ポターン、ポターン
蛇口からお湯が滴り落ちている。でもあたしの耳にはその音は入っていなかった。ただぼんやりとバスタブの中でお湯に浸かりながらその水滴を見詰めていた。頭の中ではこの一週間の出来事が走馬灯に様に駆け巡っていた。
何で、何でこんなことに・・・
ポターン
お姉ちゃん今日から俺が、いやあたしが香菜だよ。
いや、香菜の真似なんかしないで。
ポターン
優菜、手を出すなんて、母さん怒るわよ。香菜にあやまりなさい。
・・・ごめん、香菜。
いいんだよ、お姉ちゃん疲れているんだよ。
香菜はいい子ねぇ。
ポターン
そして思い出されるあのいやな出来事
お姉ちゃん、香菜が背中洗ってあげるよ。ほらぁ早く入ってきなよ。久しぶりだよね、一緒にお風呂なんてさぁ。そんなバスタオルで隠してなんかいないでさぁ。あたしたち姉妹じゃない。
香菜がいやらしい目つきでバスタブの中からあたしをじっと見詰めている。
お前なんか・・
あれ、いいのかな、香菜また泣いちゃうぞ。
くっ
お姉ちゃんの肌ってすべすべしてきれいだねぇ。香菜も大きくなったらこんなになれるのかなぁ。
香菜の小さな手があたしの背中を這い回る。そしてそれはわき腹の左右一番細いところを撫で回したかと思うと、左の手は胸に、右手はあたしの股間に指先をなぞるようにして少しずつ移動してきた。
左手の指の平があたしの乳首をころころと撫で回す。
うっ、あ・・あ・・あん
右手の指先があたしの股間をぐるぐると撫で回す。
い、いや、も・・もうそれ以上・・く、くぅ
背中に香菜がぴたりと体を密着させてくる。小さな胸の乳首が背中に当たる。膨らんでいる?こいつ、香菜の体で・・
お姉ちゃんの体って柔らかいなぁ〜やっぱりお姉ちゃんにすればよかったかなぁ。
その瞬間、私の体の中に冷たいものが駆け抜けていった。
ひっ ・・・い、いやぁ〜
あたしは思わずバスタブから立ち上がった。
はっと気が付くと、目の前には誰もいなかった。そうだ、今は一人で入ってたんだ。
ほどけてしまったあたしの髪からぽたぽたとお湯が落ちていた。
ポターン
蛇口から水滴の落ちる音が風呂場の中に響いていた。
天使と悪魔の間に(完結編)
作:toshi9
香菜がいなくなって一週間が過ぎた。警察では捜索を続けているらしいけれど、まさかお母さんが実は香菜で、しかも本当の香菜じゃないなんて誰が思うだろうか。
あいつは・・あの男はいま私のお母さんに成りすましている。香菜がいなくなった朝、あいつは・・いつの間にかお母さんに成り代わっていた。警官の前ではさも心配そうな母親を演じ、お父さんもお母さんの中身が別人になっているなんて気づかない。
昨日の夜、眠れずに一階に下りていくと、あたしは恐ろしい声を聞いてしまった。それはお父さんとお母さんの寝室のほうからだった。
「あなた、ねえ気持ち良い?」
「おいおい、お前こんな時にこんなこと」
「だって体が疼くの。ねぇこれここに頂戴」
「うっ、お前今までそんなことしたことなかったのに・・うーん、い、いいぞ」
部屋の中から、二人の声と共に、チュパッ、チュパッという何かを舐めるような音が聞こえてくる。
あいつお父さんに何をやっているんだ。
「ふふ、ほらこんなに大きくなって。これをここに入れたらどんなに気持ちいいかな」
「お前、今更何言ってるんだ。じゃあ・・」
しばらく二人の声が途絶えた。ぎしっ、ぎしっというベッドのきしむ音だけが聞こえてくる。
「あ、あ・・あ・・あ・・入ってくる。いや、変な、何これ、ああ、あ〜」
再び、お母さんの声、ほとんど叫び声に近い。
「は、はぁはぁ、は・・は、ははは、いい、いいぞ、いいぞ、気持ち良い〜、気持ちいいぞ」
「お前、今日は本当にどうしたんだい。でも何か新鮮だな、う、締まる、おう、おう」
あたしはそっと扉を開けてみた。
中ではお母さんの上にお父さんがのしかかって腰を動かしている。お母さんは両手両足をお父さんにからめて抱きついていた。そしてまるで何かを味わうように目を閉じていた。でも覗いている私に気づいたのか、目を開くとこちらを見てにたりと笑った。こいつ、お父さんまで。
何もかもあいつに奪われる。
あたしは部屋に戻ると思いっきり泣いた。泣いて泣いて・・涙がもう出てこなくなってきた頃、胸の奥からふつふつと怒りが湧き上がってきた。
なんであたしがこんな目にあわなくっちゃいけないんだ。
香菜を、お母さんを返して、お父さんまで取らないで。
このままみんな奪われてたまるもんか。悪魔のような奴だけど、あいつだって人間じゃないか。もう一度良く考えるんだ。香菜を、お母さんを助けられないんだろうか。
あたしはそれから一生懸命考えた。元に戻せる手がかりは何かないんだろうか?もう駄目だと一度は絶望したけれど、何か勘違いや思い込みはないんだろうか。最初からもう一度よく整理して考えてみよう。
男は黒いジュースを香菜に飲ませた。香菜がぐったりとした後、男は変なナイフで香菜のお腹を切り裂いた。傷口からは血じゃなくってピンク色のゼリーが出てきて、男がこれは保険だと言った。次の日お母さんに相談したら、お母さんはあのゼリーが入ったペットボトルをごみと一緒に捨てたと言った。お母さんは自分が香菜を被って香菜になった男なんだと正体を明かした。男が香菜のままお母さんの中に入ったから、香菜は行方不明になり、そして男は今すっかりお母さんに成りすましている。
ここまでこれまでの出来事を整理してみた時、あたしはふと違和感を感じた。何だろう。何か変だ。どこがおかしいんだ。
鍵があのピンクのゼリーだということは間違いない。それにあの変なナイフだ。体を切っても血も出ないなんて。この二つを見つけることが出来たら何とかなるんじゃないかと思ったのに、ピンクのゼリーの方はお母さんが捨てちゃったんだよな。
その時、あたしの頭に閃光のようなものがひらめいた。
あれ、そういえばお母さんに香菜のことを話した時、お母さんはごみと一緒にゼリーを捨ててしまったと言ったけれど、あの時のお母さんはもうあの男だったんじゃないか。あの言葉って信じていいんだろうか。
すっかりお母さんの言葉と思い込んでいたけれど、違う。男がゼリーを隠す為に本当のことを言わなかった可能性があるんじゃない。
そうだ、それから、あいつは私がもし逆らったらお前の体も頂くと言った。黒いジュースだってまだどこかにあるんだ。
よし、家の中をよく探してみよう。でもお母さんになったあいつはいつも家にいるんだな。あいつがいなくなるチャンスを待たなきゃ。
それから数日、あたしはおぞましい日々に耐えた。お父さんが出張中なのを良いことに、夜になると私の部屋にやってくる。
「優菜ちゃん、ちゃんと勉強やってるぅ」
「・・・・・・・・・」
「あら、そんなに根を詰めちゃ体に悪いわよ。少し息抜きしなきゃね」
あいつは机に向かっている私の肩に手をやると、そっと首筋を撫でた。
ぞくっ
「や、やめてよ」
「あら、お母さん優菜のことが心配なのよ」
首筋から胸に手を下ろし私の胸を揉み始めるお母さん。
「い、いやぁ…やめて…あっ…あ・・ん…」
必死に耐えるものの、毎晩同じことをやられて胸が敏感になってきている。お母さんの手つきも心なしか最初の頃より柔らかくなってきたみたいだ。
「ふふ、上手くなったでしょう。自分の胸を触るとどうすれば気持ち良いか、よくわかるのよねぇ。ほら、どお」
また胸の先から痺れるような快感が襲ってきた。
「もうやだ、やめて」
「ふふ、や・め・ない」
お母さんは両手をあたしの脇の下に入れて背中から抱きしめると、両方の胸を揉み始めた。
「あ、あふ、いや、あ‥んん‥あん‥」
こんなこと嫌なのに、体が反応している。揉まれる毎にあたしの中に快感がどんどんと湧き上がって何も考えられなくなっていく。
「優菜、かわいいわ」
お母さんは右手をあたしのお腹に這わせると、するすると下に降ろしていった。そこには‥
「お母さん、やめて」
そこではっとした!
「違う、お前はお母さんじゃない。お母さんじゃないよ、ぐすっ」
あたしは半泣きになって部屋を飛び出した。後にお母さんのチェッという舌打ちの声を聞きながら……
そんな地獄のような日々を過ごしながら、ある日ようやく待っていたチャンスが訪れた。
「明日は近所の奥さん達とプールに行くのよ。楽しみね。一緒に着替えて、俺も水着を着てさ。ビキニにしようかな、ワンピースかな。この体プロポーション良いから楽しみだぜ。近所の奥さん達も美人が多いし、旦那が単身赴任でずっと居ないところが多いみたいだしな。体を持て余した女同士の付き合いってやつをじっくり楽しんでやるよ。みんな溜まっているらしいしな、ふっふっふっ」
お母さんは何時の間にか男言葉がちゃんぽんになっていた。あたしは無関心を装うようにそんな言葉を無視した。
「優菜も、水着を着た俺って、きれいだと思うでしょう」
お母さんはビキニのブラジャーを胸に当ててにやにやしている。こんなお母さんの顔見たくない。あたしは無言で立ち上がると、二階に上がろうとした。
「ふふ、優菜ちゃん、たまにはお母さんと一緒に寝ない」
「馬鹿なこと言わないで」
「あら優菜ちゃん。馬鹿なんて、いつからそんな言葉使いするようななったの。悪い子ねぇ。お母さん悲しいな」
お母さんにそんなことを言われるなんて、もういやだよ。
でも、明日がチャンスだ……
翌日、あたしは学校を早退すると家に戻った。
よし、誰もいない。今のうちに。
あたしは急いでお母さんの部屋と探してみた。でも、特にそれらしいものは見つからなかった。
香菜の部屋はどうだろう。そう言えばあの時ゼリーとナイフを香菜のリュックに入れてたな。あのリュックって何処にあるんだ。
あたしは部屋の中を隅から隅までくまなく探した。でもそれらしいリュックは見つからない。
何処だ、後はこのタンスだけ‥
祈りを込めてあたしは引き出しを開けた。そして‥遂に見つけた。
それはタンスの下着を入れている棚の一番奥にあった。
あ!このナイフだ。
それにこれ、あの黒色のジュース‥まだ2本残ってたんだ。
あいつ、こんなところに隠してたんだな。
でもピンクのゼリーは何処に。
後は、台所‥か。
冷蔵庫から食器棚まで順番に探してみたけれど、あのペットボトルは見つからなかった。
まてよ、あのままの入れ物に入っているとは限らないのか。
あたしはもう一度冷蔵庫の中のものを出してみた。
冷蔵庫の一番奥には、アルミホイルを被せたボールが二つ入っていた。アルミホイルを外してみると、両方ともそこにはピンク色の液体が。
「あった、あったよ。やっと見つけた。やっぱり捨てていなかったんだ」
あたしの心の霧がその時ぱっと取れたような気がした。
ボールに移してあったんでさっきは気が付かなかったんだ。でもどっちが香菜のでどっちがお母さんのなんだ。
こっちの方が量が多いみたいだ。きっとこっちがお母さん、少ない方が香菜のものね。
よーし、これでアイテムは揃った。でもこれをどう使えば良いんだ。
もう一度男が香菜に成り代わった様子を思い返してみる。
香菜に黒いゼリーを飲ませて、香菜をナイフで切って、ピンクのゼリーを出して男が香菜の中に入った。香菜のままお母さんの中にも同じように入った。
何回も思い返し、あたしはこれからどうすれば良いか一つの結論を出した。でも考えているようにうまくいくのか、場合によっては香菜もお母さんも二度と…でもやらなきゃ二人とも絶対に戻って来ない。あたしにそれができるんだろうか。でも、でもやるしかないんだ。
優菜がんばれ。
あたしはくじけそうになった自分を思わず励ましていた。
そう、やるしかないんだ。
あとはチャンスとタイミング…
そのチャンスは意外と早く訪れた。
プールに行ったはずのお母さんは夕方になっても帰ってこなかった。
そして夜も9時を過ぎようかという時やっと帰ってきた。べろべろに酔っ払って…
「ゆ〜な〜ちゃん、ごめんね〜、みんなと飲むのが楽しくってさぁ〜、いいよな〜、女同士で飲むなんてさぁ〜」
そのままリビングにばたんと倒れこむと、グーグーといびきを掻いて寝てしまった。
ミニスカートが捲れてパンティが顕わになっている。
よし、これを逃したら・・・
「お母さん、駄目だよ。こんな所で寝ちゃぁ。ほら、服脱いで」
「んー、ありがと、優菜ちゃん…」
あたしはお母さんのワンピースを脱がせていった。お母さんは全く力が入らないようで、あたしにされるがままだ。
…けど、こんな服着て行ったのか、こいつ。
それはお母さんの年だとちょっと着るのが躊躇われるような超ミニのワンピースだった。お母さんってこんな服持ってたっけ。…まさかこいつが買ったのか。
ワンピースを脱がせ、キャミソールを脱がせ、ストッキングもブラジャーもパンティも全て取ってしまう。あたしはお母さんをすっかり裸にしてしまった。
「ん〜、寒いなぁ〜」
うわ言の様にお母さんが呟いている。
「お母さん、ほら毛布被せるから、仰向けになって」
すると、お母さんはごろんと大の字になった。
「いくよ」
あたしの手に握られていたもの、それは毛布ではなく、あのナイフだった。
お母さん、ごめん
大の字のお母さんの胸からお腹をさっと切り裂く。でも香菜の時と同じように、不思議と血は出てこなかった。
「むにゃむにゃ」
お母さんも痛みを感じていないようだ。あたしは切り裂いた傷口に両手を突っ込んで押し広げてみた。そこには‥普通だったらあるはずのない白い肌が見える。あたしの予想が見事に当たったみたいだ。
あたしは開いた部分をもっと手で広げてみた。するとどんどん広がっていく。ペロリと上半身を剥くと、中から香菜が出てきた。
香菜!
あたしは泣きたくなるのをこらえて、下半身もペロリと剥いてやった。
小さな香菜の体でお母さんの中に入って、どうしてだぶだぶにならないのかよくわからないけれど、今はそんなことは関係ない。早く本当の香菜に戻すんだ。
あたしは、黒いジュースの蓋を開けた。それを片手に持って強引に香菜の口に突っ込む。
「え、がふっ、な、何だ」
男が気が付いたようだ。咄嗟にあたしは香菜の体に馬乗りになり、片手で香菜の鼻を摘むと、ペットボトルの胴をもう片手で押してやった。中のジュースが少しずつ香菜の口の中に入っていく。
「ご、ごふっ、お姉ちゃん、やめて」
必死で香菜が抵抗するが、力では私に敵わない。香菜の真似をしたって騙されるもんか。
「うるさい、黙れ!」
その時のあたしは、きっと鬼のような形相だったに違いない。
あたしは涙を流しながら、香菜の口に無理やり黒いゼリーを流し続けた。
「ご、ごふっ、いやだ、やめてよ、ご、ごくっ、やめろ、やめろぉ、ごくっ、ごくっ」
ペットボトルの中身が半分くらいになったころ、香菜の目がとろんとしてきた。
よしっ
あたしは心の中で香菜に謝りながら、思い切って例のナイフで胸からおへその部分までをさっと切った。
内心では不安だったものの、そこからはやっぱり血が出てくることはなかった。
代わりに、あのドロっとしたピンクのゼリーがとろとろと出てきた。
よし、上手くいった。
こんなものもう捨てても良かったんだけれども、それを一旦ボールに受けた。
香菜は大丈夫だろうか。
ゼリーがすっかり出切ると香菜の体はふにゃふにゃになってしまった。
さあ、これからだ。
香菜のゼリーを手に持ったあたしはそれをどうするか少しばかり悩んでしまった。
口から流し込むか、傷口から入れるか。
でもやがて傷口が徐々に塞がって行き始めたので、意を決してそれを塞がりかけた傷口の中に流し込んだ。
やがて、香菜の体が今度は少しずつ膨らみ始める。
「う、うーん」
「香菜!」
「あれ、あたし黒いジュースを飲んで、えーとそれから、あれあたしどうしてお家にいるの」
まだ香菜の意識は朦朧としているようだ。でもこれは香菜、確かにあたしの香菜だ。
「かな、かなぁ〜」
あたしは泣いた。香菜を思いっきり抱きしめて。
「お、おねえちゃんどうしたの、痛いよ。あの男はどうしたの」
「夢、夢だよ、あれは。香菜、今はゆっくりお休み」
「え、う、うん、なんであたしこんなに疲れているんだろう。眠たくってたまらない。あふっ、おねえちゃん、おやすみ」
香菜が戻ってきた。あたしは初めて神様に感謝した。あの悪魔のような男に勝つことができたんだ。
さあ、今度はお母さんだ。ふにゃふにゃになって床に転がっているお母さんの体を広げると、あたしは胸をさっと切り裂いた。そして香菜の時のようにピンクのゼリーを流し込んでやる。
程なくして、お母さんの体も少しずつ膨らんできた。
よし、お母さんも大丈夫だ。
「う、うーん、優菜、どうしてここに、え、今何時?香菜はどこにいったの。きゃっどうして裸に…」
「お母さん大丈夫!香菜はそこで寝ているよ。お母さんもゆっくり休んで」
あたしはお母さんに毛布をかけてやった。
「うん、そうね。何か眠たくって、おかしいね」
「いいのよ、お母さん。ゆっくり眠って」
「あ、ありがとう優菜」
優し気なそのお母さんの言葉を聞いて、あたしは全てが戻ってきたのを悟った。
悪夢の日々は終わったんだ。
残るは……
あたしはボールに残った最後のピンクのゼリーをじっと見詰めた。
こいつ、絶対に許さない。
「おねえちゃん〜、早くしないと遅れるよ」
「うん、わかってるよ香菜。もうちょっとだけ」
「だめだめ、ほら早くぅ」
「優菜、早くしなさい。香菜はもう仕度出来ているんだからね」
「んー、もうちょっと」
「わっ」
香菜があたしの布団を引っぺがす。
「こらぁ、なにするのよ」
「おねえちゃんの寝ぼすけ」
「言ったな」
「ははっ、やっと起きたね♪おねえちゃん」
平和だ。いつもの日々が戻ってきた。香菜がいて、お母さんがいて、お父さんも今朝は出張から戻っている。
「優菜、遅いぞ。また夜更かしか」
「ごめーん」
ダイニングに降りてきたあたしはぺろっと舌を出して、急いでトーストにぱくついた。
普通の朝、あたりまえの日常。でもあたしは今たまらなく幸せだ。
にゃーん
「おねえちゃん、このきたない猫何処で拾ってきたの」
「うん、すぐそこでね。年取ってるみたいだけど、かわいそうだったから」
にゃーん
あら、お前もミルクが欲しいの
にゃーん
お前なんか・・・
(了)
2003年4月4日脱稿
後書き
やっと終わりました。「天使と悪魔の間に」そしてtiraさんに書いて頂きました「続・天使と悪魔の間に(前編・後編)」を締めくくる「天使と悪魔の間に(完結編)」です。正直こんな話になるとは、最初に書き始めた時には想像もつきませんでした。
でも優菜ちゃんがんばってくれました。彼女が流されずに、困難な状況を変えてやるんだという信念を持ってワンチャンスに賭けたからこそ香菜とお母さんを元に戻せたんだと思います。流されていたら、きっと優菜自身もこわれていたことでしょう。
でもここまで持ってくるのはしんどかったです。ぎりぎりまで追い詰められた優菜が逆転できるとしたらこれしかないと思いましたが、ただ、これをハッピーエンドと取るかダークと取るか・・・皆様はどうお感じになりましたか。
それでは、最後までお読み頂きましてどうもありがとうございました。そして続編を書いていただきましたtiraさん、どうもありがとうございました。
toshi9より、感謝の気持ちを込めて。
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