「プレゼント (前編)」

(ファシット・ファクトリー・シリーズ)
 

作・JuJu
 
 
 
 
 
 

「恵美{めぐみ}、俺の他に男が出来たって本当か?」

 高校からの帰り道、俺は言った。
 

「その男と最後まで行ったって……」

「誰がそんなこと言ったの?」

「昼休み廊下を歩いていたら、女達が噂していたんだ」

「洋輔{ようすけ}は、そんな噂を信じてるわけ?」

「そういう訳じゃないけどさ。でも……」

「あたしってそんなに信用ない?」

 恵美は足を早めた。
 

「おい待てよ、実際の所どうなんだよ!」

「……」

「言えよ! 他に男がいるのかよ?」

「バカ!!」

 恵美はいきなり怒鳴ると、走り去ってしまった。
 

「なんだよ。いないならいないって、ハッキリ言えばいいじゃないか」
 

 結局恵美に男がいるのか分からなかった。これ以上聞いても答えてくれないだろう。
 俺だって恵美の事を信用しているつもりだ。
 だけど、もしかしたら恵美が他の男とつき合っていて、セックスまでしていると思うと……。
  俺は家に帰る気もせず、街をウロウロしていた。
 
 
 

               §
 
 
 

 悩みに没頭していためか、気が付くと見た事のない裏通りに来ていた。
 人気のない道に、喫茶店があった。
 

『喫茶店ファシット』
 

 俺は誘われるように中に入った。
 

「いらっしゃいませ〜!」

 金髪で蒼い目の小学生位の子が迎えてくれた。ウェイトレスらしい。
 俺は英語なんてできないぞ?
 

「ア、ア、アイキャンノット・イングリッシュ……」

「日本語で大丈夫ですよ。私はロシア人と日本人のハーフですから」

「日本語が通じるのか。よかった」

「奧のテーブルにどうぞ。ここはコーヒー専門店なのでコーヒーしかありませんがよろしいですか?」

「ああ。コーヒーでいいよ」

「マスター、ブレンド一つ入りました」
 

 店の奥にある、学校の音楽室に置いてある様なデカいピアノを弾いていた、20代くらいの男は立ち上がると、キッチンに向かった。
 あの人がこの店のマスターだったのか。
 店の中にコーヒー豆を挽く音が響き、コーヒーの薫りが立ちこめる。
 

「お客様、サービスでピアノの曲にリクエストを承っております。
  何かリクエストはありますか?
 お客様?」

「あ?」
 

 俺は恵美の事を考えていた。
 いつのまにか、目の前にコーヒーが置いてある。
 女の子はトレーを隣のテーブルに載せると、俺のテーブルの向かいに座った。
 

「占いはいかがですか?」

 テーブルの上に、トランプの様な物をだす。
 

「タロットカードです」

 俺は占いに興味がない。
 俺が黙っていると、女の子はテーブルにタロットカードを並べ始めた。
 

「恋人でお悩みですね」

「わかるのか?」

「霊感は、母譲りなんです」

 女の子は笑った。
 

「あなたは恋人が、二股かけているかもしれないと心配している……。
  その原因が、恋人と男の人が……その……肉体関係をもっているかもしれないから……」

「アイツに男がいるか、わかるか?」

「ごめんなさい。私は目の前にいる人の事しか占えなんです。その女をここに連れて来て頂ければ占えますが」

 それは無理だ。恵美を連れてきて占ったら、怒るに違いない。
 

「その代わり言ってはなんですが、マスターにお願いしてみます。マスターならきっと力になってくれると思いますよ」
 

 女の子はピアノを弾いているマスターの所に行った。
 マスターは俺をちらりと見ると立ちあがり、店の奧に行ってしまった。
 しばらくすると帰って来て、ウェイトレスの女の子に何かを渡した。
 マスターは女の子の耳元で、何かを話している。
 女の子は俺の元に戻ってくる。
 マスターはまたピアノを弾き始めた。
 

「ごめんなさい。こんな物しかないんですって」

 彼女はテーブルの上に、二本の小ビンを置いた。中で緑色の液体が揺れている。
 

「マスターが言うには憑依できるゼリージュースと言うのがあるんですって。
 マスターも真似して作って見たんだけど、結局作れなくて。
 これがその失敗したゼリージュース。
 このゼリージュースを飲むと他の人に憑依できるわ。ただし憑依出来るのはたったの数分。
 注意して欲しいのは、憑依する他になにか効果があるらしいの。捨てるつもりだったから、どんな効果があるか確かめていないんだって。
 こんな物だけど、役に立つならあげるって言っているわ。使い方はあなたしだいだけど」
 

 数分でも他人に憑依できると言うのはのはすごいと思うが、副作用の、謎の効果が気になる。
 第一、話がどこまで信用できるか分からない。だが、恵美に男がいるか知るには、これしか方法がない。
 俺はこのゼリージュースを飲む事を決心をした。
 

 

               §
 
 
 

 ろくに眠れないまま、朝が来た。
 台所に行くと、母さんが朝食の準備をしていた。
 オヤジは日曜日だというのに休日出勤だそうだ。朝食も食わないで会社にいったらしい。
 俺は自分の部屋に戻ると、ゼリーを見た。
 恵美に乗り移って、彼女の股間を確かめる。
 恵美が処女ならば彼氏はいない。処女でなければ……それはその時考えよう。

 ゼリーは二本ある。
 一本目は本当に憑依出来るのか、確かめる為に使う事にした。
 ちょうど母さんが台所にいる。母さんに憑依することに決めた。
 俺はゼリージュースを飲んだ。
 ドロリとしてかなり甘かった。
 飲むと俺の体が透明になっていった。
 なるほど、透明人間になれば、相手に気づかれずに憑依出来るわけだ。
 
  俺が台所に行くと、母さんは鼻歌を歌っていた。
 憑依するには、相手の体にくっつけばよかったんだよな。
 俺は母さんに近づく。
 透明人間だと分かっていても、ついつい後ろから近づいてしまう。
 これってなんか、母さんを襲うみたいだな。これからする事は、それに近いのだが。
  でも俺は透明人間なんだ。失敗しても犯人は俺だとは分からないだろう。
 俺は一気に母さんに後ろから抱きついた。
 

「きゃっ!」
 

 俺の体は、母さんの体に染み込んでいった。
 体の中に入っていく事に俺は驚いたが、母さんが振り返ろうとしたため、俺は一気に母さんの中に入る。
 まるで、母さんの形をしたゼリーに手を突っ込むような感覚だ。
 一瞬、俺の頭の中が真っ白になった。すぐに体の感覚が戻ってくる。
 最初に気が付いたことは、胸が重いと言うことだった。
 俺の目は自然に、自分の胸に行く。
 黒いセーターと白いエプロンに包まれた、母さんの胸があった。
 

「あのゼリー本物だったんだ」
 

 俺が言うと、母さんの声が出た。
 間違いない、俺は母さんに憑依したんだ。
 実験は成功した。
 だが、それから先を考えていなかった。
 ゼリーの効果は数分。何をしようにも、短すぎる。
 俺はしばらくボーっと立って待つ事にした。
 わずか数分とは言え、ただ待っているだけの時間は退屈だ。
 仕方なく、俺は母さんの胸を触ってみた。
 

「おおきいな」

 柔らかくて、弾力がある胸。
 

「母さんって巨乳だったんだな。隠しているなんてもったいないよ。
 それに台所に立つのなら、裸エプロンで立てばいいのに」
 

 よーし。せっかく憑依しているんだから、裸エプロンになってやろう!
 俺がそう思って、エプロンを脱ごうとした時、ものすごい尿意を感じた。
 俺は慌ててトイレにかけ込む。
 便器の前に立つとスカートをまくり上げた。パンツを下ろす。チンポを掴もうとしたが、指は空を切った。
 そうだった、今は母さんの体に憑依しているのだ。
 あせってて、忘れていた。
 俺は便器に座ると、一気に小便が出た。 出すものを出して立ち上がると、体が急に軽くなった。
 振り向くと、母さんが便器に座っている。母さんは眠っている様に動かない。
 俺は母さんの体から抜け出ていた。
 どうやら、小便をすると抜け出るらしい。
 透明だった俺の体も、色が付き始めている。
 それにしても、母さんが便器に座っている姿を見れるとは思わなかった。
 小便をするときに、スカートをまくりすぎたのだろう。
 母さんの大事なところまでしっかりと見えた。
 パンツは片方の足首にかけて、白くて細い足を隠すことなくスカートをまくり上げ、大股を開いて便器に座っている母さん。
 俺が興奮しながら見ていると、母さんが唸りだした。
 

「う……ううん……」
 

 どうやらゼリーの効果が切れ掛かっているようだ。
 俺の体を見ると、体の色が戻っている。
 慌ててトイレから抜け出ると、自分の部屋に戻った。
 

「ふー。でも、母さんってあれで結構美人なんだな。いままで気が付かなかったけど、胸もでかいし、足だって綺麗だった」

 しばらくすると、母さんの声がした。
 

「洋輔、ご飯よー!」

「ああ。今行くよ」
 

 どうやら俺だとはばれていないらしい。
 俺は台所にいって驚いた。
 母さんが、裸にエプロンだけをしている。
 エプロンが、母さんの大きな胸の形にゆがんでいる。
 エプロンが白いので、かすかに乳首まで透けて見える。
 いや、良く見ると、股間の黒い物まで透けている。
 

「母さん、そのカッコウ!」

「えっ? カッコウがどうしたの?」

「なんで裸にエプロンなんだよ?」

「何言っているのよ? 台所に立つ時は裸にエプロンでしょ? 当然じゃない。
 それに、私って巨乳なんだし、隠しておくのってもったいないじゃない?」
 

 母さんは笑った。
 
 

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