省吾(しょうご):「マジでかわいいって、お前の妹!」

広幸(ひろゆき):「そうかな」

省吾:「そうかなって。お前自分の妹の事、かわいいとは思わないのかよ」

広幸:「そりゃあまあな・・・」

省吾:「高1なんだって?」

広幸:「ああ、でも何で知ってるの?」

省吾:「この前、お前の家に行った帰りに玄関でぱったり会ったからだよ。
         そのときに歳を聞いてみたらお前の2つ下だって言うからさ」

広幸:「そっか。話したのか」

省吾:「かわいい声だよなあ。濁りがないっていうか透き通っているっていうか・・」

広幸:「ふ〜ん・・いつも聞いているからそんな風には思わないな」

省吾:「お前は贅沢なんだよ。あんな妹がいたら他の女なんか目に入らないだろ」

広幸:「はぁ?何言ってんだよ」

省吾:「それくらいかわいいって言ってんだよ」

広幸:「まあ、かわいいのはかわいいかもな。よく男から電話がかかってくるみたいだし」

省吾:「あ〜あ、もう彼氏いるのかなあ」

広幸:「いないって」

省吾:「マジで!」

広幸:「本人がそう言っているんだからいないんだろ・・・たぶん」

省吾:「おい広幸!俺を紹介してくれ!」

広幸:「は・・はぁ?」

省吾:「頼むよ、おれ、お前の妹に一目惚れしちゃったんだよ」

広幸:「ひ、一目惚れって・・マジかよ・・」

省吾:「なっ!お前から妹に頼んでみてくれよ」

広幸:「そんな事言われてもなあ・・・俺の妹をお前に紹介するのかぁ」

省吾:「む、無理なら・・・・せめて1日だけデートさせてくれよ。頼むよ」

広幸:「1日だけか・・・」

省吾:「ああ。1日でいいから」

広幸:「1日デートして、ますます気に入ったらどうするんだよ」

省吾:「そ、そのときは・・・お、俺が自分でアピールするよ。お前には迷惑
          かけないからさ」

広幸:「う〜ん・・・でも妹だってデートをOKするかどうか分からないぜ」

省吾:「だからそこを何とか頼むよ。親友じゃないか。1日だけ付き合ってやってくれって
          頼んでくれよ〜!」

広幸:「まあ、言うだけ言ってみるけどさ。あんまり期待するなよ」

省吾:「ああ!サンキュー!!」
 

省吾はもう俺の妹である雪菜(ゆきな)とデート出来るものだと思っているようで、
やけにハイテンションになっている。
俺はとりあえず省吾の気持ちを雪菜に伝えようと、学校を後にした・・・
 
 
 
 
 

ゼリージュース!(赤色)・・・前編
 
 
 
 
 

広幸:「ただいま」
 

いつものように玄関のドアを開けて靴を脱ぎ、廊下を歩いてキッチンへと向かう。
キッチンでは母親が夕食の準備を始めており、その横にはブレザーを脱いで
白いブラウスと紺色のスカートを穿いた制服姿の雪菜が手伝いをしていた。
 

母親:「あら、広幸。おかえりなさい。今日は遅かったのね」

広幸:「ああ。ちょっとツレと話してたら遅くなったんだ」
 

俺がそう言いながらテーブルに置いてあった揚げたてのコロッケに手を伸ばそうとすると、
 

雪菜:「お兄ちゃん、つまみ食いはしないでよっ!」
 

と雪菜のチェックが入る。
 

広幸:「ちぇっ、バレたか」
 

出した手を引っ込めた俺は2階にある自分の部屋に戻ると、カバンを机に置いて
制服を脱ぎ、Tシャツと短パンというラフな格好に着替えた。

夕食までもう少し時間がありそうだ。
俺はどうやって省吾のことを話そうかと考えることにした・・・
 

省吾は高校に入ってからの親友で、身長は俺と変わらず175センチくらいか。
髪を茶色に染め、顔が痩せこけているので見た目は少し近寄りがたい気もするが、
本当は友達思いのいい奴。

変わって妹の雪菜は俺の2つ年下。
省吾も言っていたけど見かけはかわいい部類に入るのかもしれない。
俺としては16年も同じ屋根の下で生活してきた訳だから特別その様な感情は
持たなかったが、省吾に言われたあと同年代の女の子を思い出してみると
彼が言っている事が分かるような気がした。

まだ染めていないセミロングの黒い髪。
目はクリッと大きく、まあ・・・かわいい顔立ちだろうか。
身長は156センチ・・・だったような気がする。
俺としては普通の高校1年生の体格だと思っている。
だって一緒に風呂に入っていたのは俺が小学校4年の時までだし、
それ以降は1人で風呂に入るようになり、雪菜の裸を見ることは無いのだから。
水泳しているところを見るわけでもなく、制服か普段着、またはパジャマ姿
しか見たことが無いのだ。

そんな妹に一目惚れした親友の省吾。

もし逆の立場なら・・・・たぶん一目惚れはしないな。

それはずっと兄妹だからなのかもしれないが・・・
 

母親:「広幸、ご飯出来たわよ」
 

1階から母親の声が聞こえる。
 

広幸:「ああ、分かった」
 

俺は殆ど考えがまとまらないまま、キッチンへと降りていった。

ゆっくりした時間の中で夕食を取ると、残業で遅くまで帰らない父親に代わって
1番風呂に入る。
 

広幸:「はぁあ・・・たぶん無理だろうなぁ・・・」
 

俺は雪菜に話したときの事を想像してみた。
 

雪菜:「嫌よ、どうして私がお兄ちゃんの友達とデートしなくちゃいけないのよ」

広幸:「そう言うなって。俺の大事な親友なんだよ。な、1日だけデートしてやってくれよ。
          いい奴なんだよ」

雪菜:「だってこの前玄関であった人でしょ。私、あの人タイプじゃないもん」

広幸:「そこを何とか頼むよ。結婚しろって言ってるわけじゃないんだからさ」

雪菜:「当たり前じゃないの。誰があんな人と結婚するのよ。私、絶対嫌だからねっ!」
 

・・・・・

これ以外のストーリーが思い浮かばない・・

俺はすでに結論が出ているにも関わらず、いつまでも同じ事を考えていた。
 

広幸:「何だって俺の妹なんだよ。他にもかわいい女の子なんてたくさんいるじゃないか」
 

赤く火照った身体で風呂から上がると、とりあえず部屋に戻り、どうやって雪菜に話を
切り出そうか考える事にした。

雪菜がほしがっていたアイドルのプロモーションビデオでも借りてきてやろうかな・・・

そんなことをしてもダメなことは分かっている。

頑張ってアイドルのコンサートチケット取ってこようかな・・・

・・・多分無理だ。それに、チケットをやったからといってOKするとも限らない。
それに、省吾のためにそこまで奉仕してやる必要があるのか?

俺は暗くなった窓の外をじっと眺めながら、一つため息をついた・・・と、ガラス戸に
映っていたドアが開き、俺の部屋に雪菜が入って来た。
 

雪菜:「ねえお兄ちゃん、英和辞典貸してくれない?」

広幸:「えっ、あ、ああ。いいけど」

雪菜:「じゃあ借りてくね」
 

雪菜は俺の勉強机にある本棚から英和辞典を取り出すと、そのまま部屋を出て行こうとした。
 

広幸:「あ、待てよ雪菜」

雪菜:「ん?何?」
 

雪菜が俺の方へ振り向く。
とっさに引き止めた俺だったが、さてどうやって話を切り出そうかまったく考えていない。
 

広幸:「あ、あのさ。ちょっと話があるんだけど」

雪菜:「何?」
 

どうして妹に対してオドオドしなければならないのか・・・
 

広幸:「お前さ、今彼氏とかいるのか?」

雪菜:「ええっ!?どうして急にそんなこと聞くの?」
 

そう返事が返って来るのは当たり前か・・・
 

広幸:「ああ・・・じ、実はさ、俺の友達でお前の事が気に入っちまった奴がいてさ・・・」

雪菜:「・・・・ふ〜ん・・・」

広幸:「うん・・・そいつがさ、ちょっとお前と・・で、デートしたいって言うんだよ」

雪菜:「・・・・それで?」
 

雪菜は別段驚いた様子も無く、ただ俺の話を聞き愛想の無い返事を返してくる。
 

広幸:「でさ、1日だけデートさせてくれってさ。ははは・・」

雪菜:「・・・・いや」
 

考えていたシナリオどおりだ。
 

広幸:「ほら、お前もこの前会ったんだろ。玄関の前で。アイツだよ」
 

雪菜は少しだけ考えている表情をした後、どうやら省吾のことを思い出したようだ。
 

雪菜:「思い出した。あの茶髪の痩せこけた人でしょ」

広幸:「そうそう。見た目はあんなだけど俺の親友なんだよ。いい奴なんだ」

雪菜:「へぇ〜。そうなんだ」

広幸:「なあ、頼むよ。兄ちゃんの顔立ててくれよ。1日だけでいいんだからさ」
 

すると雪菜はニコッと微笑んだ。
俺はちょっと脈ありと思ったのだが・・・
 

雪菜:「ぜ〜ったいにイヤ!」
 

と吐き捨てるように言った後、そのまま部屋を出て行ってしまった。
 

広幸:「ま、待てよ・・・・・あ・・・・ま・・・まあ・・・そんなとこでしょ・・・」
 

こうなる事が分かっていた俺は、特にどうするわけでもなく夜のひと時を過ごすと、
静かに眠りについた。
 

あ〜あ、明日省吾になんて話そうかなぁ・・・・
 
 
 

そして次の日。
 

省吾:「どうだった?1日ならOKだったろ!」
 

省吾は俺の顔を見るなり、ズンズンと近づいて来て話を始めた。
なぜかすごく嬉しそう。

まあ、変に期待させるのも悪いからな・・・

そう思った俺は、昨日雪菜から断られた事を省吾に告げた。
 

広幸:「・・・ということで、妹は全くその気じゃないみたい。ははは・・・」

省吾:「マ・・・マジかよぉ〜」

広幸:「ああ。俺からも何度も頼んだんだけどさ」

省吾:「そんなぁ〜。ちゃんと1日だけって言ってくれたのか?」

広幸:「もちろん言ったさ。1日だけでいいからデートしてやってくれって」

省吾:「それでもダメって?」

広幸:「そういう事」

省吾:「うわぁ・・・」
 

省吾は両手で頭を抱えてもがいている。
そのやたらに大げさな仕草は、他の生徒から変に笑いを取っていた。
俺もそれを見て少し笑ってしまったが、逆に申し訳ないとも思った。
 

広幸:「・・・ごめんな。お前の力になれなくてさ」

省吾:「はぁぁ・・・いいよ。俺が無理な事頼んだからさ。悪かったよ」

広幸:「お前が謝るなよ。俺が雪菜を説得できなかったんだからさ」

省吾:「いや、淡い夢を見させてもらったよ。はは・・よし、次の女の子を探すぞぉ!」
 

なんて無理な笑顔を作りながら席に戻る省吾を見ていると何ともやるせない気がする。

・・・うん、今日も雪菜に頼んでみるか・・・
 
 

俺は学校が終わるとまっすぐ家に帰った。
まだ雪菜は帰っていなかったが、ほどなくして玄関のドアを開ける音がした。
 

雪菜:「ただいまぁ」
 

カバンを置きに2階へ向かおうとした雪菜を引き止める。
 

広幸:「なあ雪菜」

雪菜:「何?」

広幸:「昨日の話なんだけどさ」

雪菜:「昨日の?」

広幸:「ああ、俺の親友の話さ」

雪菜:「・・ああ、あの話がどうかしたの?」

広幸:「もう1度考えてみてくれよ。今日アイツに話したらすごく落ち込んじゃってさ」

雪菜:「そんな事言われても、嫌なものは嫌なんだから」
 

そう言うと、雪菜は階段を上って部屋に入ってしまった。
 

広幸:「雪菜・・・」
 

父親に似て頑固なところがあるからなぁ・・・

これ以上話をしても結論は変わらないだろう。
 

広幸:「今日の事は省吾には話さないでおこう」
 

いつもどおりの平穏な日々を過ごす事にした俺は、夕食を取った後
風呂に入り自分の部屋でテレビを見ながら寛いだ。
音楽番組やドラマを見たあと、携帯でカチャカチャとメールのやり取りをする。
もちろん省吾ではないが・・・

メールのやり取りは結構面白い。
電話で話すほうが手っ取り早いが、こうやっていちいち活字を打ち込み合うのも
ちょっと秘密めいていてすごく好きだ。その相手が女の子ならなおさら・・・

俺はこうやって女の子とメールしてるのに省吾は・・・

そんなことを頭の片隅で考えながらもメールのやり取りが終わる。
久しぶりに遅くまで起きていた俺は、電話線をパソコンにセットしたあと
電源を入れた。
もう夜の1時を回っているので誰も電話なんかかけないだろう。

ダイアルアップでプロバイダに接続し、ブックマークしていたエッチサイトに
アクセスする。
ここでお楽しみの画像をダウンロードしてから一仕事するのだが・・・

省吾の事が頭の隅にあった俺は、検索サイトで男女の気持ちや兄妹についての
内容が書かれていたサイトを調べてみた。
たくさんのサイトがリストアップされ、いくつかのサイトを覗いてみると
それなりに相手がどう思っているかが書かれているところもあった。

目をしょぼしょぼさせながら更に深く調べていると、いつの間にやら食品会社らしき
サイトにたどり着く。
ガムやお菓子、ジュースの宣伝が多々ある。
 

いつの間にこんなサイトに・・・
 

俺はそう思ってブラウザのパックボタンを押そうとした。
しかし、ふと目に飛び込んできたジュースに指の動きを止めたのだ。
 

「ゼリージュース新発売」
あなたは3つの味で3つの不思議体験をする!
 

広幸:「不思議体験って」
 

えらく意味深な宣伝内容に思わず苦笑した俺は、おもむろにゼリージュースと書かれた
ところをクリックしてみた。
少しして、赤色、青色、黄色の3種類のジュースが入った350ml用ペットボトルが表示され、その下には
それぞれの説明が書かれていた。
 

ゼリージュース(イチゴ味)
このゼリージュースであなたは不思議体験をする事になります。
冷蔵庫で冷やしたゼリージュースのフタを開けて飲み干してください。
5分ほどであなたは透明でプルンプルンの身体となるでしょう。
それはまるでゼリーのよう・・・
さあ、そのまま誰かの身体に覆い被さるのです。
あなたの身体はその人の身体に溶け込む事でしょう。
そして10秒だけ待ってください。
10秒以上経ったら、その人の身体から抜け出しましょう。
するとあなたの身体はその人の身体に・・・
 

ゼリージュース(ブルーハワイアン味)
このゼリージュースであなたは不思議体験をする事になります。
冷蔵庫で冷やしたゼリージュースのフタを開けて飲み干してください。
5分ほどであなたは透明でプルンプルンの身体となるでしょう。
それはまるでゼリーのよう・・・
さあ、そのまま誰かの身体に覆い被さるのです。
あなたの身体はその人の身体に溶け込む事でしょう。
そして10秒だけ待ってください。
10秒経ったら、あなたはいつの間にか瞑っていた目をあけてください。
あなたの視界はその人の視界となり、その人の身体はあなたが
動かすことに・・・
 

ゼリージュース(パイン味)
このゼリージュースであなた達は不思議体験をする事になります。
冷蔵庫で冷やしたゼリージュースのフタを開けて二人で飲み干してください。
5分ほどであなた達は透明でプルンプルンの身体となるでしょう。
それはまるでゼリーのよう・・・
さあ、そのままお互いの身体を重ねるのです。
ゼリー状になったあなた達の身体は一つの固まりになるでしょう。
そして10秒だけ待ってください。
10秒経ったら、お互いに離れてください。
するとあなた達の身体はお互いの身体に・・・
 

ただいまキャンペーン中につき、1本120円(税別)で発売中。
最寄のTSFショップにてお求め下さい。
 
 
 

俺は何が書いてあるのか理解できなかった。
このサイトは実在する大手の食品会社であり、多くの人たちが
訪れているはずだ。そのサイトの一番目立つところに
このようなあやしいジュースの宣伝をしているなんて・・・

でも、これが本当なら・・・・

俺はサイトに書いてあったTSFショップ一覧を見ると、1番近いショップの
場所をメモした。電車で5駅くらいのところだ。

もしこのゼリージュースが手に入るのなら、省吾に夢を見せてやれるかもしれない。

そう考えた俺は次の日、学校の帰りに早速このTSFショップへ向かったのだ・・・
 
 
 
 
 
 

ゼリージュース!(赤色)前編・・・・おわり
 
 
 
 
 
 

あとがき

このジュースの元ネタ、関東の人なら分かるかもしれませんね(^^;
久しぶりに変身を扱った作品。
「秘密の・・」とはまた違った感じで書こうと思っています。
今回は3種類のゼリージュースの中で、赤色を使いました。
さて、残りの2種類は・・・
また書きたいと思います。

それでは最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
Tiraでした。
 


 
 
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