前回のあらすじ

 会社からの指示で、共同開発飲料の打ち合わせの為に高原ビューティクリニック本社に出掛けた私こと小野俊行は、そこで自分が作った「ゼリージュース」によって女性の体(見かけだけ)になってしまうという驚愕体験をすることになってしまう。しかし、出向社員として高原側開発担当の柳沢由紀さんと共にさらに改良研究を進めようと決意を新たにするのであった。



ゼリージュース!外伝(2)「いちごの誘惑」

作:toshi9



6月15日:今日から出向社員

「じゃあ今日からヨロシクね、俊行さん」
「ええ、改めてよろしくお願いします、由紀さん。でもどこから手を付けたものか、問題点って結構多いと思うんですけど」

 あれから1ヶ月が過ぎた。正式に高原ビューティクリニックに出向となった僕は予定通り柳沢由紀さんと開発チームを組むことになり、早速最初の打ち合わせを行なうことにした。
 こっちは初めての共同作業に結構緊張していたが、彼女はどこか楽しんでいるようだ。
 そう言えば初めて女性の、中田恵利華さんの姿になった時もそうだった。一方的なペースで遊ばれてしまったし、もとに戻る方法がわからずに焦っていると「いいんじゃない、女の格好だといろいろ楽しいわよ」なんて無責任なことを言われてみたり。
 結局あの時は何がなんだかわからずじまいのまま翌日には元に戻っていた。ほっとはしたものの、とうとうアパートに戻れずじまいだったんだ。

「そうね。じゃあ夕方になったら、下に降りてもう一度試してみましょうよ♪」
「えー!またですか」
「だって、あなた今の問題点って整理できているの? あと数回試して現在の問題点を全て洗い出してみなきゃ駄目じゃないの」
(……思う様に元に戻れないこと自体大きな問題点だと思うんだけど)
そう思いながら、由紀さんにちょっと振ってみた。
「由紀さんは試さないんですか?」
「あら、怖いの」
「問題をすり替えないで下さい」
「こういうことは殿方が率先しなくっちゃ、ね。それに客観的な情報の解析は私の方が得意だと思うわよ」
「まあ、確かに私は試作開発が専門ですから。……わかりました。じゃあやってみますか」


 前回と同じようにゼリージュースを飲んだ後パンツ1枚になってエステ台に横になると、すかさず由紀さんが僕の身体にハーブオイルを塗り始める。
 しばらく横になっていたけど、ふとさっき言いかけたことを思い出して、僕は由紀さんの方に向き直った。
「由紀さん、さっき言い忘れてたんですけど」
「え、何?! ダメよ」
(あ、しまった)
 思わず由紀さんを見つめてしまった。
 その時すでにゼリー化していた僕の体は徐々に形をとり戻し始めた。
 でも、前と違う。
 体は少し華奢になっているんだけど男のままだ。息子も今度は元のままだゾ。
 鏡を見ると……あれ、由紀さんじゃないか。
 ということは、顔は由紀さんで体は華奢だけど男……何じゃあ!これは。

「失敗のようね。服を着ていると中身はもとのまま、か。やっぱり見えない部分は駄目なのね。うーん、でもポスターに集中しなければいけないというのはやっぱり問題ね。そうね〜、ま、仕方ないからコレ着てなさい」
 ノートパソコンからデーターベースに失敗事例の記入を終えた彼女から渡されたのは、白のブラウスと濃紺のミニスカート、それに白衣だ。
 由紀さんはにやにや笑っている。
「それ私の替えだから。下着も貸してあげよっか。でも早く確実に元に戻る方法を見つけるのよ」
「い、いえ、必要ないです」
 と言ったものの体が華奢になっているんで、自分の下着も服もぶかぶかだ。
 結局、服とショーツだけ借りることにしたが、ショーツを穿いてみると息子の頭が顔を出しみっともないことこの上ない。由紀さんの顔で真っ赤になりながらも、素早く服を着込むことにした。
 でも、着替え終わってみると、由紀さんと瓜二つになった自分に気がついた。

「じゃあ今日はこのままこの部屋に泊まりなさい。私はこれで帰るけど、当直の摩耶に毛布を持って来させるから。でも変な事しちゃだめよ」
 由紀さんが帰るとしばらくして摩耶ちゃんが毛布を持って入ってきた。
 生駒摩耶、入社2年目だという栗色の髪のかわいい子だ。そう言えば少し潔癖症の気があると由紀さんが言っていたな。
「先輩、毛布持って来ましたよ。……あれ? 俊行さんはどうしたんですか?」
「え、ええ、今日は帰るって」
「うわぁ〜うれしいですぅ。じゃあ今日は二人っきりですね。私もこっちに来ていいですよね」
 完全に僕を由紀さんと間違えているようだ。(髪が短いのに、わからないのかな)
……結局零時近くまで二人で話し込んでしまった。二人だけしか知らないような話題もあったが、適当に話を合わせて何とか変には思われなかったようだ。
 でも、ようやく寝ようかとなった時彼女が「先輩一緒に毛布に入ってもいいですか?」と言い出した。
「だめよ、早く寝なさい」
「ぶー。こんなこと滅多にないんですから・ ・・ ・・・失礼しまーす」
 摩耶ちゃんは強引に潜り込んできた。背中からピタッとくっついてくる。
「先輩、どうしたんですか? 今日は変ですよ」
 首筋に彼女の吐息がかかる。そして背中には、彼女の胸の膨らみが押し付けられる。
(マズイなあ。どきどきしてきた)
 むくっ、むくっと息子が大きくなってきて小さなショーツに圧迫される。段々苦しくなってきた。
 背中を撫でていた彼女の両手は、徐々に左右から前のほうに回り込んでくる。
「ねえ、せ・ん・ぱ・い?・・・???」
 胸に触れた所で、それがピタっと止まった。そして不思議そうにまさぐったかと思うと、彼女は一瞬の間をおいてシュッタと右手を素早くスカートに差し込んだ。そしてショーツの中に入れたかと思うと……握られてしまった。
「ひぃ!これって……先輩そんな趣味があったんですか。不潔ですう」
「違うの、誤解よ。いや誤解なんだ。実は……」
「私先輩のこと見損ないました。ふぇーん」
 話も聞かずに泣きながら毛布から飛び出して出て行く摩耶ちゃんを、僕は呆然と見ているしかなかった。
(あっちゃー、マズッたな。いいんだろうか…でもしょうがないや。……シャワーでも浴びに行くか)


6月16日:もう一度チャレンジ

 朝起きると、僕の身体は元に戻っていた。
 急いで服を着替えて研究室に上がると、もう由紀さんは来ていた。けれども少し疲れているようだ。どうも摩耶ちゃんとひと悶着あったらしい。
 今日は昼間はインターネットでの情報検索と基礎データーの整理、午後は試作を行なっているうちに、いつのまにか業務終了時間が近づく。
「じゃあ、今日も試してみましょうか」
 ゼリージュースを飲んでハーブオイルのマッサージを受けると、彼女は新しいポスターを取り出した。
「さあ、今日はこれよ」
 それはどこで入手したのか……ヌードポスターだった。
(スタイル抜群の娘なんだけれど、顔はバタくさくて余り好みじゃないな。でもこんな女の子の大股開きの写真なんて見たことないな……いいんだろうか。うーん、でもラッキーかも)
 そう思ってポスターに見入ってしまった。いや、ポスターというよりもその中の……

(あ、しまった)
 またやってしまった。
 ついアソコに見入ってしまい顔の方をよく見てなかったようだ。
……結局、今度は顔は自分のままなのに体が写真の女性になってしまったらしい。
 ぴったりと閉じたアソコをそっと左手でなでてみる。
 恵利華さんの姿になった時とは全く違う、じわじわ、ムズムズした感じが体の芯から徐々に沸き起こってくる。
 胸をなでてみる。
 ふわふわと柔らかい感触。
 触ってみる。
 触られているあの感触がよみがえってくる。
 段々アソコが熱くなってきた。
「う、あ、あ、あれ、あれ、……あーん」
「……何やっているの」
「こ、これは、え、えーと……」
「全く、私がここにいるって言うのに」
「……………………」
「ブザマね」
「……………………」
「はぁ〜〜、鏡を見てみなさい」

 そこには首から下だけ女体になった僕が、右手で胸をもみ、左手をアソコにこすりつけている僕がいた。……気持ち悪い、しくしく。


6月20日:おかしな子と出会う

 その後何回かチャレンジしてみたものの、どうしても完全に変身することができない。
「はああ、なかなかうまくいかないなあ。ちっとも先に進めないゾ」
 気分転換と思い、いつもより早めに退社したものの、失敗の数々が頭から離れない。
 夕陽の中、溜め息を尽きながら足取り重くアパートへの帰り道を歩いていると
「お兄ちゃん、どうしたの」
 不意に呼び止められた。
(かわいい女の子だな。10歳くらいかな?)
「ん? お嬢ちゃんは? 僕、会ったこと有ったかな」
「ううん、初めてだよ。何か悩み事? ワタシこういう者なんだけど」
 カード? 名刺? なになに……
「ココロとカラダの悩みお受けします。真……うわあ間に合ってますう!」
 慌ててカードを投げ捨てて逃げ出した。
「ああ、びっくりした。ネット小説の話だと思ってたのに、まじカヨ」
 一方残された少女もぽかんとしていた。
「変なお兄ちゃん。きゃりあうーまんごっこしてみたかっただけなのに……。お母さんからせっかくもらったのに、大事にして欲しいな」
 少女が拾い上げた、僕が投げ捨てたカード=名刺にはこう書かれていた。
ココロとカラダの悩みお受けします。
 真心エステサロンT○C 
 

6月23日:第一回改善検討会

「元に戻る方法はわかりましたけれど、今のやり方はリスクが大きすぎます。もっと安全確実な物にしましょうよ」
「確かにそうね。これじゃ、お客様にはとても使えないわ」
 これまでの失敗事例の中で、トイレに行ったりシャワーを使った後に元に戻っていることから、元に戻るにはゼリーかハーブの成分を体から外に出せば良いということはわかった。
 でも彼女がまとめたレポートにはこう書かれていた。
<飲用後の安定化が難しく、現状では製品化の可能性低し>と。
「何か対策はあるの?」
「ゼリージュースを飲んでからハーブオイルを塗り終わるまでのタイムラグと、形の固定方法が一番の問題だと思います」
「だから?」
「ハーブミックスをゼリージュースと直接混合してみたらどうでしょうか。二つの成分を1本化すれば、飲むだけで体をゼリー化できると思います。経口吸収でも皮膚吸収と同じ効果をもたらす、この仮説が正しければ少なくとも最初の問題は解決できると思います。ただ……」
「ただ?」
「問題があります。ゼリージュースとハーブミックスを混ぜて果たしておいしいのか、おいしく作ることができるのかという点です」
「成算はあるの?」
「こればっかりは試作と嗜好調査を行なってみないと。私にもあのオイルの元のハーブがどんなものなのか全くわかりませんから」
「わかったわ。ハーブ原料は至急取り寄せましょう。後、2つ目の問題はどうするつもり?」
「それについては、アイデアがあります」
「へえ、どういうものかしら?」
「食品として作る場合、ゼリーは温めて溶かして型に流し込んだ後、冷やしながら固めて作るんです。つまり型さえ見つかれば、不安定な視覚と記憶に頼らなくても確実性が飛躍的に増すと思うんです」
「面白いアイデアね。お互いもっと考えてみましょう。来週もう一度具体的な方法について検討してみるということでどうかしら」
「わかりました、やってみましょう」
(よし、少し先に進めそうだゾ)


6月30日:第二回改善検討会

 先週の検討会の後、僕はハーブの調査とエキスの抽出、そしてゼリージュースへの混合試作に没頭していた。
1.取り寄せてもらったハーブ原料には調査の結果、薬機法、食品衛生法違反になるようなものは含まれていない。
2.エキスは熱水抽出法で得ることが出来た。ただし、有効成分が浸出しているのかどうかはわからない。
3.味はまずまずのようだが、どの程度の濃度、比率でブレンドすると効果があるかわからない。
 以上のことを報告すると、彼女はある程度の予感があったのか、こう切り出した。

「あれから私なりに考えて、いくつかの手配をしておきました。それについてちょっとお願いがあるんだけれど、いいかしら」
「はい。何でしょう」
「ハーブ入り飲料の味について、嗜好調査の手配をしました。スケジュールは3週間後の7月22日・土曜日。それまでに有効量が含まれていて、しかもおいしい飲料に仕上げてちょうだい」
「まだゼリーにしなくてもいいんですね」
「バカね、それじゃみんな身体がゼリー化しちゃうでしょう」
「あ、そうか……わかりました。飲料の試作品は何とか間に合わせてみせます」
「じゃあ、この件は21日に最終打ち合わせをしましょう。それまでに試作品を仕上げてサンプルを100本用意してね」
 ひゃ、ひゃっぽん!
「それはちょっときついですよ」
「摩耶を付けてあげるから、頼むわね。サンプル以外の事は私に任せて」


7月21日:調査事前打ち合わせ

「どう、サンプルの準備はできた?」
「はい、摩耶ちゃん有能ですね。おかげ様で間に合いました」
 3週間は本当にきつかったけどハーブ抽出液の有効濃度の計算と味付けの検討を何とか2週間で終わらせると、最後の1週間で所定のサンプル本数を準備することができた。
「じゃあ、明日の段取りを説明するわ」
 彼女の説明によると、冷やしたサンプルと質問用紙等の機材は車で会場の四谷駅近くのコンビニエンスストアに運んでおくそうだ。
「調査はうちのマネキンにやってもらいます。一人は森島奈津樹さん、もう一人は中田恵利華さん、つまりうちのシンデレラコンテストの優勝、準優勝の二人というわけね。ただし」
「ただし?」
「俊行さん、あなた中田恵利華として行って頂戴」
「えー!どうしてですか」
「あら、生の声を聞くのも大事な仕事じゃなくって? それにはマネキンとして行くのが最も良いと思うんだけれど。ということだから、明日は9時にここに来てね♪」
「??また何か企んでません?」
「どうかしら、明日は楽しくなるわよ。うふふっ」


7月22日:嗜好調査当日

 会社に行くと由紀さんはもう先に着いていて、僕が来るのを待っていた。
 早速ハーブエキス入りゼリージュースを飲んで、恵利華さんのポスターを眺める。それは調査サンプルとは別に姿の変わるゼリージュースとして試作してみたうちの1本だ。程なくゼリー化した僕の体は、みるみる彼女の姿を写し取っていった。
「じゃあ、これに着替えて。それから、会場には電車で行ってね」
 彼女から渡されたのは、高原ビューティクリニックのロゴ入りTシャツ、マイクロミニのホットパンツ、キラキラ光を反射するラメ入りのパンティストッキング、かかとの高いサンダル、それに白のブラジャーとショーツとセミロングのウィッグだ。
「これにですかあ〜、ちょっとこれは……しかもこれを着て電車に乗れなんて」
「何言ってんの。これがキャンペーンの時のうちの制服よ。いいじゃない、わっかいんだから」
「ちょっと話がずれてません? そういうことじゃなくて」
「いいからいいから。メイクは摩耶に任せるといいわ。それから奈津樹ちゃんとは会場で合流してね。あと、言葉使いには注意するのよ。私は機材運搬に同行するから先に行くわね」

 うーん、こういうことだったのか。
 しぶしぶ自分の服を脱いで鏡に映った姿を見てみる。恵利華さんの体はやっぱりきれいだ。この顔、胸、足、これがボク自身だなんて、何だかまたドキドキしてくる。
 でも、興奮しないように注意しないと。

 長くなった足にショーツを通し、腰まで一気に引き上げる。股にピタッと貼り付く感触は気分をツーンと引き締める。パンティストッキングをスルスルと引き上げて行く。摩耶ちゃんから「爪を立てないようにね」って注意された。キラキラ反射するパンティストッキングは長い足を一層引き立たせて、とってもセクシーだ。思わずゴクリと生唾を飲み込んでしまう。
 ブラジャーを付けると、Tシャツを頭からかぶってホットパンツを穿く。
 ホットパンツは股下がほとんどなく、長い足をさらに長く見せる。前は邪魔なものが何も無いので軽く横にシワが入っている。後ろは引き締まったお尻をちょっと窮屈気に包み込んでいる。

 衣装を着終えると、摩耶ちゃんにメイクしてもらった。最後にウイッグを被されブラッシングしてもらうと、コンテスト準優勝にふさわしい美貌が完成していた。
 鏡を見ると、思わず抱き締めたくなるほど魅力的になった恵利華さんがいる。

 これが自分だなんて……

((むくっ、むくむくっ))

「イテテテ、いけない!落ち着かなきゃ」
(興奮すると、豆粒大の息子が大きくなるんだよな。行き場を無くした息子が圧迫されて痛い。ここは冷静に冷静に)
 何とか気持ちを落ち着けると、摩耶ちゃんがニコニコこちらを見ている。
「じゃあ恵利華さん、いってらっしゃい」
 彼女はもうボクを恵利華ちゃんとして扱ってくれる。由紀さんから言い含められているようだ。
「ええ、じゃあ行ってきます」
「それから、電車だと山の手線と中央線を乗り継ぎますよね。今の時間チカンが多いらしいんで、気をつけてくださいね」
「ぬぉわにい!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 カカトの高いサンダルは歩きにくかったが、本社を出て渋谷駅に着く頃にはどうにか慣れてきた。
 渋谷駅でホームに上がると、すごい人だ。何とか電車待ちの列の後ろに付いてみたものの、どうにも恥ずかしい。
 横から後ろからちらちら舐める様に視線を浴びているのを感じる。特に足とアソコには圧力のようなものを感じる。
 電車にようやく乗り込むとひどい混みようだ。身動きひとつできないどころか、扉が閉まると体が押し潰されそうだ。
 それでも我慢していると、ふとお尻に手の感触が……
(チカン?)
 最初は遠慮勝ちに手の甲でさわっていたが、だんだん手のひらでさわさわとまさぐり始めた。
 モゾモゾとうごめく指は、プリプリしたお尻の感触を楽しむように揉んでいたが、やがて尻桃の谷間をつたって下へ下へと降りていった。そして足と足の付け根をクイッ、クイッとさすり、さらに股間をくぐって前のほうに廻り込むと、2本の指でソコをゆっくりなぞり始めた。
 何とか逃れようとお尻を左右に振ってみたが、かえってそれがチカンを刺激したらしく、動きが一層大胆になってきた。

(いけない、段々変な気分になってきたゾ)

 股間がムクムクと膨らんできた。でも、小さなショーツとホットパンツに邪魔されて圧迫されるので苦しい。
 それはさっきと同じように強烈な痛みと同時に、ゾクゾクした刺激をもたらす。
「やめてください」
 腰をやや引きながら小さく呟いてみたものの、股下から伸びたチカンの手は遂にはホットパンツのジッパーを開け、中に潜り込んできた。でも、手の動きはそこでピタッと凍り付いてしまった。
 チカンと目が合うと、ニカっと笑い返してやった。
 チカンの顔は、有る筈の無いモノを触ってしまったことに対する恐怖に歪んでいた。

「新宿〜、新宿〜」

 電車が駅に到着するとチカンは脱兎の如くホームに飛び出し、そして走り去ってしまった。
(危なかったなあ。でもちょっと気持ち良かったかも)
 その後は何事も無く、無事四谷駅に着くことが出来た。そして指定されたコンビニエンスストアの前に行くと、僕と同じ格好をした女の子が待っていた。
 近づいて行くと、彼女の方から声をかけてきた。

「俊行さんかい?」
「へ? あなた森島奈津樹さんですよね」
「あ、ああ恵利華ちゃんだったね。失敬」
?? 何だこの言葉使い。それに僕のことを知っている?
「あなたはいったい……」
「まあ、話は後にしようぜ。まず先にアンケートを取っちまおうよ」
 彼女はてきぱきと準備を終えると、道を歩くOLたちに声を掛け始めた。

「さあ、おいしいお茶ですよ〜、モニターにご協力くださ〜い」
 それは僕と話しかけてきたのとはがらりと変わった、ごく普通の女の子の口調だった。
(僕もやらなきゃな)
「お願いしま〜す、ぜひ試してみてくださ〜い」
 試飲カップをトレイに乗せ、道行くOLたちに声をかける。
 何人かが僕たちをちょっとうらやましげに見ながらも、アンケート用紙と飲料のサンプルを受け取るとコクッと飲んで、首を捻りながら設問に答えてくれる。
 約2時間で調査は終えることが出来た。

「はぁー、やっと終わった。緊張したな。でも評価はまずまずのようだゾ」
 アンケート用紙を集め終えてパラパラめくっていると、奈津樹さんが声をかけてきた。
「ご苦労さん。あんたもその格好でよくがんばったね。トシユキさん♪」
 また言葉使いがおかしい。
「あなた、一体??」
「俺かい? 芳雄っていうんだ、実は男さ。俺の作ったPPZ-4086という薬でこの女の子に憑依しているんだ」
「憑依? そんな非科学的な」
「あんたの存在だって充分非科学的だろ」
「…………」
「とにかく暑いから、ちょっとそこの喫茶店に入ろうよ」
 2人連れ立って、隣りの喫茶店に入った。
 見た目にはお揃いのTシャツとホットパンツを着た美女2人連れだが、中身は……男同士……。

「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
「アイスコーヒー2つ」
 芳雄?と自称している奈津樹さんはエプロンドレスのかわいい制服を着たウェイトレスに注文を出すと、こちらに向き直り話し始めた。
「由紀さんに頼まれてね、俊行さんと打ち合せしてくれって」
「????」
「俺は高原さんのところと技術アドバイザー契約をしているんだ。虹男さんのハーブミックス・ダッシュセブンと、あんたのところのゼリージュースを組み合わせてみたら面白いぜと由紀さんに話したのはこの俺さ」
「…………」
「俺は他人に乗り移ったり、変身するアイテムを研究するのが大好きなんだ。ちょっとこれを着けてみな」
 奈津樹さん(芳雄さん?)が取り出したのはコンタクトレンズだった。
 不思議に思いながらも、両目に着けてみる。
「よし、それじゃ俺のココをじっと見てみるんだ」
 彼女は自分のホットパンツの足と足の付け根、つまりアソコの部分を指差す。
 言われるままにアソコをじっと見ていると、自分の小さな息子が段々痒くなってきた。
 太股をこすり合わせながらもじもじしていると「今痒いだろ。もう少しで収まると思うから、もうちょっとガマンな」とアドバイスされた。
 確かに暫くすると痒さはなくなってしまった。

「終わったかな、どれどれ?」
 向かいに座っていた奈津樹さんは僕の隣りに座り直すと、そっとホットパンツに小さな手を差し込んできた。
 細い指を段々下に降ろしていくと、それをあるところから僕の中に入れてきた。
「あ、あれ、あれ……なんで?……あ、ひぃ、あ〜ん」
 そう、そこには女性特有の窪みができていた。刺激を受けて、体の奥からジワッとしたものがこみ上げてくる。
「おっと、こんなことろじゃまずいかな、涼しんだら帰ろうぜ」
 彼女は唐突に手を抜き出すと向かいの席に戻り、少し濡れているように見える指を丁寧にティッシュでふき取った。
「お待たせしました、アイスコーヒー2つですね。以上でご注文の品はお揃いですか」
 さっきのウェイトレスがアイスコーヒーを持って来た。しょうがないのでアイスコーヒーを飲み終えると、二人で電車に乗って本社に帰ることにした。
 店の外に出ても、中途半端に刺激されたままなので、何となく腰がフワフワした感じだ。
 新宿で山の手線に乗り換えると、電車はまたまた満員……全く。

 乗り込んでしばらくすると、またサワサワとお尻をさわる手が……
 うん? この手つきは?
 手が股の間を這い上がり、アソコを2本の指でなぞっていく。
 うーん体が段々熱くなってきた。アソコがまたムズムズしてきたゾ。
 ジワッとしたものがまたこみ上げてきて……ちょっとお漏らししたようにアソコが湿っぽくなってきた。
 膝が震えてきた。このままでは立っていられなくなりそうだ。
「やめてください」
 抗議しようとチカンのほうに向き直ってみる。と、そこにはどっかで見たような顔が……
「あれ、あんた」
 とたんにうごめいていた手が凍りついた。
 ニカッと笑ってみせる。
 チカンの顔は凍りついたように引きつっているが、徐々に恐怖の色を帯びてきた。
「代々木〜代々木〜」
 ドアが開くと同時に「う、うわー」と叫んで逃げ出した。
「失礼なやつだな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 2人で渋谷の本社に戻ると、2階の研究室ではなく地下の準備室に入った。
「さてっと、何から話そうか」
「このコンタクトレンズって何なんですか」
「見つめた相手のその部分を自分の体にコピーできるんだ」
「なる程、それで・・か。スゴイですね」
「へへへ、本当にそう思うかい?」
「ええ、本物だっていうのはもう実感してますから。で、ゼリージュースの件ですが」
「うん。今日の結果はどう判断する?」
「味は考えていた以上に良さそうですね。自分で飲んで、これなら大丈夫だっていう予感はあったんですが、確信に変わりました。ハーブって飲み難いものが多いんですが、お茶としてこれだけ良い評価が出ていれば大丈夫だと思います」
「じゃあ、後は型の問題をクリアすればいいんだね」
「はい。それについてですが」
「人のカラダという型にハメルという考え方は面白いね」
「あ、知ってたんですか。由紀さんから聞いたんですか?」
「ああ、もしかしてコンタクトが何か参考になるんじゃないかと思ったんだが」
「僕は、ハーブのポリフェノールと他のポリフェノールが組み合わさると、色々な効果が出てくるんじゃないかと思うんです。だから手始めに、いろいろなフルーツの果汁を組み合わせてみようかと思って」
「いいんじゃない。手伝えることがあれば協力するから、遠慮なく連絡を寄越していいよ。まあ、まだ現役高校生なんであまり時間は取れないけどね」
「え〜! あんた、高校生」
「そういうこと。じゃあな」
 そう言うと、彼女はガクッと俯いた。しばらくすると「うーん」と眠りから醒めたように顔を上げた。
「あれ、あたしどうしたんだろ。早く四谷にいかなくっちゃ。うん? 恵利華ちゃん? あれ、ここ本社なの? どうして??」
 混乱している奈津樹ちゃんに、調査はもう終わったことを説明すると、記憶が全く無い彼女は半信半疑ながら帰って行った。
 憑依って言ってたな。芳雄さん抜け出したんだな……
 そして、長い1日が終わった。


8月7日:いちごの誘惑

 芳雄さんとの打合せの後、いろいろなフルーツをミックスして効果を試してみた。
 そうすると仮説が正しいどころか、実に面白い作用をすることがわかった。
 組み合わせによって効果が違うのだ。
 組み合わせの妙は追々話すとして、当初の「ゼリー化した体を人という型にハメル」という目的を叶えてくれたのはいちごの果汁だった。
 そして、今日はその実験を行なう日だ。
 2階の研究室で待機していると、由紀さんから連絡が入った。

「どう? こっちは準備できたから下に降りてきて」
 地下の準備室に降りると、エステ台に1人の女の子がすやすやと寝ていた。
「あ、恵利華ちゃん」
「ええ、本人を見るのは初めてかな? 今日は来てもらったのよ。ちょっと寝てもらっているけどね、ふふふ」
 由紀さん、それはちょっとヤバイんじゃ……
 寝ている恵利華ちゃんが着ているのは普段着なんだろうか、薄黄色のノースリーブのタンクトップに白のミニスカート、生足だ。足元のほうに回ると……白いショーツが見えそうだ。いや見えているゾ。

「さあ始めましょう」
 由紀さんの合図に意を決してパンツ1枚になると、赤く色づいたゼリージュースを飲む。
 それは甘酸っぱいイチゴ味。
 ゼリーがツルッツルッと喉を通っていく。その感触はいつも心地よい。
 全部飲み干してじっと待つ。
 5分程経つとフワフワした感覚を覚えるようになってきた。
 10分経つと体が完全にゼリー化していた。
 由紀さんのほうを振り向いてみる。でも何も起こらない。うん安定しているな。
「じゃあ、第二段階よ」
 薄ピンクの透明ゼリーと化した体になった僕は、パンツも脱ぎ去ると恵利華ちゃんに近づいていった。
 エステ台に乗り、彼女の体をまたぐように立ち上がる。
 そしてゆっくり、彼女の体に自分の体を上から重ねていく。
 すると、重ねたところから染み込むように自分の体が彼女の中に入っていった。
 両足、腰、お腹、胸、両腕……徐々に入っていく。
 最後に頭を彼女の頭に突っ込む。
 その瞬間は目をつぶってしまったが、何の感覚もない。
 数を数える。1、2、3、4・・・9、10 うん、もういいだろう。
 起き上がろうと頭の中で考える。両腕に力を入れ、体を持ち上げる。
 頭、胸と彼女の中から出る。腕を差し出すと彼女の腕と離れる。

「よいしょっと」
 立ち上がって腰を抜き、足を出してしまうと、完全に恵利華さんから離れる。そして台から降りると、透明だった体は徐々に肌色を取り戻し始めた。
 それと共に足がグーっと伸び始め、腰が高い位置に持ちあがって行く。そしてグッグッグッと絞り込まれていく。
 胸がムリムリと持ちあがって行き、最後に乳首がピンと持ち上がる。
 両頬に手をやると、あごがほっそりと小さくなっていくのが解る。髪は肩より下まで長く伸びている。
 手を足と足の間、つまりアソコにあてがうと、ペタッとしているが指でなぞると縦にスッとスジが走っている。中指をスジの中にそっと入れると、そこには窪みが。ツツッと指でこすると、うーん奥からジワッとこみ上げてくるものがある。
「どうやら成功のようね」
「ええ、今度は完璧ですね。ヘッヘッヘッ僕は恵利華ちゃんになったんだ。この体は全部僕のものだ」
ポカッ!
「何冗談言っているの」
「す、すみません。一度言ってみたくて」
「全く何処で憶えたんだか、俊行さんこの3ヶ月で少し性格変わったんじゃない?」
「こういうことを毎日やっていると、もっと女性を楽しみたくなるじゃありませんか」
「何なら教えてあげましょうか」
「え、……まぁ」
「じゃあコレが終わったらウチに来ない」
「良いんですか」
「ふふっ、私、女性になった男の人がどんな風に女を感じるのか、前から興味があったのよ。だからこのプロジェクトを社長に提案したの。最初に俊行さんに会ったとき、いけるんじゃないかと思っていたけど……楽しみだわ」
 僕は裸のままだった。それは恵利華ちゃんの姿で……そしてこれから何が起こるのか、内心わくわくしていた。

……今日の話はここまでといたします。
 こうしてゼリージュース(赤)が遂に完成しました。でもこの後さらなる苦難と快楽?が待っているなんで、この時は知る由もなかったのです。
 その話は、また次回。


ゼリージュース!外伝(2) ……終わり




後書き

 お待たせしました。ゼリージュース外伝(第2章)ようやく書き終えることができました。
 第2章は、この外伝全体の要である開発の話が中心なので気合を入れて書きましたが、少しエピソードを詰め込みすぎたかもしれません。もう少し短くまとめたかったのですが、思ったより長くなってしまいました。でも自分が書いてみたかったことは取り敢えず書けたと思います。tiraさんにお断りして芳雄クンにもゲスト出演してもらいましたが、いかがでしたでしょうか。ちょっとイメージと違うのかなと思えるのは、セリフとキャラクターが合っていないからかもしれません。ちょっとした表現でキャラを立たせるのって難しいですね。(tiraさんすみません。でもありがとうございました。)
 外伝はまだ続きます。真面目だった俊行クンがだんだんこわれてきているような気がして、作者としても少し心配ですが、これから(青)(黄)にからむエピソードがあります。そして、本編(赤)で少し述べられていますが、俊行クンがどのように快楽に溺れ、立ち直るのか。
 ただし、サブタイトル以外実はまだ何も考えていないので、話がどう流れていくか今の私にはわかりません。次回もまた少し先になると思いますが、よろしくお願いします。
 それでは、ここまでお読みいただきました皆様、どうもありがとうございました。

toshi9より
感謝の気持ちを込めて




作品予定(あくまでも予定ですが)

第1話 始まりはハーブと共に (プロトタイプ)    2002年7月12日脱稿(Ver.1.02) 
第2話 いちごの誘惑 (赤・変身)           2002年7月27日脱稿 
第3話 今宵ブルーハワイを御一緒に (青・憑依)
第4話 気分はトロピカル (黄・入れ替わり)













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