ふゆさん総合




 入れ替わった人生2
  作: ふゆ
  (入れ替わった人生1はこちらです

登場人物
 主人公   西野由紀
 担任    伊藤葉月
 親戚    西野美月


「伊藤先生今年も先生のクラスが有名大学大学合格率トップでした、見事な手腕ですな」

「ありがとうございます、でもそれは生徒が優秀だったからで私の力ではありませんわ」

「ご謙遜を」

校長がそう言ってくれて誇らしい気持ちになったが、私の胸の内にはもやもやが残っていた、確かに私の指導法が良かったのもあったのだろうけど、でもこの学校の生徒たちは、私じゃなくてもちゃんとやって行ける事もわかっていた

「貴女の校長に話は聞いたわ、すごい活躍じゃないの」

「ありがとうございます」

私は中学時代の恩師大野先生に会っていた
高校の時貴女だったら、医学部だって余裕で入れるでしょうに、どうして教師を目指すのかと散々言われていた訳は、この先生に会ったからだ、中学の時先生に憧れて私もこんな先生になりたいと思い教師を志した

「貴女は中学の時から優秀でしたからね、きっと良い教師になれると思っていたわ」

「でも、最近考えるんですよね、もっと私じゃないと出来ない事があるんじゃないかと」

「そうかな、今のままでも十分立派だと思うけど」

「うーん、今のような元々出来る子供たちじゃなくて、底辺校と呼ばれる学校でもやれば出来る子も居ると思うんですよ、そういう子を指導してみたいんです」

「そう・・・そういう学校だったら確か南高校が教師を募集していたわね、赴任しても皆長続きしないみたいなの」

「え、あそこってそういう所なんですか、是非行ってみたいです」

「え、本気なのあそこは大変よ」

「いいんです、自分の力を試してみたいんです」

私は希望に燃えて南高に赴任したけど・・・

「それで、そいつったらさ」

「馬鹿だね、そいつ」

「ちょとそこの二人私語はやめなさい」

「ええ、先生授業なんて誰も聞いてないんだから、いいじゃない」

「・・・・」

私の考えが甘かった、こっちが熱意を込めて当たればきっと答えてくれる、そう思ったけど半年経った今でも状況は変わらなっかった





「あの先生馬鹿だね、今までの先生だったら一か月もすればもう諦めて何も言わなくなるのに、まだ注意してくるよ」

「そうだよな、あの先生も黙っていれば、美人だしスタイルもいいから人気がでるのに、あんなにカリカリしてたんじゃ、たまんねえよ」

「なによ陽平あんな女が好きなの?」

「まあ、男は皆ああいうのが好きなんだよ、由紀もあんな女になればいいんじゃね、まあそれは無理か」

陽平は笑いながらそう言った
派手なメイクをして、髪は黄色に近い茶色に染められ裾の短いスカートを履いてる私は
ヤンキーかギャルにしか見えない
それに比べて清楚なブラウスを着てロングのタイトスカートを履いている先生は、お嬢様の様だった
そういえば男子は、あの先生が注意すれば一旦は大人しくする、あたしはあの女に嫉妬を覚えた


「ただいま」

「おかえり、美月さん来てるよ」

美月お姉ちゃんは私の親戚で教師をやっている、綺麗で頭が良くて誰からも好かれていた、お姉ちゃんの周りにはいつも人が集まってる
他の親戚はこんな風になった私を敬遠して滅多に話しかけて来ることはないけど、美月お姉ちゃんだけは前と変わらず、あたしに優しく接してくれていた

私が自分の部屋に居るとドアをノックする音が聞こえた

「由紀ちゃん美月だけど入っていい?」

「うん、いいよ」

「これ、こないだ旅行に行った時のお土産なんだけど、由紀ちゃんこういうの好きだったでしょ」

「わあ、ありがとう、でもお姉ちゃんどうしてそんなにあたしに優しくしてくれるの、他の親戚なんて皆あたしを避けるのに」

「そうね、それは貴女が私によく似てるからかな」

「ええ、お姉ちゃんは綺麗で頭もよくてあたしとは全然ちがうじゃない」

「ふふ、そんな事はないわ」

「そう言えば、うちの担任誰かに似てるって思ってたけど、お姉ちゃんに似てるんだ綺麗でスタイルがいいって男子が騒ぐんだよね、性格はお姉ちゃんとは全然違うけど」

そう言って私は担任の悪口を散々言うとお姉ちゃんは予想外の事を言った

「ねえ、由紀ちゃんはその先生みたいになりたいの?」

「ええ、どうしてそうなるの?」

「だって由紀ちゃんその先生の話をしてるとき凄く熱心に話すんだもの、それに貴女小さい頃先生になりたいって言ってたじゃない」

「それは、そうかもしれない、あたしは先生に憧れているんだと思う、でも私の頭じゃ先生なんて無理よね」

「ううん、貴女でもなれるわ、私だって成れたんだもの」

「え、無理だよ、お姉ちゃんは頭がいいから、あたしとは違うよ」

「でもね、いとこの和也君って知ってるでしょ?」

「うん」

お姉ちゃんのいとこの和也さんはお姉ちゃんと同い年だけど、優秀なお姉ちゃんと違って職を転々として影の薄い人だ

「本当は私が和也なの」

「え、どういう事?」

「私達が高3だった頃、ある事があって二人は入れ替わったの」

「ええ、お姉ちゃんなに言ってるの、あたしをからかってるの?」

信じられないでいるあたしに、お姉ちゃんは入れ替わってからの事を話してくれた

「じゃあ、お姉ちゃんは本当は男なの、そんなの信じられない」

「そうね、信じられないのも無理ないわ、でももし貴女と伊藤先生が入れ替われるとしたらどうする?」

「ええ、そんな事が出来るの?」

「出来るわ、入れ替わった時はどうしてこうなったか分からなかったけど、先生になってこの地方の伝承を調べる事があったの、その時ある方法を使えば入れ替わる事が出来るってわかったの」

「ほんとうなの、それで元に戻ろうとは思わなかったの?」

「ううん、私も子供の頃から美月に憧れていて美月になりたいって思っていたから、戻りたいとは思わなかったわ」

「へえ、お姉ちゃんがホントは和也さんだったなんてびっくり、でもそれで、あたしと似てるって言ったんだ」

「そうよ、どう貴女もその先生になりたいと思っているんじゃない?」

「うん、そうだね、本当はあたしもあの先生に憧れていて、先生になってみたいと思ってるんだと思う」

「そうでしょ、じゃあ貴女にも入れ替わりの方法を教えるわ」



お姉ちゃんから入れ替わりの方法を教わったあたしは放課後、階段の所で先生が来るのを待ち構えた、先生は美術部の顧問で毎日部活で指導をしてる、他の先生はそんなマメに部活に顔を出すことはしないが、あの先生は真面目なので毎日指導をしてるみたいだ

コツコツ
先生の足音が聞こえた
私は階段を下りながら足を滑らせたふりをして先生にぶつかり、お姉ちゃんに教わった入れ替わりの方法を実行した

意識が遠のき次に目を覚ますと私は保健室のベットの上にいた、起き上がると紺のタイトスカートを履いた下半身が目に入った、さっき先生が履いていたスカートだ、上手く入れ替われた、そう思った私はベットから降りて近くの鏡に全身を映してみた

長い黒髪上品な整った顔立ち、スカイブルーのブラウスが良く似合うスタイルのいい体、今までの自分と全然違う姿に感動を覚えた

「う、うーん」

先生が目を覚ましたみたいだ

「西野さん大丈夫、どこか痛い所はない?」

「西野さん?え、貴女だれ?」

「大丈夫みたいね、よかったわ、生徒にケガがあったら大変だから」

「生徒って何言ってるの、え、どうして私が制服着てるの」

先生は自分の着てる服に気が付くとそういいました

「ふふ、どうしたの西野さん、貴女この学校の生徒なんだから制服着ててあたりまえじゃない」

「さっきから貴女何言ってるのよ、私はこの学校の生徒じゃなくて教師の伊藤葉月よ」

「まだ、分かってないようね」


私はそう言って二人が写ってる鏡を指さした

「私が西野さんになってる・・・」

「そう、先生が西野由紀になってあたしが伊藤葉月になったの」

「そ、そんな事ありえないよ」

「ふふ、先生私になって頭悪くなったから、現実が理解できないみたいね」

「それなら、早く元に戻る方法を考えないと、そうだ階段から落ちたらこうなったんだから、もう一回落ちてみればいいのよ」

「悪いけど、あたしはもう戻る気はないよ」

「な、なに言ってるのどうして元の自分に戻りたくないのよ」

「だってこのままだと、高校卒業してもろくな仕事に就けないだろうし、結婚だって陽平みたいな男と一緒になって苦労するのが目に見えてるしね」

「でも、両親と離れ離れになっちゃうし、貴女にだってやりたい事だってあるでしょ」

「あんな親どうでもいいし、あたし先生になりたかったんだよね、だからこうなって嬉しいよ」

「そんな、貴女が私になったからって生徒に教える事なんて出来ないでしょう」

「大丈夫だよ先生、あたし先生の記憶が読めるんだ、今先生が作ってるテスト問題もわかるよ、でも元の自分の記憶はあやふやなんだよね、先生もそうでしょ」

「そう言われれば、高校の勉強内容どころか中学生程度の物まで思い出せない、ここまで酷いなんて・・・」

「ふふ、ごめんね先生あたし全然勉強してないから中学で習う事もわかんないんだ、
へえ、先生三か国語も話せるんだあたしなんて国語も満足に出来ないのにね、全然勉強しなくて出来るようになったなんて儲けたよ」

「あれだけ、苦労して覚えたのにそれがこんな簡単に奪われるなんて」

「ふーん、先生彼いるんだ、イケメンだしいい大学出てるエリートじゃん、元の私だったら相手にして貰えないような人だね、陽平とは大違いだ」

「そんな、彼まで奪うっていうの」

その時、ドアが開いて保健の先生が戻って来た

「あら、二人とも気が付いたのね、階段から落ちて気を失っていたから心配していたの大丈夫?」

先生は保健の先生を見てすがるような顔で言った

「あ、先生、大変なんです実は私達階段から落ちたら入れ替わってしまったんです、ほんとは私が伊藤で彼女が西野さんなんです」

「貴女何を言っているの、全然意味がわからないわ」

私は先生の口調を真似て言った

「彼女階段から落ちたショックで混乱してるみたいなんです、私と体が入れ替わったとかさっきからおかしな事言ってるんですよ、頭でも打ったのかしら心配だわ」

先生は驚いて私を見ながら言った

「な、何言ってるの!」

保健の先生は困った顔で言った

「うーん、それは困ったわね、伊藤先生の方は大丈夫なの?」

「ええ、私は大丈夫です」

「そう良かったわ、じゃあ西野さんは私が病院に連れて行ってみて貰うわ」

「ご迷惑をおかけしてすみません」


先生の言ってる事に医者は困惑し暫く入院して様子を見る事になった
私は上手く行ったと思い先生の住むマンションに帰る事にした

ふーんここが先生の部屋なんだ、趣味のいい部屋であたしの部屋とは大違いだ

今日は先生の彼が来ることになってるから
彼の好きなビーフストロガノフを作る事にした、普段料理なんてした事ないけど先生の頭を使えば簡単に出来た

「いらしゃい」

「こんばんは、久しぶりだね、最近忙しくて会えなかったから」

「うん、会いたかった」

「今日は機嫌が良さそうだね、ここの所生徒との関係が上手く行かないって悩んでいたのに」

「うん、そうなんだけど、今日はとってもいい事があったの、そのおかげかな」

「そうなんだ、良かったね、これお土産葉月が好きなバームクーヘン買ってきたよ」

「わぁ、ありがとう」

やっぱりこういうとこは陽平とは大違いだね、あいつはお土産を買ってきたことなんて一度もなかったよ

その夜は先生の彼とHをした、先生は経験が少ないから下手だったみたいだけど、あたしに代わって上手になったから、彼は喜んでくれて何度も抱いてくれた


朝起きて今日からは教師として学校に行くんだと思うと、願いが叶った喜びと不安が入り混じった複雑な気持ちだった


学校行く用意をしないとね、そう思った私はメイクを始めた、先生っていつも地味なメイクしてるよね、元がいいからちゃんとすればすごいキレイになれるのに、そう思ったあたしは普段先生がしない様なメイクをすると、予想通り誰もが振り向くような美女になった

学校に着き教室に入ると案の定陽平があたしをからかってきた

「葉月ちゃん、今日はいつもよりずっとキレイだね彼でも出来たの?」

クラスの皆は一斉にあたしを囃し立てた
まったく酷いクラスだね、まああたしも一緒になって騒いでいたんだけどね、さてどうするか、そうだあれをばらすっていえば陽平も静かになるか、あたしは陽平の傍にいって耳元でそっと囁いた、すると陽平はびっくりした顔であたしを見つめ静かになった
陽平が静かになると、それまで騒いでいたクラスメートも次第に静かになっていった
それからは、騒ぎだす奴らがいると弱みを握ってるあたしは、それをネタに脅して静かにさせていると段々授業中に騒ぐ奴はいなくなっていた

それから一週間程経ち先生が登校してきた

「あら、西野さん退院できたのね良かったわ、心配していたのよ」

「何言ってんのよ、元々はあんたのせいでこうなったんでしょ」

先生はあたしになったせいか柄が悪くなっていた

「先生に向かってあんたはないわね、言葉使いには気を付けないとね」

「なにが先生よホントは女子高生のくせに、どうせ授業だってまともには出来てないんでしょ」

「ふふ、それはどうかしらね」

授業が始まるとすっかり大人しくなった皆に先生は驚いていた

「いったいどういう事なの」

「ふふ、何もしてないわよ、誠心誠意話したら皆わかってくれたわ」

「そんな・・・」

「他の先生方も喜んでくれたわ、さすがはW大卒の優秀な教師は違うって、感心していたわ」


それから月日が経った


「先生話があるんだけど、今いい?」

「なによ」

「私ね結婚する事になったの」

「まさか、相手は・・・」

「そう、啓介さんと結婚するの、結婚式の準備て大変ね、でも凄く幸せだわ、先生この体くれてありがとう」

「な、何言ってるのよ、返せよあたしの身体」

「ふふ、まだいってるの諦めなさい」

先生は笑いながらその場を離れるあたしを呆然と見送っていた

結婚式にはあたしの本当の家族は呼べなかったけど、美月お姉ちゃんだけは教師仲間として呼ぶことができた

「葉月さんおめでとう、とっても綺麗よ」

「ありがとう、これも美月さんのお陰よ」

美月お姉ちゃんが私の所に来てお祝いの言葉を掛けてくれ、啓介さんと少し話した後席に戻って行った

「葉月の友達なんだ素敵な人だね、理知的だしきれいだ、僕の友達もあの人の周りに集まってる人気があるんだね」

「ええ、そうね頭もいいしきれいだし、昔から人気があったみたいね」


ネイビーブルーのドレスを着たお姉ちゃんは華やかでひときわ目を引いている、啓介さんの友達がひっきりなしに話しかけている気持ちもよく分かる、そんなお姉ちゃんが元は男の和也さんだったなんて、信じられないと思いながら見ていた


月日が経ちあたしには子供も生まれ幸せな毎日を送っていた

今日は啓介さんと一緒にスーパーに買い物に来ていたあたしはそこで働く先生を見つけた、先生は高校を卒業して地元のスーパーで働いてる、この学校の卒業生だとなかなか就職先が決まらないけど、あたしは先生の身体を貰ったんだから、せめて就職先くらいは見つけてやろうと思って啓介さんのコネを使って就職先を見つけてあげた


「西野さん久しぶりね、元気そうで良かったわ」

「あ、貴女・・・」

先生はベビーカーを押して啓介と買い物をしてるあたしを見て、睨みつけるような眼をして黙ってしまった

「貴方、この娘私の教え子の西野さんよ」

「そうなんだ、夫の啓介ですよろしく」

「西野です、よろしく・・・」

先生は訴えるような目で啓介を見ていたが
暫くして顔を伏せた
あたしは先生に向かって言った

「この子来月で1歳にになるの可愛いでしょ」

先生は子供を見つめて

「可愛いですね」

と微笑みながら言ったがあたしは先生が涙ぐんでいるのを見逃さなかった

「じゃあ、西野さん仕事頑張ってね、行きましょ貴方」

そう言ってあたしはその場を離れた

買い物が終わり車に乗り込むと啓介があたしに話しかけてきた

「さっきの娘なんか怖い顔で葉月の事睨んでいたよ、よくああいう娘を教えられたね」

「ふふ、真剣に向き合えば大丈夫よ」

「そうなんだ、葉月も変わったよね、あの学校に行った頃は生徒を上手く指導出来ないって泣いていたのに、今はそういう荒れた学校を立て直せる教師として、引く手あまたになるなんて考えられなかったよ」

ふふ、ごめんね啓介貴方の彼女泣かせていたのあたしなんだ、おまけに体まで奪っちゃって悪い女だね

「そうね、でもそうなれたのも、ああいう娘を担任したからで彼女のおかげとも言えるわね」

「そうなんだ、じゃあ、あの娘に感謝しないとね」

「ええ、そうよ彼女には感謝してるわ」

そう彼女のおかげでなりたかった教師になれて、素敵な人と結婚出来たんだから、感謝してるよとあたしは心の中で思っていた
















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