とある警察病院の中……独房のように閉ざされた病室の中で、一人の男が目を覚ました。
 むくりと起き上がったその男は、ベッドの上で毛布を頭から被ったまま、目だけをらんらんと輝かせていた。
 その目には狂気の光が宿っていた――

「……許さん、許さんぞ…………よくも俺をこんな目に……必ず復讐してやる…………必ず…………」

 うわ言のように何度も何度もそう呟く。
 やがて、鍵のかかったドアの向こうから声が掛かった。

「お昼ですよ。そろそろ何か食べないと、体も回復しませんよ」

 それは若い看護師だった。彼女はこの患者に昼食を運んできたのだ。
 患者の体を回復させることが彼女の務め。例え、それがどんなに凶悪な犯罪者であっても……だ。

 男は毛布を跳ね除けて、がばっとベッドから起き上がると、ドアに向かってつかつかと歩み寄っていった。

「いつもありがとう……おかげでだいぶ良くなってきたようだよ。痛みはもう無いし、ようやく食欲も出てきたみたいだ。今日は食事を頂こうじゃないか。ところで――」
「はい?」
「俺がここに入ってから、何日経ったんだい?」
「さあ……余計なことはお話しないようにと言われていますので」
「そうか……そうだ、真鍋くん!」
「え!?」

 ドアの上部に付いた狭い窓越しに看護師のネームプレートを見た男は、突然彼女の名前を呼んだ。
 病室の男と決して目を合わせないよう医師から注意されていたのだが、いきなり名前を呼ばれた彼女は、思わず顔を上げてしまった。
 彼女のその視線を、男の目が絡め取るように捕らえる。

「…………」
「…………」

 じっと見詰め合う二人。お互い、その体勢のまま微動だにしない。
 看護師の目が焦点を結ばなくなり、やがて彼女はとろんとした表情を浮かべる。
 それを見て、男がにやりと笑った。

「……真鍋くん、すまないがこのドアを開けてくれないかい?」
「はい、かしこまりました」

 真鍋看護師は躊躇無くポケットから鍵を取り出すと、固く閉じられていたドアを開けた。
 病室の中に入ってきた彼女に男が何事かを耳打ちする。

「わかったか?」
「……かしこまりました、ご主人様」

 彼女は彼に丁寧にお辞儀をすると、ドアを開けたまま静かにその場を離れていった。
 男は満足そうに笑いながら、それを見送った……



 この日の夕方、意味不明の言葉をわめき叫ぶ凶悪犯が、外科病棟から精神科病棟に移された。
 また同じ日、警察病院から若い医師と看護師が姿を消すという小さな事件があった。
 後に警察の一大失態と報道されたこの事件は、このとき誰もその意味に気づくことなく……そして時は静かに過ぎていった。





戦え! スウィートハニィU

第2話「蠢く陰謀」

作:toshi9





 さて、「生田蜜樹」として南高校に女子生徒として通い始めた如月光雄は、今日もセーラー服の短いスカートの裾をなびかせて登校していた。
 そんな己に光雄……いや蜜樹はため息をつく。

「まさか教師の俺がこんな格好で南高校に通うことになろうとはなぁ……それも自分自身が担任をしていたクラスの一員になるなんて。今までの教え子が今やクラスメイト……まあそれはそれでいいんだが」
(ふふっ、もういいかげん諦めたらどうですか。それに先生も、毎日結構楽しんでいるじゃないですか)
「……まあな。もう毎日毎日開き直っているさ」
(そうですね。でもそんな先生、わたしは好きですよ)
「こんな時におだてるなよ。俺も早く女子高生としての自覚を持たなきゃいけないんだけどなぁ」
(時間が全てを解決してくれるんじゃないですか。そんなもの自然と芽生えてきますよ)
「そうだな、そうなると良いんだが……」

「ハニィ、おはよう!」
「え? ああ、幸、おっはよ〜」

 ぶつぶつ独り言を言いながら歩く蜜樹の後ろから声をかけたのは、クラスメイトの桜井 幸だった。
 かつて蜜樹がまだ如月光雄だった頃、彼の恋人になろうと追いかけ回していた彼女は、今ではクラス委員長の相沢謙二と共に蜜樹の親友だ。

「どうしたの? 朝からたそがれちゃって」
「え? ううん、なんでもないよ。……あ、そうだ。幸、今度の土曜日って空いてる?」
「土曜日? うん、何も予定は無いけど」
「実は転校前にあたしが通ってた高校の学園祭に誘われてるんだけど、よかったら一緒に行かない?」
「ハニィの前の高校って、姫高だったよね」
「うん」
「確か、榎矢ルミナも姫高じゃなかったっけ?」

 そう言いながら蜜樹の顔を覗き込む幸。

「榎矢ルミナ?」
(先生知らないんですか? 現役女子高生アイドルの榎矢ルミナって結構人気あるんですよ。彼女もあたしのクラスメイトの一人だったんです)
「そうそう……ルミナちゃんも、あたしのクラスメイトだったかな」
「へぇ〜、そうか、ハニィってルミナちゃんと知り合いだったんだ。ルミナちゃんって学園祭ではコンサートとかやらないのかな? 行く行く……で、もし彼女に会えたら紹介してね」
「う〜ん、わかった」
「約束よ。そう言えば委員長には声かけたの?」
「ううん、まだだけど?」
「そっか、実は委員長が今度皆でどこか遊びに行かないかって言ってたんだ。妹をハニィに紹介したいみたい」
「妹?」
「うん、小学生のね。何でもあなたのファンなんだそうよ」
「ええ!?」
「ふふっ、ハニィってこの辺りじゃすっかり有名人なんだよ。スーパー女子高生だって」
「えぇ〜そんな……そんなことないよ……」
「いいからいいから。……で、どうする?」
「うん、別に構わないけど……」
「じゃあ決まりね。委員長にはあたしから言っとくから。……おっと、早く行かないと遅刻するよ」
「いっけないっ! 走ろうか?」
「うん、でもハニィってばあたしを置いて行かないでよ」
「わかってるって」



「…………」

 校門に向かってきゃあきゃあと駆け出す蜜樹と幸。その姿を空からじっと見詰める目があった。
 二人が校門に入るのを確かめたその目――真っ黒い烏は、くるりと旋回して何処かに向かって飛んでいった。



 週末の土曜日、蜜樹は駅前で三人が来るのを待っていた。
 淡いレモン色のノースリーブのセーターとカーディガンのコンビネーション、そして白いフレアのミニスカート、紺色のニーソックスにピンクのスニーカーという装いで、肩からポシェットをぶら下げている。
 遊びに出かける女子高生としてはごくごく当たり前の格好だ……尤もその服装で外に出ることに、蜜樹自身には随分抵抗があったのだが、母親の幸枝と姉の奈津樹によって半ば強引に着せられて、生田家を送り出されたのである。

 こんな具合に……

「ちょ――ちょっと、こんなので出かけるなんて恥ずかしいよ。学園祭なんだし、制服で十分……」
「なに言ってるの、蜜樹。あなたの年頃だったらこれくらい普通じゃないの。とっても似合ってるわよ」
「いや年頃って言っても、俺は……」
「俺じゃなくて『あたし』でしょ? 蜜樹」
(そうですよ、先生。これくらいで恥ずかしがってどうするんですか……)
「でも、俺はおとこ……」

「「あなたは蜜樹でしょっ!」」

 幸枝と奈津樹が声をハモらせながら、蜜樹に向かって言い放つ。

「……はい」

 これには蜜樹もただ頷くしかなかった……

「帰ったらどうだったか詳しく教えてね。もしかしたら委員長さんにキスされちゃったりして……きゃっ♪ 蜜樹、楽しみに待っているわよ」
「な……奈津樹姉さん、きゃっ♪ ――って、そもそもデートじゃないんだし、委員長がそんなことする訳ないでしょう……」

 思わず顔を真っ赤にする蜜樹だった。

「うふふっ、冗談よ、冗談。……さあ行ってらっしゃい」
「ハニィ、あたしも行きたいんだニャア」
「うーん、学校はペット持ち込み禁止だし……シャドウガール、あなたは今日はお留守番していて頂戴」
「つまらないんだニャア」

「おお蜜樹、よく似合ってるじゃないか。……幸枝、写真は撮ったのか?」

 遅れて玄関に出てきた賢造が、蜜樹の姿に目を細める。

「もお〜お父さんったら……すっかり手間取って、そんな時間無いんだから」
「そうか、それは残念だな。蜜樹、それではマリアちゃんによろしくな」
「うん」
「ところでマリアちゃんは学園祭で何をするんだ?」
「ええっと、バザーの売り子だって言ってた」
「そうか、例のやつか。マリアちゃんの売り子姿、是非見たいものだが、私はこれから桜塚教授に会いに行くのでな」
「え? あの〇ンディ〇ョーンズもどき……もとい、マリアちゃんのお父さんにですか?」

 色落ちしたカウボーイハットをくいっと持ち上げて、男臭い笑顔を見せる桜塚教授の顔が思い浮かぶ。

「ああ、桜塚教授から至急私に確かめたいことがあるんで来てくれないか、って言われてな」
「調べたいこと? 賢造さん、また二人で変なことを……」

 幸枝が賢造をじろりと睨む。

「違う違う……あいつの話によると、どうも『虎の爪』に関係することらしい」
「『虎の爪』のことを桜塚のおじさんが? へぇ〜、なんだろう?」

 奈津樹が首をかしげる。

「まあ、あいつの話を聞いてみないとわからんがな」
「…………」

 賢造の話も気になるが、皆との待ち合わせの時間が迫っている。

「じゃあ遅くなるから、あたし行くね。……お父さん、マリアちゃんのお父さんによろしく」
「ああ」
「楽しんでらっしゃい、蜜樹」

 玄関で見送る三人の姿に、照れながらも、家族の温もりを感じる蜜樹だった……



「…………」

 待ち合わせ場所に向かう蜜樹は、周囲の視線に戸惑っていた。
 誰もが自分のことを見ているような気がしてならないのだ。実際気が付くとすれ違う人は皆、彼女のことをじろじろと見ていた。
 男は何処かいやらしい目で、女性は羨望の色をその瞳の奥に湛えながら。

「俺、なんかおかしいかな? やっぱりこの格好で歩くのは恥ずかしいよ……」
(なに言ってるんですか、それだけ今の先生が魅力的だってことですよ)

 確かにすらりの伸びた脚を惜しげもなく見せつけるそのミニスカート姿には、誰もが釘付けになって当然だろう。

「ううう、やっぱりこんなの着るんじゃなかった……」
(うふふっ、そのうち見られるのが快感になってきますよ。……!?)
「どうしたんだ? ハニィ」
(……何かおかしな視線を感じる)
「変な奴が多いからなぁ。うう、そりゃ気をつけなくっちゃ」
(何だろうこの感じ……すみません、指輪が壊れてから力が弱くなってしまって)
「まあ、変な奴が襲ってきてもぶっとばしてやるさ」
(そんな……先生はもう女の子なんですから、お願いですから女の子らしくおしとやかにしてくださいね)
「ははは、わかったわかった、さあ急ごう」



 結局、待ち合わせ場所に着いてみると、蜜樹が一番乗りだった。
 程なくして幸、そして最後に相沢兄妹がやって来た。

「ごめんごめん、遅くなっちゃって」
「どうしたの、委員長が時間に遅れるなんて珍しいわね」
「いやぁ、未久の準備が長くってさ」
「ぶ〜、あたしだけのせいにしないでよ。お兄ちゃんのほうこそ今日は念入りに服を選んでたじゃない」
「「まあ」」
「……あ、紹介するよ。これが妹の未久――相沢未久だ。未久、こっちが俺のクラスメイトの桜井幸さんと、そして生田蜜樹さんだぞ」
「お兄ちゃんったら、これってなによ……もうっ。……あの、相沢未久です。ただ今12歳の小学六年生。お姉ちゃんたち、よろしくね」
「桜井幸よ、こちらこそよろしくね」
「生田蜜樹よ、ハニィって呼んでね♪ 未久ちゃん」
「あなたがハニィお姉ちゃん? お兄ちゃんの話通りとっても綺麗……」

 そう言うと、未久はじっと蜜樹を見詰めた。

「…………」

 ちらりと謙二のほうを見ると、謙二は照れた表情で横を向いてしまった。

「そんなことないよ」謙二の妹、相沢美久(illust by MONDO)

 蜜樹はそう言って、未久に微笑み返した。

「でも、ハニィお姉ちゃんって、あたしが想像してた通りのお姉ちゃんだったから良かった。……それと、ハニィお姉ちゃんがお兄ちゃんの恋人だったら良いなぁって」
「ば、馬鹿っ、そんなこと――」

 突然の未久の言葉に、謙二はさらに顔を赤くして焦りまくる。
 幸がその顔を見て、ぷっと笑った。

「あらあら」
「ごめんね未久ちゃん、あたしと謙二くんはただの友達だから」
「そうなんですか? ……なーんだ、残念」
「…………」

 ハニィの言葉を聞いて未久は残念そうだったが、その隣の謙二も心なしかしょげていた。

「じゃ……じゃあ遅くなるから早く行こうぜ」
「そうね」

 一行は電車とバスを乗り継いで、姫高に向かった。



 そして、空から一行を監視している黒い烏も、それをぴったりと追いかけていた……



 姫高の中は様々なイベントで盛り上がっていた。
 講堂では軽音部やバンドグループ、合唱部や吹奏楽部の演奏、そして演劇部或いはクラスによる劇が催されていた。
 体育館は生徒会主催のバザー会場となり、オークションの掛け声で賑やいでいる。
 そして各教室や校庭ではクラス、或いは文化部や運動部の様々な催しの場となっていた。半数ほどのクラスでは教室に至極真面目に研究発表を張り出す一方、残りのクラスは喫茶店などの模擬店を行なっている。

 そんな中、蜜樹たち一行は姫高祭に到着した。
 出店されている屋台やあちこちで行われている催しを眺めながら、4人は校内を歩き回った。
 未久は蜜樹の手を掴んでぴったり離れずに、「あの店に行こう」「一緒にアトラクションしよう」と引っ張りまわし、それを呆れ顔で見る謙二と幸だった。

「ハニィお姉ちゃん、ほらお芝居もやってるよ」
「『どたばた竹取物語』?何か面白そうだね」
「ねえ、見て行こうよ」
「はいはい」

 そんな事の繰り返しである。
 そしてあっという間に楽しいひと時が過ぎていく。

「ハニィお姉ちゃん、面白かったね」
「うん」

 姫高祭の出し物は、高校の学園祭としてはレベルが高い。蜜樹もまた未久と一緒に満喫していた。

「ハニィお姉ちゃん、今度はあれやろうよ」
「はいはい」

 再び蜜樹の手を引っ張って駆け出す未久。

「すまないな、ハニィ」
「ふふっ、いいのよ。未久ちゃん行きましょう」
「へへ、ありがとうハニィお姉ちゃん」

 そして次のアトラクションに向かうハニィと未久。憧れのハニィと一緒で未久は本当に嬉しそうだ。
 再び取り残された謙二と幸は、ただ苦笑するしかなかった。

「妹さんかわいいね」
「あいつ、いつもはもっと大人しいんだけどな。全くすっかり舞い上がって、あんなにはしゃぐなんて思わなかったよ」
「何だか妬けるわね」
「ええ?」
「ううん、なんでもない」

 ハニィの元のクラスメイトたち――即ち2年桜組の教室は、クラスで主催するメイド喫茶……もとい、メイド風喫茶と化していた。
 机を白いテーブルクロスで覆い、窓にはシックなカーテンを掛け、普段の教室からすっかり変貌したその室内は、カウンター風の仕切りで仕切られ、その内側ではコック風の白衣を着た調理担当の男子と女子が簡単な飲み物と軽食、菓子を準備している。
 そして女子の有志がメイド風の衣装を着て、接客を努めていた。
 「お帰りなさいませ、ご主人様」と本物のメイド喫茶さながらの応対で接客担当の女子が客をテーブルに案内して注文を受けると、それに応じてカウンターの内側からトレイに載せた飲食物が出され、それを再び客のもとに運ぶのだ。
 勿論他のクラスでも似たような企画の喫茶店が出店されてたが、2年桜組が他のクラスと決定的に違うのは、クラスの一員にテレビドラマで活躍しているアイドルスターの榎矢ルミナがいること……そして彼女がメイド風衣装を着て接客しているということだった。

 噂が噂を呼び、教室の前には他を圧倒する長蛇の烈ができていた。

「おい、ここか?」
「そうだよ、ここここ」
「へぇ〜、あのルミナちゃんの生メイド姿か、そりゃ見逃せないな」
「それに金髪の女の子や眼鏡っ子のメイドもいてて、とにかくポイント高いんだぜ」

 列を作る男子たちの間で、そんな会話が囁かれる。
 室内では、白いカチューシャを頭につけ、パフスリーブの半袖に短い裾の濃紺のワンピースの上から白いエプロンをつけたメイド姿の榎矢ルミナが、同じメイド姿の金髪碧眼の少女や高校生とは思えない小柄な少女たちと一緒に、かいがいしく接客していた。
 蜜樹たちが列に並んで待つこと30分、ようやく教室に入ると、その姿を見止めたメイド姿の女子生徒の一人が声を上げた。
 そしてそれを合図に女子生徒たちが、入ってきた蜜樹に一斉に注目する。 

「ハニィじゃない!?」
「え? ハニィ!?」
「あなた、ずっと行方不明で、何も連絡を寄越さないで、いったい何処でどうしてたの?」
「マリアからハニィに会ったと聞いて、レンも嬉しかったデスよ」

 蜜樹の周りに集まるメイド姿の女子生徒たち。

「ちょ、ちょっと待って……」
(みんな、久しぶり。元気そう……)
「お……おいハニィ、この子たちってみんな君の友だちなのか?」
(はい、右の金髪の子はレン、小柄な子はサラ、そして真ん中でアイドルのオーラを放ってる綺麗な子がルミナで、その隣にいる眼鏡の子がマッチです)
「そうか。あ――あのみんな、あたし……」

 ハニィの旧友たちとは言え、さすがに今の蜜樹……光雄にとっては初対面だ。何と答えたら良いものか躊躇してしまう。
 そこに助け舟を出したのは、旧式の一眼レフカメラを抱えた男子だった。ちなみに彼は、姫高の制服であるブレザーを着ていた。

「まあまあ、みんな落ち着けよ。ハニィが戸惑ってるじゃないか。彼女にも何か事情があったんだろう」
「コタロー、あんたがそんな訳知り風な言い方するとは思わなかったわ。……ねえハニィ、その辺りを是非独占取材させて頂戴っ」

 姫高新聞部の敏腕記者でもあるマッチが、眼鏡の奥をキラリと光らせた。
 
「そんなもん今日じゃなくてもいいじゃないか、それよっか再会を祝してみんなで一枚どうだい?」

 コタローが手に持ったニ○ンF3を構える。

「あ、でもマリアちゃんは?」
「バザー会場よ」
「呼んでこないといけないデスね」
「バザー会場で売り子してるんだよね。あたしが連れてくるから、みんなはここで待ってて」
「レンが呼んでくるから、ハニィはここでゆっくり待ってるデス」
「ううん、あたしが行ってくる。レンちゃんもみんなも、この列を片付けないといけないでしょ?」

 そう言って、ちらりと後ろを振り向く。教室前にできた列はまだまだ途切れそうにない。

「おーい、注文がまだだぞ!」
「あ、ただいま」

 テーブルに座っている客の一人がイライラした表情で手を挙げる。
 確かに彼女たちには教室を離れる余裕はないようだ。

「うーん、じゃあ頼みますネ。……後で皆でゆっくり話すデス」
「ハニィおねえちゃん、あたしも一緒に行ってもいい?」

 未久がハニィの袖を握った。

「うん、行こうか」 
「あら? ところでその子たちは?」
「あ、紹介してなかったね。今通ってる南高校のお友だちで、桜井幸さんと相沢謙二君、それとその妹の相沢未久ちゃんよ」
「「はじめまして」」
「「こんにちは」」
「あ、あの、榎矢ルミナさんですよね? あたしファンなんですっ! サインしてもらえませんか?」

 紹介された幸が、目をきらめかせながらルミナに向かって自分の生徒手帳を開いて差し出す。

「困るな、校内ではそういうことしないんだけど……」

 一瞬顔を曇らせたルミナだが、次の瞬間にこっと笑った。

「でもハニィの友だちじゃあしょうがないか、貸して」

 ルミナは幸が差し出した生徒手帳を片手で受け取ると、流れるような動作で胸ポケットからペンを抜き出し、キャップを口で抜くと、さらさらと慣れた手つきでサインした。
 閉じた手帳を幸に返す。その仕草は、まさしくトップスターのものだ。

「ありがとうございます、ルミナさん!」
「ふふふ、そんなにかしこまらないで。ハニィの友だちだったらあたしにとっても友だちよ。幸ちゃん、よろしくね……それに相沢くんも」
「え? あ、あの……よろしく」

 手帳を返した手を、そのまま謙二に向かって差し出すルミナ。
 謙二は照れた表情でルミナと握手する。
 だが、そんな光景を見せつけられた男性客全員から、非難とも羨望とも取れないギラギラした視線が浴びせられた。

「あいつ、僕のルミナちゃんに」
「許せんな……」

 蜜樹はそんな空気を察して、慌てて謙二に声をかけた。

「え……えっと、じゃああたしはマリアちゃんのとこに行ってくるから、委員長と幸はそこに座って待ってて」
「ではご注文をどうぞ、ご主人様、お嬢様」

 蜜樹に促されて、空いたテーブルに座った二人にルミナがメニューを差し出す。謙二はそれを照れながら受け取った。

「ところでハニィ、今日は後夜祭もあるけど、一緒に参加しない?」
「うん、考えとく。……じゃあまた後でね」

 蜜樹と未久は教室を出ると、バザー会場のある体育館に向かった。



「……マリアちゃん!」
「あっ、ハニィ、来てくれたんだですっ!」

 売り子姿のマリアが蜜樹の姿を見つけ、嬉しそうに手を振った。

「へぇ〜、その格好かわいいじゃない」
「親父の趣味なんだです。……全く、これ着たらバザー用品を提供してやるだなんて、なに考えてんだか――」

 マリアが着ているのは、チャイナドレス風の青いきらびやかな衣装。
 そして彼女がバザーで売っていたのは、古風なアクセサリーや装飾品だった。

「どれもみんな親父が本物の発掘品を元に作ったレプリカだです。ああ見えて造型再生の腕は超一流なんだです」
「ふーん、レプリカなのか。でも本当によくできてるな……え? この指輪って――」

 目の前に並べられた品物を見渡していた蜜樹の視線が、一つの指輪でぴたりと止まった。
 それは、割れてしまったあの指輪――ハニィの変身アイテムにそっくりだった。

「……これって、空中元素固定装置!?」
「え? くうちゅう……なんだですか?」
「……ううん、何でもない」
(先生、偶然でしょうか? でもそっくり……)
「そうだな……マリアちゃん、ちょっとこれ貸してくれる?」
「え? あ、いいけどです――」

 蜜樹は右手の薬指にその指輪を嵌めると、叫んでみた。

『みつお・フラァッッシュ!』

 ……だけど、何も起こらなかった。

「やっぱり変身する訳ないか。そんなに都合よくいく訳ないよな」
「ハニィ、いきなりどうしたんだです? 何の呪文だです?」
「ふふっ……何でもないよ。はい、指輪返すね。……それよりマリアちゃん、桜組のみんなが教室で一緒に写真撮ろうって」
「そっか、それじゃ行こうです。……すみませ〜ん、しばらく店番お願いするですっ」

 居合わせたバザー管理担当の生徒会役員に店番を頼むと、マリアと蜜樹、そして未久の3人は体育館を出た。



 体育館と校舎の間には中庭があり、そこではテニス部の網焼きや、手芸部の刺繍等、いくつかの文科系や体育系の部が屋台を出店している。そして中には個人で手品やパントマイムといったパフォーマンスをしている生徒もいた。

「さあ、みんな待ってるから、急ごう」
「はいです」
「ハニィお姉ちゃん、あれ」

 未久が指差す先で、色とりどりの風船を持った道化師が手招きをしていた。

「道化師だって? また凝ってるな。まあコスプレの一緒と言えなくもないけど……」
「ハニィおねえちゃん、ちょっとだけ待ってて」

 未久はそう言うと、道化師に向かって駆け出した。
 風船の一つを未久に差し出す道化師。未久はそれを受け取ろうとする。
 だが次の瞬間、道化師は未久の小さな体をがっちりとはがい締めにした。

「なにぃ!?」



 その頃、桜組の教室でも異変が起きていた。

 ガチャン! 「「きゃああっ!?」」

 突然窓ガラスが割れたかと思うと、異様に大きな蛾が一羽、そこから中へと飛び込んできた。
 悲鳴を上げる女子生徒たち。その頭上を飛び回る巨大な蛾。
 羽からおびただしい燐粉が、教室中に振りまかれた。

「な、なに……よ……こ、れ――」

 燐粉が降りかかると、教室内にいた生徒たちは次々と倒れていく。ルミナやレンたちメイド姿の女子生徒も、その場にぐったりと倒れ伏す。
 そして幸や謙二の二人、それに彼らとテーブルを挟んで話し込んでいたマッチやコタローも、いつの間にかテーブルに突っ伏していた。
 やがて教室内で動くものはいなくなった……いや、巨大な蛾だけがその中をひらひらと羽ばたいている。
 そして蛾は、倒れたルミナの背中にひらひらと舞い降り、そしてぴたりと張り付いた。
 と、同時にルミナの背中に大きな黄色い羽が広がった。いや、張り付いた蛾の羽が大きくなったのだ。

「…………」

 背中の羽を広げたまま立ち上がるルミナ。虚ろな瞳でまわりを見渡すと、

「ふぉっふぉっふぉっ……さあ立て、我が僕たちよ――」

 ルミナの言葉に、倒れていたメイド服の女子生徒たち、そしてテーブルに突っ伏していた謙二や客たちが次々に起き上がる。
 その焦点の合わない目の下には、異様なクマができていた。

「さあ続け! 我と共にスウィートハニィを倒すのだ」

 メイド姿の女子生徒たちは無言でこくりと頷くと、ルミナを先頭に次々に教室をあとにした……



 場面は再び中庭に戻る。
 いきなり自分をはがい締めにした道化師に、最初は戸惑いを見せていたものの、未久はすぐにじたばた暴れ始めた。

「いやあ、やめて、やめてよ!」
「ちょ――ちょっとやめろですっ! 小学生相手の悪ふざけにも、限度があるだろがですっ!!」

 マリアがあわてて駆け寄って、二人を引き離そうとした。が――

「うるさい!」

 道化師は片手でマリアを突き飛ばす。
 そして未久を抱えたまま、その姿を徐々に別なものへと変化させていく。
 身体の表面が紫色に染まり、その姿は身体の表面にいぼのついた、とかげのようなものに変わった。

「……なんだと!?」
(先生、『虎の爪』の怪人です!)
「で、でも『虎の爪』は壊滅したんじゃないのか?」
(よくわからないけれど……でもあの姿は間違いないわ)
「くそっ、……とにかく未久ちゃんを助けよう」

 ハニィは未久に抱きついている怪人に向かって言い放った。

「その娘を放しなさいっ!!」
「ぎぎっ、いやだねっ」
「そんな子どもに何をしようって言うの!? あなた、『虎の爪』の怪人!?」
「我が名はパープルカメレオン……この娘は我が『ネオ虎の爪』が預かるっ」

 怪人――パープルカメレオンは、恐怖におびえる未久を脇に抱えて走り去ろうとした。

「待ちなさい!!」
「ハニィ、とっ捕まえるですっ!!」

 慌てて後を追いかけようとする蜜樹とマリア。
 だが、大きな黄色い羽を生やしたルミナを先頭に、教室から出てきたクラスメイトたちが二人の行く手を塞いだ。

「みんな、どうしたの? 未久ちゃんが怪人にさらわれたの。早く追いかけないと……」
「…………」

 だが蜜樹の叫びに誰も答えない。逆に両手を腰に当てたルミナが蜜樹の正面に仁王立ちになって立ち塞がった。

「ルミナちゃん、そこを通して!!」
(先生、そいつも『虎の爪』の怪人ですっ! ルミナにとり憑いてますっ!)
「ふぉっふぉっふぉっ、我の名はイエロードクーガ。スウィートハニィ、覚悟なさい……さあお前たち、やれっ!!」

 背中の羽をゆっくりと羽ばたかせるルミナ――イエロードクーガ。鱗粉があたりに舞い、それと同時にじっと動きを止めていたメイド姿のレンやサラ、クラスメイトたちが一斉に蜜樹に襲い掛かった。

「……みんな、いったいどうしたんだです!?」

 だが、マリアの問いにも誰も答えない。
 レンやサラ、コタロー、マッチ、そして幸や謙二までもが無表情で両手を伸ばし、蜜樹を取り囲み、その身体を押さえつけた。

(先生、みんな操られてますっ!)
「わかってるっ! みんな、しっかりしてっ! 幸っ、委員長っ、正気に戻って!!」

 叫ぶ蜜樹。だが、二人は無表情のままそれに答えない。

「コタロー、あなたもしっかりしてっ!!」

 だがコタローは、無表情のまま蜜樹の首に手をかけようとする。

「コタロー、正気に戻れですっ!!」

 そう言うや否や、マリアは何処からともなく取り出した巨大ハリセンを振りかぶり、コタローの頭を思いっきりぶっ叩いた。

 どばしっ――!! 「……いたたっ! えっ? あ、あれ? 俺、何をして――」
「コタロー、気がついたかです? ……よ〜し、みんなも……ごめんですぅっ!!」

 マリアは巨大ハリセンを振り回し、レン、マッチ、サラと次々にクラスメイトたちの頭を叩いていく。

「イタイデス!」
「いった〜っ」
「いた〜い……」

 マリアのハリセンが一閃する度に、イエロードクーガに操られていた生徒たちは次々に正気に戻っていった。
 そして幸と謙二も。

「……いたいっ!」
「いてて……」
「みんなごめんなですっ。でもこれで、ルミナ以外は正気に戻ったようだですっ」
「うぬぬ、我の術が破れるとは……何だそのハリセンは!?」
「んなこたぁどうでもいいのだですっ。……ハニィ、大丈夫?」

 マリアは囲みを解かれた蜜樹に駆け寄った。

「うん、ありがとうマリアちゃん」
「おのれ、スウィートハニィ……こうなったら我だけでも」

 蜜樹を睨みつけるルミナ、いやイエロードクーガ。

「マリアちゃん、どいてて」

 マリアをかばい、対峙する蜜樹。
 じっとしたまま睨み合う二人。やがて、イエロードクーガがゆっくりと羽を羽ばたかせる。
 黄色い鱗粉が空に舞う。

(先生、あれを吸っては駄目です!)
「わかってるさ……とうっ!」

 蜜樹はジャンプした。
 そして空中でくるりと一回転すると、ルミナの背中の大きな羽に向かってキックを入れる。

「ハニィ、キィーッック!!」
「……ぎゃああああああっ!!」

 根元からぷっつりと切断される、イエロードクーガの右羽。
 蜜樹は着地したその場でくるりと体を反転させ、今度は左の羽に回し蹴りを放った。
 ジャンプした時から下着が丸見えなのだが、全く意に返さない。但し、それに気付いた謙二の顔は赤くなり、コタローの手の中の〇コンF3のシャッター音が鳴り続いたが。

「すげえ、グ、グレイトだぜ……」

 勿論彼はパンチラを撮っているのではなく、メイド姿のルミナを操るイエロードクーガとハニィの戦いを撮っているのだ…………多分。

「ぐっ、ぐぎぃっ……」

 蜜樹の早い回し蹴りをかわし損なったイエロードクーガは、残った左羽も切断される。
 たまらずとり憑いていたルミナの背中からぽとりと落ちるイエロードクーガ。

「あ、あれ? あたし今まで何を……」
「ルミナちゃんも正気に戻ったようね。……こいつ、よくもみんなをっ!!」

 ラグビーボールを蹴るように、羽を失ってもがくイエロードクーガの胴体を蹴りとばす蜜樹。
 その先には校舎のコンクリートの壁があった。

 べちゃっ……

 壁に叩きつけられたイエロードクーガの胴体は、あえなく潰れてしまった。

「全くどういうことなんだ? くそう、足止めを……いけない、未久ちゃんは?」
(先生、急ぎましょうっ!)
「おう!」

 パープルカメレオンが走り去った方に駆け出すハニィ。
 しかし、校内をくまなく探しても、未久の姿は見当たらなかった……





「……くそう、未久ちゃん、どこに連れ去られたんだっ」
(先生、もしかしたらもう校内にはいないのかも)
「そうだな……よし学校の周辺を探してみるか」

 未久の行方を捜す蜜樹は焦りを覚えていた。

「ハニィ、あたしたちも手伝うよ」

 手分けして校内を探し回っていた元クラスメイトたちも、蜜樹たちに合流した。

「ありがとう、みんな」
「僕の妹の為に……すみません」

 謙二は拳を握り締めて、ルミナたちに頭を下げた。

「何謝ってるの? 困った時にはお互い様だよ」

 小柄なサラが謙二の顔を見上げて励ます。
 彼らは二人一組に分かれて校門を出ると、怪人と未久の姿を捜した。
 蜜樹はマリアと一緒に、校庭沿いの道路を急いだ。

「「あっ!」」

 イベント用と思われる大型トレーラーの脇を抜けると、その先にぐったりした未久を抱えて乗用車に乗り込もうとするパープルカメレオンの姿があった。

(先生、あそこですっ)
「ああ、こっちで正解だったみたいだな。……よし、マリアちゃん、未久ちゃんを助けようっ」
「ラジャーだですっ」

 一直線に駆けるハニィ。ハリセンを構えたマリアがその後を追う。

「待ちなさい! 『虎の爪』の怪人っ!!」
「その娘を放すですっ!!」
「ぎぎっ、いやだねっ」
「か弱い少女を拉致しようだなんて、世間が許してもこのスウィートハニィが許さないっ!」
(先生、久しぶりなのにお上手ですね)
(ば、馬鹿、こんな時に冗談言うな)
(ふふ、すみません。……さあ、未久ちゃんを助けましょう)
「おう!」
「ぎっ!! うるさい奴、返り討ちにしてくれるっ」

 その場に気を失った未久を下ろすと、パープルカメレオンはハニィに飛び掛った。
 さっと身をかわし、カウンターでパープルカメレオンの腹部に膝蹴りをくらわせるハニィ。
 続いてマリアが頭にハリセンを叩き込む。見事な連携プレィだ。

「ぐ、ぐはっ。……く、くそうっ、覚えていろっ」

 捨てゼリフを残すと、パープルカメレオンは夕暮れの風景に溶け込むように、すっと姿を消した。

「……なに? なんてあっけない――」
(そうですね……)

 その時、アスファルトの上に置かれた未久が身じろぎした。

「う、うーん……」
「あ、未久ちゃん、気が付いた?」 
「あ……お、お姉ちゃん〜」
「未久ちゃん、大丈夫、もう安心だよ」
「怖かったよぉ、ハニィお姉ちゃん」

 起き上がった未久は自分が解放されたことに気がつくと、ハニィの胸の中に飛び込み大声で泣き出した。

「ハニィ、未久ちゃんが無事でよかったなです」
「大丈夫? 未久ちゃん。……ほら、お兄さんが来たわよ」

 騒ぎを聞きつけて、幸や謙二、そして桜組のクラスメイトたちも集まってきた。

「未久〜、無事か〜?」
「ひっく、ひっく……うん……」

 未久は蜜樹の胸に顔を埋めてずっと泣き続けている。
 余程怖い目に遭ったんだろうと、蜜樹たちは優しい目で彼女を見守っていた。

「よかったデスね、ハニィ」
「それにしても……あいつ、何なんだです? それに、さっきルミナの背中にくっついていた蛾だって――」
「ハニィが行方不明になってた事情と何か関係あるの? 特ダネの匂いがぷんぷんするわね。……ハニィ、ねえ教えて!」
「まあまあ、みんな落ち着けよ。未久ちゃん、ほら、あいつは退散したからもう大丈夫だよ」
「コタローって意外と優しいのね。ところでハニィ、あなた後夜祭はどうする?」

 ルミナが蜜樹に尋ねる。

「今日は未久ちゃんを送っていくから。また今度会いましょう」
「あたしたちも今度ハニィの家に遊びに行くね」
「うん、待ってるね。……未久ちゃん、ほらもう大丈夫だから、お姉さんと帰ろう」

 そう言って、蜜樹は抱きついている未久の背中を優しく撫でた。

「ひっく、ひっく、うん……」

 その間も肩を震わせて泣き続ける未久。
 だが、蜜樹の胸に隠れたその顔は、おかしくて堪らないといった邪悪な笑いに満ちていた。
 しかし今の蜜樹には、それに気づくすべはなかった。



 ふっ、ふふふ……あっはっははは……

(続く)





後書き
 今回のお話は、某パラレルワールドのキャラをお借りして展開させていただきました。マリアちゃん以外は1回のみのスペシャルゲストのつもりなんですが、まあ今後の展開次第では再登場してもらうかもしれません。

Special Thanks !
MONDOさん、こうけいさん、きりか進ノ介さん、猫野さん、K.伊藤さん、天爛さん



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