十萬田兄妹と温泉の八仙人
第1話「温泉まんじゅうこわい」
作:toshi9
俺の名前は十萬田新一(じゅうまんだしんいち)、会社の仲間達と岩手のとある古い温泉にスキーに来ている。ここは古い温泉街とスキー場が女の子に人気で、俺たちはその女の子を目当てにここに滑りに来たんだ。
・・・実際スキー場にも街にもほんと女の子が多かったな。
そして最後の夜、おみやげを買いに行こうということになり、各々温泉街の中にある店を物色することにした。俺も一人で店を探していると、昔ながらの古い佇まいのおみやげ屋を見つけた。店先でふかしている温泉まんじゅうに何となく惹かれて店の前に来ると、店のオヤジが俺に声を掛けてきた。
「お兄さん、名物の温泉まんじゅうだよ、おいしいぞ、買って行かないかい」
「うーん、どうしようかな」
俺が迷っていると、その脇をぶつぶつ言いながら中学生位の女の子が肩をすぼめて通り過ぎて行った。
・・こわい、こわい、まんじゅうこわい・・
え!何だって
思わず振り返るが、もうその時には女の子はずっと先の方を歩いていた。
あれは何だったんだ。
「オヤジさん、あの子こわいって・・・」
「さあな、ここいらでは疲れたことをこわいっていうから、きっと学校で疲れたんじゃないのか。さあお兄さん、どうするんだい」
「うーん、何か違うような気がするけれど・・じゃあ20個もらおうか」
「まいどありぃ」
「それからお兄さん、ちょこっと注意しておくけれど、うちのはちょっと変わっているんでね、いくらおいしいからって一人で食べるのは2個までにしておくんだよ」
「どうしてですか」
「それは、食べ過ぎると、お・・」
すみませーん、これくださーい
「はいはい、まいど・・・」
オヤジさんは話の途中で別な客に呼ばれて行ってしまい、何故なのか結局聞けなかった。その後宿に帰って来ると、まだ誰も帰ってきていないようだ。
折角余計に買ってきたんだけど、しょうがないなぁ。どうしようかなこれ。
・・・先に食べちまおうかな。
うん美味い。
もう一個・・・美味いよこれ。
うんもう一個。
結局俺は瞬く間に5個食べてしまった。そう言えばあの親父2個以上食べてはいけないと言っていたな。なんでかな、でもどうってことなさそうだな。
その夜、俺はふと誰かに呼ばれたような気がして目を覚ました。
おーい、おーい
うん?誰だ今ごろ。
他の皆はぐっすりと眠っている。
しょうがないな。
俺は布団から出ると、声のほうに向かって行った。声は宿の外から聞こえる。トレーナーの上にスキージャケットを羽織ると外に出て、さらに声のするほうに向かった。
・・・あれ?ここはあのおみやげ屋、それにこんな時間にあのオヤジ何をしているんだ。
店のオヤジもこちらに気づいたようだ。
「お兄さん、あんた食べたね」
「何か悪いのか」
「まんじゅうたちがなぁ、お兄さんも仲間になれって言っているのさ」
「は?何だソレ」
「あれを見な」
オヤジが指差しているのは、温泉まんじゅうを蒸かしている蒸し器だった。こんな夜中にふかしているのかと怪訝に思いながら見ると、蓋ががたがたと揺れている。揺れは段々大きくなり、そして突然蓋が外れたかと思うと、まんじゅうが飛び出してきた。
「うわっ」
まんじゅうは、ぴょん、ぴょんと跳ねるように後から後から飛び出してくる。
「このまんじゅう達はなぁ、元は人間だったんだ。スキー場がまだ開発中の時の事だが、山の神社をじゃまだからと取り壊せということになったんだ。だが取り壊した翌日、神社の神様の呪いなのか、工事関係者の娘が一人行方不明になったんだ。
朝、母親が娘を呼びに行くと、娘は居なくなっていて、布団の中には娘の代わりに何十個というほかほかの温泉まんじゅうが入っていたそうなんだな。それはおいしそうなまんじゅうだったらしい。その時思わず食べてしまった母親は、何故かその後少女の姿になってしまったそうだ。
その後父親も、兄も、少女の姿になった母親に勧められて食べ、やっぱり少女の姿になったそうなんだ。彼女たちは、何かに憑り付かれたように他の人にもどんどんまんじゅうを食べさせ、そのためにどんどん少女の姿になる者が増えていったらしい。
ところが、食べた人の中の何人かは女の子の姿から何時の間にか、温泉まんじゅうになってしまうんだよ。
わしはそれを知った時、これは商売になると思ったんだ。どんどん増えていった温泉まんじゅうを集めては、ああやってふかし直して売っているんだ。今ではあの温泉まんじゅうは、この温泉の名物だぞ」
オヤジは一人でしゃべっている。
「1個だけなら例え様も無く美味しいぞ。2個までは大丈夫だ。でも3個以上食べると少女の姿になってしまう。5個以上食べると、その後に温泉まんじゅうになってしまうらしい。さて、お兄さん何個食べたんだい」
「ご、5個だ」
「そうかい、ふぉふぉふぉ。じゃあお兄さんもまんじゅうになってしまうなぁ。まんじゅうたちが仲間だと言うわけだ。まあ、まず女の子になってしまうんだな」
「な、なんだぁ、そんな事信じられるか」
「信じる信じないはお兄さんの勝手だが、まんじゅうたちはもう待ちきれんようだぞ」
まんじゅうは次々に飛んでくる。一個、また一個、俺に向かって飛び掛ってくる。真正面から飛んできたまんじゅうは、俺の顔にべちゃりと貼り付いてしまった。
うっ、うぷぷ、熱い、何だぁ、こ、これって剥がれないじゃないか。
両手で剥がそうとするものの、どうしてもまんじゅうの皮が取れない。そのうち皮は段々と俺の顔全体に薄く広がっていった。あんこか?口の中に何か甘いものが侵入してくる。
く、くるしい
でもあんこが俺の喉に達すると、その違和感は無くなってしまった。
「ふぅ、何だったんだ・・え?何だこの声は、俺の声か?」
俺の声は、甘い甘い女の子の声に変わっていた。
そのうちにまんじゅうの皮は段々薄くなって、いつの間にか俺の顔から消えていた。ようやく視界が戻ってくる。目が見えるようになって気がつくと、何時の間にか俺は裸になっていた。
ふ、ふりちんだ。
そこにまんじゅうの第二波が襲い掛かってきた。
胸にべちゃりと張り付いてきた2個の大きなまんじゅうは半分潰れたまま胸に残っていた。
何だこれ、まるでおっぱいじゃないか。
おしりにさらにおおきなまんじゅうが2個ぶつかり、張り付いていく。そのため、俺のおしりは大きく盛り上がっていった。もともとスリムだった俺は、胸とお尻が大きい、ちょっと見るとまるで女の子のような体型になっていた。
そして俺の股間に左右からまたしてもべちゃりと小振りなまんじゅうが貼り付いてくる。それは股間の真ん中でぶつかると完全に潰れ、俺のナニをきれいに覆い隠すとソコをまっ平らにしてしまった。2個がぶつかった境目は少し盛り上がったまま境界線を作り出していた。
尚も薄皮まんじゅうがべちゃり、べちゃりと体中に張り付いていく。
うう、熱い、苦しい。
俺は身動きも取れず、そこに立ちすくんでいた。
どれ位経っただろう。熱さが徐々に引いていき体が動くようになってきた。
「さあ、出来上がりのようだぞ。鏡を見てみたらどうだい」
店の内側にある大きな鏡に映っているのは、褐色の肌の健康そうな美少女のヌードだった。髪はショートカット、胸とお尻は大きく張り出し、腰はきゅっと絞れている。
え、これって俺なのか、でもどこかで見たような・・・
その顔はどこか街ですれ違った少女に似ていた。
「さあ、まんじゅうになる前に、女の悦びを教えてあげよう」
「や、やめろぉ」
でもオヤジは構わずに俺に近づくと、胸をまさぐり始めた。
手の動きに合わせてじわじわと気持ち良さが高まっていくと、それにつれて俺のアソコからは何かがしたたり落ちていた。
「ははは、これが本当のオマンジュウというわけだな」
オヤジは俺のアソコに自分の一物を突き立て犯し始めた。
ポタポタとさらに滴り落ちる俺のオマンジュウ。
その快感に翻弄されるうちに、俺は段々何も考えられなくなり・・・意識を失ってしまった。
・・・あれ、新一どこに行ったんだ。
翌朝仲間達が目を覚ますと、新一がどこにも居ないことがわかり大騒ぎになった。
「最近よくあるんですよ」
宿の若女将が答えるが、おかしなことにあまり深刻な様子でもない。
「仕方ない、手分けして探そう」
「新一〜どこだぁ〜」
温泉街の中を懸命に探し回る仲間達。
彼らはあのおみやげ店の前も通り過ぎるが、その店のことを不審に思う者は誰もいなかった。そこはいつもの当たり前のおみやげ屋。
いや、温泉まんじゅうをふかしているセイロが一つ増えたようだ。
そして、今日もオヤジの声が街に響き渡る。
おいしい温泉まんじゅうだよー、おいしい温泉まんじゅうだよー ・・・・・
(了)
2002年11月15日 脱稿
後書き
愛に死すさん、10万ヒットおめでとうございます。
記念のイベントとして「まんじゅう」のお題で競作をやると聞き、急いで書き上げました。でもしょうもないネタの連発ですみません。
内容はまんじゅうにまつわるちょっと恐い話です。「ハウス(大林宣彦監督)」と「うる星やつら(恐怖!とろろが攻めてくる)」をちょっとだけイメージして書きました。
それでは、これからもがんばってください。
そして、お読み頂きました皆様、どうもありがとうございました。
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