電車に揺られて20分。 車窓を流れる景色なんて全く記憶に残らない。 今はあのゼリージュースを手に入れることだけが頭の中を支配していた・・・ ゼリージュース!(赤色)中編
最寄の駅に着くと、急いで改札口を出てメモしておいたTSFショップという店を探す。 「いらっしゃい」 奥から中年男性の声が聞こえる。 「初めてのお客さんだね。どうしてこの店が分かったんだい」 奥にあるカウンターでニコニコしながら俺を見ている中年男性が問い掛けてきた。 広幸:「あ、あの、インターネットで見つけたんです」 「インターネットで?」 広幸:「はい。食品会社のサイトで宣伝していたのを見たんです」 「・・・・おかしいな。あれは特定の人しか見れないようにしていたはず・・・何かの手違いが
顎に手を当てながら少し険しい表情をする男性。 「食品会社のページを見たのなら、ゼリージュースをお求めかな?」 俺はその言葉にハッとし、男性の方へ振り向いた。 「やっぱりそうか。それならここにあるよ」 男性がカウンターの横に置いてあるガラス張りの冷蔵庫を指さすと、そこには 広幸:「あっ、それ!」 「やっぱり。どの味がほしいんだい」 男性はガラス戸をあけると、3つの味のゼリージュースをカウンターの上に置いた。 広幸:「これ下さいっ!」 興奮していたので、思わず声が裏返ってしまう。 「これはどういった飲み物か分かるよね」 広幸:「・・はい」 「それじゃあ、126円頂きます」 広幸:「あの・・4つ位まとめて買いたいんですけど」 「それは無理だよ。だって他にもほしい人がたくさんいるんだから。1人1個かぎりなんだ」 広幸:「そ、そうなんですか・・」 「また使い終わったら買いにおいで。その時はまた1つだけ売ってあげるから」 広幸:「あ、はい」 俺はとにかく126円支払うと、まだ冷たいゼリージュースをカバンに詰め込み、 玄関のドアを開け、ただいまの一言を言う時間も惜しんだ俺は息を切らせながら階段を 広幸:「はぁ、はぁ、はぁ・・・」 精神的な緊張感、体力的な疲れ・・・今、心臓を激しく活動させているのは一体どっちなんだろう。 俺はなぜか震えている手でカバンを開けると、まだ若干冷たいゼリージュースを取り出した。
広幸:「よ、よし。使い方は・・・」 俺はボトルに書かれている説明書きをじっくり読み始めた。 広幸:「な、なるほど・・・でも本当にそんなことが出来るんだろうか・・・」 現実的ではない事柄については極力信用しない俺だったが、今回は真実味があるような きっとこれは真実だ・・・ そう決め付けた俺は次の土曜日、学校が休みの日に妹とデートさせてやると省吾に伝えた。 省吾はすごく喜んでいた。 そして金曜日の夜・・・ 広幸:「雪菜、明日は部活なのか?」 雪菜:「うん。朝から練習があるけど。それがどうしたの?」 広幸:「あ、いや、なんでもない」 明日は朝から学校に出て行くようだ。 金曜日、夜中の12時30分。 4時間しか眠れないか・・・ 目を閉じて眠ろうとするが・・・ ・・・2時間ほど寝たのだろうか? 広幸:「うう・・・も、もう4時半か・・・ね‥眠い・・」 まだ眠気の方が勝っている。 広幸:「んん・・・・やばいか・・・そろそろ起きないと・・・」 と言って起きはじめた時には4時50分になっていた。 広幸:「んあああ〜っ」 精一杯のあくびと背伸びをした俺は、まだ暗い窓の外を眺めると、 フラフラしてまだ本調子ではない。 広幸:「ふぅ・・・」 階段を上がり、また自分の部屋に入る。 広幸:「要はこれを飲んでしばらくすると身体が透明になるんだな。で、相手の身体に溶け込めば
ぶつぶつ独り言を言いながら、時間もあまり無いので早速裸になり、 キャップを開け、ゼリー状のジュースを飲み始める。 ゴミ箱に容器を捨てると、そのまましばらく待つ事にした。 5分ほど経ったころから、何となく身体が軽くなるような感覚を覚える。 広幸:「や、やっぱり本当だったんだ!よ、よかった・・・」 これなら計画通り省吾にデートさせてやれる! 俺はまるでトランポリンのように感じる床を歩くと、ドアを開けて隣にある雪菜の部屋をと向かった。 雪菜の部屋の前。 雪菜:「ん・・・・」 雪菜が寝返りを打つ。 すごい緊張感だ。 本当に気付かれないのだろうか・・・ 不安な気持ちが大きく膨れ上がる。 でも・・・・ ここでやめる訳にはいかない。 俺はそっとベッドに足を置いた。 横向きに寝ている雪菜をまたぐようにしてベッドに立ち上がった俺は、 まるでパジャマの向こうに人の皮膚を感知したかのように、俺の身体は 俺は抱っこちゃん人形の様に雪菜に覆い被さった。 雪菜:「んん・・・」 それでも雪菜は起きる様子も無く、ただすやすやと寝ているばかり。 何となく身体全体が雪菜の中に入り込んだことが感覚で分かる。 俺は目をあけても何も見えない状態の中、少し恐怖感も感じながら そして、身体に力を入れて重力に逆らうように起き上がる。 すると、急に視界が開けて薄暗い雪菜の部屋が現れたのだ。 広幸:「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」 俺は少し息を乱したまま俯いてみた。 広幸:「えっ・・」 慌てて足を曲げると・・・ 雪菜のパジャマの中から半透明になった足がニョキッと出てきたのだ。 広幸:「わっ!」 ビックリした俺はベッドの上から転げ落ちてしまった。 ベッドですやすやと寝ている雪菜。 広幸:「・・・・・」 それは、今、目の前で気持ちよさそうに寝ている雪菜の身体だと確信したから。 広幸:「マ・・マジ・・・」 そう言った声だって、雪菜そのもの。 5分ほど経った今では、もう一人の雪菜が裸になって立っているとしか思えなくなっていた。
俺が思っていた以上に「女性」となっていた。 広幸:「・・・り、立派に育ったもんだ・・・」 まるでオヤジのようなセリフを、雪菜の声でしゃべる。 広幸:「やっぱり本当だったんだ。これで俺が雪菜の代わりにデートしてやれるぞ」 小さくガッツポーズをした俺は、タンスから適当にそれらしい雪菜の下着と私服を取り出すと
広幸:「1日だけお前の身体と服を借りるからな!」 と小さくつぶやき、自分の部屋へと戻って行った・・・ 雪菜(広幸):「しかし大成功だよな。本当に変身できるなんて」 電気をつけた明るい部屋。 妹に悪いと思いながらも、ちょっとだけ胸に手を当ててみる。 雪菜(広幸):「あっ・・・うわっ、こんな声出しちゃったよ」 雪菜も彼氏が出来たらこんな声出すことになるのかと思うと 雪菜(広幸):「すごいな・・・こうやって胸を揉んでいるだけなのに・・」 身体が徐々に火照りだしている・・・・がっ! まさかこんなに早く起きるなんて! 予定では家族が起きる前に家を出て、省吾との待ち合わせの時間まで それなのに・・・ 今、雪菜に気付かれたら非常にマズい事態になる!! とにかく部屋の電気を消し、俺が起きていないように見せかける。 雪菜の部屋から物音がする。 もしかしたら親も起きて来るかもしれない。 俺は家からの脱出方法をいろいろと考えた。 雪菜(広幸):「ま、まずは服を着なければ・・」 俺は音を立てないように薄暗い部屋の中で服を着始めた。 よ、よし・・・準備完了だ・・・・ 額に汗が滲んでいるのが分かる。 俺はじっと耳を澄まして雪菜の行動に神経を集中させていた。 1階でドアを開ける音がする。 雪菜(広幸):「い、いまだっ!」 俺はとっさに部屋を出ると、出来るだけ足音を立てないように階段を駆け下りた。 玄関のげた箱から雪菜の適当な靴を取り出すと、それを穿きながら 雪菜(広幸):「や・・やったぁ!脱出成功っ!」 靴が脱げそうになりながらも、雪菜になった俺はこの小さな身体でリュックを背負いながら ゼリージュース!(赤色)中編・・・・・おわり あとがき さてさて、今回は広幸が妹の雪菜の身体を手に入れました。 さあ、雪菜として省吾と上手く接する事が出来るのでしょうか。 それでは最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。 |