし、いくよ!!」
「いけ!おれももう――」

 三人はほぼ同時に絶頂の際に立った。

「いくうううううううううう!!!」
「イクうううううう―――!!!」
「あああああああ!!!!!」

 姉妹に一真の精液が大量に降り注ぐ。今まで出したことのない量に一真が今回どれほど幸せだったのか教えてくれる。二人のおまんこから愛液が潮を吹く。
 ベッドはずぶ濡れ。それでも、三人はこのベッドで眠ろうと決めていた。一真を中心に川の字に眠りに付く。
 気持ち良さそうに眠る佳奈。一真も佳代の笑った顔を見ながら目を閉じた。
 そして佳代は――――

      

 消えているテレビには、映るはずのない佳代の泣き顔が映りこんでいた。





―鏡麻希子編Z―


「ハァ……ハァ……」

 翌朝、俊祐が佳代の家を訪ねてきた。一真は上機嫌で俊祐をあがらせた。

「おう、浜っち!どうした?そんなに慌てて」

 部屋に案内された俊祐だが、何処か落ちついていない。まわりを見渡し、何かを探しているかのようだった。

「……姉ちゃんはどこ?」

 一真はきょとんとしていた。俊祐に姉がいることも知らなければ、何故佳代の家にまできて姉を探しているのかもわからなかった。

「つぅか浜に姉ちゃんなんていたのか?その姉ちゃんと言う人、ちゃんと血は繋がっているのか?ねえ、ちゃんとしようよと言ってくれる人か?いいなあ羨ましい……」

 楽しそうな一真。今日も妄想全開だった。

「宮村さんはどこ?」
「かよかよ?かようのかよ?」
「なにがなんだか……」
「かよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかよかバイ!」
「なんで熊本弁!?」

 疲れた表情を更に曇らせているので、一真はようやく本題に入った。

「今日は見てねえな。あいつどこ行ったかな?」

 出掛けたまま帰ってこない佳代。俊祐はこのタイミングとばかりに口を開いた。

「聞いてくれ、有森。実は――」
「――カズマ!!!」

 元気よく佳代が帰って来た。扉が開き、佳代が……五人もの佳代が顔を出した。

      

「見てえ、今日は『名刺』で大量に刷ったのよ。私たちで、一真を気持ち良くしてあげる」
「うおおおおおおおおお。(」゜◇゜)」あああああああああ!!!!生きてきて本当に良かったああああ!!!!」

 ベランダのドアを開け、街中に響くような声で一真は絶叫した。

「聞いてよ、一真!その佳代は偽物なんだ!!俺の姉ちゃんなんだよ」
「なにを言ってるんだ、てめえ!!俺の楽しみに魔を差すな!ちなみに一人たりとも刺せはしねえぞ!」
「ダメだ、こりゃ」

 一真を諦め、俊祐は佳代を向いた。

「姉さん!もうやめてくれよ!俺の友達は関係ないだろ?」
「浜くん、なに言ってるの?私は佳代よ。あなたの姉さんじゃないわ」
「姉ちゃん……」

 言いながらも細めで笑う表情は姉の麻希子を連想させる。
 佳代が一真に寄り添い、五人がかりで押し倒した。『名刺』によって作られた佳代も佳代本人の記憶を持っている。
 一真を知り尽くしている人物が五人だ。一真は愉快に笑っていた。

「うひょひょひょひょ!!くすぐってええ」
「一真の弱いところ、みんな知ってるんだから。すぐにイカセテあげる」

 同じ軟らかさの乳房の感触に押しつぶされる。これ以上ない幸福を表す様に、一真の逸物は真上にそそり立った。
 佳代が一真の逸物を握り、自分のおまんこに宛がった。厭らしく笑う佳代が逸物を焦らすようにスジを沿わせて弄ぶ。挿れなくても、それだけで逝ってしまいそうになる。

「くううううぅぅぅ!!駄目だ、俺、もう――」

 佳代が腰を鎮めようとしたその時だ――


「(かずまぁ!!!)」


「えっ!?」

 聞こえるはずのない佳代の叫び声を聞いた気がした。天井を見ていた一真が顔を逸らすと、勝手に流してしたテレビニュースから、昨日行った遊園地、ミラクルランドが映っていた。

『今日もミラクルランドには、大勢の人が押し寄せています。見物客の多くは噂を聞きつけて足を運んだ方々で、幽霊の女性が映りこむショーウインドウはすっかりここの名物として賑わせています』

 昨日と同じレポーターが今度こそ見せようとカメラをウインドウに近づける。いくらやっても奥にいるマネキンしか見えないのだが――
 カメラマンが幽霊に気付いたらしく、一歩引いた。

『あっ、カメラさんも見えましたか?今のが皆さんに届けられていればいいのですが』

 一真は唖然としていた。決して見えたわけでもない。だが、呼ばれた気がした。

「かよ…………」

 ぽつりとつぶやく一真。

「一真?全然勃起しないじゃない?どうしたのよ!!?」

 佳代が怒る。だが、ベッドの上から一真が起き上がると、服を着て部屋から出て行ってしまう

「一真!!?」

 呆気にとられる佳代。それでも、一真が消えた扉を見ながら、くすりと笑ったのだった。
 

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

 遊園地に到着して早々、人だかりを見せたショーウインドウの前にやってくる。昨日までなかった順番待ちの看板と料金所。
 一真は人込みをかき分けて突き進む。

「くそっ、どけよ!どいてくれ!!」

 気持ちが焦る。なにがそんなに焦らすのか――ただ、事実が知りたい。
 
「俺を通してくれ!!邪魔だってんだよ!!」

 ショーウインドウを覗きこむ。そこには、鏡の中に幽霊の女性、宮村佳代が映りこんでいた。 

「うあああああああ!!佳代!なんでおまえが映ってるだよ!!??」

      

「(良かった……かずま、わたしの声、届いた)」

 一真を見て一瞬安堵した表情を浮かべた佳代だったが、一真にその声は届かない。鏡の中で涙を流している佳代を見て、一真は鏡を叩き続ける。

「きみ、やめなさい!鏡が割れたらどうするんだ!?」

 慌てて飛んできた店員が一真を引きずり剥がす。

「くそっ!放せよ!!佳代!佳代!!」

 一真の力より店員の方が力が強く、鏡の前からどんどん離される。しかし、さらにおいうちをかける様に、テレビに映っていたニュースレポーターが一真にマイクを突き付けた。

「テレビアカヒの者です。失礼ですが、お名前は?幽霊のことなにか知っているんですか?お住まいは?『かよ』と言う名前が女性の名前ですか?」

 レンズ越しに録画されている。一真は口を閉ざし、その場から逃げ出す様に走り去った。

「うあああああああああああ!!!かよおおおおおうううううううううううう!!!!!!!」

 遊園地内に一真の泣き叫ぶ声が響き割った。当然、その声は遊園地内に現れた俊祐と麻希子(佳代)にも聞こえていた。


「あーあ、気付いちゃった」
「姉ちゃん。もうやめてくれ!早く二人を元に戻してくれよ」

 俊祐が頭を下げる。

      


「どうして?これが俊祐の望んだことでしょう?せっかく後は突き飛ばすだけだったのに、もうばれちゃうなんてツマラナイ。でも、これで二人は永遠に離ればなれ。幸せなんて訪れない。居場所はなくなった。アハハハハ!!!!」

 佳代の声で麻希子は笑う。佳代でも麻希子でもない、聞いたことのない声だった。

「違う。俺はそんなこと望んでない」
「ウソはいけないわよ、俊祐。私にはわかるわ。本当は喜んでいる」
「そんなこと、ない」

 懸命に否定し続ける俊祐。でも、麻希子に呟いたのは確かに俊祐自身だ。それを本当に麻希子は叶えた。

「俊祐には恋人が出来て、あの二人は決別。立場は逆転したじゃない。これのなにが不満なの?」

 全て麻希子が仕組んでくれた。全て俊祐の思い通りに事が運んだ。じゃあ、喜ばなくちゃいけない…………
 ――そんなわけがない。

「俺は泣いてなんかいなかった……一真は泣いている。立場が同じなんて事はない。きっと一真の方が俺なんかよりずっと悲しむ。不幸のどん底を、一人で背負いこんでいるかのような悲しみを、姉ちゃんは味わったことがあるか?俺はあるさ。だから、誰一人としてそんな人作っちゃいけないんだ。悲しみを知る俺が、作っちゃいけないんだ!!」

 人の不幸を望んだことを後悔した。自分だけが幸せになれると思ったって、不幸は誰も救ってはくれない。報われない願いがあっても決して不平等じゃない。

「俺は誰かを幸せにする為に生まれて来たんだから」

 口を閉ざして俊祐の話を聞いていた麻希子が口を開く。

「じゃあ私が全部悪いのね。私がカップルに嫉妬してむしゃくしゃしてやったの。みんなしねばいい。私は魂を悪魔に差し出して、そして彼らを処分した。今更戻ることなんてできない。私はこれから悪に染まるなら、最後まで悪を貫いてやる。――誰があんたの言うことなんて聞くものですか!」

 俊祐に背を向けて駆け出していく麻希子(佳代)。俊祐も追う様に後に続いたが、既に底には佳代の姿をした麻希子はいなかった。

「姉ちゃん!!!」

 弟の悲痛な叫びを、姉は聞き入れることが出来なかった。





―鏡麻希子編[―


 誰かに見られている気がする。足を止めて周囲を伺う。

「どうした?」
「……ううん、やっぱりなんでもない」

 カップルが足早にその場から立ち去る。だが、『鏡』の映った彼女はその場に留まり、『鏡』から現われて地に足をついた。

      


「こんな子が人気あるんだ。まあ、いいわ。これで俊祐に疑われる心配はないし。……ごめんなさい、あなたの姿借りるわよ」

 彼氏彼女と反対側に歩いていく麻希子。
 俊祐の目的は達した。後は自分の為に鏡を使わせてもらおう。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 順二は一人で商店街を歩いていた。はやりの服やCDを探して暇を持てあますのが好きだった。

「あの」
「はい?」

 突然声を掛けられた。振り向くと、学生服を着た少女が順二の隣に寄り添っていた。

「いま、お暇ですか?」

 これは、所謂逆ナンパというものか。順二はたまに女の子から話しかけられる時もあるが、学生から声を掛けられたのは初めてだった。

「なんか用?」
「お茶しませんか?」

 本当に逆ナンだった。さて、どうしよう。無理と言って突き放すか、それとも場の流れに流されるか。
 迷った挙句、こんな学生から声を掛けられたんだから、なにか訳ありと思い、近くのカフェに二人で入った。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 窓側の席に腰掛ける。順二は緊張した面持ちで問いかけた。

「どうしたの?俺に声をかけるなんて、なにか訳ありと思ったんだけど」
「なにもありません。本当にお茶がしたかったんです」
 「すみません」と店員呼ぶ。その明るさに、本当に逆ナンだったのかと思い始める。水を飲んで場に流されようとようやく順二は一息ついた。
 店員が来るまでに彼女は思い出したように順二に声をかけた。

「そう言えば、お名前聞いてませんでしたね?」
「おれは佐田順二」
「私は――浜麻希子です」
「えっ?」

 聞き覚えのある彼女の名前。

(おれの知り合いと同じ名前じゃないか)

 順二と麻希子は同じサークルの仲間だ。オレンジがかった髪の毛は今の彼女と想像がつかないくらい元気な子だ。
 ようやく店員が来て彼女が注文を取る。

「キリマンジェロブレンドとダージリンティー濃い目で」

 順二は呆然となる。

「なんで……?」
「どうかしましたか?」
「いや、注文取ってくれたの、俺の好きなコーヒーでさ。ちょうど注文しようと思っていたんだ」
「そうなんですか。ふふ」

 順二に満面の笑みを見せる麻希子。名前が一緒だからか、やけに意識してしまう。

「麻希子ちゃんって言うんだ。俺の知り合いにも同じ名前の子がいるんだ」
「そうなんですか」
「今度紹介してあげるよ。きさくで人柄も良い子だよ」

 順二が微笑むと麻希子は顔を赤らめた。

「順二さんは―――――その人のこと、どう思ってるんですか?」
「えっ?」

 突如振られた話題に戸惑いを見せる。

「浜麻希子さんのこと、好きですか?」

 彼女が笑っていなく、真剣な面持ちで問いただす。どうして彼女が見ず知らずの人物のことで真剣になるのかわからなかったが、順二は水を飲み、喉を潤した。

「あ、あはは。そうだなあ。きみの前でこういうこと言うのも失礼かもしれないけど――好きだよ」
「本当ですか!!?」

 順二の告白に麻希子は椅子からとび上がって喜びを見せる。

「うん。もうちょっと早く会いたかったと思ってるよ」

 順二の補足に麻希子の笑みが消えていく。

「どういう意味?」
「付き合っている子がいるんだ」

 軟らかい笑みのまま順二は告白する。麻希子は頭を下げ、項垂れるように暗くなってしまった。

「…………誰です?」
「聡子っていってね。俺と彼女を合わせてくれた子なんだ。あ、今度聡子に合わせてあげるよ。あいつも子供好きだからきっと親身になって相談を聞いてくれると思うよ」
「そうですか…………」

 「あの女……」と呟いた声は順二には届かなかった。

      

「お待たせしました」

 それぞれ運ばれてきた珈琲と紅茶を呑む。甘く、香りの良い、麻希子の好きな紅茶だった。





 夕方になり帰宅する。明日はどうやって聡子を落とし入れるか、それだけをただ考えて午後が終わった。階段を上り自分の部屋に入ると――

「え?」

 中はもぬけの空になっていた。机もベッドもなかった。慌てた麻希子が飛んではいり、部屋の中心より奥へ進んだ時にそのからくりがようやく見えた。全ては一ヶ所の隅にまとめられ、無造作に置かれていたのだ。それが見えなかった?それは、『姿見』を盾にして隠されていたからだ。

「なに、これ?」
「おかえり、姉ちゃん」

 背後にいつのまにか俊祐が立っていた。俊祐は高さ2mほどの『姿見』を持って佇んでいた。

「姉ちゃんマジック貯金箱って知ってる?四隅に対角線を結ぶように鏡を置くと、奥に入れたお金は見えず、あたかも空っぽの貯金箱にみえるんだ」
「…………だからなんなの?」

 俊祐が答えと言う様に手に持つ『姿見』を残り一枚で対角線が結ばれる場所に動かす。

「俺に出来ることは姉ちゃんを閉じ込めることしかできない。誰にも見られなくするように反省させるしかないんだ」

 ――バタン
 『姿見』は対角線に結ばれた瞬間、一枚の大きな鏡となって、麻希子ごと鏡の奥に閉じ込めてしまった。 八畳の部屋が半分となり、さらに三畳が物で溢れ返っている。到底麻希子が耐えられるはずがない。

「いやああ!!開けて!!ここから出して!!!」

 声を荒げる麻希子。俊祐は心を鬼にしてその場から立ち去る。

「ごめん。姉ちゃん……」

      

 麻希子もろとも、扉を開けると部屋には何も映っていなかった。




 翌日。俊祐が麻希子が反省してると思い、鏡の壁を開けた。ベッドや机が散乱している空間で、何故か麻希子を見つけることが出来なかった。

「姉ちゃん。いるんだろう?」

 返事をしても帰ってこない。いったい何が起こっているのか、俊祐にも分からなかった。

「…………………………ねえちゃん……?」





―鏡麻希子編\―


 テニスをしていた聡子とサークル仲間は、気持ちのいい汗をかく。

 平和な休日。のんびりした時間に、他愛ない会話に花を咲かす。

「ねえ、順二先輩も来ればよかったのにね」
「ダブルスやりたいんだよね?」
「ラフな格好なのはそのせいか」

 聡子は休みを早めに切りあげて再びテニスコートにつく。十分身体が休まって、仲間たちもコートに戻って再び試合を開始する。

「……えっ?」

 聡子が後ろを振り返る。
 そこには誰もいなかった。

「気のせい?誰かいたような気がしたんだけど」
「聡子いったよ」

 ぼうっとしていた聡子が声と供に我に返る。軟式ボールが打たれ、走ろうとした矢先に――

 ガッ

 躓いて聡子は転んだ。

「ちょっと!?大丈夫?」
「いたた……。あれえ?」
「石でもあった?危ないわね」

 「ううん」と聡子は否定する。

 足をかけられた。そんな転び方をした気がした。

 誰もいないのに、そんなわけないかと思った聡子だったが、次の瞬間、自分の目を疑った。
 



・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

      

「えっ?」

 服が勝手に脱がされた。いや、来ていた服を誰かに脱がされたように、服は表裏逆になった状態で無造作に脱がされ、ズボンは聡子の細い足から簡単にずり落とされた。

「きゃあああ!!」
「聡子、なに勝手に脱いでんの?」

 仲間の目からは聡子が勝手に脱いだように見えたらしく、動揺していた。確かに他のテニスコートでは聡子の姿を厭らしい目で見る男性もいた。早く服を着ることが聡子のまずやるべき事だった。だが、それも出来なかった。

「いやあああ!!」

 聡子が声をあげる。急に誰かにしがみつかれたからだ。
 誰もいない。何も見えないのに、感覚だけはある。それが聡子にとってもとても怖かった。

 もみもみ
 胸を揉まれる。

(ど、どうなってるの!!?)

 あまりの恐さに声も出ない。誰もいないのにおっぱいを揉まれる感覚。ブラと一緒に形を変え、その感覚を楽しむかのように聡子をいじめる。
両方揉まれていた感覚から片方が消え、ショーツに移ってすじをなぞりはじめた。

      

 ――あんたのせいよ

「だ。だれ!!?」

 誰かが耳元でささやいた。

 ――私の順二くんを取ったうらぎりもの――

 かぷっと耳たぶを噛まれる。

「ひううぅぅん!!」

 間違いない。誰かがいるのだ。聡子を抱きしめ、逃がさないようにして身体をいじめている。

「なによ、今の声?」
「た、たすけ、ここにだれかいる!!?」

 聡子の声に仲間が周囲を見渡すが、仲間以外にだれも見当たらない。

「誰もいないわよ?」
「ち、ちが、ああああああ!!!?」
「ちょ、ちょっと?聡子!!?」

 誰も聡子の声を信じない。聡子のショーツの奥には誰かが指を入れているのだ。得体のしれないものが体内に入ってきたせいで、聡子の身体はぎゅうっと締めつけ、蠢いていた。
 緑色のショーツが濃く染まる。

「聡子!!?」
「あんた、おしっこ……?」

 そう。仲間の前で聡子はおしっこを漏らしたのだ。

「一体どうしたのよ!!?」

 皆が分からない表情をする中。指は勢いを増して、聡子を狂わせた。

「あ、あ、い、いく、うう、うううううう!!!」

 聡子はみんなが見つめる中、絶頂を迎えて、場は騒然としてしまった。



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