プレコーシ ぼくとお姉さんの入れ替え物語
作・JuJu

#9

(そ、そうだよな。美穂さんの体は、いまはぼくの体なんだ。お風呂とかだって入らないわけにはいかないし、体が入れ替わってしまった以上、裸を見てしまうのはしかたがないんだ。そ、それに、美穂さんだっていいっていってくれているんだし)
 そんなことを考えてしまっている自分に気がつき、ぼくは激しく首を振って欲望を振り払う。
(――なにを考えているんだ! いくら美穂さんがいいっていったって、そんなことが許される訳ないじゃないか!!)
 心の底からあふれ出る熱い思いを、理性を総動員させて押さえつけた。
 ぼくだって男だ。あこがれの女性の下着姿が見たくないわけじゃない。でも、そんなことをしたら美穂さんが汚(けが)れるような気がした。それにそんなことをすれば、美穂さんを好きでいられる資格を剥奪されるように思えた。
 唯一、美穂さんの下着姿を見てもいいのは、彼女の恋人だけだ。ぼくはそう、自分にいい聞かせた。
「やっぱり、そんなことはだめです。
 どうしても浴衣を脱がなければならないのならば、ぼく、目隠しをします」
 そう宣言したあと、ぼくは棚にあったハンドタオルに手を伸ばした。それで目を隠すように頭に巻く。これならば、美穂さんの裸を見ることはない。
「そう? 本当に見てもかまわないのに」
 美穂さんの声がすこし残念そうなのは、ぼくの気のせいだろうか。

 ぼくは浴衣の帯をゆるめようとした。
 だが、女物の浴衣のせいか、あるいは目隠しをしていて手元がおぼつかないせいか、なかなかうまく帯をはずすことができなかった。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
 ぼくは声に背を向けると、ふたたび帯と格闘を始めた。
 目隠しをしているために、肌の感覚が鋭くなっている気がする。闇の中で、肌の感触がぼくのすべてになっていた。指先では、美穂さんのやわらかな肉体の手触りを浴衣越しに感じていた。同時に腰には、布の上を這いずり回る指の刺激を感じていた。美穂さんの肌が敏感なのだろうか、それとも女性の肌は全身が性感帯なのだろうか、肌をまさぐる指に、美穂さんの体が甘い刺激を感じ取ってしまう。

 帯をはずすことにとまどっているぼくに、ぼくの声をした美穂さんがいった。
「やっぱりむりなようね。わたしがやってあげる」
 美穂さんは弾むようにいった。まるで何かを期待しているような声色だった。
 腰のあたりに美穂さんの指の感覚がした。帯がゆるんだと思うと、布が肌をすべってゆく。胸元から太股まではだけたのがわかる。
 美穂さんの指先がかすかにふるえているのは気のせいだろうか。
 美穂さんの手がぼくの背中をさわった。と思うと、胸から背中に掛けて締めつけていたものがゆるんだ。
 ブラジャーをはずしたのだとわかった。
 ぼくは自分がブラジャーを付けていたんだと思うと、なんだか恥ずかしくなってきた。
 ブラジャーを脱がされると、胸の重みが一気に増した。これが美穂さんの本当の胸の重みなんだ。ずっしりとした確かな重みに、美穂さんの胸の大きさが実感できた。
(美穂さんって本当に胸が大きいんだな)。
 美穂さんの指はやすむことなく、こんどは下半身の下着をおろしていった。
 女性にとって一番大切な、最後の一枚がはずされた。
 美穂さんの体になったぼくは、裸になった。


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