沙耶と英治と隆男と写真部のお宝
(沙耶と英治と写真部のお宝3)

 作 :toshi9 (原案:夏目彩香)



ピンポーン!ピンポーン!

土曜日の午後三時、家庭訪問予定の時間ぴったりに谷口家のドアホンが鳴る。すっかり響子に成りすました沙耶が玄関に出迎えると、玄関の外には沙耶の担任の上杉優花(うえすぎゆうか)先生が立っていた。学校で見た時とまた違うピンクのワンピースに着替えている。

「上杉先生、今日はわざわざありがとうございます。さあ、どうぞお上がりください」

沙耶はすっかり響子に扮していた。上杉先生を出迎えると、母親らしい立ち振る舞いでリビングに通す。沙耶の姿をした隆男も、神妙な面持ちでその後ろについておずおずとリビングに入った。

「先生、こんにちは」
「こんにちは。あら、あなたまだセーラー服のままなの?」
「え、ええ。先生がいらっしゃるんで、着替えないで待っていたんです」
「あら、別に普段着で良かったのに。先生は、あなたの普段着姿も見たかったのにな」

そう言って、上杉先生はくすりと笑う。

「で、先生、今日のご用事は?」
「はい、実は……」

そう言いかけて、上杉先生はちらりと隆男を見る。

「沙耶、あなたは上にあがっていなさい」
「え、は、はい」

すっかり響子として受け答えている沙耶に促され、隆男は沙耶の部屋に戻った。

「あいつ、すっかり響子さんに成りすましやがって。全く見分けがつかないぜ」

そう言って机に座る。机の上に置かれた鏡に自分の顔が映るが、それはまぎれもなく沙耶の顔だ。

「ふっ、あいつだけじゃない、俺だってそうか。この姿じゃ誰が見たって俺の事を沙耶だって思い込むだろうな。先生だって気がつかなかったみたいだし」

隆男は鏡に向かって微笑みかけたり、怒ったようにプッと頬を膨らませたり、色っぽい目でじっと見つめたりと、いろいろな表情をしてみた。そのひとつひとつが沙耶そのものだ。一人になって今の自分が沙耶なんだということに改めて自覚すると、ドキドキしてくる。

セーラー服越しに胸の膨らみに触れてみると、ふわふわとした柔らさが胸からも手のひらからも伝わってくる。とても作り物を着ているとは思えない感覚だ。

「これ、沙耶の胸か。そして……」

プリーツスカートの上から股間に手を当てる。やはりそこにあるはずの慣れ親しんだ充実感はない。好奇心にとらわれてゆっくりと撫で始めた隆男だが、二度三度といじったところで手がピタリと止まる。男のモノを触っている感覚とは違う切ないような、むらむらとした気持ちが湧き上がっていた。

「ううう、いかんいかん。今の俺は沙耶なんだから、沙耶らしくしなくっちゃ。そう、あたしは沙耶、あたしは沙耶なんだ」

淫らな妄想を振り払おうと、隆男はプルプルと頭を振る。さらさらした長い髪が頬をなでた。

「さてと、下から呼ばれるまで何もすることがないけど、どうしようかな」

そうつぶやきながら、彼の手は自然に机の上に置かれたノートパソコンの扉を開いていた。彼が扱ったことにない最新の超薄型パソコンだ。それを当たり前のように起動させる。

「最新のOSじゃないか。あいつ、こんなもの買ってもらってるんだ。ええっと、パスワードはっと」

パスワードは何だろうと考えながら、沙耶の細い指をキーボードにのせると、頭の中にある数字とアルファベットの組み合わせが思い浮かぶ。自然と指が動いてその通りに叩くと、簡単にログインに成功した。

「さっきは着た事もない沙耶のセーラー服を自然に着る事ができたけど、沙耶の記憶も思い出せるんだ。こりゃ面白いぞ。それじゃせっかくだから、もっと沙耶の日常を覗いてみるとしますか。だって、今の俺は沙耶なんだから問題ないよな、フフフ。そうだ、どこまで沙耶に成りきれるのか、この際もっともっと沙耶に成りきってしまってしまおうかな。最後まで先生に気づかれないくらいに」

隆男は目をつぶって自分は沙耶なんだと強く心の中で念じてみた。すると心の中に沙耶としての感情が湧き上がってくる。目を開いてみると、ごく自然に沙耶らしい行動が取れそうなのに気づいた。

「あたしの名前は谷口沙耶、今、ママと上杉先生がリビングで話をしているのよね」

つぶやく声が意識しなくても自然に女言葉になっている。いや、言葉のみならず、そのアクセントや間合いの取り方まで、完璧に沙耶と同じだった。

「へへへ、こりゃいいや」

味を占めた隆男は、沙耶が置いて行ったスマホのメーラーを起動させると、さっと着信履歴を眺めてみた。件名と一緒に並んでいる名前を見るだけで、それが誰からのメールなのかすぐに顔が思い浮かぶ。意識すると、その相手に沙耶がどんな感情を持っていたのかも理解できた。そう、今の隆男には沙耶の交友関係が当たり前のようにわかるのだ。それはまるで沙耶の私生活を覗き見しているような感覚だった。

「すごいな、これならちょっと意識すれば本当に沙耶に成りきってしまえるかも。体型の変化も完璧だし、このタイツっていったいどんな仕組みなんだ。誰だってこれを着てその気になれば、沙耶に成りきれるって事じゃないか」

そう思いながら何気にスマホの着信履歴を追いかけ続けていると、一人の名前に目が留まった。

「あれ? これは?」

波方英治からのメールがあった。履歴はごく最近のものだ。

「なんだあいつ、波方とメールのやり取りなんかしていたんだ。そう言えば今日もあいつに用事があるって部室で待っていたんだよな。沙耶の奴、俺の事が好きだなんて言ったけど、本当は波方のことが好きじゃないのか」

たった一本のメール履歴にちょっとだけ嫉妬を覚える隆男だが、波方の名前を見ても、沙耶として彼に対する愛情のような感情は浮かんでこない。そんな自分の気持ちにほっとする隆男だった。だがどんなメールをやりとりしていたのか気になってしまう。いくら沙耶の記憶の中から思い出そうとしても、メールの中身は思い浮かんでこない。悩んだ挙句、隆男はそのメールを開いてみることにした。

「中身見ちゃっていいのかな……いいよな、今は俺が沙耶なんだしな。ええっと、波方君の用事ってなんだったっけ。忘れちゃったから沙耶読み返してみようっと」

自分を納得させるように沙耶のつもりでそんな風につぶやくと、隆男はそのメールをクリックした。
だがそこに書かれていたのは、思いがけない内容だった。

「え? ええっ? ってことは、あれ? あれあれ? それじゃあの沙耶って?」




一方、階下では沙耶と上杉先生の会話が進んでいた。
「全くなにやってるのよ。何であなたがママになっているのよ」
「へへへ、いろいろあってな。実は帰ってくる途中であいつに告白して……」
「キスした!? 隆男と?」
「まあ、勢いでというか。でもあいつもお前のことが好きだって言ってくれたぜ。おまけに……」
「そっか、隆男ったらあたしの事を好きだって言ったんだ。それから言われるままにあのタイツを着て、あたしの姿になったって言うの? あたしがそんな事を頼むわけないじゃない。全くもう」
「まあまあ、俺がけしかけたんだからさ。許してやれよ。それにお前だってあいつの事を好きだったんだろう。告白したかったんだろう。俺にはわかるぜ」
「ま、まあね。それはそうなんだけど、でもなんかくやしいな。あたしが自分自身で言いたかったのに」
「何言ってるんだ。いつまでたっても言い出せなかったから、お前は今日の事を計画したんだろう。だから俺が一押ししてやったんだよ」
「ん〜、まあしょうがないか。あいつの気持ちはわかったし、感謝すべきなのかもしれないね」
「そういうこと。で、これからどうするんだ?」
「ん〜それじゃあいつをここに呼んで、どれだけこの沙耶さんに成りすましているのか、じっくり見させてもらおうかな。それから隆男に全てを話そっか」
「そうだな、あいつも沙耶の姿でいるのに慣れてきたみたいだし。ここで俺たちの正体を明かすのも面白いかもな。でも知ったら、あいつショックだろうな」

おわかりだろうか、家庭訪問に来た上杉先生は沙耶が化けた姿であり、そして響子に成りすました沙耶は実は英治だったのだ。

話は英治が部室でタイツを見つけ、そして初めて着た時にさかのぼる。
沙耶は自分の姿になっていた英治のことをからかいながら、タイツの力を使って自分の望みが叶えられないだろうかと考えていた。

幼い頃から一緒に遊んできた河村隆男の事をいつのまにか好きになっていたという自分の気持ちに気が付いた彼女は、好きな河村隆男とただの幼なじみではなく恋人同士の関係になりたいと願っていた。だが、なかなか一歩前に踏み出すきっかけがつかめない。告白もできない。だから部室で自分の姿になっていた英治を見た時、このタイツをうまく使えば彼との仲を深めて恋人関係になれるのではないかとふと思ったのだ。

「ねえ波方君、それを使ってやってみたいことがあるんだけど、いいアイデアないかな」
「やってみたいこと?」
「あたしもそのタイツを使ってみたいんだけど」
「ほえ?」
「いやだ、あたしの顔でそんな間抜け面しないで。手伝わないと、波方君の事を変態だって言いふらしてやるんだから」
「わかったよ、わかりました、勘弁してくれよ。手伝う、手伝います」
「ふふん、わかればよろしい」
「でも、タイツを使ってどうしようって言うんだ」
「隆男が何を考えているのか知りたいんだ。あいつがあたしのことをどう思っているのかを」
「そんなの、自分で聞けばいいじゃないか。簡単だろう」
「そんなの恥ずかしくて、聞けないよ」
「そんなものか?」
「そんなものなのよ。あたしだって乙女のひとりなんだから」
「乙女ねえ、そんなに恥ずかしかったら他人の姿、うーん、そうだな、例えば上杉先生になって聞き出してみるというのはどうだい。上杉先生の髪の毛を手に入れてタイツを上杉先生の姿に変化させれば、上杉先生に成りすませるだろう」
「あ、それいいかも」
「あ、いや例えばって事で」
「何言ってるの、それやってみようよ」

それから二人の計画はとんとん拍子に練り上げられていった。

結局二人の立てた計画はこうだ。土曜日の午後に隆男を呼び出して沙耶の家に来てもらう。一方で家庭訪問に来たという事にして、上杉先生に成りすました沙耶が本物の代わりに何食わぬ顔で谷口家に行く。なかなか戻ってこない沙耶(当然だ)を待っている間、上杉先生の姿の沙耶が、今は沙耶本人がいないのだからと隆男の本心を上杉先生として聞き出す。もし隆男が沙耶の事が好きだと話してくれればそれで良し。容易に話してくれないようであれば、沙耶に聞かされているのだと、沙耶の隆男が好きだという気持ちをさりげなく伝えて、隆男に告白を促すという二段構えの計画だ。

「よし、この計画ならばっちりね」
「う〜ん、そうだなぁ」
「それじゃ、準備できたらメールちょうだい。それじゃ、土曜日にね」
「はあ〜、何でこんな事に」

沙耶が出て行った後、半ば無理やり沙耶の計画を手伝わされる事になった英治は途方に暮れた。
だが、責任感の強い彼の気持ちは、段々どうやってこの計画を成功させようという風に変わっていく。

そして計画内容を反芻しているうちに、二人で作った計画にはまだ何かが足りないのではないかと思い始めていた。本当にこの計画でうまくいくんだろうかと。

沙耶は隆男に谷口家に来てくれと当日電話で伝えるというのだが、果たして電話だけですんなりと隆男が沙耶の家に行ってくれるのかどうか。奴を確実に谷口家に行かせるには……。

計画はさらに英治の手で練り上げられた。そして学校から谷口家までのルートや土曜日の天気予報までチェックした彼の行動は、いつしか沙耶の思惑を超えたものになっていく。

計画決行前日の金曜日、上杉先生の髪の毛を手に入れた英治は、明日部室の中で上杉先生に変身する事、その為に先生にふさわしい服を持ってくるようにと沙耶にメールで伝えると、沙耶からも了解の返事が来た。


そして計画実行当日の土曜日、天気予報通りにお昼前から降り出した雨を見て英治はにやりと笑う。
それからの彼の行動は沙耶の思いもよらないものだった。

授業が終わるや写真部の部室に来た沙耶が、手に入れた上杉先生の髪の毛を使って上杉先生化したタイツを着込むと、英治はもう一枚のタイツを使って、あれよあれよという間に沙耶に成りすましてしまったのだ。

「ちょ、ちょっと何しているのよ。どうしてあなたがあたしの姿になるのよ」
「雨が降り出しただろう。隆男のやつ絶対に傘を持ってきてないぜ。このままじゃあいつ、家まで一直線に走り戻るんじゃないのか?」
「ん〜、そうかもしれないけど」
「この部室には置き傘があるんだ。それを奴に教えれば必ず取りに来る。そしたら俺があいつに傘を渡して、そのまま一緒にお前の家に連れて行くよ」
「でも本当に傘を持ってきてないのかな。天気予報で午後から雨だってわかっているんだよ」
「朝降っていないのに、あいつが傘を持ってくるなんて今まで見た事も聞いた事もないよ。傘が部室に有ると聞けば、奴は絶対に取りにくるさ」
「そうかな〜?」
「とにかく、隆男が学校から先に出てしまったら、そこで計画はおじゃんだろう。お前のスマホを借りるぜ。あとは俺に任しとけって」

そう言って、沙耶の制服を着込んだ英治は、スカートのポケットからスマホを取り出すと、隆男にメールしたのだ。

英治の予想通りに部室にやってきた隆男に複雑な思いにとららわれながらも、上杉先生として沙耶は先に部室を出た。後の事は結局沙耶に成りすました英治に任せるしかなかったのだが、タイツの使い方に慣れてきた英治は、帰り道の途中で隆男に勝手に告白してしまった。しかも、暴走気味の英治は、キスはするわ、隆男に沙耶化したタイツを着せてしまわとやりたい放題。さらに母親の響子が留守だと知るや、三枚目のタイツに見つけ出した響子の髪の毛を仕込み、それを重ね着することによって、今度は沙耶の母親に成りすましてしまったのだ。

沙耶が上杉先生として家庭訪問に来てみると、家にいないはずの母親の響子に迎え入れられ、内心心臓が爆発するかと思えるほどびっくりさせられた。だが二人きりになって開口一番で英治に種明かしされると、胸をなでおろす。そしてさきほどの会話が始まったのだ。

「と言うことで、そろそろあいつをここに呼ぼうか」
「でも、もうあたしのことを好きだって言ったんでしょう。今更何を聞けって」
「何言ってるんだ。お前が本人だって明かせばいいだろう。それからお前が直接あいつの言葉を聞けよ」
「うん。それじゃ、彼が来たら二人きりにさせて」
「わかったよ」

そう言って立ち上がった英治は廊下で出て、二階に向かって声をかけた。

「沙耶、降りてきなさい。先生がお話があるって」

その声に、沙耶の姿をした隆男は二階から降りてくると、リビングに入ってきた。

「先生、お母さんとのお話はもう?」
「ええ、お母様との話は終わったわ。最近成績が下がってきたみたいだから一度ご家庭の事を伺っておきたかったのよ」
「先生、それではあたし何か持ってまいりますから」

そう言って、響子に成りすました英治はリビングを出ていく。
二人きりで部屋に残される上杉先生と沙耶。いや、その中身は沙耶と隆男だ。

「ねえ、沙耶さん」
「はい」
「あなた、好きな男子とかいないの」
「先生、突然どうしたんですか? あたしの好きな男子ですか?」
「そうよ、同じクラスにとか」
「ええっと、いませんけど」
「そお? だって成績が下がっているでしょう。好きな男子のことばかり考えて勉強に集中できていないんじゃなくって」
「そんな事ありません」
「ふ〜ん、まあいいわ。ぷっ」
「先生?」
「もうだめ、おっかしい。ほんとにあたしそっくり。あたしと話するなんて変な感じ」

我慢できずに突然笑いだす沙耶。だが沙耶の姿をした隆男はその言葉に怪訝な様子も見せない。

「何言ってるんだ。お前だって、先生に成りきっているじゃないか」
「そうそう……え?」

じっと見つめ合う二人。

「え、ええっと」
「お前沙耶なんだろう。全くすっかり騙されるところだったぜ」
「な、なんでわかったの?」
「ごめん、お前のメールの着信履歴を見ていたら波方のメールを見つけて。そしたらお前が谷口先生になって家庭訪問するなんて計画が書いてあるじゃないか」
「ん〜そうか、あのメールを見ちゃったんだ、な〜んだ」
「全く、何でこんな手の込んだ事をするんだ」
「何よ、そういう隆男だってあたしに成りすますなんて、信じられない」
「バカ、これは……お前の頼みだったらと思って仕方なく着たんだ」
「そお? 仕方なく? それにしてはあたしへの成りすましっぷり、ほんとに自然だったな」
「だって、これを着ていると、お前の気持ちが俺の中にどんどん入ってくるんだ。お前、俺のことがほんとに好きだったんだな」
「ん〜、まあそういう訳だけど」
「俺も好きだよ」
「え?」
「さっき告白したお前は、中身は波方だったんだな。でも俺の告白は本物だ。改めてお前のことが好きなんだってわかったよ」
「そ、そうなんだ」

立ち尽くす沙耶、その彼女に抱きついた隆男は、彼女にキスをした。
それは、はたから見れば女教師に女子生徒が抱きついてキスしているという構図なのだが。

響子の姿の英治はドアの陰からそれをそっと見つつ、しっかり写真に収めていた。

「うん、いい絵が撮れたな」

英治に写真を撮られているのに気がついて、慌てて二人は体を離した。

「あ、だめ」
「俺にあんな恰好をさせてからかったお返しだ。これでおあいこだな。もし、タイツの事をばらしたら、この写真も校内にばらまこうか。担任の教師に抱きついてキスする女子生徒。うわぁ、これが学校に知れ渡ったら大変かもな」
「そ、そんな……」

青ざめる沙耶。だが英治はくっくっと笑いだす。

「冗談、冗談だよ。そんな事しないよ。まあその、なんだ、めでたしめでたしだよな。二人ともお幸せに」
「え? ええ」

手をつないだまま赤くうつむく隆男と沙耶。
それを再び写真に納める英治

「あ、また」
「何度もいい構図を見せてくれるよ。裏写真部のお宝、これが本当の使い方なのかな。ほんとにいい被写体だ」
「え、そんな」
「ところでだ、雨もやんだみたいだし、今からプールに行かないか? 女三人プールで写真撮りあうとか。水着撮影会って良いんじゃないか」
「ば、ばかあ、この変態!!」

沙耶の平手が英治に飛ぶ。

「いった〜」
「もっとちゃんとした事に使おうよ。あなた部長でしょう」
「わかった、わかりました」
「で、このタイツってあとどれくらいで元に戻るの?」
「あと2、3時間ってところかな」
「それじゃ、プールはいやだけど、このままショッピングに行こうか。上杉先生のこの姿で服を選んでみるとか楽しいかも」
「よし、それでいこう」

隆男も英治もうなずく。彼らにとっても沙耶や響子の姿で、女性としてショッピングする事には興味深々だった。

「ところで谷口さん、隆男が一番好きな服って知っているかい?」
「一番好きな服?」
「そうそう、こいつに谷口さんが一番似合う服は何だと思うって聞いたんだけど、そしたら」
「うわぁ、早く行こうぜ」

両手を広げて二人を部屋から押し出そうとする隆男。
不思議なタイツを使った彼らの遊びはまだこれからだ。



(終わり)






*この作品は、夏目彩香さんが書きかけだった未掲載作品を原案として、大幅に加筆修正したものです。作品原案として使用許可をいただいた夏目彩香さんに感謝いたします。















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