その日。絵理衣(えりい)は自分の部屋の床に、男の腕で押し倒されていた。
 今日は彼女の恋人である、純矢(じゅんや)の誕生日だった。彼女は、純矢の誕生日プレゼントに自分の初めて――処女をあげると約束していたのであった。
 お互い高校二年生。年頃である純矢の興奮は頂点に達していた。
 シャワーをあびてきた彼女が乙女の身を隠すのは、体に巻きつけた、たった一枚のバスタオル。豊満な胸と、欲情を掻き立てる股間を、ギリギリの位置で隠すことができるサイズの布きれであった。
 だがそれは、狼と化した男から身を護るにはあまりにも頼りない楯(たて)にすぎなかった。むしろその楯は逆に男の欲情をわき立たせ、最後の砦(とりで)を貴方(あなた)のその手で奪い取って……と暗にうったえているようなものだった。
 あらがいようもない欲情にかられ、絵理衣を床に押し倒した純矢は、バスタオルに指をすべり込ませると、乱暴にはぎ取った。
 絵理衣の裸体が露(あら)わになった――その瞬間……純矢は、眩暈(めまい)に襲われた。

 ―――
 ――
 ―

 確かに絵理衣を押し倒したはずだった。
 純矢は朦朧(もうろう)とした気分に襲われながらも確信をもってそう思った。
 ところが、一瞬めまいに襲われたあと、気がついたら、目の前にもう一人の自分がいて、しかも自分が床に押し倒されていた。
 目の前の――自分を押し倒しているもう一人の自分も、やはり驚いている様子だったが、それもわずかなあいだで、すぐに状況を理解できたらしく、その後は余裕のある表情をした。口角(こうかく)にわずかな笑みさえ浮かべはじめている。
「やったあ! 効果がなかなか出ないから、映美(えいみ)にだまされたとおもっていたんだ」
 もう一人の自分が言う。その声も、男の……自分の声だった。
「いったい、何が起こったんだ!?」
 純矢は、そう口にするのが精一杯だった。
 そして彼は……自分の発した声が、女の高い声になっていることに、ふたたび驚いた。
 純矢の背中に当たる床はひんやりとしていて、やたらと冷たく感じられた。




ワケありゼリージュース!3 
「お誕生日プレゼントはわたし“?”編」

 作・JuJu




 放課後の学校の教室で、ふたりの女の子が会話を楽しんでいた。
「それでねー。純矢がねえ……」
 絵理衣が言う。
「また彼氏の話ですか……」
 映美が応える。
「だって、純矢ってステキなんだもの。ちょっと気が弱いのがたまにきずだけどね。
 映美も彼を作ってみなさいよ。あたしのトキメキがわかるようになるから」
「はいはい」
「じゃ、話の続きは、帰りにシエスタにでも寄ってじっくりと……」
「あっ、今日は無理です。早く家に帰りたいんです。ちょっとやぼようがありまして」
「そんなこといって、昨日もおとといも、さっさと家に帰っちゃったじゃない。つきあい悪いよ、最近」
 絵理衣は親友の不義を責めたてた。
「……まさか映美にも彼氏が出来たとか?
 ――なんてね!」
 絵理衣は冗談まじりに言ったつもりだったのだが、指摘された映美の顔が、みるみる赤くなってゆく。
「ん? 映美……?
 って、まさか……。本当に彼氏が出来たとか?」
 おどろいていた絵理衣は、自分のこめかみにひとさし指を当てると、深刻そうに目をつむって首をふった。
「そうだよね。あたしなんかよりも、すこしでも彼氏と一緒にいたいよね。
 あたしだって彼氏がいるのに、できるだけ映美との都合にあわせているのに。
 女の友情なんて紙よりもうすい、女の友情は男ができたらおわり、っていうのは本当だったんだね」
「ち、ちがいます! 相手は恋人なんかじゃありません!」
「あたしは彼氏ができても、映美との友情を大切にしてきたというのに、この仕打ち。
 あ〜あ。映美との友情もここまでですか」
「だからそんな目で見ないで下さい。そんなんじゃなくて、絵理衣のことはいまでも友達だと思っています」
「それでそれで、相手はどんな人?
 かっこいい? 背は高い?
 もうエッチはした?
 教えなさいよ」
「誓って絶対に恋人なんかじゃない!!」
 声をはりあげる映美を、絵理衣はうたがいの目(まなこ)で見つめる。
「ほんとぅ〜? あたしの女の勘が、映美に彼氏ができたってささやいているんだけどなぁ〜」
「……。
 だからそんな目で見ないで下さい。わかりました、白状します。
 たしかに絵理衣のいうとおり、自宅に性交渉をする相手が待っていることは本当です。
 ……性交渉の時の、男の人の……アレの快感が……やめられないというか……やみつきになるというか……」
「エッチなことをすることだけが目的なの!!?
 ……なるほどね、相手はセックスフレンドってわけだ。
 やるわねー。映美がそこまで進んでいるなんて思わなかった。
 それで映美は、男の人のアレの快感にハマってしまったと」
 映美は答えず、ただ顔を真っ赤にして伏せている。
「これはこれは。カタブツだとおもっていた映美さんに先を越されるとはね〜。
 まあ、こういうのは、まじめな人ほど、ずぶずぶとはまるものだってきいたことがあるけれど……。
 よし、決めた! あたしも彼氏に処女をあげる! もうすぐ純矢の誕生日だしね。誕生日プレゼントとして。
 あたしの希望としては、エッチの時は雰囲気を大切にしてほしいかな。やっぱり女の子だし……」
「そ、そんな軽々しく、女性の大切なものをあげるとか決めるのは……!」
「セフレを作って、男のモノの快感におぼれている映美にいわれたくないわよ。
 それに、カタブツの映美がそこまでハマるってことは、男のアレってあたしが考えているよりも気持ちいいものなのかもしれないし」
 絵理衣は映美に顔を近づけて、話を続けた。
「それでそれで、あいてのひとはどんなひとなのよ?」
 映美はまっかな顔で、周辺を見渡した。
 放課後。教室には、映美たちのほかに女子生徒が数人しか残っていなかった。残った子たちは固まって、なにやらおしゃべりに夢中だった。映美は自分たちの会話が聞かれていないことを確信してから答えた。
「あいては……。やっぱり、言わなくちゃだめですか」
「教えてくれなくても良いもんね。そんな、男のモノを入れられてよろこんでいるような淫乱娘の相手なんて、いずれあたしが暴き出してやる」
「わかりましたから。ストーカーまがいのことをはじめるのはやめてください。
 それにわたしが男の人のモノを入れられるのではなく、わたしが男の人のモノを入れているのですが……」
「え? え? え〜っ!?
 それって、映美が男のアレみたいなモノを付けて男に入れているってこと? あたしもよくしらないけれど、それってSMとかいうやつ? 本当に進んでいるわねー」
「あああ……そうじゃなくって……」
「ますます気になるわ。相手は誰? どんな人? そんなSMの相手をしてくれるひとって?」
 映美はクラスに残った人に聞かれないように、小声でささやくように答えた。
「……兄です」
「え!? 相手はお兄さんっ!!」
「声が大きい!」
 動揺した映美はふたたび教室に残ったグループを見た。が、グループはいつものようにまた絵理衣が馬鹿なことをいって騒いで、映美を困らせているのだろうと、ちらりとふたりを見ただけで、ふたたびおしゃべりを続けた。
「どうやらばれてはいないようです。というか、ばれたら人生終了でした」
「兄妹でSMとは……。さすがのあたしも、これは引くわー」
 親友の絵理衣には、できるだけ隠し事をしたくなかった。それは友情ということもあるが、行動力だけは定評がある彼女のことだ、隠せば隠すほど好奇心を刺激してしまい、私立探偵などと称してストーカーまがいな詮索をはじめ、本当にわたしの周辺をかぎ回りかねない。
 映美はそう考えて、思い切って打ち明けたものの、それがとんでもないことになってしまった。
 映美は後悔していた。
(こうなれば、絵理衣も〈こちら側〉に引きずり込んだほうがいいのでしょうか)
 と、判断した映美は、兄が手に入れた不思議なゼリージュースのことを絵理衣に話すことにした。

 ・
 ・
 ・

「で、その不思議なジュースを飲むと、女の子なのに、おちん○んをはやすことができる……と。
 信じられないけれど、まじめな映美がその程度のすぐばれるウソをつくはずがないし……。
 それで映美は、男の子のモノを生やして、その快感に夢中になっちゃったんだ……」
 絵理衣が複雑な顔をしながら言う。
(さすがに絵理衣も引き気味ですね。ですが、ここまで告白させられたんです。絵理衣には、わたしたちの仲間になってもらいます)
 映美は机のわきに掛けてあったスクールバッグをつかむ。
 そしてスクールバッグからビンに入った黄色い液体を取り出す。
「論より証拠。一本だけですが、件のゼリージュースを持っているのでさしあげたいとおもいます。兄がご友人からゆずってもらったもので、とても貴重なものらしく、いまはこの一本しかありませんが」
 そう言いつつ、映美は思う。
(お兄さまがニヤニヤしながら新しい種類のゼリージュースを持っていたので、こんな危険なものをお兄さまに持たせているのはいけない、これいじょう被害を広げないためにと思って没収し、わたしが留守のあいだに兄に取り返されないように学校まで持ってきたのですが……。
 お兄さまに使わせないためにわたしがとりあげたのに、そのわたしが使うことになるとは、皮肉なものです。
 絵理衣、わたしを恨まないで下さいよ。首を突っ込んできた、あなたの自業自得です)
「絵理衣には思い人がいるのですから、その人と使ってみるのも一興かと存じます。
 効能は、ふたりで分けて飲むと、飲んだふたりの身体がしばらくの時間、入れ替わるというものです」
 絵理衣は手渡されたゼリージュースを目の前に掲げると、しげしげとながめた。ビンの中で黄色い液体がゆったりと揺れている。
「ふーん。なるほど。これがその不思議なゼリージュースなんだ。
 まじめな映美をそこまで夢中にさせるんだから、男の快感ってすごいのかもね」
 せっかくゼリージュースをくれるという映美の話の腰を折らないように、そう口にした絵理衣だったが、実は男の快感についてはさほど興味がなかった。
 映美はお子さまだから、初めての快感を、最高のモノと勘違いしているのだろう。だけど、わたしは映美と違って、女の快感は男の十倍あるということを雑誌で読んだことがある。
 男性器で得る快感というのも興味がないわけではないが、それでも十分の一の快感ならば、そんな快感はたかがしれている。
 それよりも、相手と身体が入れ替えられるという点が、重要だ。
 ……と絵理衣は考えていた。
「ええ。男の快感は最高ですよ。
 ただし忘れないでください。そのゼリージュースは不良品。
 問題点はふたつあって、ひとつは、じゃっかん遅効性(ちこうせい)であること――」
 絵理衣は「チコウセイってなに?」と聞き返そうとしたが、映美がつづけて話したもう一つの欠点を聞いて、そんなことを尋ねるのも忘れてしまう。
「そしてもうひとつの問題点は、入れ替わりから元に戻ったとき、なにかしら肉体の変化が起こるということです。命に関わるようなものではないそうですが、どんな変化がおこるかはわかりません。そしてその肉体の変化は、一時的な入れ替えと違って、〈永久に変化したまま〉だそうです。その覚悟がなければ、けっして飲んではいけません。
 言い換えれば、その欠点を受ける覚悟があれば、普通に生きていては決して味わえない快楽が待っています」

     *

 ゼリージュースを渡されてから数日が過ぎ、純矢の誕生日の前日となった。
 絵理衣は自分の部屋のイスに座り、テーブルの上に置かれた黄色いゼリージュースをながめながら思った。
 色恋沙汰とはほど遠い、カタブツな性格だと思っていた映美に先を越された。
 しかも、兄との近親相姦。
 そのうえ、この不思議なゼリージュースを使っての、変質的な肉体関係。
 映美がそこまで進んでいるなんて、思いもよらなかった。
 いままでは、彼氏がいる自分が絶対的なリードをしていたと思っていたのに、とつぜん、突き落とされた気がした。
 あたしにだって、彼氏がいるのだ。映美に負けてはいられない。
(このゼリージュース、使ってみよう)
 絵理衣は覚悟を決めた表情でうなずくと、ゼリージュースを手にとって立ち上がった。

    *

 純矢の誕生日、当日。
 デートをおえた純矢は、絵理衣の部屋にきていた。
 絵理衣がデートの最後に「誕生日プレゼントに、あたしの処女をあげる」と言うと、純矢はしっぽをふる犬のようによろこんで彼女の部屋にやってきた。
 そこまでは計画通りだったが、絵理衣にとって心配事があった。
 男というものは、エッチの時に雰囲気作りをしない。そう友達から聞いている。
(そんなのはイヤ。他の人はそれでもいいのかもしれないけれど、あたしはそんなエッチは絶対にイヤ)
 と絵理衣は思った。
 これが初めてのエッチなのだ。だからこそ、とくにムード作りが大切だ。これだけは絶対に譲れない。
 エッチはゆるす、けれどムードを大切にしてほしい。とくに純矢は奥手そうだし、あの性格なら、ぜったいに童貞だ。ということは、女の子の扱い方なんてわからないだろうし、ましてやムード作りなんて考えてもいないだろう。
 だからといって、自分から雰囲気をつくるのも嫌だった。なぜならば、こういったことは、男の子からムード作りをしてほしい。というか男の子が気をきかせてムード作りをするものだと考えていたからだ。
 そこで絵理衣は、映美からもらったゼリージュースを使って、純矢と入れ替わって、女の子の理想のムーディな夜を演出しながら行為におよぼうと考えていた。

    *

 シャワーを浴びて、いよいよセックスのときが近づいてきた。絵理衣の髪からただようシャンプーの匂いが、いよいよ純矢の気持ちを高ぶらせる。
 バスタオル姿の絵理衣を見て、純矢は目のやり場にこまっているかんじだ。緊張している純矢。これから起こる未知との体験におびえ、そのくせ、やりたい気持ちを抑えているのが、見て取れた。
(やっぱり、これじゃとてもじゃないけれど、雰囲気のあるセックスなんて、とても期待できないな)
 と絵理衣は思った。
(『ゼリージュースは不良品。入れ替わりから元に戻ったとき、なにかしら肉体の変化が起こるということです。どんな変化がおこるかはわかりません。そしてその肉体の変化は、一時的な入れ替えと違って、〈永久に変化したまま〉だそうです。その覚悟がなければ、けっして飲んではいけません。』)
 映美のことばが思い出される。
 けれど、映美だって同じあぶない橋をわたったんだ。映美にできてあたしができないはずがない。
 それに、あのカタブツな映美がハマるほどの男の快感。それを映美にだけに楽しませるのはもったいないわ。女は度胸。ここはやってみるしかないわね。

「抱き合うまえに、これを飲んで」
 絵理衣はゼリージュースをとりだすと、ふたつのコップに分けてそそいだ。
「これは?」
「セックスを楽しくさせる飲み物だって。
 ただし、不良品でどんな欠陥があるか分からないって。
 それでもいい? もちろんあたしも半分飲むけれど」
 そういうと、絵理衣はコップについだゼリージュースを飲み始める。
 純矢もやりたい盛りな年頃の男の子だった。セックスを目の前にして、その程度の障害でとめられるはずがない。純矢は一気にゼリージュースを飲み干した。
(なんだかむりやり飲ませるような形になっちゃったけれど、いいわよね、ウソはついていないし。あたしの処女をあげるんだから、この程度はがまんしてもらわないとね)
「よし、飲んだぞ! もう始めてもいいだろう」
「うん、いいよ」
 許可を出した途端、純矢は飛びかかるように、絵理衣をその場に押し倒した。
「そんな、もっと雰囲気を大切にして。せめてベッドの上で……」
 だが、純矢は絵理衣の言葉など耳に入っていない様子だった。彼は夢中で絵理衣の肉体に巻かれたバスタオルに指をすべり込ませると、乱暴にはぎ取る。
 と、その時。
 ゼリージュースの効果があらわれ、ふたりの体は入れ替わった。
「やったあ! 効果がなかなか出ないから、映美にだまされたとおもっていたんだ」
 純矢の体になった絵理衣が言う。
「いったい、何が起こったんだ!」
 絵理衣になった純矢が驚く。
「あたしたち、体が入れ替わったのよ!」
 絵理衣は押し倒していた体を解放すると、立ち上がった。
「さっきゼリージュースを飲んだでしょう? あの飲み物は、お互いの体を入れ替えるものだったの」
 絵理衣になった純矢は、信じられないという表情をしていたが、この状態をみれば、信じないわけには行かなかった。
「すべては、ムードのある夜のためよ。
 今日のために、パパもママも、うまいこと丸め込んで旅行に行かせたから、今夜は帰ってこないわ。一晩中ふたりっきりよ。
 これでムーディな夜をすごせるはず。
 さあ、女の子の理想のエッチを演出しましょう!」
 そう、優雅とも取れる口調で純矢に話す絵理衣だったが、実は体を入れ替えた時から、激しい体のうずきを感じていた。口では「ムードのある夜」と言ったものの、体が「そんなまどろっこしいことはしていられない。女が目の前にいるんだ。この男性器をさっさと突っ込ませろ」と訴えている。
 女の子の理想の、雰囲気のある夜を求めていたはずなのに、絵理衣は体からの衝動が抑えきれそうになかった。はじめはどうにか我慢していたものの、男の性欲の強さを知らなかった絵理衣には堪えようもなく、すぐに限界に達した。彼女はついに、着ていた男物の服をもどかしそうに脱ぐと、全裸になった。

    *

 一方、絵理衣になった純矢は男性器を見せられて驚愕していた。
 自分の男性器だから生まれたときから見てきたはずなのに、こうして目の前に差し出されると、そのあまりの大きさにあせる。まちがいなくその一物は自分に襲いかかって来るのだ。あんな大きなものをからだに入れるなんて、ナイフで刺されるようなものだ。

    *

 絵理衣は自分の体になった純矢を見下ろしていた。
 純矢は押し倒されたときの姿勢のまま床に横たわっている。女の子になったとまどいからか、それとも女の体の本能からなのか、子ウサギのように恐怖にふるえおびえている。
 その姿を見ていて、絵理衣は男の衝動がますます激しくなるのを感じた。
 この場で、今すぐ、犯したかった。
 が、その気持ちを最後の理性でおさえて、どうにかお姫様抱っこで純矢をベッドに運ぶ。
 されるがままの純矢を見ていて、もう体の制御はきかなかった。
 避妊をしなければいけないことはわかっていた。女の子ならばそのことに気をつけるのはなおさらだ。だけど、避妊具をつけているような余裕はなかった。一秒でも早く、この股間のいきり立ったものを、純矢のあそこに入れたい。入れたくて、他のことは何も考えられない。
 そして絵理衣は、夢中で、純矢の……自分の体をむさぼった。
(おちん○んの快感は女の子の十分の一かもしれない。けれど、こうして相手を襲い犯す快感、この相手を征服して自分の物にしたって感じは、男の子の快感ならではのはず)
 そして映美は、ひたすら、純矢の……映美自身の体をむさぼりつくした。
「男の子の快感って最高!!」
 絵理衣は何度目かの精を放ちながら、そう叫んだ。

    *

 数時間が過ぎ、絵理衣と純矢はトイレで小便をした。体からゼリージュースが抜けたためか、ふたりの体は元に戻った。
 ただし、元にもどらない箇所もあった。
 あのゼリージュースは不良品。そのために、ふたりの局部だけは、もとにはもどらなかった。これが映美に言われていた欠陥だ。
 自分の体に戻った絵理衣は自分の股間を見て、すぐに理解した。
 これが映美の言っていたその欠陥だということは、一目みて理解できた。
 ゼリージュースを飲む前は、どんな欠陥かわからず不安だったけれど、こうして男の子の快感を知った今では、股間に男のものがあっても構わない。
 純矢も、股間が女の子になってしまっては、ほかの女に手をだすことはできないだろうし。それに純矢も、女の子の快感にやみつきになったようだし。
「それじゃ、今度は元の体で二回戦を始めましょうか。
 夜はまだまだ長いわよ」
 絵理衣はこれからも純矢と男の子の快感が味わえると思うとうれしくてしかたない、といった表情で、自分の股間を見て赤面している純矢を見おろしていた。



                        ―おわり―



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