第1話

 
「よっ、直美」

 部屋の中に元気な少年の声が響いた。
 特徴的な短パンに、体操服。その服装から見るに陸上部に所属しているようだ。
 全体的に細めな体つきだが、筋肉はそれなりにあって逞しい。その上、整った中性的な顔はきっと女子にもてることだろう。

「もう、遅いぞ、直美」

 その一方の少女の方はというと、こちらも負けず劣らず少年のようにハンサムでボーイッシュな雰囲気の少女だった。
 しかし、なぜか少女は自分に向けられた名前を相手の少年に返した。

「ふん、今はお前が相川 直美だろ?」

「あのなっ、勝手に人の体取っといてその言い方はないだろっ!」

 少女はショートカットな髪が跳ねるほど、ムッとした様子で怒鳴った。

「取ったってなあ……。
 お前だって、できるものならやってみろとかいってたじゃないか?」

「だって…まさか、ホントに体が入れ替わるなんて思ってなかったし…」

 食って掛かる少女に、少年は慣れた様子で受け流す。
 少年は、拳を握る少女の頭の上に手を載せると、いたずらな笑みを浮かべた。

「まあまあ、もう三ヶ月も経ったんだ。
 女の体にも慣れちまったろ?」

「慣れるとかそういう問題じゃないだろっ!
 オレの体返せよっ!」

 少女は間近に見る本来の自分の顔に少し顔を赤らめる。

「うーん、そんなこといわれてもなぁ……俺はこの体気に入ってるし。
 俺は男になりたかったからなぁ」

「それはお前の問題だろ?
 オレは、別に女になりたかったわけじゃない」

 とぼける少年に、少女は苛立ちを隠せなかった。

「といいつつ、お前だって女の体に興味がなかったわけじゃないだろ?」

「……な!?」

「秀樹だって、俺の体でエッチなことしてるんだよなあ?」

「な、何いってるんだよっ!」

 少女はすっかり顔を赤らめると、顔をそむけた。

「今だって、俺の体操着着ちゃってよ。
 結構ドキドキしてるんじゃないか?」

 少年はからかうように言葉を浴びせ続ける。

「あ、あのなっ、お前こそ人の体で好き勝手してっ!」

「ああ、それは認めるぜ。
 そりゃあ男になりたかったんだからなあ、秀樹の体はしっかりと楽しませてもらったさ」

「くっ……」

「でも、ホント感動だぜ。
 俺、秀樹と同じ体感じてるんだもんな。
 ちんちんも、この筋肉も、俺が望んでいた通りの男の体だったぞ」

「直美っ!」

 少女はたまらなくなったように、真っ赤な顔で怒鳴りつける。

「いや〜、もうちんちんって最高だよなぁ。
 立ってしっこするようになってから、もう女に戻りたいなんて思わないぜ?」

「や、やめろよっ」

「なぁ、秀樹はどうなんだよ?
 俺の体はしっこしてどう思った?」

「お、おいっ」

「いいだろ、入れ替わったもの同士、隠すようなことじゃないじゃん?」

「だって、その………。
 というか……お前、恥ずかしくないのかよ?」

「恥ずかしいって? 恥ずかしくなってるのはお前なんじゃないの、秀樹?
 俺は男なんだから、別にしっこやちんちんの話しても何も恥ずかしくないぜ?」

「あ、あのなぁ……」

 余裕たっぷりの少年に少女は諦め顔で溜息をついていた。

「なぁ、聞かせてくれよ?
 秀樹が俺の体でしっこしてどう思ったか聞きたいんだよ」

「お、お前さ、男になりたかったのになんでオレのことが気になるんだよ?」

「ん……?
 そりゃあ、元々男だった秀樹は女の体をどう思うのかな〜って興味あるじゃん?」

「はあ……。
 そうかよ………」

「なぁなぁ、俺の体でしっこしてどうだった?」

「はぁ……。そりゃ、最初はドキドキしたけど……
 もう今じゃ面倒臭くて……学校じゃ和式ばっかだからできるだけ我慢してからしてるんだぜ」

「はっ、いい気味だぜ、秀樹」

「お、お前ね……」

「でもさ、女ってしっこするの大変なんだなぁ」

「そうだろ? 俺なんか嫌でたまらなかったもん。
 なんで俺が座ってしなきゃならないのかってな」

「はぁ……そうか。
 まさか、直美がそんなこと考えてるなんて思いもしなかったなぁ」

「これでちっとは俺のこと分かっただろ?」

「ま、まあな」

 少女は渋々認めた。

「はぁ……ちんちんがあんなにいいものとは知らなかった」

「そんなにちんちん欲しいのかよ? 秀樹」

 少年はニヤリとして尋ねる。

「当たり前だろ? それはオレのちんちんなんだから、さっさと返せよ。
 もう三ヶ月も貸してやってるんだぜ」

「や〜だね、秀樹はそのまま女でいればいいじゃん。
 そんなこといいつつ結構気に入ってるんだろ?」

 少年はいきなり傍にいる少女の股間をすっと撫で上げた。

「あっ……な、何すんだよ!?」

 思わず色っぽい声を出してしまった少女はすぐさま抗議する。

「何って、触っただけじゃん?」

「ど、どこ触ってるんだってことだよ!!」

 とぼける少年に少女は怒った。

「なんだかんだいって、自分の体だって認識してるんじゃねぇの、秀樹?
 返せ返せいうんなら、それは俺の体ってことじゃん?何したっていいじゃないか?」

「ぐっ……」

 唇を噛んでしまうそんな少女を見ながら少年は何か思ったのか、じっくりという。

「というかさぁ、やっぱドキドキするなぁ、秀樹が俺になってると思うと……」

「何だよ? 急に……」

「俺、俺の体だったとき、とにかく男になることしか考えてなかったけど、それと同じこと秀樹が今は感じてるんだなぁと思うとなんか興奮するな」

「おいおい……」

 少女は苦笑いするしかなかった。

「だって、俺が嫌だ嫌だと思ってた女のしっこも生理も今は秀樹が感じてるんだろ?
 こんなことしたって男になれるわけじゃないのに、嫌々してた女の子のオナ○ーも秀樹がしてるわけじゃん」

「や、やめてくれよ」

 少女はその言葉に困ったように俯く。

「着たくなかった女の体操着だって、下着だって、今は秀樹が着てるんだよなぁ……。  俺が感じてた嫌な感覚を全部今感じてるってことだろ?」

「だから、何だよ……」

 感慨深げに話す少年に少女は耐えられなくなったように口を尖らせた。

「いや、さぁ……。
 俺、自分が男になれたことにもすごく興奮したけど、秀樹に俺を体験させるっていうのもいいなぁって思ってさ」

「は、はぁ?」

「なあ、秀樹、俺の体でオナ○ーするのよかったか?」

「ち、ちょっとお前……そんな話」

「話しするの嫌か? 男だったら興味津々なとこじゃないのか?
 俺も男なんだから、気にすることないよ」

「というか、元はお前の体なんたぜ?」

「そんなの関係ないぞ、俺はこっちを自分の体だと思ってるから」

「………はぁ〜」

「なあいいだろ、聞かせてくれよ?」

「……まさか、直美とこんな話することになるなんて思いもしなかったよ」

「ははっ、まあ男になりたいって秀樹に明かしたのは入れ替わる直前だったからな。
 ホントはこうして普通に男同士の話したかったんだぜ?」

「そうなのか……」

「なあ、で俺の体でしたんだろ?」

「……まあ………したけど」

「うおっ、マジでゾクゾクしてきた。秀樹が俺の体でオナ○ーか、たまんないなあ」

「喜ぶなよ、普通は嫌がるところだろ?」

「ん〜、そうか?
 秀樹に女の体を無理やり味わわせてると思うと興奮するけどな?」

「はぁ〜、直美ってホントに男だなぁ」

「ははっ、ようやく分かったか?」

 がっくりとくる少女に、少年は笑った。

「で、気持ちよかった?」

「まあ……気持ちはよかったというか……男と全然違った」

「だろだろ。絶対男の方がいいよな?」

「うーん、でも女ってはっきり終わったというのが分からないというか……悪くないと思うけど」

「え〜、男の出たっていうのがいいんだよ。
 女じゃあの爽快感は味わえない。もうすっきりして最高だよ。
 俺、男になれてホントによかったと思うもん」

「そうかなあ……ジーンって残って、まだ続くあの感じ、いいと思うけどな………。
 全体としては女の方が上だと思ったし」

「へ〜、じゃあ秀樹は俺の体の方が合ってることじゃんか? それ」

「ち、違うぞ、そんなつもりじゃなくて……」

「でも、気持ちよさは直美の体の方がよかったっていうんだろ?」

「そ、そんな……。
 でも、やっぱ、オレ、体は男の体の方がいいし……」

「いいじゃんいいじゃん、秀樹にはその体の方がお似合いなんだよ」

「ち、違うって、何いうんだよ」

「へっへ〜、知ってたか?
 入れ替わった相手の体でお互いに十回以上オナ○ーしたらもう元に戻れないんだぜ?」

「………え!?」

「これはマジ。
 というか、俺はもう十回以上したしぃ。というより毎日させてもらってるぜ。
 あとは秀樹が俺の体で何回したかだな?」

「じゅっ、十回……?」

「ああ」

「オレ………え…でも、三ヶ月だし……ああっ」

「十回超えちゃってるだろ?
 じゃあ、無理だな」

「そんな………」

 思わずうな垂れる少女。

「って、ウッソォ〜。
 別に入れ替わってのオナ○ーの回数は関係ないぞ〜」

「て、何ぃっ!?」

「でも、結構してるんじゃん、秀樹?」

「くっそぉ〜、騙したなっ!」

「騙される方が悪いんだよ〜」

 少年の憎たらしい声に、少女は再びグーにして手を握っていた。

「くぅっ…………はぁ」

 一旦怒りのゲージがマックスになったものの、少女は諦めたように肩をすくませる。

「まあそれはさておき、俺になったときやっぱり興奮した、秀樹?」

「ん〜……。
 そりゃ女子の裸見たり触ったりするの初めてだったし……」

「そっか。
 面白いなぁ、俺は大嫌いな体だったのに、それに秀樹は興奮してくれたんだ」

「なあ……こんな話聞いて楽しいのか?」

「そりゃあ、純男の秀樹を俺と同じ気持ちを味わわせてると思ったら興奮するぞ?」

「はぁー……」

「秀樹は男に戻りたいのか?」

「戻りたいよ、そりゃあ」

「立ってしょんべんしたり、ちんちんでオナ○ーしたいか?」

「したいなあ、もう三ヶ月もご無沙汰だし……」

 ボーイッシュな少女は、少年だったときのことを回想しているようだった。

「ふ〜ん、じゃあ俺の言うこと聞いたら一日だけ元に戻らせてやろっか?」

「え〜、一日だけ?
 というか、元に戻せるのかよ?」

「戻せるぜ。
 入れ替わりを起こしたのはこの俺だし」

「う〜ん、一日でも結構貴重だろ?」

「あのなっ、それは俺の体なんだぞ。
 一日じゃなくてちゃんと体を返してくれ」

「ふんっ、俺の体でそれだけ楽しんでおきながら返せっていうのはないだろ?」

「ぐっ……さっきといってること違うじゃないか?」

「まあ、いいや。
 その辺は追求しないでおいてるから、いうこと聞いてくれるだろ?」

「まあ……オレに選択肢ないし」

「じゃあさ、オナ○ー見せてくれよ」

「ええ〜っ!?」

 少女は思わず顔を顰める。

「いいじゃん、どうせしてるんだろ?
 秀樹が俺の体でどんな風にしてるか興味あるし」

「ん〜……」

「体操着脱ぐだけでいいからさ」

「やる……のか?
 マジで?」

「ああ、体の元の持ち主がいいっていってるんだから、気にすることないだろ?」

「でも…なあ」

 少女は渋った。

「ちんちん、もう一度触りたくないのか?」

「ん〜……はぁ」

「やってくれるのか?」

 仕方なさそうな…そんな少女の反応に、少年は期待の目つきで眺めた。

「しゃあないな……。
 どうせ直美が見てるだけだし…」

「んじゃ、脱いで」

「はぁ……」

 少女は困ったような顔つきながら、素直に体操着を脱ぐ。
 汗ばんだ上着を脱ぐ捨て、スポーツブラ一枚になると、今度はブルマに手をかけた。

「へ〜、秀樹結構慣れてるじゃん?」

「あのな〜、もう三ヶ月なんだぞ」

 少女は、羞恥心を刺激されたように頬を赤らめた。






<後書き>

んにゃ……まあ、ちょっとずつ…(^^;



2003/12/14(Sun)
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