ワケありゼリージュース!2「兄と妹とエッチな本編」  
作・JuJu


「お兄さま! これはいったい、なんなのですか!!」
 建悟(けんご)が帰宅し、自分の部屋のドアを開けたとたん、妹の映美(えいみ)の怒りに震えた声が襲いかかってきた。驚きながら部屋をのぞくと、中にいた映美は腕を伸ばし、エッチな本を彼の顔面に突きつけてきた。
 建吾は動揺したが、すぐに兄である立場を思い出してあせりを隠し、エッチな本越しに映美の様子を観察する。映美の腰までかかる長いストレートの黒髪が震え、ややつり目がちな眼がますますつり上がっている。
 さらに部屋の中まで見渡してみると、ハタキだのほうきだのという掃除道具が見受けられた。
 建吾は状況を把握した。どうやら自分が留守にしている間に映美が部屋に入ってきて掃除をしたらしい。その時隠しておいたエッチな本を発見してしまったのだろう。
「だから掃除は自分でするって、いつもいっているだろう」
「そんなこといって、いっこうにやらないじゃないですか。だからわたしがお兄さまのかわりにしているのに。
 それよりも、これはいったい何ですか!?」
「む。それはだな……」
 建悟が目の前に差し出されたエッチな本を取り上げようと右手を伸ばすと、絶妙なほど寸前に、映美は腕を縮めて胸の前に戻した。
 建悟は本を追ってさらに手を伸ばしたが、映美が本に指一本でも触れたら「お兄さまがわたしの胸を触った」と冤罪(えんざい)を着せるような様子で上目遣いでにらみつけてきたために、伸ばしかけた腕を空中でとめる。
(くそっ、さわれるほどの大きさもないくせに。おれよりも三歳年下とはいえ、もう中学二年になるんだぞ。なんだよ、その小学生のころから成長しない貧乳(ひんにゅう)っぷりは)
 宙に浮いたままの建悟の右腕は、奪われた本を求めてその指をイカの足のようにうねらせていたが、やがてどうにも取り戻せないことを確信すると、腕を脱力させて落とし、ついでに肩も落とした。
 それでも建悟の瞳は、まだ闘志はゆるがないぞと言うように、映美の眼をにらみつける。
 映美も対峙するようにその眼を見つめ返す。
 兄妹の間に視線がぶつかり合い、火花が散る。
 が、すぐに決着はついた。
 建悟は伏せるように目をそらすと、人差し指でほおをかきながら「なんというか……だな。女のお前にはわからないだろうが、男には、そういった物は必需品なんだよ」とつぶやいた。
「お兄さま、不潔です!」
 建悟の弁解など聞く耳を持たないといった風に、映美はきつく言い放つ。
「とにかく返してくれ! 女のお前にその価値は分からないだろうが、それはお宝本なんだ。秘蔵の一品なんだよ。
 しかもそれは一浩(かずひろ)から譲ってもらった、男の友情の証でもある。一浩がおれにはもう必要なくなったからといって、おれにくれたんだ……」
「なにが男の友情ですか! とにかく、これはわたしが処分します」
 そういうと映美は本を右手で背中に隠し、左腕で建悟の部屋のドアのノブをつかむ。
「お掃除の途中ですから、お兄さまは外でヒマを潰してきてください!」
 映美は勢いよくドアを閉めてしまう。
 目の前で大きな音をたてながら堅く閉じられたドアの前で、建悟はただぼうぜんとして立っているほかはなかった。

    *

 自分の部屋を追い出された建悟は、行き先のあてもなく、ぶつぶつとひとり不満をうめきながら街をぶらぶらと歩いていた。
 すると、件の本をゆずってくれた一浩という親友に、偶然ばったりと出会う。
「ん? 建悟じゃないか。どうしたんだ? 浮かない顔をして」
「一浩か……。そうだな。お前にあやまっておかないとな」
「あやまる?」
「実は――」
 建悟は先ほどの映美との出来事を、手短に話した。
「というわけだ。すまない。お前からもらった、たいせつなお宝を。おれは同じ男として……」
 建悟は一浩に向かって、深々と頭を下げた。
「ま、おれは、あることがあって、もうその手のグッズは必要なくなったから、べつにいいけどさ」
 譲った本を捨てられたことに対して、たいした気にしていない様子をみせる一浩だったが、建悟のほうは怒りが収まらない様子だった。
 建悟は頭を上げると、その場にはいない妹を見据えるように言った。
「それにあの本は、一浩からゆずってもらったってだけじゃない。あの本は、いいオカズがなかったときに使える、すばらしいピンチヒッターだったんだ。飽きずに何度でも使える本が、男にとってどれほど貴重で、かつ、ありがたいか。
 そもそも、エッチな本というのは、男にはぜったいに必要な物なんだ! そのことが、映美には女だからわからないんだ! くそっ! 女ってやつは!! いっそ映美に、男の生理現象ってやつを、教えてやりたいぜ!」
「ふ〜ん。映美さんに、男のありようをおしえてやりたいのか?
 それだったら、おれが一肌脱いでもいいが」
 一浩は、先日偶然入手ルートを知った、不思議なゼリージュースのことを説明した。さらにゼリージュースによって生まれた、自分と妹と同じ学校に通う女友達との関係も話す。
「なるほど。それがあれほど大切にしていた本がいらなくなった理由か」
「やっぱり、いくら特出した本とはいえ、本番とは比べものにならないからな」
「それで、そのゼリージュースを、おれにも分けてくれるってわけだな? おれも一浩みたく映美に憑依して、アレの生えた映美の体でオナニーをして、男の快感を教え込めばいいんだな?」
「いや……。ゆずりたいのは山々なんだが。
 あのゼリージュースは入手ルートが特殊で、一度に手にできる数が限られている。
 だから、青色のジュースは、おれたち三人が楽しむことに使わせてもらう。たりないと、おれが妹たちからどんなことをされるかわからないしな。
 だが心配するな。青色のゼリージュースはやれないが、その代わりに赤色のゼリージュースをやろう。きっとお前の役にたつはずだ」
「そんなに貴重なのか? 本当にもらってもいいのか?」
「かまわないさ。今使っている青色ゼリージュースでおれたちは満足しているからな。
 それに、正直なところ、いろんな色のジュースを使えるほど、おれの精力はもたないし。
 ただし赤いゼリージュースはおれも使ったことはないんだ。だからおれはゼリージュースをおまえにやるだけだ。あとはお前次第だな。まあせいぜいうまく利用してくれよ」

    *

 それから二時間後。
 ゼリージュースを受け取った建吾は、自宅に帰ると映美の部屋に向かった。
「映美、部屋にはいるぞー?
 やー、ちらかっていたおれの部屋もー、すっかりきれいのなったよー。これも映美のー、おかげだー」
 いかにも棒読みなねぎらいの言葉を、建悟はつづけた。
「そんな映美にはー、お礼をしなければならないなー。
 おーありがとう、我が妹映美よー。
 これはほんのお礼の気持だー」
 建悟はそういうと、ゼリージュースの入ったビンを映美に差し出した。
「謝礼? どういった風の吹き回しなんだか」
 映美はビンを受け取るとけげんそうに顔の前に持ち上げ、中でゆれる赤色をしたゼリーのジュースをしげしげとながめる。
「一浩からもらったんだ。すごく貴重なゼリージュースだそうだ。
 ささ、早く飲めよ。うまいゾ〜?」
「……」
 飲むように催促をする建悟を無視して、映美は眼を細めてジュースを睨(ね)め付けている。
「どうしたんだよ?」
「わたしがお兄さまのお部屋の掃除をしたことにたいして、苦情は何回もうかがいましたけど、今の今まで一度だって感謝の言葉をかけてくれたことなんてなかったじゃないですか。それがいきなりジュースをおごってくれるなんて、これはどう考えても怪しい以外に何ものもないです。
 ……ま、いいでしょう。
 しょせんわたしも人の子。自分のしたことが正当に評価され、こうして感謝の品をいただけるというのは、やはりうれしいものですから。
 なにを企んでいるか判りませんが、どうせお兄さまのすることなんて、たかが知れていいますし」
 そういいながら、映美はわざとらしいため息を吐いた後、ゼリージュースのフタを開けてビンに口を付けた。
「ん。これはイケますね」
「飲んだな? 飲んだな?」
「やはり、なにか企んでいたんですね? これで下剤を入れていたとかいう安易で下品なイタズラだったら、わたしは生涯お兄さまを軽蔑しますよ?」
「下剤? おれはそんなつまらないコトはしない」
 と、建悟が言った途端、映美が目を見開いた。
「なんだかお腹がむずむずします……。やはり下剤を混入していたんじゃないですか!?」
「だから、下剤なんてチャチなものじゃないって」
「……これはお腹ではなく、もっと下の方から。
 お兄さま、いったい何をしたのですか?」
「ぬふふ、それはすぐにわかるさ!」
「すぐにわかるって、そんなあいまいな返答で納得ができるはずが……。……!? ……!??」
 映美はあわててスカートの上から股間をおさえる。それから眼を白黒させると、電撃に打たれたようにあわてて股間に当てた手を離した。
「お兄さま! 出ていって! いますぐ部屋から出ていってください!」
「はいはい」
 建悟はにやついた表情で、のんびりと映美の部屋を出ていった。
 建悟が出ていったことを見届けた後、映美はスカートをまくりパンツを下ろした。そこには女の子の股間にはあってはならないもの、男性器がぶらさがっていた。

    *

 自分の部屋でイスに座っていた建悟は、となりにある映美の部屋からの叫び声を聞いてほくそ笑む。
 と思うと、壊れるのではないかと思うほど激しく建悟の部屋のドアが開き、映美がどなり込んで来た。
「お・お・お兄さま! ここ、これはいったいどういうことです!?」
「どうした? 血相を変えて」
「取り乱しもします! だって! だって……わたしの女性器が消失して、代わりに股間には……」
「すごいだろう? それがさっき飲ませたゼリージュースの効果だ。
 ゼリージュースを分けてくれた一浩に聞いたところによると、そのゼリージュースには「憑依」「変身」「入れ替わり」などさまざまな種類があって、それぞれ効果が違うらしいんだが。そのゼリージュースは、股間の部分だけ性別を変えることができるんだそうだ。
 どうだ、おれの言ったとおり、めずらしいジュースだったろう?」
「そんな危険なジュースを、実の妹に飲ませたのですか!?」
「まあまあ。そんな死刑宣告でもされたような顔をするな。小便をすれば元にもどるらしいからさ」
 そう聞いたとたん、映美は脱兎のごとく部屋を出ていった。
「トイレに向かったか。あわてすぎて、階段でころぶなよ?
 しかし、調子に乗ってつい口が滑ったな。小便をすればもとにもどることまで教えたのは失敗だった。映美に男の生理現象を体験させるつもりだったんだがな。
 まあいいか。あの映美の慌てた顔が見られて、うっぷんが晴れたし」

    *

「うっうっ……」
 映美が、この世の終わりのような表情をして、建悟の部屋に戻ってきた。
「その様子だと小便が出なかったか? そんなのしばらく待てば、自然と小便も溜まってくるさ」
「それもありますが、なにより男性の性器を使っての排泄は……」
「なるほどな。チン○で小便をするのは、抵抗があるか」
「女の子の前で、そんなにはっきりと男性器を示す単語を使わないで下さい!
 でも、すぐに元に戻ると聞いて、すこしだけ落ち着きました」
 映美は目を閉じて安堵のため息を吐く。そして、ため息を吐ききると建悟に向かって詰め寄ってきた。
「それはそれとして。お兄さま! イタズラにしてはホドが過ぎます!
 いくら相手が妹だからといっても、やっていいこととわるいことの区別くらいつかなかったのですか?」
「だってさ、おまえが男の生理現象ってやつをわかってくれないからさ。だから、身を持って体験してもらおうとおもって」
「やはりさきほどの、エッチな本を処分したことを根に持っての復讐でしたか。どうせそんなことだと思っていました。
 なんどでも言いますが、あんな物を見て、あそこを膨らませて喜んでいるなんて、不潔です!」
「だから、それが男の体ってものなんだよ! 男の生理現象なんだ。
 お前だって、体験すればわかるさ」
 そういうと建悟はイスから立ち上がり、ベッドの下の隙間に手を入れて、隠しておいたエッチな本を取りだした。
「まだその手のいやらしい本をもっていたんですか!?」
「いいから、見てみろって」
 建吾は女性の裸の写真が載っているページを開くと、映美の目の前に差し出した。
「女のわたしに女性の裸など見せて、なんのつもりですか……。
 …………。
 ……?
 !!」
 あきれながらエッチな写真をみていた映美だが、やがてその目はぎらつき始める。
「そうだな。たしかに女が女の裸を見てもおもしろくないかもしれないな……」
 そういいながら建悟は雑誌を閉じようとした。が、映美があわてて両腕を伸ばし、その手をおさえる。
「ちょっ、ちょっと待ってください!
 まだしまわないで。
 あの……、その……。後学のためにですね、ほんのもうすこしだけ、その本を観察をしておきたいかなと思いまして……」
 そんな言葉を言っているあいだも、映美の目は裸の女性を放さなかった。
「どうした。もしかして女の裸が気になるのか?」
「ばかな! わたしは女です。同性の裸を見たところで、なにを感じるというのですか?」
 口では必死に否定しているが、エッチな本を見ている彼女のほおはピンクに染まり、その息は荒々しい。
「だがな……我が妹よ。口でいくら否定しても、スカートを盛り上げている〈それ〉が動かぬ証拠なんだがな」
 そう言われて映美は初めて女性から目を逸らし、自分の股間を見た。
「これは!?」
 巨大な山になっているスカートを見て、映美は目を白黒させる。
「……もちろんわたしも、男の人がエッチなことを思うと、ここが大きくなることは知っていましたが……。
 ……まさかここまで大きくなろうとは」
 隠しきれないほど大きく盛り上がっているスカートを証拠として指摘された映美は、目を伏せてあきらめ声で言った。
「――認めます。
 お兄さまの言うとおり、女性の裸を見ていたら……こう、うまく言えませんが、胸のときめきというか、お腹のそこから込み上げる熱さというか、そんな切なさが理性を侵食していく感覚に襲われました。自分自身を失いそうな……それでいて、それがとても快感なんです。
 そして気がつけば、自分でもわからないのに、女の人の裸から目が離せなくて」
「映美もようやく、男心という物がすこしは理解できたようだな。
 それが男なんだよ。心ではわかっていても、体から湧いてくる性欲をおさえきれないんだ。
 ――さて、これからが本番だ。
 いまからお前に、男の快感ってやつを教えてやるよ」
 建悟はおもむろに映美のスカートを巻くると、パンツをおろした。
 あわてた映美がスカートを戻そうと下を向いた途端、怒張した男の象徴が目に入った。映美は顔を赤くしてその手も止めてしまう。
「これって、さっきお手洗いで見たのとはぜんぜん違います! わたしがお手洗いで見たときは、もっと可愛らしくて、けなげで……」
「女の裸を見て興奮したんだ。とうぜん男の物はこうなる。
 正直なところ自分以外の男の物なんてさわりたくもないが、ここは可愛い妹のためだ」
 建吾は映美をベッドの端に座らせると、自分も妹の前にひざまづいた。映美の股間に猛々しく勃起している一物を見て一瞬ひるむが、すぐに意を決して股間に向けて腕を伸ばす。静かに彼女に生えているものに触れる。
「ひぃ!?」
 自分の股間から目を逸らしていた映美も、あそこをにぎる建吾の指の感触に、ふたたび股間に目を向ける。
「こいつのことは男のおれにまかせておけって。どこをどうすれば気持ちいいか、男だからこそわかることもあるんだ」
 そう言うやいなや、建悟は映美の股間に生えたものを包んでいた指をゆっくりと前後に動かしはじめた。建吾の指は激しく、ときに緩やかにと、強弱を付けて映美を男の快感に誘った。にぎる指も、けっして痛くないように緩やかに、それでいて十分に快感が伝わるように適度に締め付けるという、細心の注意をはらう。まさに、一物を扱って数え切れぬほどその快感を楽しんできた者だからできる技だった。
 責めはそれだけではおわらない。建吾は空いている左手でさきほどベッドの下から取り出したエッチな本のページを開き、彼がこの本の中で一番刺激的だと思っている女性の裸の写真を映美の目の前に突きつける。
「いや……。やめてお兄さま……」
 映美は抵抗の声をあげるものの、あまりにも弱々しい。その両腕もだらりとおろされ、建悟を拒絶することはなかった。
 映美の息が次第に早くなる。目はあまくとろけ、わずかに涙さえ溜まっていた。
「ううう……。女性の裸なんて……見たくないのに……。目が離せない……」
 せつな、初めての男の快感に溺れていた映美が目を見開いて叫ぶ。
「これは!? お兄さま! 何か、何かが出そうです!」
「もうか? 早漏だな。まあ初めての男の子の体験じゃ、しかたないか。
 それじゃ、記念すべき精通だ。おれも気合いを入れる! お前もがんばれ! いっきにラストスパートだ!!」
 そういうと、建悟は前後にスライドさせていた手を、これ以上ないほど速めた。
「だめです! だめです! そんなに激しくされたら……。いや〜! もう我慢できない! 出る、出る〜っ!!」
 断末魔とともに、映美は激しく精を放(はな)った。
「――どうだ。これが男の生理現象だ。映美もおれがエッチな本を欲しがる理由が、体で解っただろう?」
「はぁ……はぁ……。すごすぎです。まだ目の前がチカチカしています」
 建悟は手に掛かった精液をウェットティシューでふき取りながら、恍惚(こうこつ)とした表情をしている映美を見下ろした。
 よく見れば、映美の股間はまだ半分勃起している。
「そうか……アレ以外の部分は女の体だものな。男と違って射精したら醒めるということがないのか……。正直うらやましいな。
 いいだろう。可愛い妹のためだ。今日は、とことん抜いてやる」
「え、ちょっとまってください。いますごく敏感で……あっ……それを触られると……あああ!」
 建悟は早くも、〈二回戦〉に入った。

    *

 その後、建悟のオナニー責めは、映美が尿意を催すまで続いた。
「お兄さま! あの……、そろそろお手洗いに行きたいのですが……」
「ああ、小便か。まあ、オナニー責めもこんなものかな? おれもさすがに腕がつかれた」
「それで……その、腰が抜けてしまって、立てないので、お手洗いまで連れていって欲しいのですが」
「立てなくなるほどイったのか。これは、おれもやりすぎたかもしれないな……。
 しかし、立てなくなるほど何度もイきまくれるなんて……。女ってやつはうらやましい」

    *

『〈風立ちぬ、いざ生きめやも……〉。この詩が、ふいに心によみがえった理由はですねぇ〜』
 教師の声が響く。
 次の日。映美の通う中学校の教室。教壇に教師が立って授業をしていた。
 しかし、いつもはまじめに授業をうけている映美は、今日に限って夢うつつと窓から空をみつめている。
(あんなの、本当のわたしじゃない!!)
 映美はいくどとなく、心の中でくり返し叫んだ。
 彼女は昨日のことをひどく後悔していた。昨日のエッチな行為は、たしかに我を忘れるほどの快感だった。でもいくら快楽に溺れていたとはいえ、男のモノを使ってあんなことをするなんて許されるはずがない。――しかも兄の前であのような痴態を。
「映美、映美ったら!」
 ぼんやりしていた映美の耳に、女の子の声がひびいた。
 気がつくと、目の前にクラスメイトの女の子、友子が立っていた。
「授業はもう終わったよ! 次は体育だから、はやく更衣室に行こう!」
 いつも友子と一緒に着替えているので、映美の席まで迎えにきてくれたらしい。
 どうやら心中で兄への悪態を付いているうちに、いつのまにか授業は終了してしまったらしい。
「授業中ずーっとボケーってしていたでしょう。まじめな映美にしてはめずらしいね」
「昨日お兄さまと、いろいろありまして……」
 でももう大丈夫だ。アレが生える原因は、あのゼリージュース。ゼリージュースさえ飲まなければ、ふたたびこんな不幸は起こらない。
 映美はあれは一度きりのあやまちだったと自分に言い聞かせ、この件は忘れることにした。
「それじゃ、更衣室に行きましょうか」
 映美はそういうと、体操着の入った巾着袋を手に取ってイスから立ち上がった。

    *

 映美は、女子更衣室で着替えていた。
「もー。映美ったらどこ見ているのよ!」
 からかうように友子がいう。
 映美にしてみれば、いつも通り普段通りに着替えていたつもりだったが、自分でも気がつかないうちに、視線が友子の下着姿に向かっていたことに気がついた。
「ご、ごめんなさい。ついスタイルがいいなって思って」
「映美だって、すごいじゃない」
 友子が言う。
 とっさの言い訳をしたものの、映美の脳裏には、きのう建悟にエッチな本を見せられながら、強制オナニーをさせられたときの興奮が甦っていた。

    *

 映美は体育の授業を受けていたが、さきほど更衣室で見た女の子たちの下着姿が脳裏にちらついて落ちつきがなかった。中でも、そばにいた友子の下着姿が頭から離れない。
 映美の脳裏に、更衣室での女の子たちのあられもない姿が映る。写真ではない、生の女の子の裸。その刺激は、兄に見せられたエッチな本の比ではなかった。そしてその裸を思い出すたびに、同時に浮かんでくるのが、兄に男性器をこすられた時の快感だった。
 その為に、体育の授業でもミスが目立った。もともと運動神経はよかったため、今日は女の子の日で体調がすぐれないのだと思われて、それほど問題にはならなかったが。

    *

 授業が終わり、映美はふたたび女子更衣室に来ていた。
 見てはいけないとわかっていても、目が勝手にクラスメイトの女の子の体に向かってしまう。
 この空間のすべてが、彼女の性欲を増幅させてゆく。
 たえきれずに目を閉じても、女の匂いや、衣擦れの音、女の子たちの話し声が、いやでも映美を興奮させてしまう。
 映美は我慢に限界に来ていた。彼女はさっさと着替え終えると、女子トイレに向かった。あわてて個室に入り、便座に座ると、いそいでスカートをまくり、パンツを脱ぐ。
(女の裸を見て興奮するなんて、ありえない!)
 そう心では否定するものの、その指先は女性器に向かい、ゆっくりと愛撫が始まる。
 更衣室で見た友子やクラスメイトの下着姿が脳裏に浮かぶ。
 こんなことのために、親友の友子やクラスメイトを想像したくなかった。
 それでも、彼女の頭には、どうしても先ほどの女子更衣室での場面が消えない。
 それに、このもやもやした気持ちを追い払うには、イクしかないことが、本能として解っていた。
 映美は激しく指を動かし、どうにか絶頂を迎える。
 それでも、映美はもの足りなかった。
 違う。わたしの欲する物はこんな快感じゃない。
 わたしが求めている快感は……。

    *

 学校の授業と部活が終わり、家に帰った映美は、自分の部屋には寄らずに、まっすぐに建悟の部屋にと向かった。
 映美の顔に、焦りとも、決意ともとれるような、深刻な表情が浮かんでいる。
 建吾の部屋をノックをすると、中からはあわてて「ちょっと待ってろ」という返事。
 そんなの待っていられない! と映美がドアを開くと、建悟がエッチな本を持って立っていた。どうやらエッチな本を隠そうとしていたところを、ドアを開けられてしまったようすだった。
「お兄さま、またエッチな本を見ていたんですか」
「男にとってエッチな本を見るのは、最高の娯楽なんだ。お前だってこの前、男になってわかっただろう」
「あの時の事は、嫌というほど心の奥そこまで刻み込まれてしまっています」
「それで、なんのようだ。そんなにあわてて。おれが待っていてくれれというのを無視してまで」
「その……。あの……。
 ……。
 もう一度……男の快感を楽しみたいんです」
「なんだ、ゼリージュースが欲しくなったのか。
 いいぜ、一浩からもらったゼリージュースのあまりはまだ何本か残っているし。おまえさえその気ならば、またアレをしごいてやる」
 そういうと、建吾は棚からゼリージュースを取りだした。
「それじゃあ、冷蔵庫に入れてくるから、ゼリージュースがよく冷えたら始め……」
 ゼリージュースを見た映美は目を輝かせ、建吾が言いきる前にゼリージュースを奪い取った。
「ではお兄さま、さっそくはじめましょう!」
 映美はゼリージュースの蓋を開けて一気に飲みほした。
「そんなにがっつかなくったって……」
「ほら、まだ何もしていないのに、生えた途端、期待でいきりたってます!」
 映美はスカートを盛り上げる山を見せつける。
「この時を、どれだけ待ちこがれていたか……。
 さあ、さっさとわたしを楽しませてください!」
 そういうと、映美はスカートの中に手を忍ばせてパンツを下ろすと、積極的な映美の行動にとまどっている建悟の頭を掴んで、その口に自分の一物をつっこんだ。
「うっぷ!」
「ああ、これがフェラチオの感覚!」
 建吾は、強引に映美を引き離した。
「フェラ……!? おまえ、どこからそんな知識を……。
 いくら映美のものでも、フェラをするのは嫌だぞ、おれ」
「なにもタダとは言いません。お礼として、わたしがお兄さまの一物をしゃぶってさしあげます。等価交換です。たがいにしゃぶりあうのならばいいでしょう?
 どうせお兄さまも、女性からフェラチオを受けたことはないのでしょう? この快感に興味はありませんか?」
「そりゃあおれも男だから、フェラチオはしてもらいたいが……。しかし、だからといってアレをしゃぶるのは……」
「まあまあ。男は度胸! なんでも試してみるものです。
 ではさっそく、続きをしましょう!」
 映美はそういうと、ふたたび建吾の口の中に、自分の一物を強引に押し込んだ。
「うう……、これは、口の中もなかなか。手でしごかれるのもよかったですが、これはさらに上を行く快感です」
(まいったな。まあ、あとでおれのものをしゃぶってくれるっていうからいいか)
 映美が男の性に対して理解を深めさせるところまでは計画通りだったが、想像以上に彼女が男の快感のとりこになってしまったことに建悟は動揺を隠せなかった。いまではエッチに関して形勢逆転してしまったこと、そしてこれからふたりの関係はどうなるのか、そんな不安と期待を胸にしながら、建吾は映美に口の中を蹂躙されるのであった。

(おわり)



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