電車に揺られて20分。
車窓を流れる景色なんて全く記憶に残らない。
今はあのゼリージュースを手に入れることだけが頭の中を支配していた・・・
 
 
 

ゼリージュース!(赤色)中編
 
 
 

最寄の駅に着くと、急いで改札口を出てメモしておいたTSFショップという店を探す。
結構古びたビルが立ち並んでいるところなので分かりにくかったのだが、
何とか目的のビルを見つけると、地下へと繋がる階段を1段ずつ降りて行った。
額に汗を滲ませながら、階段を降りきった廊下の突き当たりにあるドアの前に立つ。
木製のドアには、「TSFショップ」という小さな看板が掲げられていたので、
ドキドキしながらドアノブを持ち、そっと手前に引いてみた。
 

「いらっしゃい」
 

奥から中年男性の声が聞こえる。
俺はドアを開ききると、妙に明るい店内へと足を運んだ。
なんてことなはい。
6畳ほどのスペースに並べられているのは市販されているジュースや食べ物ばかり。
雰囲気はまるでコンビニそのものだ。
ただ地下という事で窓は無く、コンクリートの白い壁が周りを覆っている。
 

「初めてのお客さんだね。どうしてこの店が分かったんだい」
 

奥にあるカウンターでニコニコしながら俺を見ている中年男性が問い掛けてきた。
 

広幸:「あ、あの、インターネットで見つけたんです」

「インターネットで?」

広幸:「はい。食品会社のサイトで宣伝していたのを見たんです」

「・・・・おかしいな。あれは特定の人しか見れないようにしていたはず・・・何かの手違いが
 あったのかもしれないな」
 

顎に手を当てながら少し険しい表情をする男性。
俺はそんなことよりも、一刻も早くあのゼリージュースがほしかったので男性の話を
適当に聞き流しながら辺りをキョロキョロと見回して調べていた。
 

「食品会社のページを見たのなら、ゼリージュースをお求めかな?」
 

俺はその言葉にハッとし、男性の方へ振り向いた。
 

「やっぱりそうか。それならここにあるよ」
 

男性がカウンターの横に置いてあるガラス張りの冷蔵庫を指さすと、そこには
サイトに乗っていた写真と同じ形をした飲み物が置いてあった。
 

広幸:「あっ、それ!」

「やっぱり。どの味がほしいんだい」
 

男性はガラス戸をあけると、3つの味のゼリージュースをカウンターの上に置いた。
俺は急いで駆け寄ると、赤く澄んだイチゴ味のゼリージュースを手に取った。
 

広幸:「これ下さいっ!」
 

興奮していたので、思わず声が裏返ってしまう。
 

「これはどういった飲み物か分かるよね」

広幸:「・・はい」

「それじゃあ、126円頂きます」

広幸:「あの・・4つ位まとめて買いたいんですけど」

「それは無理だよ。だって他にもほしい人がたくさんいるんだから。1人1個かぎりなんだ」

広幸:「そ、そうなんですか・・」

「また使い終わったら買いにおいで。その時はまた1つだけ売ってあげるから」

広幸:「あ、はい」
 

俺はとにかく126円支払うと、まだ冷たいゼリージュースをカバンに詰め込み、
急いで店を出た。
電車の中で見たいとも思ったが、この秘密めいた飲み物を他人には見せたくないっ!

玄関のドアを開け、ただいまの一言を言う時間も惜しんだ俺は息を切らせながら階段を
駆け上がると、勢いよくドアを開けて自分の部屋に入った。
 

広幸:「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
 

精神的な緊張感、体力的な疲れ・・・今、心臓を激しく活動させているのは一体どっちなんだろう。

俺はなぜか震えている手でカバンを開けると、まだ若干冷たいゼリージュースを取り出した。
ゼリージュースと言うだけあって、ボトルを少し振ってみるとプルプルと液体が震えているのが分かる。
 

広幸:「よ、よし。使い方は・・・」
 

俺はボトルに書かれている説明書きをじっくり読み始めた。
やたらと細かい時でたくさん書いているので読みにくかったが、とにかく一通りの説明を
読んでみる。
 

広幸:「な、なるほど・・・でも本当にそんなことが出来るんだろうか・・・」
 

現実的ではない事柄については極力信用しない俺だったが、今回は真実味があるような
気がしてならなかった。

きっとこれは真実だ・・・

そう決め付けた俺は次の土曜日、学校が休みの日に妹とデートさせてやると省吾に伝えた。

省吾はすごく喜んでいた。
もう後戻りする事は出来ない。
 
 

そして金曜日の夜・・・
 

広幸:「雪菜、明日は部活なのか?」

雪菜:「うん。朝から練習があるけど。それがどうしたの?」

広幸:「あ、いや、なんでもない」
 

明日は朝から学校に出て行くようだ。
となれば、かなり早い時間に準備をしなければならない。
たしか7時には家を出るはずだから、6時すぎには起きるか。
それなら余裕をみて5時に実行するべきだ・・・

金曜日、夜中の12時30分。
家族が寝静まった頃、俺は机の置くに閉まっておいたゼリージュースを冷蔵庫に入れた。
あとは4時30分くらいに起きて飲むだけだ。
部屋に戻った俺は枕もとの目覚し時計をセットし、電気を消した。

4時間しか眠れないか・・・

目を閉じて眠ろうとするが・・・
興奮してしまってなかなか寝付けない・・・
 
 

・・・2時間ほど寝たのだろうか?
いつの間にか寝てしまったようで、アラーム解除のボタンを押した目覚し時計の
針は4時半を指していた。
 

広幸:「うう・・・も、もう4時半か・・・ね‥眠い・・」
 

まだ眠気の方が勝っている。
俺は布団の中でうつらうつらしながら眠気と戦っていた。
さらに10分が経過する。
 

広幸:「んん・・・・やばいか・・・そろそろ起きないと・・・」
 

と言って起きはじめた時には4時50分になっていた。
 

広幸:「んあああ〜っ」
 

精一杯のあくびと背伸びをした俺は、まだ暗い窓の外を眺めると、
目をこすりながらベッドから這い出た。

フラフラしてまだ本調子ではない。
何度もあくびをしながら階段を降りると、冷蔵庫に冷やしておいたゼリージュースを取り出す。
そのジュースを見た瞬間、やっとはっきりと目が覚めた感じがした。
 

広幸:「ふぅ・・・」
 

階段を上がり、また自分の部屋に入る。
俺は電気を付け、もう1度説明書きを読んでみた。
 

広幸:「要はこれを飲んでしばらくすると身体が透明になるんだな。で、相手の身体に溶け込めば
          いいんだ。でも不思議だよな。身体の重さが無くなるなんて・・・」
 

ぶつぶつ独り言を言いながら、時間もあまり無いので早速裸になり、
ゼリージュースを飲むことにした。

キャップを開け、ゼリー状のジュースを飲み始める。
やはり普通のジュースとは違って、何とも不思議な飲み心地だったが、
つめたく冷やしていたイチゴ味はとても美味しい。
ボトルを手でへこましながら、全てのゼリージュースを飲み終えた俺。

ゴミ箱に容器を捨てると、そのまましばらく待つ事にした。
目覚し時計で10分経過するのを待ちわびる。

5分ほど経ったころから、何となく身体が軽くなるような感覚を覚える。
そして約10分ほど経った頃には、俺の身体は全く見えなくなっていた。
下を見ても床が見えるだけ。いや、目を凝らすと微妙に赤く見えるような気が
しないでもない。
 

広幸:「や、やっぱり本当だったんだ!よ、よかった・・・」
 

これなら計画通り省吾にデートさせてやれる!
 

俺はまるでトランポリンのように感じる床を歩くと、ドアを開けて隣にある雪菜の部屋をと向かった。

雪菜の部屋の前。
そっとドアを開けると、ベッドですやすやと眠っている雪菜の姿が目に飛び込んでくる。
まるで夜這いをするような緊張感の元、俺はベッドの側まで歩いていくと、そっと掛け布団を捲り
雪菜のパジャマ姿をしばらく眺めた。
 

雪菜:「ん・・・・」
 

雪菜が寝返りを打つ。
俺は驚いて1歩下がったが、雪菜はそのまま眠っている。

すごい緊張感だ。

本当に気付かれないのだろうか・・・

不安な気持ちが大きく膨れ上がる。

でも・・・・

ここでやめる訳にはいかない。

俺はそっとベッドに足を置いた。
重さが無いせいか、ベッドは全く歪もうとはしない。
まるで空気のような感覚。

横向きに寝ている雪菜をまたぐようにしてベッドに立ち上がった俺は、
しゃがんで四つん這いになると、そのままゆっくりを沈んで
雪菜の身体に触れていった。

まるでパジャマの向こうに人の皮膚を感知したかのように、俺の身体は
パジャマに染み込み始め、そしてその向こうの雪菜へと染み込んでゆく。

俺は抱っこちゃん人形の様に雪菜に覆い被さった。
 

雪菜:「んん・・・」
 

それでも雪菜は起きる様子も無く、ただすやすやと寝ているばかり。
その間にも俺の身体がじわじわと雪菜に染み込んでいく。
別に手は手、足は足というわけではないが、何となくそうなるように
手と手を重ね、足を伸ばして雪菜の足に這わすようにする。
ほとんど透明なのでどのくらい染み込んでいるのはよく分からないが、俺は
雪菜の頭に自分の顔を触れさせた。
雪菜の頭がだんだん近づいてきて、片目が雪菜の中に埋れる。
真っ暗で何も見えなくなった片目。
そして、もう片方の目も雪菜の頭へと沈んでいった・・・

何となく身体全体が雪菜の中に入り込んだことが感覚で分かる。

俺は目をあけても何も見えない状態の中、少し恐怖感も感じながら
心の中で10数えた。

そして、身体に力を入れて重力に逆らうように起き上がる。

すると、急に視界が開けて薄暗い雪菜の部屋が現れたのだ。
 

広幸:「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」
 

俺は少し息を乱したまま俯いてみた。
すると、まるで雪菜の上に乗っているような感じに見えた。
いや、よく見てみると、下半身が雪菜の身体に埋まって見える!?
 

広幸:「えっ・・」
 

慌てて足を曲げると・・・

雪菜のパジャマの中から半透明になった足がニョキッと出てきたのだ。
 

広幸:「わっ!」
 

ビックリした俺はベッドの上から転げ落ちてしまった。
でも、身体が軽いせいか落ちたという感覚がない。

ベッドですやすやと寝ている雪菜。
俺は立ち上がると、徐々に色づき始めた自分の身体を見て言葉を失った。
 

広幸:「・・・・・」
 

それは、今、目の前で気持ちよさそうに寝ている雪菜の身体だと確信したから。
俺の身体が雪菜の身体へと変化してしまったのだ。
 

広幸:「マ・・マジ・・・」
 

そう言った声だって、雪菜そのもの。
だんだん重力を感じるようになり、身体が肌の色へと染まってゆく。
そして・・・

5分ほど経った今では、もう一人の雪菜が裸になって立っているとしか思えなくなっていた。
黒いセミロングの髪が両肩に触れて何だかくすぐったい。
手のひらだって女の子そのままだ。
そして体つきは・・・・

俺が思っていた以上に「女性」となっていた。
知らなかった妹の成長ぶり。
俺は身体を触りまくって、そのスベスベした妹、雪菜の身体になった事を実感した。
 

広幸:「・・・り、立派に育ったもんだ・・・」
 

まるでオヤジのようなセリフを、雪菜の声でしゃべる。
そのギャップが何とも不思議な感じだった。
 

広幸:「やっぱり本当だったんだ。これで俺が雪菜の代わりにデートしてやれるぞ」
 

小さくガッツポーズをした俺は、タンスから適当にそれらしい雪菜の下着と私服を取り出すと
そっと寝ている雪菜に近づき、耳元で
 

広幸:「1日だけお前の身体と服を借りるからな!」
 

と小さくつぶやき、自分の部屋へと戻って行った・・・
 
 
 

雪菜(広幸):「しかし大成功だよな。本当に変身できるなんて」
 

電気をつけた明るい部屋。
先ほどの薄暗い雪菜の部屋とは違ってはっきりと身体の違いが分かる。
これが妹の声、そして身体なのだ。

妹に悪いと思いながらも、ちょっとだけ胸に手を当ててみる。
柔らかいその胸の感触は、俺の彼女を思い出させる。
でも、胸を触られているという感覚は全く初めての体験で
俺は思わず小さな喘ぎ声をだしてしまった。
 

雪菜(広幸):「あっ・・・うわっ、こんな声出しちゃったよ」
 

雪菜も彼氏が出来たらこんな声出すことになるのかと思うと
兄としては少し複雑な気分。
しばらく胸を揉んでいると、だんだん気持ちいいという感覚が
高ぶってくるのがよく分かる。
 

雪菜(広幸):「すごいな・・・こうやって胸を揉んでいるだけなのに・・」
 

身体が徐々に火照りだしている・・・・がっ!
隣の雪菜の部屋で目覚し時計が鳴り出したのだ。
スッと血の気が引いくのを覚える。
 

まさかこんなに早く起きるなんて!
 

予定では家族が起きる前に家を出て、省吾との待ち合わせの時間まで
適当に暇つぶしをしようと考えていたのだ。

それなのに・・・

今、雪菜に気付かれたら非常にマズい事態になる!!

とにかく部屋の電気を消し、俺が起きていないように見せかける。
部屋に入ってはこないだろうが、もし入ってこられたら大変だ。

雪菜の部屋から物音がする。
やはり起きたようだ。
多分今から服を着替えて下に降りるのだろう。

もしかしたら親も起きて来るかもしれない。
ならば雪菜が下に降り、キッチンへ向かった時に急いで玄関から出るしかないか・・・

俺は家からの脱出方法をいろいろと考えた。
 

雪菜(広幸):「ま、まずは服を着なければ・・」
 

俺は音を立てないように薄暗い部屋の中で服を着始めた。
薄い青色のスベスベしたパンティを穿くと、これまた薄い青色のブラジャーを手にとり
肩紐を通す。
そして、何度も何度も失敗しながらも背中のホックを止めると、適当に胸を
ブラジャーのカップに押し込んだ。
そして薄手の赤と白の長袖のボーダーシャツを着て、デニム生地の膝が隠れるくらいの
青いスカートを穿く。
素足に白くて短い靴下を履くと、たぶん普段着の雪菜が完成したのだろう。
鏡が無い俺の部屋で確かめる事は出来なかったが、手ぐしで髪を整えると
俺が持っているリュックに携帯電話とハンカチ、財布、家の鍵を入れる。
 

よ、よし・・・準備完了だ・・・・
 

額に汗が滲んでいるのが分かる。
それと同時に、雪菜の部屋のドアが開いた音がして、その後階段を降りていく足音が
聞こえた。

俺はじっと耳を澄まして雪菜の行動に神経を集中させていた。

1階でドアを開ける音がする。
そしてしばらく何も聞こえない・・・
 

雪菜(広幸):「い、いまだっ!」
 

俺はとっさに部屋を出ると、出来るだけ足音を立てないように階段を駆け下りた。
雪菜はトイレに入ったはず!

玄関のげた箱から雪菜の適当な靴を取り出すと、それを穿きながら
扉を出る。
 

雪菜(広幸):「や・・やったぁ!脱出成功っ!」
 

靴が脱げそうになりながらも、雪菜になった俺はこの小さな身体でリュックを背負いながら
駆け出したのだった・・・
 
 
 
 

ゼリージュース!(赤色)中編・・・・・おわり
 
 
 

あとがき

さてさて、今回は広幸が妹の雪菜の身体を手に入れました。
妹の体つきをよく知らなかった広幸にとっては、高1になる
雪菜の身体を始めて見たわけであってとてもドキドキしたと思います。

さあ、雪菜として省吾と上手く接する事が出来るのでしょうか。
それは次回のお楽しみと言う事で!

それでは最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
Tiraでした。


 
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