火曜日7月7日、8日 凛太郎の決断(その3)


「僕修ちゃんが欲しい。いっぱいぎゅってして欲しい。……修ちゃんに、埋めて欲しい」
「あ、う、わ、解ったっ。……リンタ!」
 促されるままに、修一はズボンもパンツも脱いでいた。そこから飛び出た「修一」は、魔物が見せていたモノと寸分違わないように見えた。ただ違う事と言えば、亀頭の粘膜がはち切れんばかりになり、今にも白い粘液を吹き出しそうなところだろうか。修一はそのまま凛太郎にのし掛かっていく。
「もう、俺止まれねぇぞ」
 少し震える声を出す修一に、凛太郎は腕と足を絡めていく。修一の逞しい腕を通って、つるっとした背中に腕を回し、締まった腰を膝頭で挟み込む。ほんの少し、凛太郎か修一が腰を前に動かせばお互いの性器同士が当たるほどの距離だった。
「止まらなくていい。きて、いいよ……」
 欲情に頬を染め「きて」などと言われたら、童貞の修一は発情期の犬のようになってしまう。あたふたと、凛太郎の中に己の分身を埋めようとする。けれど。
「あ、ん、そこ、違ぅ……」
「悪ぃ。こっち、か?」
「いたっ。それじゃ上過ぎ。あの、もっと、こっちだから」
「ぅ?!」
 凛太郎が腕を股間に差し入れて、修一のペニスに触れる。思った以上に熱いそれを適切な位置に動かしつつ、先端が自分の膣に触れるように腰も動かしていく。
 修一は不意の感覚に思わず肉槍を震わせて果ててしまう所だった。
「よよしっいくぞ」
「はい……あぁっ?!」
 熱く、固い感触が凛太郎の下半身から伝わってくる。膨れ上がった亀頭が膣口を通り過ぎると、狭い道を押し広げられる圧力を感じていた。「ミチッ」と音がしてしまう様に思える。少しづつ凛太郎に進入する太く逞しい「修一」が凛太郎を愉悦の縁へと誘っていく。
(ああぅぅ、修ちゃんが僕の中に……。もうこんな事無いって思ってたのに)
 一度は修一と一緒にいられないと諦めたが、自分の胎内に収まると凛太郎の身体を焼き尽くす程の熱と、ある種の感情をもたらしていた。
「しゅうちゃ、ん……すごっいっ! おっきぃよぉ」
 修一の肉棒は、経験はあると言ってもまだ処女同然の凛太郎の膣内に感激しつつ、最奥へと進んでいく。狭い襞坑は竿全体を優しく包み込みながらしっかり握り締め扱きたてる。その感覚にイキそうな程だ。槍の先端が凛太郎の子宮口を叩く。ずしんとした感覚が凛太郎を襲っていく。もう進めないと言うのに、尚もぐりぐりと腰をねじ込もうとする修一に、凛太郎が苦しげに呻いた。
「もう、入んないよ……ナカ、修ちゃんでいっぱい」
 凛太郎は突き破られるんじゃないか、そんな心配さえしてしまった。肉欲に支配されつつある修一の表情は陶然としている。何か言っても凛太郎の身体から与えられる甘美な痺れの方を優先しているようだった。ほんの少しだけ、不満が募るけれど、同時に、自分の中に修一がいるという安心感と、そこから生じる幸福感に浸っていた。
 修一は凛太郎の一番深い所に分身を収め、その締め付けを堪能していた。しかし濡れそぼる柔襞肉に進入してから、一切の抵抗無く最奥まで辿り着いた時、当然そこにあるべきものが無いことに気づいていた。処女の印たるモノがやはり無かった。頭の中では解っていた事だった筈なのに、いざそれを目の当たりにするとやはり気になっていた。
 ほんの僅かだったけれど、胎内で感じる「修一」の勢いが衰えた気がした。凛太郎は修一の表情を伺い見る。ずっぷりと奥まで進入している修一を抱き寄せながら、耳元で囁いた。
「……僕、処女じゃなくてごめん。初めてじゃなくて……。いっぱい機会あったのに……」
 本心から凛太郎はそう思っていた。何を拘っていたのだろう。女の子として親友に恋をしてしまったのだと思ったときから、修一の浅黒いけれどすべすべした肌と自分の白い肌を合わせる事を想像していたのに。男だった気持が邪魔をしていたと言えば聞こえはいいけれど、ただいたずらに時間を引き延ばしていただけだ。そんな事をしていたから、千鶴と修一の関係もぎくしゃくしてしまったし、犯されてしまったのだ。もっと早く男だった事に見切りをつけていたら、ほんの少し勇気を持っていたら……。結ばれた安心感からと言うより、修一に対してすまない気持ちが大きくなって凛太郎の頬に涙が流れていた。
「俺とリンタは初めてしたろ。お互い初めてじゃねぇか。大体これがお前の初めてなんだよ。そうだろ?」
 抱き寄せられた身体を少し起きあがらせ、修一が凛太郎の涙を親指で拭った。優しい笑顔を見せると、軽く唇にキスする。
「修ちゃん……」
 修一の言葉とキスで凛太郎の心は落ち着いていった。ただ、性感だけは益々上昇してくる。
「なぁ……動いて、いいか?」
 切なそうな顔をして、修一が懇願する。
「あ、ぅん。いいよ。いっぱい感じて。僕で気持ちよくなって。たくさんイッていいから―─ひゃぅ」
 凛太郎の言葉を待って、修一が腰を使い始める。ずるっと修一が抜けていくと膣の襞一つ一つを開いた傘が引きずり出していくようだった。ヌメ光るシャフトが出ていくと、開いた部分が中から愛液をたっぷりと外に掻き出していく。その感覚に凛太郎は悲鳴を上げていた。ただ痛いというのではなく、単純に「気持ちいい」だけ。
「いいぁあ、出てっちゃ、やだっ」
 抜け出てしまうのかと言うほど、修一が腰を引く。それに合わせて凛太郎は足で修一の腰を逃がさないように絡めてしまう。修一自身は抜くなんて勿体ない事をするつもりは毛頭無かった。ストロークを大きく取って、つるっとした亀頭の粘膜がより快感を味わえるようにしただけ。
「出てかねぇよ。こんなに、気持ちいいのに。やっとリンタとしてんのに。もっと奥までっ入るぞ」
「ひっ?! やぁあン! すごっ、しゅうちゃん、たくさんっ、いっぱいいいっ」
 修一の逞しいペニスが凛太郎を串刺しにしていく。その熱い棒は、凛太郎の膣から子宮を通って直接脳へ快楽の信号を送り込んでいるかのようだった。徐々に激しくなる修一の突き。その一突き一突きを身体に受け入れる度に、凛太郎の想いは満たされていく。
(ああっしゅうちゃんが、しゅうちゃんが! 気持ちいいよおっ)
 悦びと歓喜。その後来る憂いなど、今はどうでも良かった。ただ、修一が自分の身体を愛していること、それだけあれば心も身体も十二分に感じてしまう。
 凛太郎は、奥を突かれる度に嬌声を上げ、引き抜かれる度に身体を震わせていた。快楽の穴の襞が全て広げられて、粘膜同士がぴったりとくっついているかのように想像してしまう。そして高まった性感は、絶頂付近まで近づいていた。
 身悶えし、快感に打ち震えながら喜悦の声を上げる凛太郎を見ていると、下半身から立ち上る絞り上げるような感覚に、修一も限界を感じていた。元々童貞なのだ。可愛い女の子が自分の下で悶えている所などを見ていたら、急激に気分も高まってしまう。しかも凛太郎の膣襞はいくつもの指で修一の槍の凹凸全てを握りしめて扱くようだった。
(うっくそっ。リンタ、すっげぇいい! やばいって! もうイキそう!)
「リ、リンたっ! 俺、もうダメッ! イッちゃいそうだ」
「しゅうちゃんっ、イッて! はっあああぁ! 僕もっ僕もっイッきそっ」
 性欲で腰を振る事に支配されていた修一の思考。しかしイク寸前で避妊していない事を思いだし凛太郎の身体から出て行こうとする。しかしがっちりと凛太郎が足をフックさせて離してくれない。勿論背中に回した手も。
「ちょっ、まずいっ、も出ちゃうってっ! リンタっ」
「やっだっ、このままっ、膣内でっ、いいからっ! あンッ、もぉ、イク、からあああ!」
「うぉっ、ダメっリンタっ大好きだあ!」
 凛太郎の言葉に修一が再び奥へと突き込んでいた。そしてそれが合図だったかの如く、「修一」の口から熱く白い粘液が迸る。びゅるびゅると勢い良く子宮口へ叩き付けられる精。「修一」が凛太郎の中で跳ね回る度に大量の白濁液が凛太郎を満たしていく。
 そして刺激で、凛太郎も頂点へと達していた。
「あ、あ、んっんん……いくっいくっしゅうちゃんっ!」
 ぎりっと修一の背中に爪を立てて、背中を反らせていく。足は力の限り修一の腰を締め上げ、足の指で何かを掴むようにしていた。乳房は固くなりながらもぷるぷると震える。「修一」から吹き出す精を一瞬止めんばかりに膣が収縮し、一瞬溜まった精を搾り取るように弛緩と収縮を繰り返していった。
「「……はぁああ」」
 どちらからともなく、止めていた息を吐き大きく深呼吸する。修一が上体を凛太郎に預け倒れ込んでいく。ムニっと凛太郎の乳房が修一の胸板で潰れる。
 凛太郎も腰に回していた足をぱたっとシーツの上に落としていた。腕だけは、愛しいとばかり、修一の汗をかいている背中を撫でている。
「すごく、良かった。セックスってすげぇんだ……でも」
 ハァハアと荒い息を整えながら、修一が凛太郎の耳元で囁いた。
「僕も、いっちゃった……でも、ってなに?」
 まだ固さを全く失わない「修一」を胎内に感じながら、返答を待った。
「ナカでイッちまって。すまん、て、それじゃ済まないよな」
 一つになったこと、一緒にイけたことは良かったけれど、おのが欲望に負けて膣内で放出してしまった。修一は神妙な面もちで上体を起こし凛太郎を見下ろしていた。
「僕が、欲しかったから……それに今日は大丈夫な日だから」
 実際、大丈夫ではない。しかし今日限り、と考えれば、修一自身を本当に感じられる機会は無いのだ。それに、凛太郎自身、身体の中も外も、修一で塗り替えられたい。そんな想いが凛太郎に嘘を言わせていた。
「そう、なのか? まぁ、逃げたりはしないから。絶対」
 修一も半信半疑ではあった。千鶴が問い詰めに来た事を考えれば、安全日ということは無いような気がしていた。しかし修一が女の子の身体に詳しい訳でも無く、凛太郎の言を信用するしか無い。それに、何も隔てるモノが無く、凛太郎と直接触れ合えるというのが魅惑していた事も、修一が疑問を挟まなかった理由だった。
 大丈夫なんて事は勿論なかった。どういう風に指折り数えても危険な日であることには変わりがない。ただ、凛太郎にとっては、最初で最後の大切な日である事の方が重要だった。今日だけが、男であった凛太郎が女の子の意識を持って修一と肌を合わせる事が出来る。今日を逃せば、凛太郎は女の子だと言う意識を持って生活する事になるのだ。産まれたときから女の子だったという記憶を、自分に係わる全ての人々に植え付けられる……、少なくとも修一のこれからの人生に汚点を残さない為に、そして自分の今の想いを守るためには、これしか方法がないと思ったのだ。その後の事など今はどうでもよかった。それに初めて犯された日の午後、魔物が凛太郎に言った事を思い出せば、恐らく妊娠はしないだろうと踏んでいた事も、凛太郎の言動を大胆にした要因でもあった。
(やっぱり修ちゃんの肌ってすべすべして気持ちいいな……)
 今日だけの優しい時間。修一の浅黒い肌が心地よく、凛太郎は背中に回していた手を修一の首筋や、凛太郎に体重を掛けないようにしている腕に這わせていく。男の時にはあり得なかったその感触は、今の女の子の肌と同じように気持ちがいいモノだった。自分の中に嵌っている満たされた感情と快感。凛太郎はソレに陶酔していた。
 その凛太郎の手の感触に、修一は思わず身を震わせた。そして、まだ勢いを失っていない、凛太郎の奥に埋めた肉塊が、「ピクッ」と動いていた。
「リンタ、ちょっと……」
「え? あ、なに?」
 白い肌を朱に染めた少女を見つめながら、修一は己の欲望が更に燃え上がってくるのを止められなかった。満足そうな凛太郎を尻目に、一度放出したにもかかわらず自分を凛太郎に刻み込みたいと思ってしまう。
「も一回、いいか?」
 おずおずと言う修一の顔は、少しばつが悪そうにしている。以前学校や修一の部屋でしたように、ただ肉欲だけの申し出なら凛太郎も直ぐに断る筈だった。けれども、今回はもっと心を、勿論身体も、お互いが欲しているのを理解している。元々、今日は求められたら時間の許す限り応じる気構えだった。だから断る理由も凛太郎には無かった。
「うん、いいよ。何回でも、修ちゃんが好きなだけ」
 室内に入り込む日差しが、凛太郎の顔を鮮やかに映し出している。その表情は修一が頼んだから嫌々ながら了承した、そんな顔では無かった。それが修一にも解る。それが修一と凛太郎を繋げているモノへと伝わると、それまで以上にグンと固く、大きくなっていた。
「あ……」
(修ちゃん、感じちゃった? なんかすごい、かも)
 凛太郎の返答に気を良くしたのか、修一は笑顔を作りながら腰をグラインドさせる。凛太郎の恥ずかしい程濡れた蜜壷から恥蜜と白濁の粘液がこびり付いた竿が抜け出していく。ゾクゾクして腰が震える凛太郎の顎が反ると、修一はその頤にキスしながらゆっくりと腰を突き込んで行った。
「ふっんぅぅ」
 苦しそうな呻き声を上げる凛太郎に、修一が「痛いか?」と解りきった事を聞いてくる。そんな事がある筈も無いのは解りきっている筈だと言うのに。目をきゅっと閉じたまま、凛太郎は何度か首を振った。
「ちっちがっ、そんなのっ聞かないで、よっあふっ」
 単調に、時間を掛けて出入りされると、むずがるように腹の下の凛太郎が動いてくる。自分でいい所に当たるようにしているのだろう、腰を前後左右に振るのだ。その姿が修一には堪らない媚薬になっていた。自分が好きな少女が、自分が突き込んでいるペニスを求めて腰を振っているのだ。さも、「もっとして」と言わんばかりに。視覚からだけでも十分なエロさと可愛らしさだった。
 修一が堪らずぎゅっと凛太郎を抱きしめる。凛太郎のふくよかだけれど愛らしい唇からふっと息が漏れた。抱きしめながら首筋に舌を這わせていくと、「きゅん」と蜜壷の中の襞が動き「修一」を締め付けていった。
「はぁン」
 ふと、写真の事が修一の頭を過ぎっていた。後ろから阿部に組み臥され犯されている凛太郎の姿が、飛び込んでくる。苦痛と恐怖と嫌悪感が漂った、涙の後のある顔。口の中にある種の苦さを感じながらそれを払拭しようと試みていた。張り詰めた槍の挿入を暫し中断する。
「……? どうし」
 身体を満たす修一との粘膜の接触が一時的に希薄になり、凛太郎は瞑った目を開いて問う。しかし修一はそれに答えず、身体がひとつに繋がったまま、腰に回されている凛太郎の右足を抱え上げた。
「あっ、ちょっとやだよ」
 上体を起こし、そのまま凛太郎の左足に乗るような格好で右足を抱えてしまう。修一の眼下には凛太郎とのリンクしたソコが丸見えになっている。深く嵌っていると思っていた固い杭はテラテラと光を反射させながら、まだ十分にその長さに余裕があった。そして凛太郎の下の唇はぐしょぐしょに濡れながらしっかりと「修一」を銜えている。
「リンタ、すっげぇエッチだぞ。しゃぶられてるみてぇだもん」
「ひっぁ、ん。そ、そんな、ことないっ。修ちゃん、エッ、んんんん〜っ!」
 くいっと腰を突き入れて、一言修一が感想を述べながらそのままグリグリと押し込んでいく。膣の奥の方は無痛ゾーンだから、そこまで苦しい訳でも無いし、強い刺激がある訳でも無い。けれど、凛太郎は自分を埋め尽くす修一の肉塊に陶然となっていた。そこに、修一が膨れた淫欲の塊を撫で上げる。狭い肉洞が一気に収縮し、入り口と中間と奥で別々に修一を締め上げる。
「ぅあっ、リンタ! そんなに締めんなよっ」
「だっ、しゅうちゃ、すごく、てっ。ああっんっ、もっ、やっめっ」
 普通に受け答えしたいけれど、修一が抜けそうになると溜息が出、入り込むと声が途切れてしまう。凛太郎は修一の激しい攻めと粘膜接触が奏でる悦楽に翻弄されていた。あまりの良さに脳髄が焼き切れてしまうのではないかとさえ思ってしまう。
「ひんっ、いいっ、すごくっいいぃ」
 一際深く「修一」が蜜壷に突き込んだ。そのまま凛太郎の手を取って後ろに倒れ込むと、自然と凛太郎が修一を跨ぐ格好になっていた。
「なっ?!」
 一瞬、凛太郎は何が起こったのか解らなかった。自分から飲み込んで快楽を貪るようなその格好に、凛太郎は上気した頬を更に赤くしながら修一と目を合わせないように俯いてしまう。しかしそれをよしとしない修一は、白く丸い凛太郎のおしりをしっかり掴んだ。
「しっかり、入ってるだろ。リンタの中ってすごくうねうねしてて、感じる」
「そっそういうのは思っても言わないっで、あう!」
 そう言うなり修一が凛太郎を持ち上げるようにし、ぬるりと熱い棍棒を抜いていく。そして下から勢いをつけて突き上げた。ずしっとした感触が凛太郎の身体を突き抜けて、言葉を言い終わらない内に喘ぎ声を上げさせられてしまう。突かれる度にガクガクと凛太郎の頭が揺れ、サラサラした髪がそよぐ。
 白い肌を紅く染めた姿を下から見ると、酷く扇情的に映っていた。自分の腹の上で必死に快感を耐えて口を結んでいる凛太郎を、修一は愛しいと思ってしまう。いつまでもずっと、こうして一つでいられたら、そんなあり得ない事さえも思い付いてしまっていた。
「もう、ダメっ! そんなに、しないでよお。おかしくなっちゃうううっ!!」
 あまりに激しい挿入に、凛太郎が音を上げていた。ただそれは、粘膜が痛んだからでは無かった。自分の中にいる修一をもっと感じたい、言ってみれば修一を自分が「感じる場所」に迎え入れたくなってしまい、腰が動きそうだったから。自分から動いたら、淫乱だと思われてしまうかも知れない。凛太郎はそれを恐れていた。しかし、気が遠くなるような、泣きたくなる程の快感は僅かに残っていた凛太郎の理性を確実に削いでいく。
 最深部まで到達させながら、ぐいぐいと結合部を揺すりたてる。入り口の部分は凛太郎の分泌した愛液でびしょびしょになった恥毛同士がさりさりと擦れ合う。まぁるく膨れた愛欲のボタンが恥骨に挟まれてその姿をひしゃげさせていた。その身体の芯をとろけさせる程の刺激が、凛太郎を狂わせるのだ。修一が手で掴んで動かしているという安心感からか、次第に自ら腰をくねらせ始めていた。
 凛太郎の変化は、修一には直ぐに解っていた。それまでお尻を掴んでいた手から少しづつ力を抜き、その手を滑らかな凛太郎の肌をすべらせ白いお腹に這わせていく。大きな修一の手の温もりが凛太郎の肌を通して体内に伝わると、直接子宮に触れられたような感覚に襲われ、凛太郎は身震いを起こしていた。
「やだっ、修ちゃんっ、お腹がっ、お腹っ、熱いっ! はああっ」
 けして閉じようとしない唇の端から、とろっと涎がながれて上体を支えるために修一の胸に置いた凛太郎の両腕の間に垂れていた。前後左右に揺すりたてる凛太郎の腰は、修一に押しつけられ、もっともっとと速度を速めていく。修一は最早、少しも突き入れず凛太郎の動くに任せ、自らは凛太郎の痴態を眺めていた。
 快感に咽ぶ凛太郎の姿は、毎日放出していた白いマグマを瞬く間に蓄えさせてしまう。見ているだけでも我慢汁が湧き出てくるのに、きゅんきゅんと締め上げられ扱かれると股間に溜まったもの全てを抜かれてしまいそうになる。修一は軽く呻きながら奥歯をぐっと噛み締めそれに耐えていた。
 ふと、修一にイタズラ心が芽生える。凛太郎の下腹を撫で回していた手をするすると上に持っていくと、ぶるぶると揺れ動くたわわで張りのある乳房に持っていった。
「はっ? あうっくぅん」
(あんっあくっ、気持ち、いいぃ……)
 両手で掴みながら人差し指と親指で乳首を扱く。固くなった突起を扱かれると、凛太郎は胸にペニスでも生えたのかと錯覚してしまった。上半身と下半身がばらばらになって、違う生き物のように動く。上半身は胸からの刺激で痺れるように力が抜け、下半身は「修一」を貪るように激しく動く。
 倒れ込んでくる凛太郎を優しく抱き留め、修一は凛太郎の頭と背中に手を回した。
「スケベリンタ。自分で動いてるの知ってるか?」
(! 僕、動いて?!)
「ちがっ、動いてなんてっんぅ、ない」
 ちょっと意地悪く囁く修一の一言に、凛太郎は激しい羞恥に襲われていた。自分で快楽を引き出そうとして蠢く下半身を、そうしてしまう心と身体をコントロール出来ない自分を修一に知られてしまった。そう思うと熱い身体が更に熱を持って、しかも力を込めて修一の熱さと固さを膣で感じてしまう。
(こんな、してたら、ん、淫乱て嫌われちゃうよぉ……でも、止まんない!)
 元男が、親友の男をくわえ込んで、尚かつその動きを自制出来ないなんて、魔物に言われたように淫乱そのものでしか無いと思ってしまう。大好きな修一に自分の本性を知られた想いがこみ上げて、凛太郎は快楽と羞恥の狭間で涙を落としてしまった。
「違うっ違うっ、僕動いてないっ。やぁっ、いいっ、そんな、アソコがあっ!」
「リンタッ、すげぇ好きだ! ああっもう堪んねぇ!!」
 羞恥に歪み頬を濡らす凛太郎の表情が見えない修一は、全身で感じる裸の凛太郎をぎゅっと抱きしめた。もっと二人が密着出来るように。
「あ、くぅはぁ、ひゃあ。しゅうちゃ、もぅ」
 動きまくる凛太郎のお尻を右手でグッと抑えつける。動けない凛太郎が焦れて腰を揺すろうとした時、修一が灼熱の棒を子宮口まで一気に突く。
 外側に修一の身体を感じ、内側に修一自身を感じる。凛太郎のどこもかしこも修一で一杯になった凛太郎は、幸福感で満たされていった。それ以外に考えられないし、考えることも出来なかった。全身で修一を感じる事だけが、凛太郎に出来る全てだった。突かれる度に心の充足ゲージが上昇していく。
 下半身で溶け合うように一つになる。上半身も修一の浅黒いけれど滑らかな肌に、凛太郎の白い肌が融合していくかのようだった。
(修ちゃんの肌、きもちいい……)
 肌と肌を合わせて、凛太郎は初めて自分の求めていたモノが解った気がした。本当に欲していたのは自分の「綺麗な肌」ではなく、誰かの、そのままの自分を見てくれる誰かの「肌」だったのではないかと。凛太郎は快感に溶かされた頭でそう理解していた。お互いがお互いを必要としている存在として。
「リンタああ! もう、イッちゃいそうだっ。くっ、イッテ、いいか?!」
「いいっ、イッて! はっんっぅん、僕でっ、やっあきもちいぃ……イクっ、イッちゃう」
 遮二無二突き進む修一の荒い吐息と言葉に、凛太郎が修一にしがみ付き、喘ぎ、咽びながら修一に答えていた。
「イクっ、リンタっあ!」
 全身を硬直させ力の限り締め付ける凛太郎に、修一は為す術も無く放出を開始していた。襞穴の中で跳ね回る「修一」は、二回目だというのに、びゅくびゅくと大量の白い粘液を吐き出していく。煮えたぎったようなそれが凛太郎の中一杯に注がれると、身体の中心から修一が浸透していくイメージが湧き起こる。凛太郎も一気に頂点へと達していた。
「あっあっ、修ちゃんっイッ、イクッ、しゅうちゃんんっ!!」
 脳髄を焦がすような快感が凛太郎の身体を貫く。そして凛太郎の子宮口に浴びせられる修一のマグマに呼応するように、びくんびくんと秘壷が痙攣を起こす。修一の精を搾り取るように中へ中へと動き、いざなっていった。
 修一を跨いで修一の肩口に爪を立てながら激しく襞が脈動する。はっきりと「修一」の形を感じ取りながら、修一の熱さを体内で感じ取っていた。
(修ちゃんが、たくさん、僕で、気持ちよくなってる……。僕も……)
 逞しい両腕でしっかり抱きかかえられているけれど、けして痛いとか苦しいという抱きしめ方では無かった。修一が大きく息をする度に、凛太郎も乳房が歪む。ぴったりと合わさった肌が、二人の心と身体が結ばれた事を物語っていた。時折、「修一」がピクンと跳ねる事さえも、凛太郎は嬉しく思ってしまう。
(はっぁあああぁぁ……)
 深い溜息を吐き、愉悦に身を任せながら、凛太郎は深い溜息を吐いていた。
 凛太郎の身体にしっかりと食い込んだ固い棒が、徐々にその硬度を落としていく。次第に柔らかくなってくる修一を感じ、肉欲の満足感と充足感もまた抜けていくように感じていた。
 今日までしか、自分として修一に接する事が出来ない。「山口凛太郎」は家に帰ったら消え失せて、男だった事も、女の子に変わってしまった事も、修一を好きになった事も、修一としたセックスさえも「無かった事」として記憶される事になってしまう。これまでの自分が生きてきた道と修一の道が交じわり、色々な事があってここまで来たのに、そう思うと不意に凛太郎は寂しさと悲しさを覚えていた。蕩けきった思考が急に現実に引き戻されていく。
「なぁ、リンタ」
 泣かないようにときつく修一に抱きつきながら、問いかける修一の声に耳をそばだてた。
「俺な、ちゃんとリンタと一緒にいられるようにがんばるからさ。リンタは正直に何でも言ってくれよな。秘密は無しな」
「……一緒って、ずーっと一緒って事?」
「いつも一緒にいないと心配だからな」
 修一が凛太郎の髪に鼻を埋めながら、耳元で囁く。くすぐったいような感触に凛太郎が首をすくめた。
「んっ……ずっと一緒なら、いいね……」
 くるっと首を回し、修一の目の前に凛太郎の顔が来ていた。さらさらな細い凛太郎の髪が汗で額についている。
「もう、しないの?」
「え? なにが?」
 まだ繋がったまま真っ直ぐに聞いてくる凛太郎に、修一は質問の意図を理解しあぐねていた。
「……えっち」
 寂しく悲しい心と身体を、今だけでも埋めたいと凛太郎は思っていた。時間の許す限り、何度でも修一を迎え入れたかったから。修一に乗ったまま、凛太郎は柔らかい唇を何度も口付けていた。
 修一はそんな面もちの凛太郎に気づかず、キスの効果なのか、下半身に血液が流れ込むのを感じていた。勿論凛太郎も。
「いいか?」
 喉をならしながら唾を飲む修一に、凛太郎はもう一度言っていた。
「好きなだけ、いいんだから」
 ころんと凛太郎は仰向けに転がされていた。修一は再び硬度を取り返したペニスで凛太郎を貫いたまま、三度目の放出を目指して動き始めていた。
 初夏の午後。窓を閉じられた室内は温度を上げていた。修一の部屋は、湿った音と荒い喘ぎと息づかい、そして凛太郎の嬌声で満ちていた。心と身体が結ばれ合い、睦み合った二人の体温もそれを手伝っていた。


(その4へ)



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