この作品(作品とまで呼べる出来か?)では

名前:「言った事」
名前:(思った事)   
体=中身
とさせて頂きます。
 
 

緋色の研究

作:Каси Кацуо(菓子 鰹)
 
 
 
 
 

緋澄:「ちょっと何遊びゆうが。はんぺんが呼びにきたがやん。」

緋澄は凡平を引きずってでも連れて行こうとする。
 

凡平:「いや、ちょっと待ってや、ひずみ、すぐ終わるき。」

緋澄(ひすみ)は凡平(はんぺい)の事をはんぺんと呼んでいる、同時に凡平は緋澄の事をひずみと。
 

緋澄:「そう言ってもう2時間もやりゆうやん。」

凡平:「いや、本当にもうちょっとで終わるき。」
 

そう言いながらもずっとネットを続ける凡平にあきれ果てたのか緋澄は独りで凡平の家に向かった。

凡平と緋澄は幼馴染で、凡平の家の下の段に緋澄の家が在った為、この2人はお互いが毎日の様に相手の家に行く様な関係であった。
といってもそれは小学生の頃の話で凡平が緋澄に宿題を聞きに行ったり、凡平が学校に忘れていった物を緋澄が届けると云ったものだったが。
最近では凡平はしょっちゅう緋澄の家にネットをしに行ってるが、緋澄は凡平に呼ばれて行く事が殆ど(ほとんど)だった。

ある日の事。
 

凡平:「俺、自分の部屋が欲しいんやけど。」

凡平の父親:「それやったら、屋根裏部屋やるき。」

凡平の母親:「それ、いいねえ。」

凡平:「いや、ちょっと待ってや、屋根裏部屋って家んく(うちんく)に在った?」

凡平の父親:「ああ、在ったで、もう60年位開かれてない『開かずの部屋』や。どんでん返しをくぐって階段を上ったとこにある。」

凡平:「何で(なんで)そんな物が家に・・・。」

凡平の父親:「そんな事ここ建てた人に聞き。」

凡平:「誰、ここ建てたの。」

凡平の父親:「えーっと確か70年位前に・・・。」
 

と云ったやり取りが行われ、凡平は屋根裏部屋を掃除する羽目となった。そして1人では無理だと思い、
緋澄を呼びに来たのだが、当の本人はネットに夢中となり、緋澄は独りで屋根裏部屋に向かう事となって、現在に至る。
緋澄は今どんでん返しの前にいる。
 

緋澄:「『2階の1番奥の部屋の突き当たりを押せば分かる』ってはんぺんは言いよったけど・・・。」

緋澄は思いっ切り押して試る(みる)。目の前の壁が回転し、緋澄の体が前のめりに倒れ、顔から床に叩き
つけられ、更に壁に足の小指を叩きつける。緋澄は動かない。
 

緋澄:「何?この扉、普通どんでん返しって言う(ゆう)たら、横回りやろ、縦回りって何(なん)や。」

どうやら大丈夫そうだ。緋澄は起き上がり、目の前に在る階段を上って行く。
 
 

凡平:「ふう、やっと行ったか。」

凡平はネットを続ける。その時、凡平の手が止まった。凡平の手を止めたのは威光院正慶と云う場所だった。
 

凡平:「前にどっかで聞いた気がするんやけど・・・、どこやったろう。ネット上とかやなくてもっと現実的な場所やった気がするんやけど・・・。
     まあ、気の所為(せい)やろ。」

少し胸騒ぎを覚えたが、凡平はネットを続ける。
 
 
 

緋澄「全く、はんぺんが呼んだのになんで私が・・・。」

緋澄はぶつぶつ言いながら屋根裏部屋の戸に近づく。開かずの扉がついに開かれる。どうやら鍵はかかっていなかった様だ。部屋の中に入る。真っ暗だ。
 

緋澄:「懐中電灯持ってきて正解やった。」

懐中電灯のスイッチを入れ、奥へと進んで行く。どうやら書斎の様だ。
 

緋澄:「あれ、何やろう?」

懐中電灯が瓶を照らし出す。緋澄は『それ』を取ってみる。瓶は日本酒のものの様だった。
蓋がしてある所を観ると未だ(まだ)未開封の様であった。しかし、その中身はその容器には不均り合いな程少なく、頂度コップ1杯分に相当した。
 

緋澄:「どうせ、中身これっぱぁやし飲んじゃおうか。」
 

独りでこの様な所に来らされた怒りも在るのだろう。
その時、緋澄の動きが一瞬固まった。
 

緋澄:「うわっ、何か(なんか)動いた。」

更に奥の方で紐みたいなものが動いていた。ハミだ。全国的には蝮(マムシ)と呼ばれているが。
 

緋澄:(取りあえず、どうしようか。)

別にハミ位ここら辺では珍しくない。夏に外を歩けば普通にハミ位は見るだろう。カブトムシがゴキブリ位うじゃうじゃいる家も在るのだから。
しかし、いくら見慣れているとはいえ、家の中にいたら怖い事には違いないだろう。(そうでない人もいるが。)
 

緋澄:(無視無視、何もせんかったら襲って来ん。)

しかし、そんな考えも空しく(むなしく)、ハミは緋澄の方に飛びかかって来た。慌てて横にかわす緋澄。
緋澄の体は壁に当たり、瓶が割れる。液体が緋澄の服にかかる。
 

緋澄:(嫌、何、これ、私の体の上を動きゆう・・・。)

ゼリー状の液体は万有引力の法則に逆らって、まるで『それ』自体が意思を持つかの様に上へ上へと上ってくる。
緋澄は手で堰き止めようとするがそれは川の様に流れてくるダケ。そして川は緋澄の口の所で止まり、そして一気に流れ込んだ。
その時、またもやハミが緋澄の方に向かって飛び掛って来た。
緋澄は瓶の欠片(かけら)を取り、そしてそれを冷静的に飛び掛ってきたハミに突き刺す。
 

緋澄=who?:「爬虫類ごときが我輩に触れるで無い。」

緋澄=who?はガラスが突き刺さり、動けなくなった物を木で出来た壁に突き刺す。そしてゼリー状のものを口から吐き出す。
 

緋澄=who?:「さて、これからどうするか、取りあえず、この娘の事を調べ上げるとするか、『受戒』の研究所に戻るのはそれからとしよう。」
 

緋澄=who?が振り向き、部屋を出ようとした時、凡平が入って来た。
 

凡平:「ああ、緋澄、ご苦労さん。」

緋澄=who?:(誰だ、こいつは。)

凡平:「あそこのどんでん返し前に回るんやから、びっくりしたっちゃ、なあ。」

緋澄=who?:(急げ、この小娘の記憶を早く探り出さなければいけない。)

凡平:「どうしたんや緋澄、どこか悪いが?」

緋澄=who?:(よし、この小娘の記憶は熟知した。)

緋澄=who?:「ああ御免、はんぺん、ちょっと気分が悪かったけどもう平気。」

凡平:「こんなとこ、独りでやらせて悪かったわ。やっぱり今度ここは独りでやるき、それよりちょっと外へ遊びにいかん?」

緋澄=who?:「別にいいけど。」
 

凡平は階段を下りていき例のどんでん返しの所まで来た。
 

凡平:「ぐおおおおおぉ。」

思いっっっっ切り頭突きを扉にかましたが、開かない。凡平は床の上を転げ回る。そして、しばらくすると立ち上がった。
 

凡平:「やばっ、もしかして向こうからしか回らんとか・・・。」

慌てて、取りあえず蹴破ろうとそこら辺に在る物を投げてみる。すると戸が浮き上がるように開く。
 

凡平:「ああ、そうか、一定方向にしか回らんがか・・・。」

そう、言いながら階段の頂上まで行き手すりの上を滑り台の様に器用に滑る。
 

凡平:「ひゃあ、怖ぁぁぁぁっ・・・。」

凡平:「快足スプリンター青星。」

わけの分からない事を言いつつ、凡平はうまく扉に当たり、扉が開く。
しかし、下は土では無い。土程は綺麗に滑る事は出来ず、途中で止まってしまう。
 

凡平:「待ち待ち、ちょっとタイム・・・。」

しかし扉に言葉が通じる筈も無く、無常にも頭を殴りつける。
 

凡平:「・・・・ううん、緋澄・・・、待て、おまえどうやって来た?」

緋澄=who?:「普通に反対側の階段から来たんやけど。」

凡平:「そうか・・・。」
 
 

今、2人は玄関にいる。

凡平「じゃあ、ちょっと待ちよって、すぐ戻るき。」

緋澄は1人残される。
 

緋澄=who?:(こちらも奴がいなくて好都合だ。それにしても方言と云うものは難しいものだな。
         4ヶ国語が流暢な我輩でも苦労するのだから。注意しなくてはならない。
         更に注意しなければならないのはあの男、在り得ないとは思うが、万が一と云う事が在るからな。
         天才は更に注意すればより神才と近づく。不死の受戒にさえ行けばもはや問題等無い。
         この小娘もそれだけの金はあるようだからな。)
 

しばらくすると凡平は、今、世間を揺るがしている2人組を彷彿(ほうふつ)させる上下ジャージ姿から上は100円市で売っている服、
下はバーゲンの安売りで買ってきたズボン、更に100円市で売っているベルトへと着替えて出て来た。時計等も合わせて計1600円の服装だ。
 

凡平:「それじゃ行こうか。」

緋澄=who?:「うん。」
 

凡平が自転車をこぎ、緋澄=who?はその後ろに乗る。
自転車は1年前まで町に1つしか無かった24時間制のコンビニを通り過ぎ、最近出来た巨大スーパーを後にした。
自転車は更に太陽の在る南へと向かい、川沿いを走り、海まで出て止まった。遊泳禁止の場所なので、人の気は無い。凡平の口が開く。
 

凡平:「なあ、覚えちゅう、俺等、中学校の時は遠足、いっつもここやったよな。
    一応学年毎に選べるんやけど他に行くとこないし、それで、通行手段が自転車で、校内総出で970人がみんなジャージで、
    自転車に乗って絶対傍目(はため)から見たらそれこそ、電磁波、電磁波、騒ぎゆうあの団体並に怪しい集団やったもんな。」

緋澄=who?:「本当やね。」
 

少し時間が経ってから再び凡平の口が開く。
 

凡平:「あの、ほら、確かに俺等毎日会いゆうけど、お前が市内の高校に行って、昼間に会えんだけで、その、辛い事に気づいたんや。緋澄、目をつむってくれんか。」

緋澄=who?:(こいつ、何をしようとしてるんだ、とりあえず、この体の記憶を探って、そうか、この男は我輩に接吻を求めているのか。
         く、もしばれたら億が一と云う事も在る。ここは少しでも疑問の種を残さない様に、素直にこの男の思うがままとなるとしよう。)
 

緋澄=who?はさすがに戸惑ったようだがすぐに平静を取り戻し、そのまま目を瞑る。
普通ならこのまま口を近づける場面だが、なぜか凡平はポシェットからペットボトルを取り出し、その中身を緋澄=who?の口に突っ込む。
液体は緋澄=who?の口の中に入り込んだが、少しすると口から吐き出された。
 

緋澄=who?:「げほっ、げほっ。」

凡平:「ひず・・・、いや・・・、違う。」

凡平は一瞬表情を和らげるがすぐに又、引き締める。
 

凡平:「何で元に戻らないんだ・・・、もう芝居をするのも飽きた、やっぱあんたに直接聞かなきゃいかないようだな、じいさん。」

緋澄=who?は何も反応を示さない。凡平は少し躊躇った(ためらった)が話を続ける。出来れば信じたくは無かったのだろう。
 

凡平:「もうばれているんだ。あんたが『西瓜味寒天汁』と呼ばれる液体で緋澄の体を奪った事も、全てがな・・・。」

凡平は一呼吸おいてから次の句を告げようとする。
 

凡平:「そうだろ、威光院正慶。」

緋澄=威光院正慶:「貴様、なぜ我輩の事を知っている、そうか、我輩の名は日本中に広まっているのだな。」

緋澄=威光院正慶は少ししてから又話し始めた。
 

緋澄=威光院正慶:「小僧、人間の価値は皆等しいと思うか。」

緋澄=威光院正慶は話を続ける。
 

緋澄=威光院正慶:「否、凡人は天才の礎(いしずえ)と成る為生まれてきたのだ。頂度、昭和と呼ばれた時代だった。
             周りでは凡人共がたくさん死んで逝きおった。我輩は神に選ばれた存在なので関係は無いと思っていたが兆が一の事も考えた。
             我輩が死ぬことは人類の損失だからな。そして我輩は西瓜味寒天汁を造り出した。
             今風に言えば jelly juice watermelon version(ゼリージュース ウォーターメロンver.)とでも言った所だな、
             之はまず最初に飲んだ者の人格を其の中に複写する。若し(もし)人格が入っている場合、其れを飲んだ者の肉体に人格を注入し、
             肉体の主をゼリーに閉じ込める。と云った効果を持つ。そして我輩はゼリーを飲み、研究所で復活の日を待っていた。
             ちなみに貴様が我輩にゼリーを飲ませたのに入れ替わら無かったかと云う点についてだがこのゼリーに因り肉体を追われた者は
             二度とその肉体に還る事は出来ないのだよ。」
 

凡平の顔に焦りの色が出、震えていたがかろうじて動く口で話す。
 

凡平:「そ・れじゃ・・・。」

凡平はそれを言ってしまっては本当に現実に成ってしまうと云う不安から二の句が告げない。緋澄=威光院正慶はそこを逃さなかった。
 

緋澄=威光院正慶:「そう、決して元通りに等成ら無い。」

それは凡平にとっての禁句だった。もはやそれは只の動かない物に過ぎなかった。
 

緋澄=威光院正慶:「ところで、今の我輩なら力で抑えられると思って人気の無い海岸に連れて来たのだろうが、其れはむしろ間違いだった様だな。」

言うが早いか、緋澄=威光院の手が鞭のようにしなり、凡平の右腕を叩く。グシャッと鈍い音がしたが凡平は何も反応を示さない。
 

緋澄=威光院正慶:「この発明は飲んだ者の体を硬化させ、更に其の力を3倍にする。さっきの様に相手に触れるだけで骨を砕ける。
             中々の名演技だったが残念だったな。もはや貴様には京が一の可能性すら残されてい無い。」

凡平:「そんな事はお前が決めることじゃないんだ・・・。」

緋澄=威光院正慶:「之は驚いた。未だ動く事が可能とは。」

そう言っている割に緋澄=威光院正慶は表情1つ変えない。
 

緋澄=威光院正慶:「だが、其の方が都合が良い。我輩も気には成っていた所だ。冥土の土産に答えてもらおう、貴様は何故、我輩を知っていた、

凡平:「俺は運が良かった・・・、偶々(たまたま)、インターネットをしていて『よしおか』と云う人の『ゼリージュースイカ味〜消え逝く威光〜』と云う作品を見た。
    それにはゼリージュース(スイカ味)を使って『威光院正慶』がこの世に出る事も、そしてあんたが他人の業績を盗んでいた事も全てが書かれてあった。」

緋澄=威光院正慶はしばらく考え込んだ後、口を開く。
 

緋澄=威光院正慶:「そうか、小野の奴か、つまり、貴様は絵空事を其のまま現実として受け留めたと言うのか、なら又答えて貰おう、
             何故貴様は我輩が居るのがこの小娘の中だと分かったのかを。」

凡平は間を置いた。まるで少しでも時間を延ばそうとしているかの様に。
 

凡平:「あんたは勘違いしている、順序が逆なんだ。」

緋澄=威光院正慶:「ほう、では、勘違いとは何だ。」

凡平:「所詮あんたは『威光院正慶』であって『緋澄』じゃないんだ。」

緋澄=威光院正慶:「何を当たり前の事を。」

凡平:「あんたは何故俺があの部屋に行ったのか気づいていないんだな。」

そこに緋澄=威光院正慶が割って入る。
 

緋澄=威光院正慶:「時間稼ぎの心算か。まあ良い、続けろ、もはや我が勝利は揺るがぬ。少しでも長く生きたまえ。」

凡平:「ネットをしていたら何故か嫌な感覚がしたんだ、まるでもう今までの緋澄に会えない様な感覚だった。
    そして心配になってすぐにあの部屋に行ったんだ。何故かそこにいた緋澄が別人の様な気がして、俺は試したんだ。
    そして目の前にいる緋澄が緋澄じゃないと分かった。あんたは気づいてなかった様だな。
    あんたの後ろにあった液体=緋澄がS・O・Sの形を取っていた事を。その後、俺はネットで公開していた話と状況が似ていた事を思い出し、
    パソコンの前に行った。そしてあんたの事を知った後、液体=緋澄をここに連れてきたという訳だ。」

緋澄=威光院正慶:「その服装もわざとだったのか。」

凡平:「何訳の分からない事を言っている、これはいつも通りだ。今度はあんたが答える番だ。『あんたはこの世に戻って何をする気だ』。」

緋澄=威光院正慶:「我輩はずっと瓶の中の世界からこの世界を客観的に見聞きし続けてきた。
             そして思ったのだよ、このようなくだらない動物が世界を支配している事等耐えられ無いと、私が神と成り、全てを無に帰そうと。」

凡平:「あんたは神なんかじゃない、それはただの思い上がりだ。」

緋澄=威光院正慶:「ほざくな、では最期に教えて貰おうか、何故貴様は勝ち目が無いのに立ち向かえる。」

凡平:「絶望なんて無い、それは単に光が見えなくなっただけで、光は確かにそこにあるんだ。」

緋澄=威光院正慶:「只の戯言だな。それならこの状況を打開してみろ。」

凡平:「あんたは言ったよな、『人気の無い海岸に連れて来たのは間違いだった。』って。本当は知っているんだよな、俺があんたをここに連れてきた本当の理由を。」

緋澄=威光院正慶:「それがどうした、例えそれが本当だったとしても最早貴様はそれを実現させる手段すら持たぬ、私の勝利は揺るがない。」

凡平:「いいや、俺は光を見つけ、手繰り寄せた。あんたと話している間に緋澄を回収した。」

見れば凡平は右手に液体=緋澄が入ったペットボトルを持っていた。
 

緋澄=威光院正慶:「それがどうした、私にゼリージュースは効かぬ。」

凡平:「いや、飲むのはあんたじゃない。」
 

初めて緋澄=威光院正慶の顔が引きつる。緋澄=威光院正慶は慌てて言う。
 

緋澄=威光院正慶:「まさか他人の為に自らを捨てる事が出来る筈等あるまい。」

凡平:「いいや、出来るんだよ、他人を利用する物としか捉えていないあんたには一生分からないだろうがな。」

そう言うと、凡平はペットボトルの中身を喉に流し込む。
 

緋澄=威光院正慶:「ならば効果が出る前にその首を胴体と泣き別れにしてくれる。」
 

そう言いながら緋澄=威光院正慶は凡平の方へと突っ込む。そして緋澄=威光院正慶の腕が凡平の首を捉えようとしたその時・・・。
 

凡平=緋澄:「よくもやってくれたねぇ。」
 

凡平=緋澄が左腕で緋澄=威光院正慶の腕を弾く。そのまま左手で緋澄=威光院正慶のわき腹を狙う。
慌てて左腕で庇う緋澄=威光院正慶。緋澄=威光院正慶の体は3メートル程吹っ飛ぶ。
 

凡平=緋澄:「男の方が力も強いし、硬くなりやすいんや。」

恐らく意識していないだろうが16歳の少女の言葉とは思えない。外見上は男だが・・・。
 

緋澄=威光院正慶:「待て、この体はお前の体だ、傷つけて良いのか。」

凡平=緋澄:「その体に戻れる訳や無いし、もう未練も無いわ。」

凡平=緋澄は拳を構える。
 

緋澄=威光院正慶:「待て待て、そもそも我々が争う理由が無いじゃ無いか。」

凡平=緋澄:「これだけの事をやられて殴らんなんて気が収まらん。それに全部元通りになる為にはあんたが居ったらあかんの。」
 

凡平=緋澄の拳が緋澄=威光院正慶のアバラに当たり、海の方へ吹っ飛ぶ。その時、緋澄=威光院正慶は何かに気づいた。
液体が何時の間にか体の上を這っていた。
緋澄=威光院正慶の顔が青ざめる。
 

緋澄=威光院正慶:「お前は未だ人類と云う物が分かってい無い、小僧、若し我輩を殺せば貴様は一生後悔する事になるぞ。う、止め・・・。」
 

液体が口に入り込む。緋澄=威光院正慶は更に何か言おうとしていたがしばらくすると動かなくなった。
 

緋澄=凡平:「確かに俺は人類なんてものは分からないけど人間は知っているつもりだ。」

そう言いながら、緋澄=凡平は口から液体を吐き出す。液体は海の中に落ちた。
液体は少しずつ動きを無くしていき、最も物体が安定する形=球へと変わっていった。緋澄=凡平はそれを手に取る。
球は橙色でその表面には白い7つの星模様があった。
 

二人は長い間お互いに口を開こうとしない。
 

緋澄=凡平:「あのさあ。」 凡平=緋澄:「えぇっと。」

二人は口を開いたのは同時だった。
 

緋澄=凡平:「お先にどうぞ、お姫様。」

凡平=緋澄:「何言いゆうが、レディーファーストやったらあんたの方が先になるろぅ?」

緋澄=凡平:「こりゃ一本取られたわ、じゃぁ、俺から言わしてもらうで。」

緋澄=凡平は顔を赤くしながらも続ける。

緋澄=凡平:「あの、ほら、その、あの瓶から外の事って聞こえた?」

凡平=緋澄:「いや、別に何も聞こえんかったけど。」

緋澄=凡平:「そうか・・・。」
 

緋澄=凡平は安堵しつつも少し残念そうな顔をする。
 

凡平=緋澄:(ばかはんぺん、全部丸聞こえやったわ、でも本当にあり・・・。)
        「がとう、凡平は私のヒーローや。」

緋澄=凡平:「何?」

凡平=緋澄:「え?もしかして口に出して言いよった?」

緋澄=凡平:「うん、で、何って言うたが?」

凡平=緋澄:「えぇっと、その・・・、それよりほら、色々あった1日やったねぇ。これからどうする?」

緋澄=凡平:「そうやな、とりあえず今日は誰にもバレんようにせな、幸い夏休みやし、それ以外は又、後で考えよう。」

凡平=緋澄:「そうやね、時間もあるし、そうしようか。本当(ほんと)今日は疲れた。」

緋澄=凡平は呟いた。

緋澄=凡平:「お前とだったらどんな事でも乗り越えていけるよ。」
 

その声は波に消される。
 

凡平=緋澄:「今さっき、何かいった?」

緋澄=凡平:「いや、別に、その・・・。」

凡平=緋澄:「変な事でも考えよったろ。」

緋澄=凡平:「いや、その、ほら見いや、ひずみ、綺麗やな。」

凡平=緋澄:「本当、綺麗や。」
 

見ると夕陽が大海原に沈もうとしていた。
 
 
 
 

自分の力量不足で説明仕切れなかった部分は色々ありましたし、そこら辺の作品を貼りつけた様な物になってしまいました。
お見苦しい点ばかり(むしろ線)のものでも最後まで見ていただきありがとうございました。ちなみに不死の受戒(ふじのじゅかい)と読んで下さい。
ここから先は余裕がある(更に後悔しても良い)なら見て下さい。
この作品には他にも考えられるエンディングがあります。ここに挙げるのはその中の1例です(少しダークですが)。

部屋の中には2人の男女がいる。ベッドの上で絡み合う2人。
男:「本当に自分達がした事は正しかったの?」
女:「仕方無いだろ、所詮何時までも俺達の手で封印しておける物じゃないんだ。
   それだったら俺達の為に使った方が得だろ、いまやこんな豪華客船まで手に入れて、大統領ですら俺達の機嫌を窺う毎日だ。」
男:「でもその所為でみんな人間不信になっちゃったじゃない。」
女:「信じる事が出来ないのはその人間の所為だ、風邪薬だって麻薬になる、要は使い方次第だ。」
男:「そうだね。じゃぁ、楽しもうか。」
女:「あああああぁ。」
こうして2人の夜は過ぎていった。

以上です。つまらない者ですみませんでした。
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