白色のゼリージュースを飲まされて、僕の体は女の子の身体に作り変えられてしまった。

 鏡で見ても、この姿が僕自身の身体を元にして作られたものだなんてとても信じられない。そういう意味では高原社長の腕ってつくづく凄いと思う。

 でも……。




ゼリージュース!外伝(4)「気分はトロピカル(中編)」

作:toshi9




 女の子の身体に変えられてしまい、止む無く高原ビューティクリニックの女子社員の制服を着た僕は、由紀さんと二人でビューティサロンを出ると本社二階にある研究室に向かった。

 時折顔見知りの社員とすれ違うが、誰も僕が小野俊行だと気付く様子はない。まあこの姿ではそれも仕方のないことなのかもしれない。

 それにしても……。

「こんにちは」

「ああ……あれ? 柳沢君、君の隣の娘って誰だったっけ」

「佐藤部長、彼女今日からうちに配属された小田みゆきです。ほらみゆきちゃん、くくっ、こちら購買部の佐藤部長よ」

 由紀さんが、笑うのを堪えながら僕に振ってくる。

 全く由紀さんときたら。

「お、小田みゆきです。よろしくお願いします」

 仕方なく佐藤部長にぺこりと頭を下げる。

「そうかみゆきちゃんか、よろしく頼むよ。何か困ったことがあったらいつでも相談に乗ってあげるからね」

「はあ」

 すれ違い様にぽんぽんと僕の肩を叩いていく佐藤部長。

「くっ、くくっ、くくくっ」

「変な笑い声を出さないでくださいよ。はあ〜、佐藤部長ってあんなでしたっけ」

 いつもは僕とすれ違っても無愛想でほとんど挨拶を返されることも無い佐藤部長なんだが、今日は妙に愛想が良い。おまけに目尻が下がって何処かだらしなく見えた。

「あの人って男性相手の時と女性相手の時って態度ががらりと変わるのよ。俊行さんも女の子になってみると良くわかるでしょう。まあ彼の場合は極端だけれど、でも男って多かれ少なかれみんなそうなんじゃないの」

「そんなもんなんですかね」

「そんなものなのよ」

 まあ確かにそうかもしれない。その後もすれ違う男性社員の僕を見る目つきは今までと全く違っていた。それどころか中にはじろじろと無遠慮に僕の身体を嘗め回すように見る奴もいる始末だ。

「ねえ由紀ちゃん。君の隣の娘って誰ちゃん?」

「ああ、山元さん。今日からうちに配属された小田みゆきです」

「ふーん、みゆきちゃんか」

 山元課長はいやらしい目つきで僕の身体を嘗め回すように見詰めながら、口元を緩ませている。

 このいやらしくまとわりつく課長の視線って……ま、まさか僕の裸を想像している?

 そう気が付くと、背筋をぞくりと冷たいものが通り抜けた。

「みゆきちゃん、今度一緒にお茶でもどうだい」

「あ、いえ、あの……」

 駄目だ、言葉が上手く出ない。 

「山元さん、うちの部屋の娘にちょっかい出さないでくださいよ」

 きっと由紀さんが山元課長を睨む。

「おーこわ、じゃあみゆきちゃん、またね」

 山元課長は由紀さんに睨まれて肩をすぼめると、そそくさと歩いていった。

「うふふ、あなたが本当は俊行さんだとも知らないで、ほんと男ってしょうがないわね。でも高原社長の腕ってさすがね。まあ山元課長が誘うっていうのは今のあなたが本当にかわいい証拠なんだから、あれくらい我慢しなさい」

「そんな、あんな目で見られるなんて……何か気持ち悪いですよ」

「かわいい女の子っていうのは、いつも男からああいう目で見られているのよ」

「由紀さんもそうなんですか?」

「……何か言った?」

 一瞬由紀さんがぎろりと僕のことを睨む。

「い、いえ、何でもありません」

 ふぅ〜、でもあんな目で見られるのはごめんだな。それにいくらかわいいと言ってもこれは女の子の身体、作られた偽りの姿なんだ。

「でも折角なんだから、しばらく女の子としての生活を楽しんだら?」

「そんな……あ、あれ? 由紀さん、今、しばらくって」

「あら、あなた元に戻りたくないの。ずっとそのかわいい姿のままのほうがいいのかな」

「元に戻りたいに決まっているじゃありませんか!」

「うん、そうよね」

 由紀さんはにこっと微笑んだ。それはさっき高原社長の前で見せた妖しげな笑いとは違う、とても優しい笑い顔だった。 

 はて。

 うーん、本当に由紀さんって何を考えているのかよくわからない。






 二階に上がって由紀さんと二人で研究室に入ると、部屋の中には摩耶ちゃんがいた。

「あ! 先輩、社長の用件って何だったんですかあ。あれ? その娘は」

「ああ、紹介するわ。今度研究室で働くことになった小田みゆきちゃんよ」

「そうなんですか、生駒摩耶ですぅ、よろしくみゆきちゃん……ってあれ? あたしあなたと何処かで会ったかなぁ」

 僕を見て何かを感じたらしく、摩耶ちゃんが僕の目をじっと見詰めながら言った。

 由紀さんは右手を唇に当て、肩を震わせながら笑いをかみ殺している。

 くっ、くっくっくっ

「由紀さん、もぉ、何とか言ってくださいよ」

「え?」

 摩耶ちゃんがきょとんとしている。

「摩耶、この娘って俊行さんなのよ」

「え? ええ? そんな、うそぉ」

「社長の用件ってこういうことだったのよ」

 摩耶ちゃんは両目をくるくる回して何か考えている。そして、はたといった調子で手をポンと叩いた。

「あっそうか、小野さんってやっぱり女の子になってうちで働きたかったんですねぇ」

「ちが〜う!」

 もお、摩耶ちゃんにはどうも調子が狂う。

「なりたくてなった訳じゃない。社長にこんな姿にされてしまったんだ」

「まあ、さすが社長、素敵ですぅ〜」

 がくっ

 はぁ〜、わかってない。

「とにかく摩耶、俊行さんってこんな姿になっちゃったけれど、彼の仕事はこれまでと変わらないから。今まで通りフォローを頼むわよ。でも他に誰かいる時は、俊行さんのことはみゆきちゃんって呼んで頂戴」

「はい、わかりましたぁ」

「さてと、俊行さん」

「え? 何ですか」

「早速だけど、今のあなたって見かけはすっかりかわいい女の子になっちゃったわけよね。でもあなたの身体の中身ってどうなの。プロトタイプの紫色のゼリージュースの時は外見だけ、赤色のゼリージュースでは中身も全部変わったわよね。あの白いゼリージュースは何処まで効果があるのかな」

「さあ、まだアレの検証はしていませんでしたし、僕にもよくわかりません。自分の感覚では、どうもこの姿に変えられた時に身体の中も変わってしまったような気がするんですが」

「そうか、じゃあちょっと調べてみようか」

「調べてみるって」

「そりゃあ、あなたに女の子の機能があるのか……」

「げ! だ、駄目です。止めときます」

「あら、どうして」

 由紀さんが妙にきらきらと目を輝かせ、今度はまたあの妖しい笑いを浮かべながら近寄ってくる。

「どうしてって」

 僕は傍らにいる摩耶ちゃんのほうをチラッと見た。

「ははぁ、摩耶のこと? 今更気にすることもないじゃない。摩耶とあたしのことなら俊行さんもわかっているでしょう」

 摩耶ちゃんはきょとんとしている。

「と、とにかく今は止めましょう」

「そお、ちぇっ、残念」

 ゆ、由紀さん、そんな残念そうに言わないでください。あなたにこんなになってしまった僕の股間を曝け出すなんてそんなこと……それに僕は女としてあなたと一緒にいたいんじゃない。あなたとは男として……。

「で、白色のゼリージュースの効果って、やっぱり身体の改造効果ってことになるの?」

「え? あ、えと、そうですね。その改造効果なんですが、作り変えられてしまった僕の身体っていくら社長が凄腕と言っても手先の技術だけではこんなことできないような気がするんです。例えば何で髪がこんな風に伸びているのか説明がつきませんよ。もしかしたら改造を加える人の願いというか思念の影響を受けているのかもしれませんね。だから多分僕のこの身体の中身だって……」

「女性化してるってこと」

「はい。それに……」

「それに、なあに」

「今気が付いたんですが、さっき高原社長に命令された時、何故か社長の言うことに逆らえなかったんですよ。カメラの前でポーズを取れって言われて、自分ではその気は無かったのに気が付くと言われるままにポーズを取ってしまっていて……」

「へぇ〜、まさか身体に改造を加えた相手の命令には逆らえないってこと?」

「まあ断言はできませんが、思念の影響があるとしたら、そんな効果もあるのかもしれません。少なくともその目の前では逆らえないような」

「そうか……となると怖いわね」

 由紀さんが急に難しい顔になった。

「え? どういうことですか」

「もし社長があのゼリージュースで誰かを美しく変身させたとしましょう。するとその人ってその後は社長の言うがままになるってことよね。それも美人になったって評判は評判を呼ぶでしょうから、そういう人がどんどん増えていくってこと」

「あ!」
 
 そうだ。ってことは……。

 僕は白色のゼリージュースがどんどん高原ビューティクリニックで使われる様を想像してぞっと身震いした。

 そう、椅子に座ってたくさんの美人にかしずかれる女王様のような高原社長を。

「まあ……まだ社長はその事には気が付いていないみたいね」
 
「それじゃあ、もう白色のゼリージュースは作らないほうが良いんじゃあ」

「でもそれじゃああなたが元に戻れないんでしょう」

「それはそうですが……でも」

「ふふっ、まだ何か方法がある筈よ。俊行さんは取り敢えず社長に言われた通りこれまで作ったという試作品のデーターを整理したら。その中にもしかしたら何かヒントがあるかもしれないわよ。そしてそれと併行して元に戻る為の方法を考えてみるの。高原社長の手を借りなくても元のあなたに戻れる方法をね」

「うん、そうですね」

 由紀さんに言われて、落ち込みかかった僕はぱっと目の前が明るくなったような気がした。

 そうだ、まだ諦めちゃいけない。何か見落としている方法がある筈だ。

「さて、じゃあ今日はもう帰りましょうか」

「え? 帰るって」

「今夜はうちに来ない」

「先輩ぃ〜あたしも行きたいですぅ」

「摩耶は今日は帰りなさい」

「ぶ〜」

 摩耶ちゃんはふくれっ面している。

「でも由紀さん、帰ると言っても今の僕にはこの制服しか着る物がないんですけど」

「あら、隣のブティックで服と靴を買い揃えるといいわよ。これから一緒に行きましょう」

「え?」

 服を買う? 女物の……。

「心配しなくても大丈夫よ、代金は研究費で落とすから」

「い、いやそういうことじゃあなくって」

「ほら、行きましょう」

 由紀さんが僕の背中から抱きつく。

 むにゅ

「ひっ! や、止めてください」

「俊行さんの胸ってほんとおっきいわねぇ。羨ましい」

 むにゅむにゅ

「だから……止めてくださいってば、あ、あん」

 胸は、あ、駄目……。

「あ、や、ちょ……やめて、ゆ、由紀さん」

 駄目だこれ以上揉み続けられたら。

 背中にぴたりと密着する由紀さんを振り解いて、僕は両手で胸を抑えた。

「もお、怒りますよ」

「ふふっ、そうして拗ねている俊行さんってほんと女の子そのものね。ほんとかわいいわよ。じゃあ残りは今晩に取って起きましょうか」

 がくっ

 は〜、駄目だ。

「じゃあ行きましょう」

「はいはい」






 ブティックに入ると、由紀さんは店に並んでいる服の中から様々な服を取り出しては僕の身体に当て始めた。ジャケットスーツ、パンツスーツ、サマーセーターにカットソー、スカート等を取り出してはまた戻す。そんなことを何度も繰り返して、挙句ちょっと着替えてみたらと言い出した。

「あ、あの、僕はスカートは……」

「あなたスカート買わないの」

「そんな、穿きませんよ」

「当分女の子のままなんだから、慣れなきゃだめよ。ほら、これなんかどお」

 由紀さんは僕の腰にミニスカートを当てながら言う。

「ちょっとそんな、短すぎます。恥ずかしいですよ」

「あら、みゆきちゃんはかわいいしスタイルも良いんだから、もっと自分をアピールしなきゃ駄目よ」

 由紀さんは笑いを堪えながら言い放つ。

「そんな必要ありません。僕はおとこ……」

「今は女の子でしょう。違うの」

「うっ……」

「じゃあもっとかわいい服にしてみましょうか」

「先輩〜、これなんか良いんじゃないですかぁ」

 結局摩耶ちゃんも買い物に一緒に付いてきている。

「うん、そうね。ほら、とし、じゃなかったみゆきちゃん、これちょっと試着してみたら」

 それはフリルのたくさん付いたピンクのワンピースだった。由紀さんが手に取ったハンガーに掛けられたワンピースの裾が、ひらひらと柔らかそうに揺らめいている。

「も〜、二人とも僕をおもちゃにしているでしょう」

「あら、わかった」

「あ〜! やっぱり」

 駄目だ、この二人にはついていけない。

 は〜〜〜





 ブティックではあーだこーだと由紀さんと摩耶ちゃん、それに途中からは女性の店員も加わって何着もの服に着替えさせられ、そのうちのいくつかを買わされてしまった。結局最後にフィットルームを出た時僕が着ていたのは、淡いレモン色のノースリーブのミニのワンピースと同じ色のジャケットのコンビネーションスーツだった。店に入った時は生足にサンダル履きだった下半身は今、浅いベージュ色のパンティストッキングに包まれ、そして靴も会社のサンダルからパンプスに穿き替えていた。

「まあ〜、とってもお綺麗ですよ」

 店員が僕のことを熱意を込めて褒め上げる。

 綺麗……きれい……キレイ……。

 綺麗という言葉がぐるぐると僕の心の中を駆け巡った。そして嬉しいような誇らしいようなどきどきとした快感が込み上げてくる。

 何で綺麗って言われるのがこんなに心地良いんだ。

「ね、それが一番似合ってるわ。それ着て帰りましょう」

「素敵ですぅ〜」

「そ、そうですか?」

 鏡の前でくるりと回ってみる。

 うん、なかなか良いな、これ……はっ!

 ・・・・・・・・・・・・

 何やってるんだ……僕って……。

「ほら! なに落ち込んでるのよ。さあ、あと替えの下着も買っておきましょう」

 それから僕は再び三人が巻き起こす喧騒の渦の中に巻き込まれてしまっていた。

 




 それから数枚のショーツとブラそしてパンティストッキングを買わされた。

 結局何袋かの紙袋を抱えて店を出ると三人一緒に駅に向かったのだが、僕にはそのまま由紀さんのマンションに行くつもりはなかった。

「じゃあ僕はここで」

「あら、うちに来ないの」

「か・え・り・ま・す」

 このまま由紀さんのマンションに行ったらどんなことになるのやら。僕が強い口調ではっきり由紀さんに断ると、彼女は以外やあっさりと引き下がった。

「そお、残念ね。じゃあ摩耶、あなた今夜うちくる?」

「はい!」

 摩耶ちゃんが嬉しそうに返事する。

「じゃあ俊行さん、ここで。あ! それから夜道は気を付けるのよ」

「え?」

「痴漢」

「げ!」

「それからこれ」

 由紀さんが僕が持っている紙袋の中に小さな包みを突っ込んだ。

「なんですか」

「携帯用の化粧品セットよ。明日出勤する時はちゃんと化粧して来なさい。確か俊行さんってできるわよね」

「そ、そんなぁ」

「うちくる?」

 由紀さんがにやりと笑う。

「い、いえ、止めときます」

「ふふふ、じゃあまた明日ね」

 由紀さんは摩耶ちゃんを連れて、そのまま改札の中に入っていった。

 うーん、やっぱり一緒について行ったほうが良かったのかな。

 ちょっぴり後悔しながらも、一人になった僕は自分のアパートに向かった。

 幸い痴漢には遭わなかったものの、電車の中で、街の中で何だか体中に視線を感じる。

 そう、僕は見られていた。

 それはほんの0,1秒程度かもしれないけれど、確実にあちこちから何人もの男が僕にちらっちらっと視線を向けていた。

 僕が睨み返すと皆慌てて視線を外すんだが、しばらくするとまたこちらを見はじめる。

 ううう、何か嫌だな。

 絡み付く視線に少しばかりの心細さを感じながら、僕は早足でアパートへの道を急いだ。






 ばたん。

「は〜」 

 ようやく家に戻り後ろ手にドアを閉じ、僕は安堵のため息をついた。

 全くなんだってこんなことに。それにこの心細さは何なんだ。

 ゼリージュースの開発を始めてからいろんな女の子になったけれど、こんな気持ちになったのは初めてだ。

 電車の中、駅からの帰り道、男たちの視線を感じて何故かやけに心細かった。そしてアパートの鍵を開け、中に入った瞬間本当に心の底からほっとしていた。

 ベッドにどかっと座り込むと、歩き慣れないパンプスで歩き疲れた脚をベッドに座ったままぐっと伸ばしてみる。小さな足、ブティックで測ったら22.5cmしかなかった。そう言えば足の形も違う。こんな細かいところまで改造されているんだ。

 全くこれも高原社長のこだわりと言うべきなんだろうか。

 着ているミニのワンピースの裾からすらりとした伸びた自分の脚がやけに眩しい。思わずぺたぺたと手の平で太股に触ると、柔らかくも張りのあるその感触が僕の手に跳ね返ってくる。そして目の前のスカートの裾に目がいってしまうが……。

 この下にあるのって。

 ゆっくりとスカートの裾を捲り上げると、パンティストッキング越しに自分が穿いているかわいいショーツが目に飛び込んできた。

 これって、僕自身が穿いているんだよな。

 そののっぺりした股間を手の平で撫でてみた。

 やっぱり無いよなぁ。

 男なら手を使わなくても股間に力を入れるだけでそこにあるものをぴんぴんと動かすことができる。でもいくらりきんでみても、ソコに僕のアレの感覚は全く感じられなかった。そして行き場を失ったりきみはますます僕を不安にさせる。

 不思議なことに、今の僕には積極的に女性の快感を味わおうという気持ちが涌いてこなかった。赤色のゼリージュースや青色のゼリージュースを使った時は、あんなに興奮してどんどん自分を見失っていったのに。

 こんなに冷静に分析できる自分自身にむしろ驚きを感じてしまう。

 でもこの違い……もしかしたら赤色や青色のゼリージュースを改良する時に応用できるかもしれないな。

 ベッドに両手をついて天井を見上げながらふとそんなことを思いついていたけれど、いつまでもこの格好のままでもいられない。

 さて、着替えようか……でも……そうだ、その前にシャワーを浴びよう。

 ようやく長い1日が終わろうとしていた。

 無性にシャワーを浴びたくなった僕は、買ったばかりの紙袋の中から新しいショーツとブラジャーを取り出すとジャケットを脱いだ。そして背中のファスナーを下ろしワンピースを脱ぎ、パンティストッキングをするすると下ろす。

 下半身に解放感が広がっていった。

 それから身に付けているブラジャーとショーツも脱いですっかり裸になった僕は浴室に入ると、はめ込まれた目の前の鏡をじっと見詰めていた。

 鏡に映った僕、それは見知らぬ女の子。

 アイドル顔負けのかわいい顔とその見事なプロポーション、大きくて張りのある胸、折れそうな位細くなったウエスト、ふくよかに張り出しだお尻。そんな自分を上から下までゆっくりと見詰めていると何となく変な気持ちになってくる。

 本当にこれが僕なのか。

 鏡を正面にして椅子に座ると、閉じていた脚を少しどきどきしながら少しずつ開いてみた。

 鏡に写し出される僕の股間には、勿論僕のペニスはない。

 社長にその奥深くに押し込められてしまった跡には女性特有の溝が刻まれていた。

 由紀さんも言ってたけれど、この奥ってほんとどうなっているんだろう。

 外見だけ形が変わったのか、それともこの奥には……。

 ごくり

 次の言葉を心の中に思い浮かべ、僕は生唾を飲み込んだ。

 この奥には子宮や卵巣ができている?

 指先をそっと溝の上に添えてみると、そこはふにゅふにゅと柔らかかった。

 以前女の子になって触った時のものとよく似た感触だ……。

 添えた指先でそこをゆっくりと擦ってみる。

 うっ、何か……いい。

 鏡に自分の股間を映し出したまま、僕はその溝を両手を使って広げてみた。

 そこに出来た裂け目の中には小さな突起……これって僕のペニスの成れの果てなのか……そして生々しいピンク色の肉襞が出来上がっていた。

 ぴらっとした肉襞をさらに掻き分けてみる。

 ごくり

 これ……。

 そこにある、奥深くへと続く穴に指をぐっと差し入れてみる。

 つっ、いたっ!

 いけない。

 指をぺろりと舐め、再びゆっくりと押し入れてみた。

 唾液で濡らされた指先は、今度はその中にずぶずぶと潜り込んでいった。

 僕の指が……僕の中に。

 ゆっくりと出し入れしてみる。

 あ……ん……。

 出し入れを繰り返していると、少しずつそこから心地よさが広がっていく。

 い……いい……。

 少しずつ指を動かす速度が上がってく。

 あ、ああ……く、くうう。   

 声にならない声が僕の口から漏れる。そしてソコは唾液とは違う湿り気を帯び始めていた。

 何か、もっと、あ、あうぅ……そ、そうだ、確かあれがあった筈。

 僕は指を抜いて立ち上がると、浴室外の棚に置かれていたものを手に取った。

 それはアパートでゼリージュースの試作をするのに使っていた洗い残した試験管。

 これならどうだ。

 僕は再び鏡の前に座り込むと、試験管をぺろぺろと舐めて唾液で濡らした。そして大きく両脚を広げると、その丸まった先を股間に押し当てた。そしてゆっくりと力を入れていく。

 試験管は股間の中にぐーっと潜り込んでいった。

 うっ……うう……うぁひっ、こ、ここ。

 すっかり潜り込んだ試験管の先が一番奥の何かに当たるのを感じた僕は、今度はゆっくりとそれを抜き出してみた。

 15cmくらいか、いや20cm?

 浴室の蛍光灯の灯りを反射してきらきらと光っている濡れた試験管をじっと見詰めて、僕はほーっとため息を付いた。

 やっぱりこの奥には……僕には子宮があるんだ。

 自分の下腹を手の平で撫で、再びため息をついた。
 
 だが、その一方で試験管で刺激された僕の芯はずきずきと疼き始めていた。

 も、もう一度。

 再び粘液の絡まっている試験管を股間に押し当て、そして押し込んでいく。

 するとさっきよりスムーズに試験管はその中に潜り込んでいった。

 すっかり入り込んだそれをゆっくりと出し入れしてみる。

 う……は……い、いい。

 僕の中の試験管は、指とは違う存在感で僕の中をかき回した。

 あ、あは……う、うっうっうっ、ううう、うあっ。

 裂け目の中からは何時の間にかくっきりときらきらした液体が漏れ始めていた。

 あ、ああ、あああ、

 ずっずっずっ

 あ、いい、いいよぉ

 言いようの無い切なさを感じながらも、僕はそこから広がっていく快感に何時の間にか翻弄され始めていた。

 ずずっずずっ

 う、あ、ああ、あん……あ、ぃ、ぃぃ、ぃく、あああ、いく、いく、いくう〜

 体の中で何かが昇りつめていく。

 そしてそれが最高に昇りつけた瞬間、体中を電流のようなものが通り抜けていった。

 思わず歯をかみ締めて仰け反る僕。

 あ、ああああああああ。

 そして手を離したその瞬間股間に飲み込んだ試験管は一気に外に弾き出されると、そこからは勢い良く液体がほとばしり出ていた。

 ぷっ

 カラン

 ぷしゅ〜〜〜







 はぁはぁはぁ、はぁはぁはぁ、はぁはぁはぁ

 それから暫らくの間、僕は股を力無く広げたまま立ち上がることもできずに余韻に浸り込んでいた。でも興奮が収まっていくに従って僕の心の中に少しずつ空しさが広がっていく。

 何やってるんだ……僕って……。

 広げた脚の間を呆然と見詰める僕の目の前で、床に落ちた試験管がカラカラと転がっていた。







……今回のお話はここまでといたします。白色のゼリージュースは、やはり僕の身体を中身まで女の子に変えてしまったようです。でも由紀さんのおかげで僕は希望を取り戻すことができました。翌日から元に戻る為の方法を考えていくことになりますが、果たして僕と由紀さんはどんな方法を思いついたのでしょう。
 その話はまた次回。

 ゼリージュース!外伝(4)「気分はトロピカル(中編)」 ・・・終わり



                               平成16年4月16日脱稿  




後書き
 お待たせしました。前編から3ヶ月振りですね。第1話からだともう足掛け2年近く書き続けていることになりますが、さて「ゼリージュース!外伝」いつになったら完結するのやら。
 第4話「気分はトロピカル」は、どうやら白色のゼリージュースの話で終わってしまいそうです。ということで、恐らく次の後編を書いた後は、第5話に突入することになると思いますんで。まあ最後まで気長にお付き合いください。 
 それではここまでお読みいただきました皆様、どうもありがとうございました。そして次回をお楽しみに。
 
 toshi9より
 感謝の気持ちを込めて。





「ゼリージュース!外伝」
作品予定(あくまでも予定ですが)

第1話   始まりはハーブと共に(Ver.1.02)  (プロトタイプ・変身)  2002年 7月12日脱稿
第2話   いちごの誘惑                 (赤・変身)  2002年 7月27日脱稿
インターミッション  プリティフェイス/ラブボディ (プロトタイプ・部分変身) 2002年 8月25日脱稿
第3話   今宵ブルーハワイを御一緒に(前編)  (赤・変身)   2002年10月 2日脱稿
       今宵ブルーハワイを御一緒に(中編)  (青・憑依)  2003年 1月13日脱稿
       今宵ブルーハワイを御一緒に(後編)  (青・憑依)  2003年 6月21日脱稿
第4話   気分はトロピカル(前編)          (白・改造)  2004年 1月18日脱稿
       気分はトロピカル(中編)          (白・改造)  2004年 4月15日脱稿
       気分はトロピカル(後編) 
第5話   ??? 











inserted by FC2 system