「皮モノ」という言葉を最初に使ったのは誰でしょう 筆:toshi9 「第2回皮モノ祭り」を開催するにあたり、よしおかさんから「皮モノ入門」というエッセイをいただきました。既にこのエッセイは掲載しておりますが、皮モノというジャンルがいつ頃どのように成立したのかについてよく考察されており、その成り立ちがよくわかるのではないかと思います。 第1回の皮モノ祭りの際にも述べましたが、「皮モノ」というジャンルの作品は変装、女装、着ぐるみ、そして変身、憑依、入れ替わりと実に多彩な要素を含んでいると思っていましたが、これについてもよしおかさんの解説はよく整理されているので、わかりやすく理解できると思います。 しかし、このエッセイを読んで一点だけ疑問が残りました。それは、最初に「皮モノ」という言葉を使ったのは、いつ、誰だったのかです。疑問に思った私は、よしおかさんから「皮モノ入門」の原稿をいただいた時に、この件について記憶しているか聞いてみました。 よしおかさんからのお答えは、虎之助さんの「四次元ファスナー第1話」の後書きが最初ではないかというものでした。 そこで次に虎之助さんにお聞きしてみました。 しかし虎之助さんからの記憶によると、確かに「四次元ファスナー」第1話で「皮物」と書いているものの、自分が最初に使ったという認識はまったくなかったそうです。しかも虎之助さんによると、「四次元ファスナー」第1話の公開は2001年8月23日なのですが、虎之助さんがその前日にTiraさんからもらったメールには「皮もの」という表現があったそうです。 ということで、ここでTiraさん説が浮上してきました。 そこで今度はTiraさんにお聞きしてみました。 しかしTiraさんからのお返事では、最初に使ったのは自分ではないだろうということでした。 Tiraさんが最初のHP「Ts・TS」を立ち上げたのは2000年末(正確には2000年12月28日です)ということですが、当時のサイトはまだ皮モノは取り扱っていなかったということです。「TS解体新書」内の「Ts・TSの小部屋」を見るとわかりますが、確かにそれは間違いありません。そしてTiraさんのご意見は、引用すると下記のようなものでした。 --------------------------------------------------------------------- 最初は「着ぐるみ」だったんでしょうね。 miguさんのサイトでは、サイファーさんが「カメラ」という作品で 着ぐるみ変身を書かれているので、その後に「皮物」という言葉が 生まれたのだと思います。 さて、どなたがこの言葉を作ったのか。。。 あさぎりさんが結構描かれているので、何か知っているかもしれませんね。 --------------------------------------------------------------------- そう、「入れかえ魂」に掲載されているサイファーさんの未修正版の「カメラ」ではまだ「着ぐるみ」と表現されています。 でもサイファーさんのサイト「からふるぅ?」に掲載された「カメラ」の修正版は、「皮モノ」に表現が修正されています。 つまりサイファーさんが「入れかえ魂」に投稿されてから自サイトに修正版を掲載する間に「皮モノ」という表現が成立しているはずなんです。 で、次はあさぎりさんにこの件に関して質問してみました。 あさぎりさんのお返事を引用すると下記の通りでした。 --------------------------------------------------------------------- 私も『皮モノ』と言う言葉の語源が誰なのかはよく分かりません。 てっきりTiraさんかよしおかさんではないかと思ってました。 調べようとも思ったのですがその当時のデータは残っていないのが現状でして、 大したお役に立てずに申し訳御座いません(汗 まぁ使い勝手のいい言葉ですし、TSF界ジャンルの一角にまでなったのは喜ばしいですね。 昔は「憑依」「変身」「入れ替わり」「脳移植」の4強でしたし(笑 --------------------------------------------------------------------- そう、インクエストに「僕の初体験」の弓月光先生が自らイラスト投稿されたりと、2000年当時隆盛を極めた(というのは少々言い過ぎでしょうか)脳移植モノが、シチュエーションが限定されている為かどうか、数年後には新作がかなり減少したと思います。それに代わるようにして台頭したのが「皮モノ」ですね。 「脳移植」と「皮モノ」に共通しているのは、現実に近いところにあるTSモノというところでしょうか。もしかしたら実現できるかもしれない(その実、実現するには大きな壁があると思いますが)技術が内包されている事です。 閑話休題 それはともかくとして、あさぎりさんに話をお聞きするとともに、自分なりにもう少し「皮モノ」について調べてみました。 「皮」という言葉が最初に使われた作品は、SUMMERさんの「クローゼット(2000年1月20日 ダークローゼス掲載)」ではないかと思われます。 恐らく同じ時期にサイファーさんの初稿「カメラ」が発表されていますが、こちらは先に述べました通り「着ぐるみ」と表現されていて、まだ皮という概念ではないんですよね。 ちなみに、ジョーカーさんの皮モノ作品「コギャル狩り」(2000年7月25日発表)の後書きを引用すると、こんなことが書かれていました。 --------------------------------------------------------------------- 本作はイメージだけは頭にあったんですけど、「皮」ってアイデアはSummerさんの「クローゼット」や、サイファーさんの「カメラ」で完成されてしまった感があるし、何よりSummerさんのページでアレだけ盛り上がっているからと執筆を躊躇っていたものです。 でもまあ「皮」ってやつも真黒に塗りつぶしてやろうかと(笑)書いてしまったわけですね。 -------------------------------------------------------------------- ただし、「クローゼット」では作中「皮」と表現していますが、解説には「皮モノ」とは記載されていません。そしてジョーカーさんもまだ「皮モノ」とは表現していません。「皮」とだけ言われてます。ただし、意味合いはもうほとんど「皮モノ」と言い換えても何ら違和感がないのではないでしょうか。 つまり、この2000年7月25日から、Tiraさんが虎之助さんにメールを送られた2001年8月22日の間に「皮モノ」という表現が成立したと思われます。 この間にそのような影響を及ぼした作品があったのでしょうか。 可能性としてはふたつ ひとつはSummerさんのサイト「エンドレス・ストーリー」 このリレー小説サイトは2000年5月にオープンしていますが、途中「皮」を使った分岐が活況を呈しています。やはりここでの盛り上がりが「皮モノ」と言われるようになった可能性があります。 もうひとつは、あさぎりさんの「皮女」です。 よしおかさんのご意見では、あさぎりさんの「皮女」が発表された後、あの「皮作品」とか、「皮物」作品という言葉が2ちゃんねる等で飛び交いだし、それ以降「着ぐるみ」「皮」作品が「皮モノ」と表現されるようになったのではないでしょうかという事でした。 つまり、今の時点でわかった事は @「皮」と表現された最初の作品は、SUMMERさんの「クローゼット」である。 A「皮モノ」とジャンルとして形容されるようになったのは、Summerさんの「エンドレスストーリー」もしくはあさぎりさんの「皮女」以降ではないか。 ということでしょうか。 もし、私の知らない・把握できていない情報をご存じの方がおられましたら、是非情報をお寄せいただけるとありがたいです。 ところで、よしおかさんは「皮モノ入門」で「皮モノ」作家さんについて取り上げられています。私も「皮モノ」というジャンルがTS界で定着するのに多大な影響をもたらした作家さんは誰だろうかと考えてみました。 ・サイファーさん ・SUMMERさん ・あさぎりさん ・よしおかさん ・SKNさん の5人の名前を挙げておきたいと思います。 また、多くの魅力的な「皮モノ」作品を発表された作家さんとして ・Tiraさん ・ZIPPERさん ・皮えるさん ・Necroさん ・ほげちぃさん の5人が挙げられるのではないでしょうか。 この10人の作家さんの書かれた作品以外で未だに私の中で印象深い作品を挙げると、着ぐるみと表現されていた作品も含めると ・フレッシュイアさんの「ポケットを拾ったよ」 ・ジョーカーさんの「コギャル狩り」 ・satoさんの「人形」 ・嵐山GOさんの「SKIN TRADE」があります。 また変装ジャンルですが 怪人福助氏の作品も忘れられません。 それから、「皮モノ」のアイテムとしてよく登場する「ファスナー」ですが 日本では1998年に発表された輝晒正流さんの「ファスナーを開けて」が最初ではないでしょうか。ただし、この作品は「皮モノ」ではなく変身モノですが。 それから今回、私の心の中で、長年心の中の喉の骨として残っていた作品の事をよしおかさんによって知ることができました。 1975年に出された黒田みのる氏の「紅蜘蛛魔伝」という時代劇劇画作品です。 大岡越前の時代のお話ですが、ラスト4枚の印象が強烈で、ずっと心の中に残っていました。 よしおかさんに「昔見た時代劇漫画作品。劇画タッチの作品でした。女の生皮を剥ぎ取って、己のマラを切り落としてその女性の皮をかぶって復讐を果たそうとした男の話です」 とメールを送ったら、この作品ではないでしょうかというお返事は見事にビンゴでした。 人間から皮を剥いで、配下を他人に化けさせる。そして、最後は男自身が自分で女性の皮を着て復讐に用いる。 こんな昔からそんな作品があったんですよ。 その他にも魅力的な小説作品はまだまだありますし、どきどきさせられるイラストや漫画作品も最近は本当に多くなりました。 「第2回皮モノ祭り」では、皆さんから投稿していただいた新作とそんな作品群のほんの一部ですが、掲載させてもらいます。 それでは「第2回皮モノ祭り」どうぞお楽しみください。 (2014年12月12日執筆完了) |