ワケありゼリージュース!「妹と先輩(♀)編」  
作・JuJu


 帰宅した真子(まこ)が玄関の戸を開けると、見知らぬ女物の靴が目に入った。
 本来ならばその一角(いっかく)は、兄である一浩(かずひろ)のボロ靴が乱雑に脱ぎ捨てられているはずの場所であり、「しょうがないな〜」などと愚痴をまじえながら靴をそろえてあげるのが彼女の日課だった。ところが今日に限って整(ととの)えるべき一浩の靴は存在せず、その代わりに彼の通っている学校指定の女性サイズのローファーが、一浩の時と同じようにそろえられもせず乱雑に玄関に脱ぎ捨てられていた。
「ん〜? お兄ちゃんのお客さんかな?」
 と、真子は推測した。兄に鍵でも渡されて、家の者はいないから勝手に上がって俺が帰ってくるまで待っていてくれ、などと言われたのだろうか……。あのいい加減な兄ならば十分にありうる話だ。
 真子は自分の脱いだ靴をそろえるついでに、一浩の時と同じように見知らぬ女性の靴もそろえてあげた。
「――ふふっ。もしかして、お兄ちゃんのガールフレンドだったりして〜」
 真子は年頃の女の子らしい邪推をし、そのくせその直後には「……なんてね! まさかそんなバカなことがあるわけがないよね」とみずからの考えを打ち消した。
 真子は玄関わきの階段を上ると、二階にある自分の部屋のドアを開けた。そのとたん、真子はその場で凍りついたように固まった。
 真子の部屋に、先ほどの靴の主らしい、一浩の通っている高校の制服を着た女性がいた。顔を見れば、その人は真子がひそかにあこがれている女性、玲奈(れいな)だった。
 玲奈は真子の部屋の真ん中であぐらをかき、漫画を読んでいる。
「れ、玲奈先輩、どうしてわたしの部屋に……?」
「お、やっと帰ってきたか。待っていたんだぞ」
 真子の存在に気がついた玲奈は、漫画本から目を上げた。
(なんで先輩が、あたしの部屋にいるのっ!?)
 中学生の真子が、中高一貫校でもないのに、高校生の玲奈のことを先輩と呼ぶのはおかしいことなのだが、真子は敬愛をこめて、彼女のことを勝手に先輩と呼んでいた。
 このように相手のことを先輩などと呼ぶからには、どれほど親しい間柄なのかとおもえるが、実は真子が玲奈と会ったのはたった一回きりだった。
 それはつい先日のこと。学校の行事の関係で、玲奈と一浩が校外に買い出しに出ていたときのことだった。ふたりは偶然道ばたで真子に会い、そこで妹だと紹介された。真子はその時、玲奈にひとめぼれをして一方的に彼女を慕うようになった。
 そんな関係なわけだから、どんな理由にせよ、真子にとっては、あこがれの玲奈が自分の家に来てくれたことは喜ばしいはずだった。
 しかし、その目に入った光景は、真子をあぜんとさせるには十分だった。
 その理由というのは、玲奈が手にしている漫画本が、真子が部屋に隠しておいたはずのひそかな愛読書――女の子同士の友情の先にある、ゆきすぎたみだらな性生活を描(えが)いた自費出版の漫画誌――いわゆる百合(ゆり)同人誌だったからだ。それも成人向けの。
「先輩! そ、そ、そ……。その手に持っているのって……」
 あらためて確かめるまでもなく、真子が愛読している百合同人誌だった。
(あはは、ばれた。玲奈先輩に、絶対に知られてはいけない趣味がばれた……)
 絶望のふちに立たされながらも、真子はなお未練たらしく、どうにかごまかせないものかと頭を働かせる。
(でもまだ、最悪の事態にはなっていないはず。
 そうだ! お兄ちゃんはまだ帰ってきていないようだし、あの同人誌はお兄ちゃんの持ち物だということにしてしまおう。
 あとで先輩と一緒にお兄ちゃんの部屋へ行って、お兄ちゃんに貸してある同人誌を見つけだし、これがその証明ですといえば先輩だって納得するはず。
 ――ごめん、お兄ちゃん! 可愛い妹のために犠牲になって! そのかわり、こんどわたしのお宝同人誌をあげるからっ!!)
 解決策を思いつき、真子は安堵の息をつくと、玲奈に向かって言った。
「玲奈先輩! その同人……つまり本は、兄のものです!! けっしてあたしの趣味なんかじゃなくて……」
「ん? なにいってるんだ真子? これはおまえのものじゃないか。お前が帰ってくるあいだ暇だったんで、勝手に借りたぞ。
 お前だって俺の居ないときに、俺の部屋の本棚から勝手に漫画を借りて行くからお互い様だろ」
(あ〜!! だめだった。あの同人誌がわたしのものだって玲奈先輩にばれてる……。打つ手なし……。終わった……。高梨真子の、玲奈先輩に捧げるつもりだった青春のほのかな恋心は、ここに終焉(しゅうえん)をむかえました……)

    *

「信じられない……。
 それじゃ、本当に、お兄ちゃんが玲奈先輩に憑依しているっていうの?」
 兄である一浩はドアの前でヘタリこんだ真子を立ち上がらせて部屋に入れると、自分が玲奈に憑依していることを説明した。
「ああ。憑依した人の体を自在に操れるようになるっていう、不思議なゼリージュースを手に入れたんだ。そのゼリージュースを飲むと体がゼリーのように透明になって、意中の人に体を重ねるだけで憑依できるというんだ。
 で、面白そうだと思って飲んでみたら本当に透明人間になれたんで、これは本物だと思って、下校中の玲奈に憑依したんだ」
 玲奈の姿をした一浩は、そう説明した。
 一浩があこがれの玲奈先輩に憑依している。その事実を真子はにわかには信じられない様子だったが、玲奈が一浩のふりをするはずもなく、なにより、部屋にある同人誌を読んでいたことが、たしかな証拠となり、兄の言葉を信じることにした。なにしろ百合同人誌を隠してある場所は、自分と一浩しか知らないはずなのだから。
「わかった。お兄ちゃんの言葉を信じる。でもどうして憑依する相手に玲奈先輩を選んだの?」
「とうぜん、おまえのためさ! 玲奈のことが好きなんだろう? 肉体関係を結びたいくらいに」
「ええっ? どうしてあたしが玲奈先輩のことを好きなことを、お兄ちゃんがしっているの」
「こんな同人誌を愛読していたんじゃ、隠していてもバレバレだぞ。それにこれでもお兄ちゃんだからな。その程度のことは言わなくても、真子の様子を見ていれば分かるさ。
 だから、かわいい妹の願いを叶えようと、玲奈の体を借りてきたんだ」
「――なんかあやしい。真実を言っていないでしょう?
 そんなこといって、本当は先輩の体を利用して、あたしと近親相姦がしたいんじゃないの?」
 真子は冷ややかな目で一浩を見た。
「血のつながった妹に欲情なんてするかよ。妹といえば、俺の分身みたいなものだ。顔にしろ性格にしろ、俺の面影をうかがわせる。つまり自分で自分に欲情するようなものだ。俺はそこまでナルシストじゃない」
 それから一浩は、かるく空咳をすると話を続けた。
「まあ、ほんとのことを言うと、おれも女の快感というのを味わってみたかったから、玲奈に憑依したというのもあるけれどな」
「それで、お兄ちゃんが憑依しているあいだ、先輩の精神はどうなっているの?」
「……眠っているんじゃないか? 憑依していても玲奈の声は聞こえないし。
 だから、俺が憑依している間は、何をしてもいいんだ!
 おまえはあこがれの玲奈と念願のセックスが出きる。俺は女の体の快感を知ることが出きる。
 いまや、玲奈の体は、おれのおもいのままなんだ!」
 玲奈の体になった一浩はそういうと、制服の上から自分の胸を揉み始めた。
「さわって見ろよ、すごく柔らかいぞ!」
「玲奈先輩の胸になんてことを!」
「だったらおまえも触ればいいじゃないか! 遠慮なんてするなよ」
「え? 先輩の胸に? う……うん……。でも、本当にいいのかな……」
「そのために憑依してきたんだって」
 一浩は真子の手をにぎると、自分の胸に導いた。
「柔らかいだろ? 服の中に手を入れて、直接さわってもいいんだぞ?」
「……」
 玲奈の胸に触れたことで心がさだまったのか、真子は黙って玲奈の制服の中に手を忍びこませる。
(玲奈の胸……気持ちいいな……)
 一浩は目を閉じて胸の快感を堪能していた。ところが、急に、真子の手が離れる。
「? なんだよ。いいところだったのに。なんで手をとめるんだ?」
 開けた目に映ったのは、アゼンとした表情をして身を退(ひ)いた真子の姿だった。
「どうした?」
 凍りついている真子を不思議に思い、一浩は彼女の視線の先を追った。
 真子の視線は、一浩の股間に向かっていた。
「!? しまった!」
 玲奈の制服のスカートの股間の辺りが、モッコリと盛り上がっているのだ。
「お兄ちゃん! これはどういうこと!? どうして女の子である玲奈先輩の股間が、盛り上がっているの?」
「あ……いや、これは……だな」
「説明してよ!」
「……」
 問いつめても言いよどんでいる一浩に業を煮やした真子は、玲奈のスカートをまくりあげた。さらに一瞬の早業でパンツまでも下ろす。
 力強く勃起した一浩の一物が飛び出た。
「ああああ……やっぱり……」
 妹がぼうぜんとした表情でいう。
「ふぅ……」
 体は正直なもので、こんな状況だというのに、女物のパンツに締め付けられていた苦しみから解放された安堵の息が玲奈になった一浩の口から漏れる。
 同時に、真子の目の前で自分の一物をさらしていることに羞恥を覚えた一浩は、真子の手からスカートをひったくると、まくりあげていたスカートを下ろして股間を隠した。しかし、勃起した一物は自己主張をするように、スカートを盛り上げている。
 妹におれの男の象徴を見せつけてしまった。いや、それ以上に一物の生えた玲奈の姿を見せてしまった。なんてことだ。
 そんなことを一浩は思った。
「実は、玲奈に憑依するために使ったゼリージュースは、問題のあるワケあり品だったんだ。
 ゼリージュースを飲むと、おれの体は透明人間になった。
 その姿で玲奈に合体して、おれは憑依した――と、ここまではよかったんだが……。
 ワケありゼリージュース問題点は、玲奈に憑依したあとですぐに理解できた。
 というのは、どういうわけかおれのあの部分だけがはみ出てしまったんだ。しかもあの部分は透明ではなくなっていた。
 黙っていて悪かった。でもわかってくれ。あれが生えている玲奈の姿なんて見せたくなかったんだ」
 一浩はそう弁解すると、どうにかならないものかと、スカートのすそから両手をいれて、一物を体に押し込もうとしはじめた。
 そんな一浩の姿を見ていた真子が言う。
「お兄ちゃん、いいんだよ。もういいの」
「いいって、あれのある玲奈なんていやだろう。いま、隠すからまっていろよ」
「本当にもういいの。玲奈先輩に男の人のモノがついていたためにちょっと動揺しちゃったけれど、これでいいんだよ。
 あのね、あたしね、どうして玲奈先輩が男の人じゃないんだろうって、いつも思っていたの。もしも先輩が男の人だったら、こんなに思い詰めなくてすんだのに。
 だから、男の人のモノをもっている玲奈先輩の姿は、わたしの理想の先輩の姿なの」
 その言葉を聞いて、一浩は一物を押し込む手を止めて真子を見た。
「おれはこんなものがついている玲奈なんて嫌なんだが……。真子がそれでいいのなら……」
「玲奈先輩とエッチなことができる機会なんて……しかも、男の人のモノを付けている先輩となんて、二度と無いだろうから、今日はとことん楽しみたいな」
 真子はそういって玲奈のスカートをまくると、一物に頭を近づける。そして舌を伸ばして舐めはじめた。
「うっ……!? 真子、ほんとうにいいのか?」
 真子は一物をくわえながら、うなずいた。
「だってそのために、ゼリージュースを使って憑依してきたんでしょ?」
 一浩は真子に一物をしゃぶられながら、玲奈の両腕を使って自分の胸を揉んだ。
「ううっ……」
 頭の中が真っ白になる。一浩は目を閉じ天を仰いだ。同時に抑えきれなくなった股間の快感が、真子の口の中ではじけた。
 一浩は大量の精液が噴出されているのを感じた。こんなに大量の精液を出したのは、初めてのことじゃないかと思う。
「お兄ちゃん……すごい量……。そんなに気持ちよかったの?」
 真子の声に我に返り、一浩は目を開いてあたりを確認する。口の中に噴射した精液を吐き出した跡がない。
「まさか、おまえ飲んだのか? しかも全部」
「だって、玲奈先輩の精液だとおもうと、もったいなくて。
 もう二度と先輩の精液を飲む機会なんてないと思うし」
「いや、身体は玲奈だけれど、それは俺の……」
 真子があわてて言葉をさえぎる。
「玲奈先輩のものなの! お願いだから夢を壊さないで!」
「……わかった」
「でも、本当に口の中がいっぱいで、飲むの大変だったよ。すごいね先輩のおちん○ん」
「ああ。いままでの人生の中で一番気持ちよかった。こんなに出たのは、初めてだ」
 と、その時。一浩は、玲奈の体に尿意を感じた。同時にゼリージュースは、小便をすると効力がなくなるという話を思い出す。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「……どうやら、玲奈に体を返す時が来たようだ」
「え? もう?」
「俺は元に戻るが、玲奈になってエッチなことをしたことは秘密だぞ。
 玲奈の体を勝手に借りて、しかもエッチなことをしたなんてばれたら、大変なことになる」
「あたりまえよ。あたしだって、玲奈先輩にきらわれたくないもの」
「それじゃ俺が玲奈に体を返している間に、俺が読んでいた同人誌、隠しておけよな」
 一浩はそういい残して、真子の部屋を出てトイレに向かった。

    *

 小便をすると、ゼリージュースの効果は切れて、憑依は解ける。それがこのジュースのきまりだった。そこで一浩は、公園なり、コンビニなり、デパートなどのトイレに行って、憑依を解くつもりでいた。ところが、真子とのエッチの気持ちよさに、ついつい時を忘れてしまい、気がつけばもう、小便がいまにももれそうなほど我慢できなくなっていた。
 玲奈になった一浩は、自宅のトイレに入る。
「はぅ〜」
 小便が間に合ったことに、思わず安堵の息がもれる。
 同時に、一浩はふわりとした感覚に襲われ、気がつけば玲奈の体から抜け出ていた。体も、ゼリージュースを飲んだときの透明人間から、ふつうの体に戻っている。
 つまり、裸のまま、トイレで小便をしている玲奈の目の前に立っている状態だった。
 そのことにとまどった一浩だったが、玲奈をよく見るとそのの表情はぼんやりとして視点がさだまっていない。どうやら憑依が抜けたあとしばらくは、ぼんやりと意識がはっきりしないようだ。
 そのことに気がついた一浩は、いそいでトイレのドアを開けると、服を着るために自分の部屋に戻った。
 ややあって、玲奈の顔に正気が戻った。
「ここはどこ? ト、トイレ!?
 学校帰りで下校していたはずなのに、どうしてわたし、見知らぬトイレにいるの?」
 玲奈はとまどいながら、トイレから出た。すると、一浩が立っていた。
「一浩くん!? ということはここは一浩くんの家ね。
 ごめん。学校の帰りに……、どういうわけか、わたし、いつのまにか、一浩くんのトイレにいて……」
「いいさいいさ。急いでいたんだろう?」
「うん……。そうだったみたい……」
 そこまで言って、玲奈は何か思い当たるように沈黙した。
「ねえ? わたし、一浩くんの家に来るのは初めてだよね。
 なぜだろう……。
 ――真子さんの部屋にいってもいいかな?」
「別に構わないけれど……? 真子になにかようか?」
「あ、うん……ちょっと、気にかかることがあって……」
 そういうと玲奈は、案内のために先に進む一浩の後ろを、まるで夢遊病者のように、フラフラしたあしどりでついていった。
 そして真子の部屋のドアの前に立つと、なにかに確信したような表情をした。
「間違いない。この部屋のドア……。覚えてる……」
 そして玲奈は真子の部屋をノックしてからドアを開けて、部屋の中をのぞくと、ちからづよくうなずいた。
「あ、お兄ちゃんと……玲奈先輩。ようこそあたしの部屋へ!」
 真子は、恥ずかしそうに向かい入れる。
「真子さん。ごめんね。すごく失礼なことだと思うけれど、ちょっと部屋を改めさせてね」
 玲奈は真子が返事をする前に、まっすぐにベッドに進むと、ベッドの下のすきまに腕を伸ばした。
「あ!」
「そこは!」
 一浩と真子が、同時に叫んだ。
 ベッドの下から戻した手には、さっき一浩が読んでいた成人向け百合同人誌がにぎられていた。
「やっぱり!」
 玲奈は確信した顔をすると、同人誌を動かぬ証拠であるようにふたりの目の前に差し出した。
 一浩と真子は理解した。
 一浩はワケありのゼリージュースだと言っていた。その欠陥が、股間の部分が自分の物になってしまうことだとふたりとも思っていたのだ。ところが、玲奈の態度をみていれば、欠点はそれだけではなく、もうひとつあったらしい。それは、憑依されている間、憑依されている人の意識があるということだった。
 玲奈は、おそらくぼんやりだろうが、憑依されていた時のことを憶えているらしい。
 真子は一浩に小声で言う。
「お兄ちゃん、どうするのよ。憑依中の玲奈先輩は意識がない……って言ったのはお兄ちゃんよ?」
 一浩も同じく小声で返した。
「だって、ふつう、憑依した人の声が聞こえなければ意識がなくなったものだとおもうだろう。
 それに、ふたつも欠陥あるとはおもわなかったし」
「ああ。こんどこそ、ほんとうに、玲奈先輩に嫌われた! もうおしまいよ! あたしのほのかな恋心は、お兄ちゃんのせいでこなごなに粉砕された!!」
「おれだって、玲奈になんてわびればいいか……」
 あせる一浩と真子。
 そんなふたりに、鋭い視線をしながら、玲奈は尋問を始めた。
「やっぱりね。ぼんやりと、なんか夢のような感じでしか憶えていないけれど、この記憶は事実だったのね。
 ――一浩くん。あなたはわたしに憑依して、わたしの体を操った。
 そして、わたしになった一浩くんは、真子さんと、エッチなことをして楽しんだ。
 ふ〜ん。一浩くんはわたしの体をあやつりたかったんだ?」
「そ、それは……はい、そうです……」
「そして真子さん。あなた、わたしのことを本気で好きだったのね? 女の子どうしなのに」
「あうう……」
 そんなふたりをみて、玲奈はため息を吐きながら言った。
「まあいいわ。一浩くんは、真子さんのためをおもってのこと。真子さんも、わたしのことが好きゆえのことだったみたいだし。
 わたしの体を好き勝手に使ったことは、許してあげる」
「へ?」
 一浩がおもわず目を見開いて驚く。
「だから、今回のことは許してあげるっていってるの」
「いや、ちょっとまて! 自分の体を勝手に操られて、しかもエッチなことまでやらされたんだぞ?
 それをそんなにあっさりと許す気なのか?」
「もちろん、ただで許す気はないわ。
 条件がひとつある」
 一浩と真子に、緊張が走る。
「実はね。わたしも一浩くんの……男の子の快感がわすれられないの!
 だからね。これからも時々、一浩くんに憑依してもらって、男の子の快感を楽しませてもらいたいの」
「それってつまり、また憑依しろってことか?」
「うん。だって、男の子の快感、すごく新鮮で気持ちよかったから」

    *

 その日から。
 一浩は時々玲奈の体を借りて(もちろん、玲奈の承諾をうけてから)、真子とエッチなことをするようになった。
「真子、出すぞ!」
「お兄ちゃん……玲奈先輩……。わたしのお口にいっぱい出して!」
 真子は憧れの玲奈とエッチなことができる。玲奈は男の一物の快感を味わえる。そして一浩は玲奈の体で女の快感を味わえる。
 玲奈に憑依している一浩と、憑依されている玲奈は、真子の口内に射精しながら。そして真子はあこがれの玲奈の精液を口いっぱいにほおばりながら。
 三人はこれからもこんな関係が続くといいなと願いながら、快感としあわせな気持に包まれていた。

(おわり)


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